良い意味で意識するようになった“らしさ”
それぞれ「SWITCHBLADE」「INSANE」とタイトルが付けられた新曲2曲は、どこからどう聴いてもサイガンなのに、常にアップデートされているところがよりサイガンらしい。新しく加わった要素も変態的で、一種のアヴァンギャルドすら感じるときがある。それはやはり長きに亘る活動からしか得られないものだと思うので、若い人にこそこのバンドの奥深さを知ってほしい。
SAIGAN TERRORの今を知るべく、フル・アルバム『Anatomy of Saigan』 (2019)のリリース元「BOWLHEAD Inc.」のオーナー・TOME氏(aka YoYo-T)を交えたメンバー全員に、高円寺にてアルバム発売以降の話を中心にインタビューを行った。とにかくいい意味で全てが狂っている。本当にその一言に尽きる。
取材・文 | Dagdrøm(以下 D)
取材協力 | BAR DEVELOPMENT BASE
――サイガンのインタビューはけっこう久々かと思うのですが、『Anatomy of Saigan』が出て以降の話をいろいろ聴けたらと思うので、よろしくお願いします。アルバムが出る前と出た後でバンドを取り巻く環境など変わったことはありますか?
一同 「……」
TOME(以下 T) 「全員黙っちゃう(笑)」
MR. SAKi(以下 M) 「変わったか変わってないかで言ったら、だいぶ変わった」
H8MONGER(以下 H) 「かなり違う。変わらなかったら出す意味ないと思うし(笑)」
M 「何が変わったんだろう?」
T 「確実にライヴの量は増えてるでしょう?」
H 「ライヴの量とか、やっている箱の規模は変わってないっしょ。だけど、今まで以上にいろんな界隈から呼ばれるかな。たまにフェスとかも」
M 「誘われる量は増えたかも。出られる数は限られてるけど」
――演奏自体もけっこう変わったという印象がありますね。バンドそのもののノリが、どこかで明確に変わった瞬間があるというか。
H 「あ~、そう?」
AYUMI(以下 A) 「アルバムを作るにあたって、みんなですごい集中して練習したりとかで、今まで以上に演奏の結束力が強くなったのはあるかもですね。あと、アルバムが出るとみんなが曲を知ってるから、“ここで歌いたい”とか“ここで暴れてやろう”とか、お客さんからの期待を感じることがありましたね」
M 「シンガロングとかではないけど」
A 「このメンバーでアルバムが出せて本当に良かったです」
一同 「(爆笑)」
T 「やばい。それやばいすね(笑)」
SHIZURU SAIGAN(以下 S) 「Tシャツのサイズが変わったね~。前はLだったんだけど、今は完全にXLだね~(笑)」
T 「出る前と出た後で(笑)」
M 「俺もLだったからね(笑)」
T 「しづるさんだけが、1stと2ndに唯一参加してるメンバーじゃないですか。比べてみてどうですか?」
S 「1stと2ndの間が長かったよね~(笑)。もう全く別物だよね。今のSAIGAN TERRORは“これが、SAIGAN TERROR”って感じ!」
T 「これが今の思うしづるさんの完成形というか?」
S 「そう!前はね、ほんとにあまり意識してなかったかもしんない。でも、今は良い意味で意識するようになったね」
H 「ほぉ~。“SAIGAN TERRORらしさ”みたいなものを?」
S 「うん。なんか“SAIGAN TERRORらしさ”みたいなものが自分の中に自然にできてたんだよね」
一同 「へぇ~~~」
S 「このメンバーでうまいことクロスオーヴァーしてる気がする」
T 「20年前と今では遊びに来るお客さんもぜんぜん違うじゃないすか?」
S 「そうね~。たまに昔からの人とか来ることがあるんだけど、やっぱりみんな老けてるよね(笑)」
M 「俺が入ってから、ヘイターだらけからのスタートだったからね。“こんなのはSAIGAN TERRORじゃねぇ”って言われたりとか。わざわざ“サイガン・テラー・ファン”っていうアカウントが作られて、文句言ってたり」
S 「へぇ~、本当?そんなのあったんだ?でも、もともと俺はサキちゃんとバンドやってたからね」
M 「まあね」
――えっ!そうなんですか?
M 「そうそう。それのリベンジでもある(笑)」
S 「だから、普通の感じなんだよね」
M 「前に一緒にやっていて、それがSAIGAN TERRORとGARPIKEに別れた感じ」
――それは全く知りませんでした。
S 「前のSAIGAN TERRORも大好きなんだけど、前のSAIGAN TERRORは“サイガンテラー!!”って感じで、今のSAIGAN TERRORは“サイガンテラー!!!!!”って感じ(笑)」
一同 「(爆笑)」
――アルバムのレコ発ツアーで印象に残っている思い出はありますか?
H 「どこへ行っても“昔しづるさんにお世話になりまして……”っていう人がいるんすよね。さすがす(笑)」
S 「いろんなところに行って、いきなり声掛けられてそんな話になるときがあるんだけど、だいたい記憶がないんだよね。それで、覚えてないけど覚えてるフリして“おぉ~!”とか言って(笑)」
――そのくだりは何回か見たことがあります(笑)。
H 「モロ喰らってたじゃん(笑)」
――僕もそうっすね、初期は(笑)。
M 「“今日はよろしくね~”みたいな(笑)」
――(ライヴハウスの)スタッフじゃないっす(笑)。
S 「やばいよね~。わざとじゃないんだけど(笑)」
A 「立ち話で10分くらい話して“また後でね~!”とか言ってたのに、“あの人誰ですか?”って聞いたら、“ぶっちゃけわかんねぇ(笑)”っていうのは何回かありましたね(笑)」
H 「それを日本全国、北は北海道から、南は沖縄まで……」
T 「それ、言わないほうがいいんじゃないすか?(笑)」
一同 「(爆笑)」
M 「ぜんぜんどこに行ったか覚えてないな(笑)。最初のアンチ(2019年3月8日 @東京・新宿 ANTIKNOCK “Anatomy of Saigan Release Showcase”)しか覚えてない。SUPER STRUCTUREとFIGHT IT OUTと?」
T 「3マンですね」
M 「あれ?ZENOCIDEは出てなかったっけ?」
T 「いや、3バンドだけですね」
M 「(Dに)あれ?出なかったっけ?」
――その前のやつ(2018年3月8日 @ANTIKNOCK “SAIGAN TERROR presents 緊急召集令状”)はUNCIVILIZED GIRLS MEMORYで出ましたね。
M 「結局スタートすら覚えてない(笑)」
一同 「(笑)」
T 「俺が一番サイガンのライヴで印象的だったのは、演奏中にしづるさんが“やべ~!小便して~!”って言ってて、そのときにしづるさんの後輩が“これにしちゃいましょう!”って紙コップをしづるさんに差し出して、そこに小便して。その後、なぜかその後輩の人が小便飲んじゃって“ウゲェ~ッ!”ってなって(笑)、こぼしちゃった小便が周りの誰かにかかってめっちゃ怒られてて」
一同 「(爆笑)」
T 「もうEARTHDOMの最前列がカオスすぎて(笑)」
S 「おしっこかけた後輩が怒られて、おしっこした俺があまり怒られてない」
一同 「(爆笑)」
T 「あれを見たとき、“やっぱこの先輩達すげえ~”ってなったっすね(笑)」
――その後、2020年の1月にボストンのTriple-B Recordsから『Anatomy of Saigan』のヴァイナルをリリースされていますが、これはどういった流れでしょう?
M 「あれは、アルバムを出した年にBEAMS原宿で“SAIGAN TERROR展”をやって。
T 「ちょうどそのときにTriple-BのオーナーSam(Yarmuth | ANTAGONIZE, CLEAR, GLORY, WARFARE)が日本に来ていて、近くでTriple-Bのポップアップみたいなのをやってたんすよ」
――それは偶然なんですか?
T 「偶然で。それで俺はもともと知り合いだったんで、ポップアップを見に行ったんすよ。そのときにSamがSAIGAN TERROR観たいって言うから一緒に行って、それで完全に喰らっちゃったみたいで。でも、もしかしたらその前に見てる可能性があるんすよね」
M 「そうなんだ?」
T 「たぶんINTEGRITY来日時のEARTHDOM。そのときも観てたけど、“SAIGAN TERROR展”のときの衝撃がすごかったみたいで、“BEAMSでやるんだ!?”みたいになってて」
M 「意味が全くわかんない(笑)」
T 「“DJヒカルだ~!?”みたいな(笑)。そのときはMQも来てて。終盤には当時小学生だったぶんちゃん(BS TERROR)も出てきて」
M 「子供も出てきて(笑)」
T 「しづるさんが昔Pusheadとやり取りしていたファックスとかも飾ってあって。しつこく“出そうよ”って言ったら、Samが一言“I’m Down”って言って(笑)。それで、その場で目の前にあったCDを“これマスターね!”って言って渡したんだよね」
一同 「(爆笑)」
T 「“プリオーダー用のTシャツ作るから”ってSamに言われて、“わかった~!”なんて言ってたら、まさかのアー写のやつで(笑)」
一同 「(笑)」
S 「あれ欲しいんだよね~」
M 「自分でも持ってない」
H 「一応、記念にTriple-Bの通販でサポしたすね。自分じゃ着られないけど(笑)」
M 「俺が見たときはもう売り切れてた(笑)」
T 「だからほんとにもういい感じですよ」
――タイミングと、あの頃のムードというか。
T 「そうそう!雰囲気がね」
M 「全ての流れが」
T 「ガチっとタイミングでハマったっすね。リリースから1年経ってるのに“ぜんぜんやりたい”って言ってくれて」
H 「早かったよね。11月に“SAIGAN TERROR展”をやって、翌年の1月にはLPが出てたから」
T 「俺のつたない英語で全部やりとりして(笑)。でも、ほんとに良かったっす。Triple-Bから出たことによって、またさらに日本のサイガンを知らない若い子が新たにチェックするようになって」
H 「逆輸入すね」
M 「それを一番感じたのが大阪に行ったときで、もうブラストでモッシュっていう(笑)」
T 「それもこれも今っぽいっていうか」
M 「そうだね」
H 「CDの帯タタキの“OGにして最新”っていうのがTriple-Bから出したことで完全に証明されたという」
T 「ほんとそうだと思うっすね!」
M 「もうジジイから若者までいて、一番年齢層広いんじゃないかっていう」
H 「10代から50代まで」
T 「あとCD、LP、カセットっていう全フォーマット出せたっていうのがアガるっすね」
H 「俺はメールじゃなくて、実際にライヴを観てくれてリリースが決まったのが良かったっす」
T 「Triple-Bって今アメリカで一番すごいハードコア・レーベルなんすよ。だから、やっぱりそんな簡単に出せないんすよ。誰がバズってて、どういうバンドだったら出すみたいな話を常にしてるらしくて」
M 「意味わかんない、一番遠いんじゃねぇか?っていう(笑)。本来だったら日本で他に出ても良さそうなバンドもいると思うけど」
T 「その流れでPOWER TRIPのRiley(Gale)とかも“サイガンやべえ!”って言ってて」
M 「“Triple-Bに決まったんだよ!”って言ったら、“やべえ!レーベルメイトじゃん!”って言ってたね」
H 「FORESEENともその話したっすね」
T 「Rileyは“サイガンはリフがやばい”ってツイートしてましたしね。あと、友達でSTRAY RATSっていうブランドをやっているJulian(Consuegra)もサイガン好きですし。Drakeのマーチデザインとかやってるやつで」
――すごいところまで行ってますね(笑)
T 「ほんとに。LPが送られてきてアガったすね」
――あのサイズで見るアートワークもやばいですよね。
M 「デカけりゃデカいほど良い(笑)。今井さん(Kazuhiro Imai)の」
――今井さんってところがまた。
T 「俺はほんとメイクできて良かったっすね」
H 「この流れは全てが奇跡っすよね。それまでのいろんな積み重ねが見事にハマって」
T 「ほんとそうっすね」
――コロナ禍の2020年6月に開催予定だった「Antatomy Of Saigan Tour Final」が延期になったままです。また開催される予定はありますか?
H 「あれは延期でなく中止?」
M 「中止だね。あれはあのときに、のやつだからやることはないかな(笑)」
H 「そのうちいつか同じメンツでやれたらいいな~」
M 「違うかたちで」
T 「覚えてないけど、中止になったんだ」
――コロナが一番沸いてるときでしたもんね。
M 「やる前からたぶん中止になるんじゃないか?とも思っていて。Tシャツを作ってANTIKNOCKに寄贈して」
T 「そうか!そうっすね!」
H 「あの年は半年間で16本くらいライヴが飛んでるんすよね」
A 「2020年はわりと記憶から抜け落ちてます(笑)」
――その流れで、コロナ禍においてもライヴ・カセットテープ『Live Under The State of Emergency』(2021, IMPERIUM RECORDINGS)をリリースしたり、試行錯誤しながら活動されていましたが、この2年間を振り返ってみて、バンド活動を続けるにあたって皆さん思うところをお聞かせ下さい。
H 「あれは、緊急事態宣言中でもやれるライヴはひたすらやってたし、スタジオ練習も毎週入ってたし、何か作品を残しておこうと思って」
M 「サイガンとKRUELTYだけはやってるみたいな(笑)」
一同 「(笑)」
H 「あと、当時はライヴビデオの撮影がNGな風潮だったので」
――ありましたね。動画はアウトでしたね。
M 「カセットになったライヴは、ドラムの後ろから撮っていたやつで、客も映っていて」
H 「もう動画がダメなら、逆に音だけでライヴ盤を出そうということになって。昔よくあった、ブートレグの誰かがライヴを録ってきたやつをダビングしただけのカセットテープみたいな。あのときはいつまたライヴができなくなるかわからない状況だったし、またそうなったらコレ聴いてくれつって」
T 「あのカセットすげー良かったですね」
M 「IMPERIUMから出せたし」
――そうっすよね。
T 「それもけっこう熱いっすよね!」
H 「俺がIMPERIUMもやってるし、だったらそのレーベル名義で出したら?ってみんなに言ってもらえたんで。切り貼りでジャケ作って、コピーして、ヘッダー付きのパケに入れて、ナンバリングも入れてっていう、パッケージングは完全DIYで作った。カセットテープ自体はプロコピーなんだけど」
――何本作ったんでしたっけ?
H 「100本だね。ジャケは4色ある」
T 「ウチ(BOWLHEAD Inc.)から出して、Triple-Bも出して、IMPERIUMからも出して、めちゃ精力的ですね」
H 「あと、その間にオムニバス・アルバムにも何枚か参加してますね」。
M 「そうだね」
H 「EARTHDOMのベネフィットのコンピレーション(『2020, the Battle Continues』)と、『Save The Voice』(2021, MCR COMPANY)。だからコロナ禍といっても実際はやることはいっぱいありましたね」
M 「やることはずっとあったね。大人の夏休みで初めてツイートも1ヶ月もしないっていう(笑)」
――新しいレコードがRockin’Jelly Bean氏のレーベルのEROSTIKAから出るという衝撃のニュースですが、まったく予想だにしない出来事で、一体これはどういった経緯で実現したのでしょうか?
S 「なんでだっけ?」
H 「最初はけっこう前にJelly Bean氏からオファーがあったんですよね?」
M 「そうそう。ベロベロでJelly Beanが“俺はPusheadよりかっこいいの絶対描けるんだよね~”って言ってて(笑)」
S 「髑髏は自信あるって言ってたよね」
T 「熱いすね(笑)」
M 「まあもともとしづるが友達で。いつかやってよ~っていう話から、長年経過してからの打診があって。いつも架空の映画のポスターを作っていて、それのサントラ」
S 「“サイガン今度サントラやんない?”って言われたんで、“やるやる!”って」
M 「“ゾンビ映画のポスターだからサイガンだと思う”って言われて」
S 「Jelly Beanはやっぱ大阪ノリだよね~(笑)。俺、なんか合うんだよね~!俺九州だからさ、南米寄りな感じなんだよね」
A 「大阪って中米っていう感じですよね?」
S 「そうかな~?」
M 「サイガンって西にしか受け入れられないんだよね(笑)」
一同 「(爆笑)」
H 「北海道でもウケてませんでしたっけ(笑?)」
M 「でもやっぱ圧倒的に呼ばれるのは西が多いね」
S 「呼ばれりゃどこでも行きたいんだけど、飛行機がね……」
H 「もう克服したんじゃないんすか?」
――沖縄にも行ってませんでしたっけ(笑)?
S 「誰かが手を繋いでくれないと。前にサキちゃんと2人で乗ったときがあって、サキちゃん手繋いでくれないんだよ(笑)」
――そらそうでしょ(笑)
S 「沖縄に行ったときはあゆみに手繋いでくれって言って。あゆみと俺のTシャツがSUPER STRUCTUREでカブってて(笑)。それで手繋いでお揃いのTシャツ着て、どう考えてもおかしいでしょ(笑)」
M 「ハネムーン」
A 「着陸したら泣いてましたもんね(笑)」
S 「泣いたわ~(笑)。CAさんに“ありがとうございます”とか言って大変だったよ、ほんとに」
M 「俺と2人のときは席が並びだったけど、前の席が空いてたから“ここ空いてますよね?”とか言って席を変えてもらって(笑)」
H 「俺は便も変えますね」
S 「冷たいんだよね、みんなほんとに」
T 「にしてもJelly Beanさんが出すってほんとすごいっすよね~」
S 「今までガレージっぽいのでやってたのに、ハードコアっぽいのやるのは今回初めてなのかな」
M 「Jelly BeanもSUICIDAL TENDENCIESとか好きで、“スーサイダルっぽいやつ!”みたいなリクエストがあって。でも、スーサイダルの“ここじゃないでしょ!”っていうとこを抽出して(笑)」
H 「(爆笑)」
M 「欲しいのそこじゃないっていう(笑)」
――発売はいつ頃になりそうですか?
H 「レコードは10月8日(土)の東京・新宿 ANTIKNOCKの“召集令状 2022”で発売なんで、まずそのレコ発ライヴに来てもらえれば」。
――今回、A面にミッドテンポ主体の新規軸の「SWITCHBLADE」と、B面にとてもサイガンらしい「INSANE」の新曲2曲入りですが、曲作りに方向性とかテーマみたいなものはありましたか?
H 「まず映画のストーリーに合うような感じで、というリクエストがあって。それを自分らで妄想を膨らませて作っていった感じ」
M 「アルバムとは違ってもいいのかな、っていう」
S 「SAIGAN TERRORらしさっていうかね」
H 「もちろんそれありきで、ってのは言ってましたね」
M 「サントラっぽいというか、よりキャッチーな感じで」
S 「一応なんかイメージとかあって。Jelly Beanからしつこいくらいなんかいろいろ来ていて」
M 「リファレンスが。『バタリアン』(1985, ダン・オバノン監督)とか(笑)」
S 「それで俺がリフ作ってみんなに意見を聞きながら」
H 「“Switcblade”は初めてSEも入れたりして。あの曲の前半のリフは最初、サイガンにしてはちょっと明るすぎない?っていう話になっていて」
M 「前半だけだったら、俺はやりたくなかった(笑)」
H 「後半があるから逆に引き立つというか」
M 「後半いきなり南米に飛ぶ(笑)」
一同 「(爆笑)」
H 「前のアルバムのときと違うヴォーカルのスタイルがすごくいいな、と思っていて、俺は」
――そうですね。毎回違うスタイルで。
H 「あとは、ギャングコーラスを入れてくれっていうのは大前提にありましたかね」
M 「スーサイダルっぽい」
――それであのアーミー感のある感じの(笑)。
M 「B面(“INSANE”)はもう“Slaytanic Hardcore”」
H 「そうすね。“Slaytanic Hardcore”っていうのは言いたい」
――一番ええやつですね。
H 「歌詞も今の世の中に合ってる感じありますね。コロナ禍じゃなかったらこの曲は生まれなかったというか」
――アポカリプティックな感じですね。
M 「(世の中が)子供の頃に予想してた感じになってる」
――冒頭のギター・ソロがすごいと思って(笑)。
H 「あれは俺がしづるさんに“ここにソロ入れて下さい!”ってお願いして」
S 「レコーディング当日に考えて」
――まじすか(笑)。
H 「あれ完全アドリブとか神でしょ(笑)!?」
――リフはどう聴いても、いつもしづるさん節ですよね。曲作るときは家でですか?
S 「家で主にリフ作って、みんなに聴いてもらって感じなんだけど、けっこうリフのストックいっぱいあるんだよね」
M 「ストックは100くらいあるみたい」
H 「でも、その引き出しがなかなか開かないんだよ」
M 「売ったほうがいいんじゃない?“しづるType Beat”(笑)」
S 「いろんな音楽を聴いてインスピレーションを受けたいんだけど、家でほんとに音楽聴かないんだよね。クラシックしか聴かない(笑)。いろんなハードコアとかも聴きたいし、みんなどんなの聴いてるんだろう?と思って聞いても、誰も教えてくれないんだよ(笑)」
H 「そういう雑念は入れないように」
M 「アップデートしないように」
S 「頑なに教えてくれないからね。でも友達に貰ったCDとかは聴くんだよね」
――そういうのから影響受けたりします?
S 「寝たら忘れちゃうんだよね(笑)影響受けちゃってモロのパクっちゃったら悪いじゃない(笑)?」
H 「前に新曲を聴かせてもらったら、若干SLAYERぽいリフがあって。でも、しづるさんがSLAYER好きって話なんか一度も聞いたこともないし(笑)。謎すぎて」
M 「SLAYER嫌いっていう人が(笑)」
H 「“SLAYERの曲に似てますよ”って指摘したら“SLAYERはアレだな、俺がボツにするようなリフばっかだな!”とか言ってて(笑)」
一同 「(爆笑)」
S 「そんな酷いこと言うんだ、俺(笑)」
H 「いやたぶん、Jeff Hannemanと聴いてるもんが一緒なんすよ。メタルとパンクの両方を聴いてやってるっていう。だから影響とかじゃなくて、しづるさんもそれが血肉になってるっていうことですね」
――世代もそんな変わらないですもんね(笑)。
T 「SAIGAN TERRORなんかズルいっすね(笑)。かっこいいな~」
H 「しづるさんは車の中でも常に古い音楽を聴いてますよね。それなのに突然RAZORが流れたりする(笑)」
――たしかにリフにぽさがあるかもですね。
H 「いや、しづるさんはそれがRAZORだって知らないで聴いてるんすよ(笑)誰かにもらった“名称未設定.mp3”を聴いてるだけなんで(笑)」
一同 「(爆笑)」
S 「最近ウクライナ人の友達から教えてもらってて、それがRAZORだったんだよね(笑)」
――クロスオーヴァーについての話は過去のインタビューでも語られているので今回は割愛しますが、数年前にサキさんがライヴでブラストビートの前に「ブラストでモッシュしろ!」って言っていたのが印象的でした。TERRORIZERやNAPALM DEATHの影響も色濃く感じるのですが、独自に昇華されていますよね。
H 「そもそもメンバー内でそこら辺の話したことないかも」
M 「でも、俺が入るときに(Sに)“SAIGAN TERRORって一番はなんなの?”って聞いたら“TERRORIZER”って」
H 「たしかにしづるさんは昔よくTERRORIZERのTシャツ着てた」
A 「あれ最近着てないすね」
S 「サイズ感が(笑)」
H 「赤いやつね」
S 「ロンTのね」
M 「ピンタド感(笑)」
――ピンタド感!髪の毛の感じとかも。ピンタド感めっちゃ感じてました(笑)。
S 「な、なになになに、それ?」
A 「Jesse Pintadoです(笑)」
M 「知らない知らない(笑)」
――TERRORIZERのギタリストです(笑)。
S 「あ、人の名前(笑)?」
A 「死んじゃったんすけどね。」
S 「えっ……。だっ、誰??」
一同 「Jesse Pintadoです(笑)」
H 「TERRORIZERからのNAPALM DEATHに入ったギタリストです」
S 「えっ?NAPALM DEATHにもいたんだ?」
H 「てか、しづるさんてNAPALM DEATHは好きなんすか?」
S 「何曲かしか知らないんだよね。なんかBGMというか、カフェで聴いてるというか、右から左なんだよね(笑)」
――聴いていないということですね(笑)。
H 「またもや全く影響は受けてない(笑)」
S 「クラシックはもっとグッと聴いちゃうんだけどね」
H 「でも、なんか巷で“サイガンは会いにいけるNAPALM DEATH 3rdの進化系”っていう風にTwitterに書いてあって(笑)オタクって本当におもしろいこと言うな~って思って(笑)」
M 「“会いに行けるNAPALM DEATH”(笑)」
一同 「(爆笑)」
S 「(完全にツボに入りながら)“会いに行けるNAPALM DEATH”(笑)。申し訳ないなぁ、NAPALM DEATHに(笑)」
H 「会いに行けるピンタド(笑)」
――ピンタドはまだ生きていた(笑)。
M 「極東の地で(笑)」
一同 「(笑)」
H 「俺はブラストでフルモッシュみんなもっとガンガンいってほしいすね」
――NBVのEL PUENTE(神奈川・横浜)でやっていたときのライヴ動画で、「Savage」のブラストでめっちゃモッシュしてるやつがいて。
H 「いたすね。アレはブチ上がった!」
――「これサキさんが前に言ってたやつや!」って思って。時代が追いついて来た(笑)。
M 「最初は大阪で感じたね」
H 「ブラストでウインドミルとか最高にカッコイイじゃないすか。トルネードみたいな」
――ブラストビートもダブステップみたいにハーフでリズムとってほしいんですけどね。すぐにコレ(人差し指でブラストをするポーズ)になっちゃうんで。
M 「コレは禁止で」
――コレは違法ですね、完全に。コレに関してはなくなってほしいんで大々的に言いたいですね!
S 「D君ってこういう音楽やるきっかけってなんなの?」
M 「逆にインタビュー(笑)」
――僕はSLAYERですよ(笑)。
S 「SLAYERってすごいんだねぇ~」
M 「スタートがSLAYER?俺METALLICAからなんだよね」
――音楽に速さを感じたのはSLAYERが最初でしたね。
S 「俺はGary MooreとRitchie Blackmoreだね。あとYngwie Malmsteenが出てきたときに勝手にライバルだと思って(笑)」
――そういう影響がサイガンの音に現れてるのがすごいですよね。
S 「出てないよね(笑)」
――でもソロとかやっぱり他の人とはぜんぜん違うじゃないですか(笑)。
S 「あ!でも影響受けたことある!音の作りかたとか。俺アンプ直でやるんだけど、ピッキングですごく歪ませられるんだよね」
H 「しづるさんてそれができるからほんとすごいですよね。アンプのセッティングとか毎回すげえ適当じゃないすか(笑)」
S 「アンプはセッティングは(イコライザーのツマミが)666なんだよね(笑)」
H 「かっけー!」
一同 「(笑)」
S 「あとはピックアップかな?Seymour Duncan。エフェクターはいらないね。BOSS使うとBOSSの音になるし。いろんなかたちのギターがあるけど、ギターの素の音が一番大事なんだよね。エフェクター使うとエフェクターの音になるよね。今はCharvelのJake E. Leeモデルが欲しいね(笑)」
――今回の音源も今までの音源とはまた違ったアプローチのサウンド・プロダクションですが、レコーディングについてもお聞かせください。
S 「代官山でレコーディングやったんだけど、オシャレな音作りを目指しました(笑)」
――言う前にもう笑ってもうてるじゃないですか(笑)。
M 「AKB48も録ってるとこで」
S 「(レコーディング・エンジニアの)ジュンが“これなんか綺麗すぎるな、もっとポンコツ感出しますか!”とか言ってて(笑)」
H 「福岡のSTARTERっていうハードコア・バンドのジュンっていう友達が、そのスタジオでエンジニアをやっていて、“サイガン録りたいです”って言ってくれて。実際に行ってみたらすごいハイエンドなスタジオで(笑)」
A 「アルバムは全部(楽器を)バラバラで録ったんですけど、今回はバックは一発録りですね」
S 「代官山を意識しちゃって、いつもはキャップなんだけど、シルクハットみたいなので行ったら、みんなに“どうしたんすか?寅さんみたいじゃないすか!”って言われて(笑)けっこうショックだったんだよね(笑)」
H 「それがサウンド・プロダクションに影響を与えていると(笑)?」
T 「瘋癲感出ちゃって(笑)」
――代官山を意識しすぎて葛飾に(笑)。
H 「逆にどう違うと思った?」
――FIGHT IT OUTとのスプリットEPからアルバムを経て、音質が毎回違いますよね。今回が一番聴きやすい感じになってるというか。
H 「サントラだからっていうのはあるかも」
S 「“SWITCHBLADE”に関してはリフからしてキャッチーというか、そういうのがあるかも知れない。場所に影響されるから(笑)」
――音楽には影響されないけど、場所に影響されるんですね(笑)。共演して新たに知った良いバンドはいますか?
A 「俺はINVICTUSかな、長野の」
M 「周りのバンドはみんなかっこいいし、福岡のFesterDecayとか」
H 「若いバンドだとMurakuMoとMILITARY SHADOW」
S 「えっ?共演したいバンド?」
T 「共演して良かったやつですね(笑)」
S 「全部かっこいいからね~」
M 「しづるはBAYONETSと……」
S 「BEYOND HATE!」
――Tシャツ着てましたよね?
S 「BAYONETSは雰囲気がすごく良いんだよね。パーティ・バンドなんだよね。BEYOND HATEはリフとか全部好きなんだよね。ジャンルとかはわかんないけど、なんか好きなんだよね。これヤバいな~ってなったよね」
――最近の皆さんのお気に入りの音楽を教えてください。
S 「うーん、『ONE PIECE』かな。子供が好きなんだよね。“新時代”っていうやつをずっと家で聴かされてて」
T 「Ado(笑)」
S 「ハードオフの店内音楽みたいに耳から離れないんだよね。迷惑なんだよね。すいません。カットで(笑)」
――全部カットですか(笑)
M 「今は『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を観終わってMETALLICAしか聴いてないね。あとはGULCHとFROZEN SOUL」
A 「激しい音楽をぜんぜん聴いてなくて、VULFPECKっていうミニマル・ファンクみたいなのを聴いてますね」
M 「全員バラバラだね」
S 「やっぱバッハ聴いたほうがいいね。あとSUPER STRUCTURE」
H 「俺は最近は一周回って、また頭の悪そうなビートダウンを(笑)。SIX FT DITCHとCUNTHUNT 777の人がやってるTOO GROSSっていうのがいて。あとPUNCH YOUR FACEとLAID 2 RESTの新譜が楽しみ」
――11~12月にBOWLHEAD Inc.のツアーが開催されると聞きました。参加バンドや場所など詳しく教えてください。
T 「『The California Takeover』(1996, EARTH CRISIS / SNAPCASE / STRIFE)みたいなやつがやりたかったんですよ」
――3バンドで。Victory Recordsの。
H 「それならライヴ盤録りましょうよ」
T 「それは録りたいっすね。僕のレーベルに素晴らしい3バンド(SAIGAN TERROR, FIGHT IT OUT, SUPER STRUCTURE)がいるんで、それで是非やりたいなっていう。でも、今一番ブッキングが取れない3バンドなんで大変でした(笑)」
M 「大変だったよね」
T 「この3バンドの何が良いかって、各々違う場所でライヴやってたのに、最終的に高円寺の福來門にみんな集まって打ち上げしてて(笑)」
一同 「(爆笑)」
T 「しかもそれぞれがお互いのバンドのTシャツを着てるっていう。どんだけ仲良いんだっていう(笑)」
H 「そんなことあったね~(笑)」
T 「それもあって前から構想はあったので、やりたいなってなったっすね。大阪はPALMのToshi君にお願いしてFEROCIOUS X、PALM、EX-Cで、東海は三重でFACECARZのTomoki君にお願いしてます。日本のレーベルでこういうことやっている人はあまりいないし、楽しいと思います」
――FEROCIOUS Xが出るっていうのが個人的には熱いですね。
T 「EL PUENTEで見たんだけど、かっこよくて。その後FIGHT IT OUTがBEARSでやったときにあっちゃん(FEROCIOUS Xのギター)とも仲良くなって」
M 「どんどん壁を壊していく感じがいいね」
――他に今後決まっている活動について教えてください。
H 「年内はあとライヴが月3~4本くらいあるね」
M 「毎週ライヴみたいな」
H 「来年はソノシートを出したい!それでフィジカルのリリースはフルコンプ!」
――ソノシートやばいですね!
H 「あとは某オムニバスの話も……」
――最後に、長きに渡ってバンドをやるにあたってモチベーションをキープする秘訣を教えて下さい。
M 「NUMBがずっと続けているっていうのがモチベーションのひとつというか。ずっと続けるって大事だな、ってあるとき気づいて」
H 「活動歴が長いバンドはいるけど、このくらいのペースでずっとやり続けてるバンドってそんなにいないと思うし」
S 「サボるときはサボっちゃうんだけど、俺はなんかバンドは日常生活の一環というか。難しいことを考えちゃうとアレなんだけど」
H 「真面目な話をすると近い将来、半年から1年後くらいの目標を決めることかな。ひたすらスタジオでリピート練習だけだと飽きる(笑)」
S 「でもみんなの近況報告聞きたいってのがあるじゃん」
H 「週1ではそんなに近況は変わんないっすよね(笑)?」
S 「週1くらいはみんなに会いたいじゃん!」
T 「ここに来て赤裸々になっちゃった(笑)」
M 「2日前に会ってるけどね。目標はジャンルを作りたいっていうのがある」
S 「俺は目標はないな~。ライヴとかレコーディングとか、決まっていることが目標だけど、最終的な目標はないな~」
M 「しづるはVAN HALENばりに死んでも息子が入ってみたいな(笑)」
S 「みんな死なない限り一緒だよ!」
一同 「……」
■ 2022年10月8日(土)発売
SAIGAN TERROR
『SWITCHBLADE / INSANE』
EROSTIKA RECORDS | ZOMB-666
ダブルジャケット仕様
https://erostika.net/
[Side A]
01. SWITCHBLADE
[Side B]
01. INSANE
■ SAIGAN TERROR presents
召集令状 2022
New 7″ EP release show
2022年10月8日(土)
東京 新宿 ANTIKNOCK
開場 17:00 / 開演 18:00
前売 2,500円 / 当日 3,000円(税込 / 別途ドリンク代600円)
| 予約 | saiganterror666@gmail.com
[Live]
BAYONETS / IT’S ALL GOOD / KILLOUT / SAIGAN TERROR / SUPER STRUCTURE
[DJ]
Dagdrøm (she luv it, IMMORTAL DEATH, TERMINATION) / HARMBLOT (Fairly Social Press) / SENTA (NUMB, ETERNAL B)
[Food]
RIOT CAFE
■ BOWLHEAD Inc. presents
BOWLHEADS TAKEOVER
| 2022年11月12日(土)
大阪 心斎橋 CLAPPER
出演 | EX-C / FEROCIOUS X / FIGHT IT OUT / PALM / SAIGAN TERROR / SUPER STRUCTURE
開場 16:30 / 開演 17:00
前売 2,500円 / 当日 3,200円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約 | saiganterror666@gmail.com
| 2022年12月10日(土)
三重 四日市 CLUB CHAOS
出演 | FACECARZ / FIGHT IT OUT / ISOLA / NO LIMIT / SAIGAN TERROR / SUPER STRUCTURE
開場 16:30 / 開演 17:00
前売 2,500円 / 当日 3,200円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約 | saiganterror666@gmail.com
| 2022年12月18日(日)
東京 中野 MOON STEP
出演 | FIGHT IT OUT / HORSEHEAD NEBULA / IT’S ALL GOOD / SAIGAN TERROR / SECONDARMS / SUPER STRUCTURE
開場 16:30 / 開演 17:00
前売 2,500円 / 当日 3,200円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約 | saiganterror666@gmail.com