大人が安心して楽しく遊べる場所を作りたい
取材・文 | パンス | 2025年10月
翻訳 | カン・ミンソク
――昨日も東京でライヴだったんですね。どうでしたか?
L 「会場(渋谷ストリーム)がめちゃくちゃ良かったです。今まで共演したことのないタイプのバンドと一緒にやれて、初めて自分たちを観た人も多かったんじゃないかな。良い経験になりました」
――まずは、Dabda結成の経緯から聞かせてください。
L 「ジエと僕が大田(テジョン)にある大学のバンド・サークルで出会ったのが最初ですね。そこはメタル部です!メタル系のサークルで、自分たちがやっている音楽とはかなり違う雰囲気だったのですが……。ジエはソウル出身なんですけど、あるとき彼女がやっているバンドを観て、一緒にソウルでバンドをやろうって誘ったんです」
――ライヴを観ていると、皆さんの息の合いかた……というか、仲の良さが印象的です。楽曲制作はどんなプロセスで進めているんですか。
L 「大きく2つのパターンがあります。ひとつは全員で集まってテーマを作り、そこから少しずつ膨らませていく方法。もうひとつは、誰かが短いアイディアを持ち寄り、それをみんなでアレンジするやりかたです。ジエが作った曲をベースに全員で再構築することも多いです」
――意見がぶつかることもありますか?
L 「めちゃくちゃあります(笑)。特に僕とジエはこだわりが強いタイプなので、よく議論になります。他のメンバーは、それを見て調整するというか、説得していますね。自分がどうしても悩むところは、多数決に任せます。わからないところはみんなにお願いする」
K 「私が作って“これくらいのパズルができたな”と思っても、スンヒョンが全部ひっくり返すこともあって」
L 「たいてい、全然違う曲になります。でも3年後くらいに昔のデモを聴いて“これいいな”と思うこともありますね。それでジエが3年後に怒るっていうパターン(笑)。それぞれのパートを最大限尊重するのが基本です。ただ、その部分が曲全体のキーポイントになりそうなときは、全員で徹底的に話し合います」
N 「自分は演奏するときに、他のメンバーのリズム的なエネルギーに合わせていくっていうことを意識してますね。Dabdaはリズムがおもしろいバンドなので」
――Dabdaの曲は、極めてテクニカルで、ポストロックと呼ばれるジャンルでありながら、全体的にメジャー・コード多めで、明るく、リズムの立ったダンサブルな曲が多いですよね。意識的にそうしているのでしょうか。
L 「はい。かなり意識しています。バンドが始まった頃は暗めの曲が多かったんですけど、ある時期から“明るい音楽をやってみよう”と思ったんです。その転機があったのはメンバーが入れ替わった頃。空白期間を経て、ゴヒョンが加入してからエナジーが増しました。ライヴでも楽しんで演奏するようになりましたね」
――拝見したライヴでも演奏がとても楽しそうでした。テクニカルなバンドにありがちな“生真面目さ”がなく、観客との空気が柔らかいのが独特ですよね。マスロック、ポストロックと形容されることが多いですが、自分たちではどのようなジャンルになると考えていますか?
L 「以前はもっとエフェクトがかかった、サイケデリック寄りの音だったんです。バンドを紹介するときに、どうしようかなと思って“パステル・サイケデリック”っていう単語を作ったりしていたんですけど、今はもう使わないです。サウンドもドライな方向に変えたので。ジャンルで説明するのって難しいです。自分たちは“マスロックのバンド”というより、“影響を受けたひとつの要素”として考えています」
――具体的に影響を受けたアーティストを挙げると?
N 「RADIOHEAD、RED HOT CHILI PEPPERSから一番影響を受けています。あと、toeの話もけっこうしていると思うんですけど、ライヴでの演奏に関してはtoeの影響を受けたと思います」
K 「音楽性に関してはBOMBAY BICYCLE CLUB。あと、メロディラインに関してはイギリスのシンガーソングライターのLucy Rose、パフォーマンス的にはMASS OF THE FERMENTING DREGSですね」
P 「ずっとEric Johnson、Michael Landauとか、ギタリストの音楽しか聴いていなかったんですけど、20代を過ぎてからRADIOHEADとかも聴くようになりました。最近はMitski」
L 「ドラマーとしては、柏倉さんの影響がすごく大きいです。好きなバンドはいろいろあるけど、楽曲作りに関しては日本とヨーロッパのマスロックのバンドの構造が自然に自分に入ってきているんじゃないかと思っています」
――実際にtoeの柏倉さんとコラボしていますね。どういう経緯だったのでしょう。
L 「2021年、コロナ禍のときに、台湾のエージェンシーがあったんですけど、そこから日本の知り合いを通じて“Dabdaっていうバンドがいる”って紹介してもらったんです。そこで柏倉さんが私たちの映像を観て、“何かやってみたいね”って返信をくれて。まさかそれが叶うとは思っていなかったんですけど、そのあと具体的な話が出てきて、早速曲を作って柏倉さんに送りました」
――かなりトントン拍子に進んだんですね。そのときはどんな気持ちでしたか?
L 「うわーーーー!(と叫ぶ)こんな感じでした(笑)。みんなファンで、ロールモデルだったし、ドラム抜きでデモを送ったんですよ。自由に演奏してください、って。アレンジする中でうまくいかないポイントがあったんですけど、柏倉さんのドラムが入ったら全部解決しちゃいました。それが不思議だったんですよ。ドラムだけでアレンジ全体のバランスが解けて、曲が完成してしまったんです」
――それからの柏倉さんとの交流の中で、印象に残った出来事ってありますか。
K 「柏倉さんもライヴのときに緊張するっていう話を聞いたことですね。こんなカッコいい人も同じ気分なんだな~って」
L 「演奏においても、自分たちが複雑に考えてしまいがちなところを、シンプルに答えてくれるんですよ。それが印象的です」
――歌詞を書くうえで意識していることは?
K 「最近見ている風景とか、日常のこととか、そういうことを考えているんですけど、自分も歳を取っていくとそれが増えるから、悲しい、嬉しいといった気分はどんどん変わっていく。前はその自分の感情を詩的に表現しようとしていたんだけど、これからは物語にするのがいいんじゃないかなと思うようになりました。自分の話だけでは限界があるから」
――先日リリースされたシングル『DDDD!』にも、物語的な要素がありますよね。
K 「そうですね。物語でもあり、自分の話でもある」
――バンド全体的なイメージとして、“青春”のような感覚があると思うのですが、そのようなテーマを持つ理由は?
K 「特に意識しているわけではありませんが、メンバーたちやみんなも青春の時期を過ごしたから歌詞に出ているのかなと思います。最近、Electron Sheep(韓国のバンド)というアーティストが“青春時代を過ぎた後に結成したバンドはどうなるの?”と言っていて。青春はどこからどこまでなのか、じゃあ自分はどういう話をしたほうがいいのか? と考えるようになりました」
――今後は自分の書く歌詞も少しずつ変化するんだろうなと思う部分もあるんですね。
K 「はい、これからも変化はあると思います」
――今の韓国インディ・シーンをどう見ていますか?
L 「他のミュージシャンもそれぞれの意見があると思いますけど、自分的には、観客も多くなったけど、ブームが来たというよりは新しい世代が入ってきた感じがしますね。自分たちはちょうど前の世代と新しい世代の真ん中にいると思うので。他の人はどうですか?」
P 「バンドによる音楽を聴く人が多くなったのは確実です。フェスも増えたし。観客の年齢が若くなってきてます。メディア、SNSでも露出しているし、ブームが来たというよりは、関心が集まってきた」
L 「EP『Yonder』(2023)を出した前後から客層が変わってきたのを実感しました。アルバムの準備中は少しライヴを休んでいたんですけど、再開したら、観客の熱量が明らかに違った。長かったコロナ禍が終わった影響も大きいでしょうね。自分たちもそうだし、他のバンドのライヴを観ていても感じました。でも良いことばかりでもないと思いました。ベルリンでの公演や、東京の“SYNCHRONICITY”に遊びに行ったときに、いろんな年代の人がライヴを楽しんでいて、それが健全な光景なんじゃないかなと思ったりもしました」
――アジア・ツアーを精力的に行っていますが、国によってお客さんのリアクションに違いはありますか?
K 「ありますね。例えばタイでやったときは、暑い国だし熱い反応かなと思っていたら、むしろ“チル”な音楽が多いし、観客もその空気をのびのび楽しんでいる。国ごとに音楽のヴァイブスが違うんです」
L 「道路を歩いていても“チル”だったね。そういう違いはあるんじゃないかな。あと今後は、インドネシアに行ってみたいですね。友達が、インドネシアの人は絶対Dabda好きだよ!って言っていて。その理由が知りたいから行きたい」
――これから先、どんなバンドでありたいですか?
K 「知り合いに“大人なのに、なんでそんなに遊ぶのが好きなの?”と聞かれたことがあります。でも、大人だからこそ“遊びかた”を忘れがちじゃないですか。だからこそ、大人が安心して楽しく遊べる場所を作りたいし、遊べるチームになりたいんです」
L 「そのためにも健康が重要ですよ。カッコよくて年配のアーティストのパフォーマンスを観たら、身体に気をつけてるなって思います。ツアーで飛行機移動が続くと、体力の大切さを痛感します。あと、健康になったら落ち込まないし。だから、とにかく自分は元気で長くやりたい」
――音楽以外でハマっているものとかは?
L 「これはジョンウンが話さなきゃ(笑)」
P 「今僕たち日本なんですが……『デジモン』のグッズを4万円ほど……(笑)。(取材時『エヴァンゲリオン』のTシャツを着用)」
K 「私はキラキラしたかわいいものが好きなので、絵を描いたりしています」
N 「ジムとかランニングが好きです」
K 「ゴヒョンはDabdaの健康を担当しています(笑)」
――大事なことですね。最後に、日本のファンへメッセージを。
L 「日本は頻繁に行きたい国です。すごく居心地が良いですね。いつも一緒に、普通に活動ができるようになったらいいですね。日本のかたがたにもっと興味を持ってもらえたら、さらにいろんな活動ができると思うので、みなさんTwitter(X)のフォローをお願いします(笑)」
――実際、日本と韓国のバンドが共演するイベントもどんどん増えてるし、今後そうなっていくでしょうね。
L 「はい! がんばります。……韓国は今チュソク(お盆に似た韓国のお休み)なんですけど、なんだかこのインタビューも、休みの間に家族でテレビ通話しているような感じでしたね(インタビューはオンラインで収録)。ありがとうございます」
■ 2025年9月2日(火)発売
Dabda
『DDDD!』
Electric Muse
Apple Music | Bandcamp | Melon | Spotify | Youtube Music
| 2025年12月3日(水)
大阪 梅田 CLUB QUATTRO
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 4,900円 / 当日 5,400円(税込 / 別途ドリンク代600円)
LivePocket
[出演]
Dabda / DELTA SLEEP / MASS OF THE FERMENTING DREGS
※ お問い合わせ: info@kokoomusic.com
| 2025年12月4日(木)
愛知 名古屋 CLUB QUATTRO
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 4,900円 / 当日 5,400円(税込 / 別途ドリンク代600円)
LivePocket
[出演]
Dabda / DELTA SLEEP / MASS OF THE FERMENTING DREGS
※ お問い合わせ: info@kokoomusic.com
| 2025年12月7日(日)
神奈川 横浜 BuzzFront
開場 17:00 / 開演 18:00
前売 3,900円 / 当日 4,400円(税込 / 別途ドリンク代600円)
LivePocket
[出演]
cephalo / Dabda / DELTA SLEEP
※ お問い合わせ: info@kokoomusic.com
| 2025年12月8日(月)
東京 渋谷 CLUB QUATTRO
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 4,900円 / 当日 5,400円(税込 / 別途ドリンク代600円)
LivePocket
※ 未就学児⼊場不可
[出演]
Dabda / DELTA SLEEP / MASS OF THE FERMENTING DREGS
※ お問い合わせ: info@kokoomusic.com


