Interview | 三沢洋紀 + 柴田聡子


『しばたさとこ島』10th Anniversary

 6枚目のアルバム『ぼちぼち銀河』(AWDR/LR2)を5月にリリースした柴田聡子(以下 S)。2022年は彼女にとって、シンガー・ソングライターとして本格的に足を踏み出すことになった(そしてその個性を世に広く知らしめることになった)デビュー・アルバム『しばたさとこ島』(2012, 浅草橋天才算数塾)のリリースから10周年にあたる意義深い年である。付け加えておくと『しばたさとこ島』のアナログ・レコードは「なりすレコード」の第1弾作品であり、同レーベル始動のきっかけにもなった重要作だ。

 そしてその『しばたさとこ島』のプロデュースを務めていたのが、三沢洋紀(以下 M)。ラブクライ、LETTER、真夜中ミュージック、岡林ロックンロールセンター、川本真琴 with ゴロにゃんず、国際オバケ連合、PONY、わびさびくらぶ、ゆふいんの森など数々のバンドで活躍し、神奈川・横浜 日ノ出町のライヴ・バー「試聴室その3」の店長でもある。4月にソロとしては14年ぶりとなるアルバム『MISAWAHIROKI2』(三沢企画 | 試聴室 VACATION)をリリースし、不思議な安らぎをもたらす歌を聴かせてくれた。90年代後半に渚にて、羅針盤と並ぶ関西三大うたものバンドと言われたラブクライの全スタジオ・アルバムをアナログ・レコード化するプロジェクトも現在進行中だ。


 さてこの度、そんなふたりの対談が実現。対談場所は、もちろん両者にとって縁の深い東京「神保町 試聴室」。柴田聡子にとっては弾き語りライヴ「柴田聡子の神保町ひとりぼっち」をコンスタントに開催するなどホームグラウンドと言ってもよい場所だ。10年前に黄金町時代の「試聴室その2」でたわいない雑談をしていた、あのゆるい日常の空気がそのまま甦ってきたような音楽談義をどうぞ。


取材・文 | 小暮秀夫 | 2022年7月
取材協力 | 試聴室 神保町

撮影 | 久保田千史

――三沢君は柴田さんの新作聴きましたか?
M 「聴いたよ。俺、柴田さんの作品ずっと聴き続けてる。めっちゃいいよね、どれも。ずっと良くないすか?」

――感想を伝えたりするんですか?
M 「メールとかはしないけど、でも(自分がどう感じたかは)届いてる気はする」
S 「三沢さんにそう言ってもらえるのは、めっちゃ嬉しいです。一番最初から聴いてくれているから」

――三沢君は柴田さんが歌い始めた頃から見ているわけですもんね。
M 「でもその頃から柴田さんには先住民がたくさんいたから。僕が最初からとか言うと、そういう人たちに怒られる(笑)」

――黄金町 試聴室その2に柴田さんが出入りし始めた頃から、柴田さんには熱心なファンの人たちがいたと。
M 「そう。だから最初っていうわけじゃない(笑)」

――柴田さんはどういうきっかけで試聴室を知ったのですか?
S 「試聴室を手伝っている後藤さん(後藤久美子 | あのゴクミとは同名異人)というかたがいるんですけど、バイト仲間で」
M 「後藤さんが“バイト先におもしろい子がいて石川町に住んでるから、今度連れていくね”って。それでやってきたのが最初。後藤さんが連れてきた」
S 「ぷりぷりさん(現・ぷり a.k.a. 星 葡萄)が最初でもないんだ。後藤さんとぷりぷりさんはどこかで会ったりしていたはずなんで」
M 「浅草橋天才算数塾(ぷり a.k.a. 星葡 萄が主催するフリー・スペース)が開店して、“なんだろう?”って、根津さん(根津 悟 | 神保町 試聴室)と後藤さんと僕で遊びに行ったんですよね。ぷりぷりはその頃からおもしろそうなライヴ・イベントをいろいろやっていて、注目度がすごかった気がする」
S 「ぷりぷりさんは私と(大学の)同級生で。イベントやったりしていて有名な人っていう感じでしたね。それで、私が歌っているって聞いてイベントに呼んでくれたりして」

※ 柴田さんと試聴室との接続経緯について後藤さんに追加取材してみたところ、大まかな経緯は以下の通りであることが判明した。まず後藤さんがバイト先の社長から「今日から芸大生の子が来るから一緒にお願いね」と柴田さんを紹介される。時を同じくして後藤さんはぷりぷりからも「芸大生で紹介したい子がいる」と言われており、ぷりぷりに名前を聞いてみたところ、柴田さんであることが判明してビックリ。後日、バイト先でそのことを伝えた後藤さんに柴田さんがデモを渡す。デモを聴いて一聴惚れした後藤さんが試聴室ボスの根津さんと三沢君に紹介。かくして柴田さんと試聴室の運命の歯車は大きく回り始めたのであった。これぞ「必然性のある偶然」の連鎖なり。

柴田聡子 | Photo ©久保田千史

――1stアルバム『しばたさとこ島』のプロデュースを三沢君に頼んだのはどういう経緯で?
M 「柴田さんが頼んだわけじゃないよ。(プロデュースを頼んできたのは)ぷりぷり」
S 「アルバムを作るとか、私はすべてのことがあまりよくわかっていなかったので、ぷりぷりさんが全部先導してくれて。“プロデューサーは三沢さんに頼みます”って言うから、“じゃあ、お願いします”って。それでミーティングして」
M 「どの曲を入れるかとか、僕は(選曲に関するミーティングには)立ち会わなかった気がする」
S 「三沢さんは“三つ子”っていう曲を入れないことを主張してました」
M 「本当?じゃあ(選曲のミーティングにも)参加したんだね。でもそれ、もしかしたらメールとかかもしれない。店(黄金町 試聴室その2)もあったし。ちょっともう、そのへん記憶があやふやになっていて。あのときのアルバムとか、聴く?自分で」
S 「このあいだ……」
M 「あ、(日ノ出町 試聴室その3の)お客さんから聞いた!アンコールで『しばたさとこ島』の全曲やったんでしょ?」
S 「そうなんです、そうなんです。10年前(2012年)の6月5日に出たんですけど、今年(2022年)のその日に今回のツアー(「柴田聡子 Tour 2022 "ぼちぼち銀河"」)の初日が決まっていたので、アンコールでやったんです。最初はバンドでやろうかな?と思っていて、譜面に起こすために久々に聴いたんですけど」
M 「どうでした?良かった?」
S 「いいアルバムだな、って思いました。私の力はあまりないけど、すごくいいアルバムだなって。当時と変わらず」

M 「自分の過去の作品って、聴けるんだ?」
S 「でもあまり……聴けるには聴けます。そんなにじっくり聴いたりはできないけど、1stはちょっと違うっていうか。1stと3rd(『柴田聡子』2015, P-Vine)は人の手がかなり入ったので、それはわりとすんなり聴けます」
M 「2nd(『いじわる全集』2014)は聴けないの?」
S 「2ndはあまり聴けないっすね」
M 「なんで?恥ずかしいから?」
S 「自分で録音したので、なんでこれで出しちゃったんだろう?って思って」
M 「過去の作品て、聴けないんですよねえ。ラブクライとか、恐ろしくて聴けない(笑)」

――今、アナログ・レコードで絶賛復刻中なのに(笑)。
M 「復刻中だよね。恐ろしすぎるわ(笑)」

――三沢君がプロデューサー的な関わりかたをしたのって、柴田さんが最初ですか?
M 「加地(等)君のを20年くらい前にやって(『僕はフォークシンガー』2001, HOMESICK ENTERTAINMENT)、都市レコード(『シングアゲイン』2008, MY BEST! RECORD / 『road to you』2013, MY BEST! RECORD)とかもやったから、その次くらい?プロデュースって言ってもさ、小室哲哉とかそういう(レベルの)ものじゃない(笑)。整えるというか。一緒にやっている人の意見も取り入れるから、俺がひとりで作ったものではなくて。『しばたさとこ島』に関しては君島さん(君島 結 | 東京・浅草橋 ツバメスタジオ)というエンジニアの意見も強いので。柴田さんは歌ってどこかに行っちゃったから、その間に作っている感じ。けっこう大変だったんですよね、時間がかかって」
S 「私は3日間弾き語りしかしなかったから。あとは三沢さんが全部やって大変だったと思います」

柴田聡子 + 三沢洋紀 | Photo ©久保田千史

――3日間で自分の弾き語りパートを録音して、三沢君にアレンジなどの最終的仕上げをお任せした後、柴田さんはどうしていたんですか?
M 「高知に行ったんだよね?」
S 「高知に働きに行っちゃって」
M 「もう帰ってこないんだろうなあ、って思っていたら、速攻で帰ってきちゃって(笑)」
S 「半年ぐらいで帰ってきちゃって(笑)。本当みんなずっこけ」
M 「ずっこけてましたね」
S 「さよならコンサートも開いてもらったのに(笑)」
M 「あの頃と今って変わった?」
S 「内面ですか?」
M 「マインドっていうか。あの頃のまま今も来ている感じ?」
S 「いや全然、大人になった感じというか。あの頃って20代なかばなんで、めちゃくちゃだったような気がします」
M 「でも、歌っている感じとか、やっていることって、基本変わってないよね」
S 「いや、でも全然……変わったような感じがします。曲の作りかたとか」
M 「作りかた、変わったんだ?気付かなかった」
S 「根本は変わっていない気がしますけど、歌詞の内容とかは全然変わった気がする」
M 「すごく長い歌詞作れるよね」
S 「それは三沢さんが、“いきすぎた友達”っていう曲に対して、“こういうのは13番ぐらいまでないとダメだから”って言ったことがきっかけですかね」

M 「言ったっけ?そんなこと(笑)」
S 「初めて試聴室のライヴで歌ったときだったかな」
M 「さだまさしっぽかったんだよね」
S 「さだまさしっぽいから、こういうのは13番目くらいまでないと、って言われて。そうなんだ、って思って」
M 「今回のアルバムもめちゃめちゃ長い歌詞あるよね?」
S 「あまり意識していないですけど、最近は長くなる傾向にありますね」
M 「言いたいことが溢れちゃうってこと?」
S 「溢れているっていうよりは、入れちゃう感じです」
M 「こんなことやってるやつ、私の他にいないだろ?みたいな感じ(笑)?」
S 「そんなこと思ってないです(笑)」
M 「だってもう、ぶっちぎりじゃない?ちょっといないじゃん。俺、すげえなあって思う」
S 「そう言ってもらえてめちゃ嬉しいですけど、そんなこと全然ないです(笑)。普通に曲作っていて、物足りねえな、と思って書いてるだけです」
M 「そこがいいよね。さだまさしもしつこそうじゃん?やっぱり、しつこいっていいじゃないですか。植野さん(植野隆司 | テニスコーツ)とかも(書く詞が)ちょっとしつこいじゃん?ああいうのも(柴田さんに)合うかもなあ、と思った」
S 「しつこいのはいいことかもしれません。諦めが悪いというか」

柴田聡子 | Photo ©久保田千史

M 「日記は今でもつけてるんでしょ?」
S 「つけてます」
M 「日記をつけると歌詞(の文字量)って増えるのかなあ?ってたまに思うことがあるんですよ。柴田さんの曲を聴いていると。なんでこんなに言葉出てくるんだろう?あ、これやっぱり日記つけてることが強みのひとつでもあるんだろうな、って」
S 「日記つけてないんですか?」
M 「つけてない。つけないほうがいいかなあって」
S 「日記っていっても私、“晴れ”しか書いてないです。“今日、晴れ”」
M 「嘘だあ(笑)」
S 「本当本当(笑)。“晴れ”しか書いてない日も全然あります。書くことが特になくて、“今日は何もなかった。終わり”みたいな日もあります(笑)」
M 「今でも?」
S 「今でも。それが大半ですよ。ツアーとかに行っていると、今日はこうだったな、とかありますけど」
M 「朝は何時くらいに起きてるの?」
S 「それが、私は最近8:30くらいに起きてるんです」
M 「じゃあ、夜はけっこう早めに寝るの?朝まで起きてないんだ?」
S 「そうなんですよ。不定愁訴(ふていしゅうそ)がすごすぎて」
M 「フテイシュウソって何?」
S 「病院に行っても“(体に悪いところは)何もないです”って言われるのに、ずっと首や肩が痛いとか。それが治らななすぎて、泣いちゃうくらい痛かったので、これダメだなあと思って。夜は寝るようにしてます」

――三沢君も、歳を取ると夜は早くに眠くならない?
M 「今日、朝の7:00に寝たよ。さっき起きて(神保町 試聴室に)来た」

――睡眠時間が短くても大丈夫?
M 「いや、寝ないといけないからアレなんだけど、いまだに寝るのがもったいない、って思っているところがあって。やることは特にないんだけど、今Spotifyとかに入れば、聴きたかったのがいろいろ聴けるじゃないですか。それで、聴いちゃうと時間が経つよね。それ、やっぱり夜中にやるから楽しいじゃないですか。じゃあ、曲は朝作ってるの?」
S 「朝作ってます。私はもう朝しか信じられない人間になって(笑)」
M 「朝ってクリエイティヴらしいね」
S 「朝、最高なんですよ。よく自己啓発本とかにも書いてありますけど、そういう意味じゃなく、本当に」
M 「でも夜の、まだ寝たくないっていう感じもいいっすよね。物作る人としては」
S 「夜の自分は本当信じられない感じですね。全然たいしたことしてない感じがする。あと、単純に歳取ってきて、身体が持たなくて(笑)」

柴田聡子 + 三沢洋紀 | Photo ©久保田千史

――柴田さんの3枚目のアルバム『柴田聡子』と4枚目の『愛の休日』(2017, P-Vine)には山本精一さんがプロデュースで関わっていますが、これはどういう経緯で?
M 「山本さんの出会いは黄金町の飲み屋だよね。俺が山本さんと飲んでいるときに、“柴田さん呼ぼう”っていうことになって。近所に住んでいたから」
S 「三沢さんから“来る?”みたいに言われて。私が山本さん好きなこと、三沢さん知ってたから」
M 「ちょっと紹介したいな、と思ったら、プロデュースするくらい繋がっちゃうんだなあ、そういうシンプルなのがいいなあって」
S 「それはマジで奇跡ですね。高校生の頃から聴いていて、ガチで憧れていたから。あのときは山本さんが糖質抜きダイエットみたいのにハマっていらっしゃって。どれだけ糖質抜きがいいのか、っていうのをむっちゃ聞いた」
M 「だけどウインナーとかボンボン食ってたね(笑)」

――山本さんと三沢君とはプロデュースのしかたの違いみたいなものはありましたか?
S 「三沢さんも山本さんも俗に言うプロデューサーみたいな人とは全然違う、一緒に作ってくれるっていう感じだったので、いつもの感じでいってしまいましたね、意外と。三沢さんも山本さんも、レコーディング中に何度もすごいなあって思いました」
M 「レコーディングって、今は最初から自分のイメージしたものを誰かに伝えて一緒に作る感じ?曲だけあって、とりあえずメンバーとああでもないこうでもないってやって仕上げる感じなの?」
S 「ちょっと前までは、曲を持っていって、メンバーと話し合って、みたいな感じが多かったんですけど、今回のアルバムとかはイメージがちゃんとないと、メンバーの戸惑っている感じがすごくて。だから、ちゃんとイメージを持っていこうと思って」

M 「どういう風に伝えるの?イメージって」
S 「デモを打ち込んでいくとか。私、DTMができるようになったんですよ、最近。それを駆使して。“どこに向かえばいいんだろう?”みたいな感じになるのが心苦しかったので」
M 「どこに向かって進んでいるか知らせないほうが良くない?」
S 「最近思ったことですけど、後々(メンバーから)“不安だった”とか“結果こうなっちゃったことに戸惑った”とかいうことがあったとき、私はどう対応したらいいのかわからなくなっちゃって」
M 「そっか。性格だね」
S 「そうなんですよ。(メンバーには)そうなってはほしくないし、それ言われるとけっこう考え込んじゃって、何もできなくなっちゃうんで。それはできるなら避けたいっていうか、とりあえずみんなで納得して進んでいけるほうが私には合うと思っています」
M 「性格だね、完全に。結果的に自分のためになってはいるんだけど、もっと自分が自分のためにクソわがままに音楽をやる感じはそれはそれで聴いてみたいなと思うけど、性格がそうだもんね」
S 「でも、結果的にクソわがままにやるために、みたいな感じはあります。そこで私はこうしたいんだ、ってわがままを通すためにイメージを持っていくみたいな。今のところは囲い込みみたいな感じになっているかもしれません」
M 「少しずつ自我が出てくるの?後半に向かうにつれて」
S 「はじめからあるんだけど、そう見えるのかもしれないですね。だから嫌われるタイプかもしれない」
M 「だって(作品の名義は)“柴田聡子”で出してるんだもんね」
S 「でもそうとはいえ、この世の中の音楽はみんな、いろいろな人でできあがっていて。ひとりで作ったみたいなことは全くないから、そこで“ひとりで作りました”みたいなことを言っちゃうと、ものすごい歪みが起きる。そんなことは絶対ないようにはしています」
M 「一匹狼みたいな感じ、かっこいいんすけどね。でも実際は作業になるとね、できないんだよね」
S 「そうなんですよ。ミュージシャンとかエンジニアさんの技術に支えられているから。自分が最後に決定するみたいなときには責任持ってやるけど、それ以外はみなさんのおかげでこのようなものができました、っていうのが本音ですよ、本当に」

――柴田さんはどういうタイミングでアルバムを作ろうと思うのですか?
S 「私は曲が溜まったらすぐ、くらいの感じで。いけそうだな、と思ったらちょっと録音に入ってみる、みたいなことが多かったけど、今回のアルバムはできていない曲が多めの状態で(録音に)入っていきましたね。帳尻を合わせるように曲を作ったりしました」
M 「一番嫌いな作業って何?俺、歌入れなんすけど」
S 「ああ、たしかに緊張する」
M 「緊張じゃなくて、もう面倒臭い。嫌だなあ、また歌い直すのか……って言いながらやるのが嫌い。今回思った」
S 「それは、自分がもう“ちょっとかな?”って思うから?」
M 「いや、俺は絶望的に歌が下手なんで(笑)、やり直すとかそういうんじゃないっていうか。サクッと終わらせたい」

――三沢君が今回ソロ・アルバムを作ろうと思ったきっかけは?
M 「もう作らなくていいかな、ってずっと思っていて、競輪ばっかやってたんですよ。5年くらいかな。それがすごい癒しっていうかさ。でもある日、なんか作ろうかなって思って。それで、作るとしたら横浜の周りの人たちと作ってみたいって思って作った感じ」

――日ノ出町 試聴室その3周りの人たちと作ろうと。
M 「かつ自分で出して、(プロモーションとかも)自分で全部やろうかなって。レーベルがどうとかじゃなくて。でも、ひとりじゃプロモーションできなかったんすよね。“ソロ・アルバムが久しぶりにできました。もしよかったら聴いてください”って、昔お世話になったライターさんとかに言うのができなかったんすよ、俺。だから、まだ誰も知らないっていうのが本音で。金野さん(金野 篤 | MY BEST! RECORD, SUPER FUJI DISCS)がちょっと(関係者に)送ってくれたくらいで。それで取り上げてくれたところもあったんだけど、自分でやるっていうのはすごくハードルが高いっていうか、申し訳ない感じになっちゃって。性格だと思うんすよ、これも」
S 「わかります、それ。初めてですか?」
M 「うん。自分ひとりでやったのは初めてで」
S 「そっかー、それはたしかに、性格も相まって」
M 「たくさんの人に聴いてほしいとは思うけど、“すいません、できたんで、もしよかったら宣伝したいんですよね”なんてことは口が裂けても言えない。申し訳ない。そういうとこかなあ。お店(日ノ出町 試聴室その3)に置いてるのも悪い気がして。買わない常連のお客さんと、買った常連のお客さんって色分けするのも嫌だし(笑)」
S 「気持ちはわかります」
M 「ライヴをたくさんやって知ってもらうしかないかな、って今はなってます」

――最初カセットテープで出して、その後にアナログで出すというかたちを採った理由は?
M 「CDを作っても、誰か聴くのかな?と思って。実際。配信もやってるんですよ。テニスコーツのMinna Kikeruから。だから配信とアナログでいいかな?と思ったの。でも“CDが欲しい”っていう声を一番聞くんだよね」
S 「まだ聴かれてる」
M 「まだ聴かれてるよね。手に取りやすいんだよね。それで平澤君(平澤直孝 | なりすレコード, なりすコンパクトディスク)がCDで出したいって言ってくれているんだけど、ちょっと時期を逃しちゃって。どうしようかな?って。タイミング的に、ボーナス・トラックを入れて出したところでどうなんだろう?そんな感じ。出したほうがいいかな?」

――出したほうがいいと思います。
M 「じゃあ、出します(笑)。平澤君も元気になったことだし」

三沢洋紀 | Photo ©久保田千史

――柴田さんは三沢君と会うのは久しぶりですか?
S 「全然会ってなかったです」
M 「東京に行ったらね」
S 「(東京に引っ越してから)横浜に全然行かなくなってしまった」
M 「でも相変わらず(日ノ出町 試聴室その3で)柴田さんのライヴを観たがってる人、いるよ」
S 「(横浜で出会った人が)ここ(神保町 試聴室)にも来てくれたりします」
M 「俺、考えていたことがあるんですよね。柴田さんに久々にうちの店でやってほしいんだけど、なんかいいかたちにならないかなあ、って。それで、誰が出るとは告知せず、とにかく信用でお金を払っていただける人たちを30人くらい集めて、そういう人たちの前でっていうのを1回だけやってみたいんですよ。これ、2回も3回もすることじゃないんで」

――いわゆるシークレット・ライヴですね。
M 「とにかく何かあるから来て、っていうのを2年以内くらいにやっていいっすか?」
S 「それでいいのかよくわかりませんけど、やりましょう」
M 「柴田さんのライヴ、“METEO NIGHT 2019”以来観てないんで、観たいんですよね。店があるから、いつも行けないんで。柴田さんはライヴ行ってるの?」
S 「全然行ってない。このあいだTWICEに行きたくてがんばりましたけど、(抽選に)ハズレて行けなかった」
M 「コロナの(外出自粛期間の)ときさ、NiziUとか観ませんでした?」
S 「観た観た。私、NiziU大好きで」
M 「あれ、ハマるよね」
S 「めちゃくちゃいい」
S 「Nizi Projectのときとかすごかったじゃないですか。人間性の表れが」
M 「あれは楽しかったですよね」
S 「私は“Chopstick”とか大好きです」
M 「俺も好き」
M 「1stシングルの“Step and a step”はどうでした?」
S 「私は“Step and a step”めちゃ肯定派です」
M 「あれ、めっちゃよかったよね」
S 「“Make you happy”があれだけガーンっていっちゃったんで、なんかいろいろ言われますけど、あれはストーリー含めて涙なしには語れない1stシングルです」

――この後、三沢君はラブクライの全スタジオ・アルバムが5ヶ月に渡ってアナログ化されていきますね。
M 「ラブクライが出るのはすごく嬉しいけど、復刻するチームがいるので、お任せして。(自分は)出るのを待っている感じかな」

――この機会に何か計画していたりすることはありますか?
M 「せっかく出るから、メンバー全員で集まって新録7inch作ろうかな?って思ってるんだけど、村上ゴンゾ君だけ連絡が取れなくて。それで田口さん(田口史人 | 円盤)が実家に手紙を送ったんですよ。そしたらある日、田口さんに連絡があったから“三沢君が連絡をとりたがってるから、連絡してあげて”って伝えてくれたんだけど、いまだに連絡がない(笑)。でも生きていてよかったなあ」

柴田聡子 + 三沢洋紀 | Photo ©久保田千史

――三沢君個人として今後考えていることはありますか?
M 「月に1回か2回くらい、ライヴでものすごいお酒のすすむ、最高の音楽を奏でるバンドを作ろうと思ってる。たくさんの人たちがお酒を飲みながらその音楽を聴くみたいなイメージ。ソロ・アルバムの曲とか、新しい曲とかを、THE BANDとかBob DylanとかCRAZY HORSEとか、ああいう感じの自分ヴァージョンを深堀りできたら。それかな、今の目標は。(そのバンドで)アルバムも作りたいっすね。柴田さんは何枚アルバム作ってるの?」
S 「(『ぼちぼち銀河』で)6枚目でした」
M 「すごいね。10年で6枚か」

――柴田さんの今後の予定は?
S 「アナログが出たり、秋に弾き語りのライヴをやったりとか。それくらいですかね」
M 「そろそろ武道館とかやらないんですか?日比谷野音、渋公、武道館、その3つは押さえておきたいなあ(笑)」
S 「もっとがんばって人気を獲得して、ぜひともやりたいです。そのときは絶対、店を休んで来てください!」

三沢洋紀 Twitter | https://twitter.com/misawahiroki/
柴田聡子 Official Site | http://shibatasatoko.com/

三沢洋紀『MISAWAHIROKI2』■ 2022年4月10日(日)発売
三沢洋紀
『MISAWAHIROKI2』

Cassette Tape KIKAKU-002 税込1,500円
Vinyl LP VTN-1012 税込3,960円
https://minnakikeru.com/item/al:9WdayEVm1e

[収録曲]
01. ぼっちのポスター Poster in Solitude
02. 夜はペシャンコ Night Got Squashed
03. 街の灯パート 3 City Lights part 3
04. ろうそく Candle
05. 阿賀野川 Agano River
06. 淡い光 淡い音 Pale Light, a Touch of Sound
07. ボーダーライン Borderline
08. 朝風呂ピータン P-tang in Morning Bath
09. こんな夜が The Night Like This

LABCRY 'A MESSAGE FROM THE FOLKRIDERS'■ 2022年8月上旬発売
LABCRY
『A MESSAGE FROM THE FOLKRIDERS』

Vinyl LP 12EB-122 3,800円 + 税
https://enban.cart.fc2.com/ca29/4654/p-r29-s/

[Side A]
01. MY SPIDERS MAMBO
02. 彼女
03. JOY RIDE AGAIN
04. 午後はちみつ沸点
05. WAHOO!
06. 欲望

[Side B]
01. GIMMIE SOMETHING
02. BIG OFF?
03. A MESSAGE FROM THE FOLKRIDERS
04. 夏のパズル
05. 夜の命

柴田聡子 'ぼちぼち銀河'■ 2022年5月25日(水)発売
柴田聡子
『ぼちぼち銀河』

CD DDCB-12118 3,300円 + 税
https://ssm.lnk.to/BochiBochiGalaxy

[収録曲]
01. ようこそ It’s Not So Bad
02. 雑感 Understood
03. MSG
04. 旅行
I’m a terrible driver
05. サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト Silent Holy Madness Allnight
06. 南国調絨毯 Tropical Carpet
07. ジャケット Jacket
08. 夕日 Just Keep Quiet
09. ぼちぼち銀河 Bochi Bochi Galaxy
10. 24秒 24sec for you
11. n,d,n,n,n

柴田聡子 'ぼちぼち銀河 - Takuro Okada Remix'■ 2022年7月20日(木)発売
柴田聡子
『ぼちぼち銀河 – Takuro Okada Remix』

DDCB-12118_R1
https://ssm.lnk.to/BBGTOR

BUSHBASH 13th ANNIVERSARY
NU SPRAY

2022年8月5日(金)
東京 小岩 BUSHBASH
開場 / 開演 19:00

予約 2,000円 / 当日 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)
予約

出演
GOFISH / 三沢洋紀

柴田聡子の神保町ひとりぼっち 2022 Aug.柴田聡子の神保町ひとりぼっち 2022 Aug.

2022年8月26日(金)
東京 神保町 試聴室
開場 18:30 / 開演 19:00

予約 3,500円(税込 / 1ドリンク + スナック込 / 自由席)
※ 限定30席 | 抽選販売

申込

出演
柴田聡子