音楽家としてのみならず、Daddy Kevと共催するイベント「Scenario」をはじめ場所の創出にも尽力するFumitake Tamuraと、El Guinchoと共にCOCONOTに在籍した経歴を持つスペイン・バルセロナの音楽家・Cristian Subirà aka Jason Kolàrが、ベルギー・ヘントのレーベル「Dauw」からコラボレート・アルバム『Ōki-sa』をリリース。9月27日よりBandcampでの販売が開始されています。
“大きさ”のラテン文字表記を冠する同作は、昨夏のSubiràr来日時にインプロヴァイズでのセッションを経て3日間で制作されたという作品。ハイコンテクストなコミュニケーションにおける誤読 / 誤訳 / 誤解を踏まえ、制作にまつわるリファレンスやガイドラインを共有することなく、音とアイディアの交換のみで作られているとのこと。マスタリングは「12k」ファウンダー・Taylor Deupreeが担当しています。なお、米シカゴILの美術家 / 音楽家・Zander Raymondによるアートワークをリソグラフでプリントした限定カセットテープは、すでにソールドアウト。
またリリースに合わせ、TamuraによるSubiràrと「Dauw」オーナー・Pieter Dudalへのショート・インタビューが公開されています。
取材: Fumitake Tamura
――バルセロナはとても美しい街ですが、そのような環境はあなたが作る音楽に影響を与えていますか?
「私は、自分が育った環境が創作に対するアプローチに影響を与えると強く信じています。バルセロナの建築、風景、気候は、私の音楽に多大な影響を与えています。特に、私の音楽の緩やかさや軽やかさは、こうした要素の反映であると言えるでしょう。また、私が演奏を始めた頃には活気ある音楽シーンがあり、これが私に挑戦を促し、新しい道を探求するきっかけとなりました。結果として、私はある種のコンフォートゾーンから抜け出す姿勢を長年維持しようと努めています」
――あなたの音楽を聴くと、あなたが自分自身が見ている世界を音で置き換えているのではないかと感じることがあります。音楽を作ることはあなたにとってどのような意味があるのでしょうか。
「おそらく、その感覚は正しいです。私の音楽制作のスタイルは、私自身が人生の特定の側面をどのように捉えているかを反映しています。具体的には、私がミニマルな形式で作曲し、ベーシックな機材のみを使うことは意図的な選択です。私はシンプルな(時には複雑な)目標を持って録音に取り組んでおり、リスナーを“特に何も起こらない”体験に誘うことを目指しています。派手な演出や、友達にすぐにメッセージを送りたくなるような要素は排除されています。これは、生産性から切り離された日常的な音の探求です。このアプローチは音楽だけでなく、創造全般における私の意味観とも関連しています。私は創造という行為を、アイディアを伝え、他者や自分自身とつながるための貴重な手段と捉えており、それは徐々に発展し、関係性を築いていく言語のようなものだと考えています」
取材: Fumitake Tamura
――ベルギーの古都であるヘントもまた非常に美しく、歴史的な街のようにこの場所で暮らすということはあなたのレーベルにどれほどの影響を与えていますか?
「私はブリュージュで育ちましたが、そこは建築や歴史においてヘントとよく似た特徴を持つ街です。基本的に、私はこうした視覚的な背景の中で人生を過ごしてきました。これらの環境には特有の美しさと魅力がありますが、一方で中世や産業時代の痕跡からは、ある種の重厚さや暗さも感じます。特に興味深いのは、これらの場所が現在や未来に焦点を当てるのではなく、過去を生かすことに重きを置いている点です。個人的には、私は全く逆の方向に進化してきました。このことは、私が手掛けるレーベルにも反映されており、Dauwの美学は柔らかく、ミニマルで、新鮮なことだと言えます。また最近では、“変化”は良いものであり、自然の一部だと考えるようになりました。この考えは、私が時間の中での自分の位置を理解し、自身が行っていることの相対性を捉えるのに役立っています」
――あなたのレーベルは、アートと音楽の間に強い結びつきがあるように思えますが、デザインやレーベルの方向性について説明していただけますか?
「レーベルの始まりは、10年以上前のヘントの美術学校で起こっていたことに遡ります。当時、そこではイラストレーションや特定の印刷技法(シルクスクリーンが非常に流行していました)に大きな関心が集まっていました。私はそういった活動に非常に興味を持ち、フェムケ・ストライボル(Femke Strijbol | 彼女と一緒にレーベルを立ち上げました)と出会った際、これらの印刷技術がレーベルにとって欠かせない要素であると確信しました。音楽と視覚芸術の結びつきを真剣に考えることで、新しいものを得られるという信念を持っていました。初期の頃、すべてのリリースがシルクスクリーンで印刷され、アートワークもこの技法に基づいて制作され、その結果、一貫した視覚的言語が生まれ、私たちが高く評
価された理由のひとつとなりました。私は長い間この技法に固執していましたが、近年になって、そういった形式 = “フォーム” が本質を上回ってしまっていることに気付きました。ここでいう本質とは、音楽と視覚芸術の間に“共鳴する”組み合わせを見つけることです。現在では、本質を大事に、視覚作品そのものにもっと焦点を当て、アート全体で伝えたいメッセージに沿った印刷技法やデザインを選択するようにしています」
■ 2024年9月27日(金)発売
Fumitake Tamura & Jason Kolàr
『Ōki-sa』
DAUW069
https://dauw.bandcamp.com/album/ki-sa
[Side A]
01. 1A
02. 2B
03. 1D
04. 1F
05. 1G
06. 1H
07. 1I
08. 1J
09. 2A
10. 2D
11. 2E
12. 2G
13. 2H
14. 2I
[Side B]
01. 2K
02. 2J
03. 2N
04. 20
05. 2P
06. 3A
07. 3B
08. 3C
09. 3D
10. 3E
11. 3F
12. 3H
Gallery
Fumitake Tamura Official Site | https://www.fumitaketamura.com/