Interview | FREEZ


人間をリスペクトしとるって普通のことやけん

 FREEZの『NO FAMOUS』がすさまじかった。直接的であって、とても詩的で優しさが染み込んだハードコアなラップ。ワールド・フェイマスから近所のあんちゃんまで作っているトラック。ハードコア・ヒップホップが、アンダーグラウンド・ハードコア・ヒップホップが戻ってきた。春の東京ツアーの最後のライヴである小岩 BUSHBASHの翌日、柴又の矢切の渡しを望む河沿いの公園の東屋にて真っ直ぐな言葉と気持ちと向き合った。

取材・文 | COTTON DOPE / Lil Mercy (WDsounds) | 2022年4月
Photo | ©原田一希 (DARAHA BEATS)

 「インタビュー?他に絶対せんよ。これだけよ。マーシーだけ」

――Twitterでもそう書いてくれましたよね。前回のNARISKとのインタビューもやらせてもらって。
 「あれは俺が思ってる博多弁と少しだけ違うっちゃんね。文字にすると違う」

――そのインタビュー中で「ENDROLL」の話をしていて、シングル・リリースして今回アルバムにも収録しています。他にもシングルとしてリリースした曲が多数収録された『NO FAMOUS』はサブスクでクレジット見ると“Various Artists”になってますよね。
 「半分くらいシングルカットしてる。今回良かったのは、配信をササクレクトっていうところで頼んだんだけど。シングルでカットしてって、みんなに金を分配するために登録するために“Various Artists”が良かったけん、ああいう風になった」

――シングルを作っているときに、アルバムの構想はありました?
 「シングルを作る気持ちで1曲1曲作っていったら絶対やばくなると思って、気合いを入れて作っていった。“ENDROLL”は逆になかった。アルバムの最後にやっぱりこれ入れようって思って入れた。1曲ずつ、最初はローカルのプロデューサーと作っていって、無名だけど二日市でつるんどるやつ、遊んでるやつと作ってって、そいつらを有名にしたかったけん。本気でやるっていう。ラップでもブチあげて。アルバムは絶対作ろうと思って、NARISKとのアルバム(『It’s Tough Being a Man』2020, BASE SOUNDZ)も好きやったけど売れんかったし、自分で在庫を持ってるからそれはわかる。自分で好きやったけど、重かったりとか、悲しい歌が多かったけん、それを変えないかんと思って。こんな言ったらいいのかわからんけど。奥さんと話し合って、離婚するかどうするか決めてっつって。そしたら“せん”っつったけん。ヒップホップ好きな人じゃないから俺の音楽とかわからんけど、“アルバムを作るけん、金を作るけん。じゃあ、どんな聴きたいと”って聞いたら、“もっと男らしいのがいい”と、“ハードコアなんがいい”とは言わんけど、かっこいいのがいいって言って、昔みたいに、みたいな。で、“そうったいって、はよ、言ってよって”喜ぶって思って、『i』っていうアルバムで家族のこと書いたりとかしとったけど、奥さんは聴かせても喜んでなかったし。まだ怒ってるのかなって思ってたけど、単純にナヨナヨしとーけんイヤやったっていう。RAMB CAMPとかEL NINOとかよくわからんでも聴いとるけん、かっこいいのがいいと。“もう一回ハードコアでいくわ”って言って。とにかく元通りっていうか、ライヴをブチあげようと思って。家族のこと考えないでいいったいって思って。ダチのことをメインに考えて、昔のまんま。ラップもゴリゴリ。男が喜ぶような物を作った」

――NARISK君とのアルバムも『i』も自分はすごく好きです、内省的とも言えますが、自分の生活や考えかたと合うことが合ってしみるし、力をもらえる。
 「『i』も好きっちゃけど、ダチはわかってくれる。ハードコアな俺をもともと知ってる人間がぐっとくるのはわかるっちゃけど。全然知らん人は何これってなるかな。突き刺すことはできんよ。もちろん大好きな作品。このアルバム出したことによってもう一回聴いたら泣けるやろうし。でも、そのときは俺自身が自信がなくて、ライヴは自信あるけどね。録音するときはリリックは最強と思っちゃうけど。『i』は奥さんは少しは喜んでくれたけど、笑顔はね……。俺の裏切りの数が半端ないけん。アルバムはオトコたちの為に作った」

COTTON DOPE + FREEZ

――アルバムを作ってく中で今回は内にではなく外に向かって行くのは感じましたか?
 「楽しくなってきて。シングルを出したらすぐライヴをしよったけん。すぐ反応が見られて、鍛え上げていったけん。ライヴで上がる曲を作ろうと思って作ったけん。ライヴを想定したアルバムやけん、今、こんなにライヴに人が入りよると思う。シンプルにそれで良かったなあって思う。ライヴが一番やし。ライヴがうまくいってない時期もあって。一番得意だったらライヴが。ダチが泣いたって言いよったけど、そんな泣かしてもしょうもないし。制作してライヴしだしたらだんだん二日市の奴らトラック作り出してきて、俺のスタジオ、二日市のBASEの近くにあるスタジオね、“俺んちMOB”に集まってガンガンセッションして、とにかく男ノリになって、いい感じになって。週末は子供を見るけど、平日は男ノリでばり遊ぶようになって元に戻って、昔みたいのができたっていう」

――今回アルバムに収録されているゲストのSILENT KILLA JOINTやLafLifeは二日市のスタジオに集まって曲を作っているように感じました。
 「セッション系だったら、SILENT KILLA JOINTが二日市BASEに来て、福岡でライヴがあるときに後輩がわざわざ連れて来てくれて、BASEの服を頭からケツまで全部買ったけん。こいつめっちゃいい奴だなと思って、ノリで“今度スタジオ来なよ”って言ったら、1ヶ月後くらいに普通にライヴでもないのに自費で来て。コロナで夜遊べんけん、音楽で遊ぶしかなくて、9時くらいまで開いてるバーで飲んで、ずーっとスタジオにおるっていう。で、録った」

――その時はその場でトラックは決めて録ったんですか?
 「そう。あのトラックも二日市のやつ(RINK)だし。二日市とか福岡は無名やけどやばいやつがめちゃくちゃおるけん。そいつらは売り出しかたがわからんけん、ブチあげたいっていう。シングルカットしてったけん、話題にはなるけん。SILENT KILLA JOINTとかよく見たら有名やけん」

――一緒にやるのは意外に感じたんですけど、曲を聴いたらしっくりきていると感じました。
 「ジェントルよね。スタジオに変な奴上げたくないし、礼儀正しくてかっこいいやつしか上げたくないけん。あいつもリリックとか20分で書くし。ぱぱっと録るっちゃけど、気合入ってるし。で、もうひとりKAKKYってやつがSQUAD WORDSの相方で、違う日に来たかもしれんっちゃけど、KAKKYも二日市をうろうろして、あいつは時間かけたってことやね。一緒に録ったかは忘れちゃったんだけど、2人とも録ったのはうちのスタジオ。で、“ポッポっポポ!!”とか入ってるのはWestside Gunnとか好きやけん、真似しろってやらせるっていう。二日市の奴らも遊びに来とった。遊び場やけど手を抜いてない。遊びやからこそ」

――DOJO感がありますよね。今回アルバム自体に、道場のようなものを感じました。FREEZ君のスタジオに稽古に行くみたいな。
 「俺はさ、あいつらが早く書いて録っても、わざと俺が時間かけたり、30分で書けるんだけど1時間かけて書いたり。こうやって丁寧にやるんだみたいな感じは出したね。SILENT KILLA JOINTは冷静に20分でもクオリティは高いけん。常に考えとるんやろうね。LafLifeも全然知らなくて、STAND-BOPの5階でDANが話しかけてきて、いい目をしとったけん、スタジオおいでよって誘ったら本当に来て、そしたらMOMOともう1人怪しい奴を連れてきて、そいつがQuidam Beatz。カッコイイ目をしとって。最初はビートを用意しとっちゃったけど、Quidam Beatzがビートを作れるって言うけん、その場であいつがビートを作りよって、それに書いて、朝9時までセッション。BASEで働いて、19時、20時にあいつらが来よって、そこから少しもつ鍋食い行って21時スタートくらいでセッション始まって。全然知らんくても熱いヤツだったらわかるけん。本気でやっとんのは。DANがまずがっつり熱い話をしてきたけん、いいなあって思って、で、MOMOは地元のやつやけん。たしか八女。そのコンビっていいなっていう。Quidam Beatzは 一番はまっとって。チェックしてなかったけど、ビートが生叩きでグルーヴィで好きで、ライヴでも怪しい曲なのにけっこうブチあがる。1人でやってもブチあがる。それで、俺がリリック書いて録ったら、Quidam Beatzが泣いて、こいつはソウルがあるなと、一生つるみたいと。あいつ川崎やけん距離はあるけど。ほんと、縁を感じるアルバムになった。その他にもセッションした奴いっぱいあるけど、入れたい曲をアルバムに入れたっていう感じ」

――フィーチャリングの人選がすごく新鮮に感じました。
 「俺は今まで頑固に、ローカルをあげないかんっていうのでローカルをフィーチャリングしてたけど、それじゃ広がらんっていうのがわかって。『NO FAMOUS』ってタイトルだけど、まず俺が一回ブチあがろうと思って、そいつらも有名かは知らんけど、他の土地の人とやろうっていうのはコンセプトで、アルバム制作の前からもGQに相談しよって、なんかやべえヤツおる?とか。いろいろ聞いて、その意見は採用してないかもしれないけど、話は聞いた。そんときから、俺、hondaさんとやりたいとは言いよった。もう、それはずっとあったけん。ずっとやりたかったけん。高校生から聴きよって大好きやったけん。どうしたらいいのかなと思って、そしたらインスタで繋がっとったけん、インスタでDM。丁寧に送ったつもりっちゃけど、“やらせてもらいたいんですけど、ビートをお願いできますか”っつったら、マネージャーが即対応してくれて、RAMB CAMP聴いてましたって言ってくれて、hondaさん“やる”って言ってますんでって、速攻10曲くらい送ってきて“こっから選んで乗せてください”って」

――そこにあのビートがあったんですね。
 「俺はどうしても、どう考えてもそれやったって言うか。全部かっこよかったけど、俺がやりたいのはあのビートやって、もともとワンループで、シンプルなんだけどファットでその時点でかっこいいんやけど、それにけっこう時間かけて1ヶ月、2ヶ月かけて、3バース、4バースあるっちゃけど、全部乗せて返して。そしたら、フックが“NO FAMOUS!! NOFAMOUS!!” 連呼だったんだけど、“hondaさんがスクラッチを入れたい”って言ってますって、マネージャーから連絡が来て、“スクラッチ入れるのにいいフレーズないですか?”ってなって、けっこう燃え尽きてたけど、ひねり出して、“UNDERGROUND KING”とか、ボツったフレーズもあるけど送って、hondaさんが選んで。ビートもどんどん変わっていって、最終的にあげんなった。で、“ミックスもマスタリングもhondaさん他の人にはさせないんです。全部自分でやるんです”って言われたけん、アルバムの全体のマスタリングは長老やけど、hondaさんの曲に合わせてるっちゃけん。音量とか。最近気付いたっちゃけど、元ネタ和物で。思いっきり女のディスコ・ソウルみたいなさ、歌謡曲みたいな。ファンクかソウルだと思ってて、hondaさんって和物も掘るったいって」

――「NO FAMOUS」ができたとき、これでアルバムができるって感じましたか?これだ!みたいな。
 「時期は忘れたけど、アルバムが半分以上できた頃にできたんだと思う。“NO FAMOUS”は自分でも納得いくくらいできたけん、また自信がついて、またそのあと録っていく曲も、テンションをキープして。絶対いいもの作るしかねえっていう。hondaさんに怒られるって思って。気合いを入れて書いた感じ。全部気合い入ってるな。俺、40いくつかわからんけど、42、3で先輩あんまおらんけん。あんまかっこいい先輩おらんけん。でも、hondaさんは何歳かわからんけど、だいぶ上であんな太すぎるビートでやっとうけん。こげんなりたいって思うし。憧れる人がまだおるのが嬉しい。あの曲は嬉しかった。夢とか叶うやん。金も俺みたいなインディの中では高いけど、経済効果がはんぱなくて、その金つくらなあかんと、パーカーだなんだ作りまくって、結果的にめちゃくちゃもうかったしBASE。全く損じゃないという。ちょっと高く感じても半端ない経済効果があった。本当に助かったし。やっぱコロナでBASEもやばかったけん、本当に助けられた。クラウドファウンディングとかめんどくさいけん、Tシャツ作ります買ってくださいみたいに書いて」

――アルバムタイトルに「NO FAMOUS」を持ってきた理由は?
 「そうやね。できたときあの曲をタイトルにしようって。リリックで全部言っとうけん。別に街歩きよって声かけられたくないっていうか、目立ちたくない。ライヴんときにブチかませばいいけん。今、ライヴのときに写真とか動画とかバリ撮られるけん、サングラスとかしとっちゃけど。ストーカーみたいのも増えてきよって、子供大事やけん絶対何かあったらイヤやけん。家族大事やけん。でも、ブチあがらなあかんし、葛藤の中全部リリックで言ってる感じやけど。ブチあがるけど、普通の生活をを送るというか。普通のおっさんでいたい」

FREEZ + COTTON DOPE + MULBE
当日インタビューに同席したMULBEと。

――当たり前のことかもしれませんけど、生活をラップで表現しているとすごく感じるんです。伝わりまくってきてます。
 「自分自身の話をラップするっていうのが、『i』でもNARISKとのアルバムでもやったけど、もう少し違うやりかたでしたかった。どうせ、そういうやりかたしかできんけど、自分のことばっかやなくて、生活を歌うけど、聴いた人も自分にフィットするような。俺の話だけじゃなくて、聴いてくれた人が俺もそう思うというようなさ。中間地点を作ったっていうか、意識的に自分の話じゃなくしたっていうか。わけわからん話にしてるっていうか、何にでもあてはまるように。みんなが生きてる中ではまる話。絶対に共感できるような話にしとうと思うっちゃけど」

――「NO FAMOUS」は“今日も食ってる揖保の糸”とか唐突にブチこまれてて、笑っちゃうんですけど、すごくかっこよく聞こえるんですよ。
 「あれはもう、いつもの俺のスタイルで、揖保乃糸をINNOCENSEって奴が持ってくるけん。ばり食いよったけん、書いただけっちゃけど。そうめんだけどちょっと高いけん、ラージだろ?っていう。ライヴで揖保乃糸のところが一番盛り上がる(笑)。ブチあがっとる。やっぱ、頭に入るんよ。おもしろいフレーズは」

――(爆)。ひとつひとつの表現から生活が湧き出てきます。
 「二日市でずっと遊びよって、みんながすげー愛を与えてくれて、元気になって。またおもしろい自分に戻れた。おもしろいけどかっこいいっていうのが、俺昔そうだったから。影がある時期もあったし、病気にもなったし最悪だった時期もある。今はちょっと、前みたいにすごい若くないし、元気ではないけど、でもユーモアはずっと持っておけるやん。歳とっても。後輩がめちゃくちゃおるけん、かっこよくおらんと。真似するけん。でも、かっこいいだけのやつって俺好きじゃないけん、おもしろい奴がすきやけん。だから俺イングローリアス(INGLORIOUS BASTARDS)が好きやけん、みんなかっこいいけどプライベートはアホや(笑)。ハードコアやけどおもしろい奴」

――ふざけたことをかっこよく言えるのに憧れるじゃないですか!
 「そう、かっこいい声で(笑)。真顔でふざけてる人みたいな。そういう人になりたいけん。やっぱ芸能人とかじゃないね。おるかもしれないけど、知り合いのかっこいいおっさんとかね。真顔が一番おもしろい。全然自分で笑わんでギャグをブチかましてくれる人とが好きやけん。STAND-BOPのボスのリョータ君もそうやし、めちゃくちゃみんなから怖がられてるけどばりうけるし。怖い人がふざけるとおもろい」

――間違いないですね(笑)。で、アルバムの話に戻りますが、シングルでもリリースされてるKEMUIとやってますが、これはどういう経緯で。唐突に名前を聞いてすごくびっくりしました。
 「これも思いつき。LIL ZAMってトラックメイカーの奴がいるんだけど、それと仕事することにして。まずLIL ZAMとやることにして、ラッパーをフィーチャリングしたいって話をして、誰が好きと?って話をして、話し合って、KEMUIってなって。連絡先とかしらんけん、Twitterで繋がっとって、俺昔から好きやったし、DMであの、フィーチャリングしてもらえますか?って。そしたらけっこうすぐ返ってきて、“やります”って感じで。トラックはKEMUI君と選んだ。バース書いてきたのは先にKEMUI君から。フックまで入っとったけん。フックに俺が被して、バース書いただけ。で、東京の恵比寿でEL NINOでライヴやったときにKEMUI君会いにきてくれて、引退しとったっぽいけど、来てくれれてアナログとかくれて、生で会うとまた印象が良くなって、本当によか男やって思って。で、家族のところに帰ってって。何回も会ったわけじゃないっちゃけど、一発で友情を感じて。ライヴで場所が一緒だったってことはあるよ。KEMUI君が言っとったけど、EL NINOが来たときは、俺らばり尖っとったときで、ハードコアで。“あのとき、話しかけられなかったけど好きです”って。で、今回の東京でのライヴも3発あるうちに2発も来てくれたけん、奥さん説得してくれてね。ほんとちゃんとした仕事しとるけん。いろんなことを話しつけて来てくれて、リハに来て、帰って、ライヴ2、30分前に帰ってくると。タメやけん。そういう遊びかたやん。大好きよKEMUI君。酒ずっと一緒に飲みたいとかじゃないっちゃ。ただいい男やけん好きっちゃん。成り行きやけん今回。hondaさんだけは絶対やりたいと決めとった。断られるの想定して。断られたらなんとかするつもりで。そしたら快諾してくれた」

――突っ込んだらなんとかなるじゃないけど、なんとかなりますよね。自分もそういう事します。
 「断られたら傷つくしと思ったんやけど、即やった。そういうところがやっぱかっこいいなって。後輩たちは俺がこう、まだまだやけん。夢を与えようって言ってるけど。hondaさんが俺に夢を与えてくれた。hondaさんとやるのが昔からの夢やったけん、叶ったけん。あからさまにレベルが自分より高い人とやりたかった。一回。インディでそこら辺のダチとやるのも大好きだけど。アルバム並べて見たらまだまだ無名の奴らも一緒に並ぶやん。そしたら無名のやつもしっかり聴くやんと思って」

――それがインディペンデントの強さみたいのもあるし。それを全面的に押し出してるじゃないですか?
 「まじで。一番頭に言ったみたいに、もうだまされてばっかりやけん。だまされてっちゅうか搾取が多いけんさあ、自分で全部やろうと思って。回す金はBASEで稼ぐけん、それでしっかりやればいいだけ。本当、ビジネスとして全部回収してやろうと思ってて、めちゃくちゃ頭で考えて、アホやけど、アホなりに。シンプルにして。“independent as fuck”というのをまた。いろんな人に頼ってる時点で“independent”じゃないし。人に頼って。最初はね。今はもういろんな人が手かしてくれよるけど」

――BASEにもスタッフがいますし、生活がありますもんね。
 「金がいるし。やっぱ俺がやばいCDを作れば客が直接会いに来るけん、服とかも一緒に買うし。音楽と服の店やけん。俺がバズらんと全然ダメ」

――音楽が服にも波及してゆくというか?
 「やっぱ、ハードコアの影響めっちゃ受けとって。白黒のジャケットとか。全部自分でやりよったみたいな。偶然ドキュメンタリーを観て。『サラダデイズ SALAD DAYS』(2015, スコット・クロフォード監督)。運命的な。もとから好きやったけど、訳も見えたけん。物語が見えたけん。全て見えたけん、真似した。ハードコアがやっぱ好きや。ダチもゆうすけ(STARTERのYOUTH-K)とか。ちゃらいヒップホップと遊ぶよりもハードコアのほうがおもろいし。ね。そうやろ?」

――今まで培ってきたものが今回の作品で出せたっていう実感はありますか?
 「今回は本当にひとつも言うことがない、ヤな曲1曲も入れてないし。本当今の時点では最高。全曲好きやし、同じくらい。hondaさんの一番好きっちゃけど、そうじゃなくて全部好き。全部違うし」

――聞くたびにアルバムの中で自分が引っかかる曲が変わってくるというか。BOOTYとの曲すごい好きです。
 「“大我”っていうのを島根の符和さんがシングルでリリースしてて、電話してアルバム入れてもいいですかって。いっつもライヴでBOOTYとしよったけん、あったほうがいいと思って。楽しいけん。配信と7"だけのリリースだけど、CDに入れたかった。あと一番はBOOTY入れたかっただけや。おもしろいけん、まじで。あいつ、自分のラップ普通くらいに思っちゃけど、ばりかっこいいぞ。ずーっと20年くらいツルんどうけん。絶対入れたいし、一番応援してくれるし。ただの悪友やけん。最高の後輩やけん。動きもタイトだし、好きやけん。後輩の中で一番遊びよっておもしろいもんね。天神出たら連絡して、カレー食いに行って、それしか食ってないけん。天神行ったらBOOTY CURRY」

――昨日ライヴのイントロでM.O.P.の「World Famous」かけてましたけど、アウトロもかけてましたよね。
 「ツアーに出る直前に俺が思いついて、“NO FAMOUS”が1曲目やけん、“World Famous”が一番頭に(笑)。M.O.P.好きやけん。まず、M.O.P.が2人であんま活動してないけん、もう一回M.O.P.を思い出させるという野望もあって、そんで、しかもラップ入りをかけるという。M.O.P.の声を聴かせてたいから。俺自身が上がる。イントロで。入場曲みたいな。でも、昨日最後にこいつ(DJ HARADA)がインストをかけたのは何も打ち合わせしてない。そんで、うんってなって感動してしまって、前にサンクラにあげとっちゃけど、BASEの曲があって“WELCOME TO 2DC”っていう。それがあのトラックでやっとって、だけんそれを歌っただけっちゃん。地元ではライヴでやりようけん、ばり盛り上がるけん。二日市に人呼ぶ歌やけん。M.O.P.がやっぱ一番エネルギーをくれたけん、今、46歳って書いてあったけどまだまだ行けるはずやけん。ソロは出てるけど、二人でやってほしい。みんながRAMB CAMPに思っとることと一緒や笑。RAMB CAMPはM.O.P.やし、いつかRAMB CAMP feat. M.O.P.したいし。金かかるかもしれんし、車とか買わんでM.O.P.に頼めばいいし。いくらかしらんけど(笑)、それも夢やし。でも今はBIG FACEが動けんし、今はひとりでやるしかない」

――アルバムの中でも音楽への愛しかないというか、“音楽が中心にある”と歌っていると感じます。だから音楽に投資していくのだと思いました。
 「俺、本当に一日中音楽聴いとって、寝るときは消すっちゃけど、寝れんくなるから。それは音楽中心になる。けっこうびっくりする人おるけど、それが普通と思っとるけん。無音が嫌というか。たまにはあるけど。散歩とかするとき自然と無音やけど」

――家で聴いてるときはスピーカーで?
 「そうJBL。BASEも太いJBL、PartyBoxっていうの。家にはラジカセ型のJBL」

――JBLのイヤフォン買ってましたよね?
 「そうそう。次にもう少し小さいJBLを買って、この前ライヴのギャラでちっちゃいJBLを買ったっていう。4つ持ってる。投資してる。けっこう安いし。めちゃくちゃハッピーになる」

――朝聴いて好きなのってあるんですか?
 「朝は、M.O.P.が多い(笑)。“World Famous”やっぱり多いし。やっぱ好きっちゃけん。ビートは優しいけどハードコアやし。あのバランスは」

――ハードコアなラップとソウルフルなトラック。そこは自分の音楽の作りかたにも影響は出て来ますか?
 「そっちのほうがぐっとくるっつーか。そのバランスを今回のアルバムは出せたんじゃないか。M.O.P.ってハードコアハードコアって感じやけど、前半はハードコアで後半はメロウで、でもラップ全部一緒っていう。それが好き。ハードコアってことは力一杯歌うけん。そりゃ元気になるっていうか。対訳見たら、“マザファッカーをビール瓶でぶん殴る”みたいな無茶苦茶やけど。まだM.O.P.の話していい?DVD観た?街に行ってブート盤をバットで破壊してくみたいな。M.O.P.軍団がボウリング・シューズ履いてボウリングしとって、最後に。ボウリングが好きなんや!M.O.P.。みんなにDVD貸したけど、みんな理解できない(笑)。不思議な存在やけん。DVDの中にいろんなおもしろいシーンがあるんやけど、“Ante Up”作ったトラックメイカーの家かなんか映されるんやけど、ばりちっちゃくて。その中でLil Fameが“金なんかより家族を大事に楽しく生きれればそれでいいんだ。豪邸なんていらない”みたいなことを言ってたと思うんやけど、とにかく言うことがダチが言いよることに近いというか。俺がそう思っとうし。ダチを見てるようで。悪い悪いって言われてるけど、絶対優しいし。怖がられとうけどそれは誰かを守るためや。そういうところが好き。M.O.P.の話長いな」

――オールタイム・ベストが何かを聞きたかったんですけど、M.O.P.ですね。
 「エネルギーが少しだけ下のときでも聴いたら上がる。ずーっと聴いてる」

――M.O.P.だと一番好きなアルバムはどうなってきますか?
 「全部好きやね。好かんのがないけん。だって全部ラップ一緒やけん。トラックが違うだけや。全部聴いてる。シングルもなんもかも。ソロは流石にやけど。掛け合いとかさ、仲良くないと掛け合いできんし。なんかRAMB CAMPを思い出すけん聴きよるのかもしれん」

FREEZ + COTTON DOPE + MULBE

――今回の作品もソロだけれど仲間がいて作っているように感じました。代表しているように感じました。
 「全員ブチあげるために作った。二日市はちょっと遠いけん、親不孝とか昔行かんかったけん。帰れんけん。今は来るっちゃけど。親不孝が一番音楽の中心で、みんな恵まれとうよ。毎日クラブ行ける。ワアワアして、毎日音楽も上がっていく。でも、今俺は二日市におるけん、そこも負けてないぜってのを見せたかったけん。街をブチあげるために本気出したって感じ。やっぱ、最初はナメられとったし。二日市、田舎。“ちゃんとヒップホップわかってない”とか言われよった気がするけど。そんなの変えたかったけん。敵対しとるとかじゃないけど、一緒に遊べばいいやん。福岡なんやから。そしたらみんな仲良くなって。ライヴも初めてとかいうヤツいっぱいよるけんね。DJも初めてとか、クラブがないけんね。でも、ビートを家で作りよるヤツはいっぱいおって。それをどきどきしながらBASEに聴かせに来る、聴いたらやっぱりヤバいけん。クラブ行こうが行くまいが家でディグって家でヒップホップ極めようとしとって。いいやんって。クラブがないならクラブがないのがスタイルたい。そういうサウンド鳴らせば。無理して行かんでいいよ。遠いし」

――クラブなくていいじゃんっていうのはすごく新鮮な考えに感じました。
 「それもいいやんってなったらさ、すげー田舎の人だって自分で研究してやればいいし。今ネットがあるけん、できるし。そりゃクラブで体感するのが手っ取り早いっちゃけど、自分で頭で想像してやるのはいいし」

――それはFREEZさんが二日市でBASEをオープンしてから見てきたことですよね。そこで出会ったことで自分の中で考えかたが変わった?
 「そう。変わった変わった。BASEが親不孝のときは、クラブに来ないかんぞみたいなさ、俺が逆に。ヤなヤツやった(笑)。現場至上主義みたいな。自分が離れてみて、来れん人の気持ちがわかった。遠いけん来れんわって。3時くらいにクラブが終わって、始発まで待つのとかキツいし。2時間くらい公園で寝とったときがあって。そういうのもあってキツいのがわかって。最近は遊びかたが変わって、お金稼いでホテルとって、ゆっくり寝て、昼飯食って帰る。始発で絶対帰らないかんっていうのやめた。そしたら本気で遊べるし。帰りのこと考えたらダルって楽しめんけん。だからTOMORROWの曲(“CREAM”)で“始発は待てない 取ってるホテル”って。体験した思ったことを言っとるけん。だから嘘はない」

――FREEZさんがTwitterで書いてることとかと見てるんですけど、リリックを聞いていると、あれ?これTwitterで言ってたかも?って思うんです。
 「あのーTwitterもやりすぎはいかんけど、なんて言うとかね、アイデアをブチまけよる。おもしろいって思ったことを暇つぶしで。リリック書く練習になるけん。ヒントとかね」

――そこに反応もあったりします?
 「うんうん。だからおもしろい。めちゃくちゃおもしろいこと思いついたら、バーって言ったらバーってきたりとか。俺のギャグセンはまだいけるって。オタクとかと繋がれるし。オタク大好きやから、オタク、ヤンキー、ギャングとかなんでもいいけん。極端な人が好きやけん。電脳世界もちゃんと大事にしてる」

――そこがおもしろいと思います。ハードコアの芯がある中で柔らかく変化にも対応しているように感じていて。
 「気が狂ったときに思ったこと全部書きよったことがあって、傷つけたこともあるから、言葉って、つぶやきといえど全世界が見とるけん。絶対傷つけた人おるけど、それをせんようにふざけてるつもりなんやけど。落ちとう人が笑ったりしてくれたらいいなっていう。あの人またアホだなとかさ。でも、ラップはバリカッケーっていうのが最高だし。ラップに妥協せんとけば、あとはふざけていい。けっこうほんと実はアイディアのノートになる。嫌な人は嫌やろうし、したくない人はしなくていいけど、ギャグセンを高める夢のマシーンよ」

――やりたいことっていうのは自分があがってみんなをブチあげるっていうことですよね。
 「ブチあがるっちゃけど、顔バレしないみたいな。無駄に有名になりたくないっていうか、もうタイトル通り、覆面をかぶっとるし。どんなでかい会場でもロックしたいけど、普通に終わったら帰るみたいな。どこにいってもリスペクト、リスペクトされるとウザいけん。普通にしててほしいっていうか。だいたい本当のダチってリスペクトしてるとか言わんけん。心で思ってる。だいたい人間をリスペクトしとるって普通のことやけん」

 このインタビューで話したときと現在では、私もFREEZさんも生活のスタイルは大きく変わっている。でもこのインタビューで話していることはハードコアでソウルがある話だから不変のものである。変わっていくのだけれど不変のこと。2022年12月21日に全国流通を開始するアルバム『NO FAMOUS』のCD。これからも新たに生まれていくSHITの数々。インタビューのときも話していた私との約束のリリース。まだまだFREEZの話は続いていく。みんな絶対聴いたほうがいい。FREEZは11月23日に自らラップ、トラックメイク、映像制作まで手がけた新曲「花と金」のMVをリリース。自ら考え、自ら動くインディペンデントな歩みは歩幅を変えて続いていく。

FREEZ 'NO FAMOUS'■ 2022年3月21日(月)発売
FREEZ
『NO FAMOUS』

BASE SOUNDZ
https://linkco.re/nR7mRs6P

全国流通CD
2022年12月21日(水)発売
BSZ008 税込3,000円

日本のヒップホップ・シーンで圧倒的な存在感を放ち続けるMC FREEZの最新アルバム“NO FAMOUS”が2022年12月21日に全国発売決定!
LIFEという言葉を生活に変換する。足先指先、髪の毛の先まで正直にディティールをRAPする。
馴染んだものの輝きが増していく。足を進めるたびに鏡に映る自身の最高さに気づいていく感覚。みんな自分自身の代表だ。
そこにはMUSICがある。溢れ出るMUSICとそれへの愛がある。音楽の前でもまた一切の隠し事はなしだよな。
尖っていてそれでいて丸いSOUL。理由は言葉にできないけど涙が出てくる。精神の汗がね。
ぶっとい幹に旅の途中のSOULが邂逅していく。ああ、それぞれの路がまた広がっていく。
やばいくらい広い世界の前で焦りが消えて、焦点が定まっていく。
HIP HOPとはサバイブすること。とどのつまり生きることに執着して生み出したもの。こんなに最高の「NO FAMOUS」と出会えるんだ。生きよう。
――Lil Mercy (WDsounds | INGLORIOUS BASTARDS, MEJIRO ST. BOYZ)

[収録曲]
01. NO FAMOUS Prod. by dj honda
02. 生きる Prod. by DJ GQ
03. NIGHTMARE feat. SILENT KILLA JOINT, KAKKY Prod. by RINK
04. 大我 | BOOTY'N'FREEZ Prod. by 符和
05. LIFE Prod. by KOYANMUSIC
06. WOO YEAH Prod. by SHAKAMURA
07. SPACE WORLD feat. LafLife Prod. by Quidam Beatz
08. 冥府魔道 feat. KEMUI, DJ 琥珀 Prod. by LILZAM
09. 復活 Prod. by Olive Oil
10. 階段 Prod. by BAKU
11. DREAMIN Prod. by mots
12. BEATS & RHYME Prod. by DJ MOTORA
13. CREAM Prod. by TOMORROW
14. ENDROLL Prod. by NARISK
15. VERY SPECIAL Prod. by DJ GQ
16. LIFE (mots remix)