人間交差点
鏡はヴォーカルのTeru(yep, DO NOT | 以下 T)、ギターのKohei(UMBRO, LACUNA SONORA, KR-RIFLE | 以下 K)、ベースのZie(KLONNS, XIAN, 珠鬼 TAMAKI, ゲタゲタ | 以下 Z)、ドラムのHiro(Strip Joint, SOM4LI | 以下 H)の4人編成。主に1980年代初期のDCハードコアを志向するも、バンド内で発生する「バグ」によって逸脱し、しかし一周してより80sに接近するという特異なスタイルに到達した。また、パレスチナで進行中の虐殺、アパルトヘイトなど社会的、政治的な問題を個人の生活と照らし合わせた内省的かつ怒りをはらんだ日本語詞も特筆に値する。本稿ではメンバー全員にインタヴューを実施し、鏡とはなんなのか、たっぷりと話を聞いた。
取材・文 | 須藤 輝 | 2024年10月
Main Photo ©久保田千史
――鏡のメンバーって、僕はおもしろい顔ぶれだと思ったのですが、どうやって集まったんですか?
K 「Teruと俺で“一緒にバンドやろう”って話になったんだよね。最初はZieとは別のベーシストにお試しで入ってもらったんだけど、やりたい曲の感じに微妙にズレがあってうまくいかなくて。ある日、俺がBLACK HOLEの(コサカ)タカシの家で“鏡は今、ベースがいないんだよね”って話をしたら、当時タカシの家に住んでたZieがその場で“僕、ベースやりたいです”って言ってくれた。Hiroぽんは、Teruが誘ったよね?」
T 「そう。で、さらに補足すると……」
K 「あれ?なんか違ってた?」
T 「まず、僕とKoheiが知り合ったのが2019年で。もともと僕は彼がワシントンDCでやってたRASHŌMONというバンドのファンで、MILKのマツバラくん(Bara)とかから“RASHŌMONの人、今日本にいるらしいぞ”みたいな噂を聞いてたんです。そのタイミングでEARTHDOM(東京・新大久保)にSLANTの来日公演を観に行ったらKoheiがいて、話しかけたら“とりあえず遊びましょう”と言ってくれて」
K 「次の日、茅ヶ崎で遊んだよね。夏だった」
T 「うん。SLANTのライヴが9月前半だったかな。その翌日に、当時Koheiが住んでた茅ケ崎の実家まで僕が行って、一緒に海で遊ぶっていう。それから定期的に遊ぶようになって、たぶん1、2ヶ月後に“バンドやろう”って。なんかもうブチ上がった勢いでね」
K 「そうそう。そこは端折っちゃった」
T 「Koheiと仲よくなったのと前後して、僕はStrip Jointとも仲よくなっていて。8月の終わりにEARTHDOMで、Strip Jointの7"シングル『LIKE A STORM』(2019, BLACK HOLE)のリリース・パーティがあったんですよ。そのとき、僕がastheniaのライヴ中にめちゃくちゃモッシュしてたのを見たHiroくんが、転換中に話しかけてくれたんだよね。そこで“この人と一緒にバンドやりたいな”と思うようになって、後日Koheiとバンドをやることになったから、じゃあHiroくんを誘おうと」
K 「Hiroぽんにオファーしたとき、俺もその場にいたよね?たしかどこかのライヴハウスで、Teruが“今日、ちょうどStrip Jointのドラムの人も来てるから、一緒にバンドやってくれるか聞いてみない?”って言ってた気がする」
H 「たぶん、THREE(東京・下北沢)じゃないかな。Teruくんがastheniaで暴れてたときが初対面で、2回目か3回目に会ったときに誘ってもらった記憶があるんですよね」
――何年か前に僕がHiroくんと初めてしゃべったとき「鏡に入るまでハードコアとかパンクは通ってなかった」と聞いた覚えがあって。
H 「まったく通ってなかったわけではないんですけど、Teruくんたちほど熱心には聴いてなくて。もともとポスト・ハードコアが好きで、ポストじゃないハードコアにも興味が湧いて、Wikipediaとかで調べて“DISCHARGEはこんな感じなのか”みたいな。だから一般教養レベルの浅さですね」
T 「そのハードコアとの絶妙な距離感も、僕としては魅力的だったんですよ」
K 「鏡を始めたとき、Hiroぽんは“Strip Jointが初めてドラムを叩いたバンドだ”って言ってたよね。そういうきっちりしたドラムからスタートした人が“ハードコア・パンクやろう”って誘われて、実際どうだったの?自信はあった?」
H 「いや、“速いのとかは叩けないかも”とは思ってたけど……」
K 「でも、意外とすぐしっくりきたよね。スタジオで合わせ始めてから」
H 「そうなんすかね。だとしたらよかった」
――ちなみにHiroくんは、ポスト・ハードコア以外にも好きな音楽はあったんですか?例えば家にはどんなCDやレコードがある?
H 「いや、僕はフィジカルはほとんど持ってないです」
T 「Hiroくんのターンなのに僕が出しゃばって申し訳ないんですけど、僕がHiroくんと知り合ったばかりのとき、THE VAN PELTとかSHELLACとか、そのへんのポスト・ハードコア的なバンドの話をしてたんですよ。Hiroくんは“METZが好き”とも言ってたかな。そこでなんとなく音楽の好みを察して、あとで僕の家にあったレンタル落ちのBASTROのCDをあげたんです。そしたらめちゃくちゃ喜んでくれて“僕の家には、小学生のときにお年玉で買ったYUIのCDしかなかった”って」
一同 「(笑)」
T 「だから鏡を結成した時点でHiroくんの家にあったCDは、YUIとBASTROだけ」
H 「僕は中高までは、基本的にTSUTAYAでCDを借りてきてiTunesに取り込んでいたんですよ。ちゃんと音楽を聴き始めたのは大学に入ってからなんですけど、その頃にはサブスクがあったから、もうずっとサブスクですね」
Z 「Hiroくんは、プログレ好きっすよね」
H 「好きです」
Z 「2022年の7月に鏡とKLONNSが名古屋に遠征したとき、車の後部座席にAk.Okamotoさん(KLONNS, Material Gold Park, 家主, 珠鬼 TAMAKI, Kalypsonian)とHiroくんと僕の3人で座ってて。3人ともVAN DER GRAAF GENERATORが好きだったから、ただのプログレ・サークルみたいな」
T 「ヤバすぎる(笑)」
H 「プログレって、例えば現行のプログレをいきなり聴いてもよくわからないんだけど、さかのぼって60年代から聴いていくと、そんなに変わってないじゃないですか」
Z 「変わってないっすね」
H 「そういう聴きかたをして、ようやくわかったというか。僕は大学で音楽サークルに入って、そこで初めてめちゃめちゃ音楽を聴いてる人たちに出会ったんですよ。そんな極まった人たちから“これ、いいよ”とか言われても全然よさがわからなくて。彼らの話についていくために、1回さかのぼって、なんならTHE BEATLESとかから順番に聴いていって“ああ、そういうことか”みたいな」
――Zieさんは、さっきのKoheiくんの話によると、加入に際してわりと前のめりだったんですね。意外でした。
K 「そうそう。俺もびっくりしたもん。いきなり“僕、試させてもらっていいですか?”って。もちろん自分としてはOKだけど、Teruの意見も聞かなきゃいけないから」
T 「僕のところには、Zieさんから突然DMが来たんですよ。たぶん同じタイミングでKoheiと僕の双方にアプローチしてくれたんだと思うんですけど、そのDMの文面が、まず“鏡は今、ベースがいないと聞きました”とあって。そのあと“僕は最近、RANCIDとかを聴いてて、速いバンドがやりたいと思ってたんです”みたいな。僕はZieさんのベースが大好きだから加入は大歓迎だったけど、“RANCID”と“速いバンド”ってどういうノリで言ってるのか、自分的には謎で。そのヤバさも込みでブチ上がりました」
K 「Zieはアメリカン・パンクがやりたかったんだよね。タカシの部屋でそんな話もした」
Z 「そう。当時、KLONNSがブラッケンド・ハードコアみたいなノイジーな感じで、輪郭がなくて。だから輪郭のあるバンドをやりたかったというのがひとつ。あと、僕はパンクとかハードコアはUSから入っているので、どっちかっていうとKLONNSより鏡のほうが、自分がもともと聴いてた音楽に近いんですよ」
T 「ストップ & ゴー的な、キメがある」
Z 「キメがあったり、軽かったり、そういうほうが好き。ZERO BOYSとか」
T 「それでいうと、ZieさんのMacBookの壁紙が10年以上ずっとDEEP WOUNDのアー写っていう」
――じゃあ、この4人で活動し始めたのは、2019年の終わりくらいから?
Z 「いや、僕が鏡に入ったのが、コロナ真っ盛りだった2020年の4月で。初めてのライヴが2020年の7月にBUSHBASH(東京・小岩)であったTIALAの企画ですね」
K 「だから19の夏に……“19の夏”って青春かよ(笑)。とにかく2019年の夏にTeruと急接近して、それから1年経たないくらいで初ライヴをやったのか」
――最初にTeruくんとKoheiくんのふたりで話していたときから、初期DCハードコア的なスタイルのバンドをやりたいという感じだった?
K 「俺は80sのDCハードコアとか、アメリカのミニマルな速いパンクをやるっていう認識だったけど、とにかく気が合ったんだよね、音楽的に。あと、若い人でそういうバンドをやってる人がいなかった。いや、俺らも今はもう若いとはいえないかもしれないけど、当時はふたりとも20代だったから」
T 「そうだよね。同世代のハードコア・パンク、特にパンクがいなかった」
K 「そうそうそう。だから“俺たちがやるべ”みたいな」
T 「僕はとにかく『FLEX YOUR HEAD』(1982, Dischord Records)に入ってるようなバンドがやりたかったんですよ。プラス、そういうアメリカン・ハードコアのスタイルを日本で解釈したバンド。古くはMINK OILとか、もうちょっとあとだとTOTAL FURYとかTONE DEAFとか、あと、やっぱりLIP CREAMが大好きで」
K 「でも俺からしたら、それはあくまで結成当初の話で。数年経って、ちょっと進化したよね。いや、どうなんだろ?わかんないけど」
T 「だいぶ独自解釈に深みが出てきたというか、拍車がかかってきたとは思うけど」
K 「それがおもしろいと思うんだよね。最初にカヴァーしたGOVERNMENT ISSUEの“Hey, Ronnie”なんて、『FLEX YOUR HEAD』の中でも特にプリミティヴな、DCのティーンエイジャーがやってるような曲だったじゃない。でも、みんなそれぞれ80s以外の音楽の影響も受けてるし、今まで鏡の曲はTeruと俺が作ってたけど、最近はHiroぽんも曲を書くようになって。だから時間と共にバンドの幅は広がっていった気はする」
T 「こないだ初めてHiroくんが曲を作ってきてくれて、それがめちゃくちゃかっこいいんですよ」
――2021年1月に自主リリースした1stデモテープ『DEMO』と、今回の7"EPを比べてもけっこう変化していると思います。しかも、EPを録ったのは2年前なんですよね?
Z 「そう。『DEMO』を録ったのが2020年の11月で、EPを録ったのが2022年の8月。EPは諸事情でリリースまで時間がかかっちゃった」
K 「『DEMO』はPaul Medranoっていう、俺と一緒にKR-RIFLEってシンセサイザー・ユニットをやってる友達が、4トラックのカセットMTRで録ってくれて。実は俺、『DEMO』の録音が一番好きなんだよね。曲とかじゃなくて、音の感じが。もちろんStudio REIMEI(東京・西調布)で新間雄介さん(VINC;ENT, SAGOSAID)に録ってもらったEPの音も最高なんですよ。レコードにするにあたって『DEMO』みたいな立体感のない、シャリシャリした音じゃ頼りないから、EPはEPで超成立してるんだけど」
T 「『DEMO』は作為的じゃないところでデモ感が出てたんじゃないかな。それはPaulの力だと思います」
K 「この『DEMO』をシェアしたら、自分がすごく尊敬してるノースカロライナのEric Montanezっていうギタリストがめっちゃ熱く反応してくれたんだよね。Ericは2000年代にDIRECT CONTROLっていう、当時のアメリカのシーンで自分が一番好きなバンドをやってた人で。最近だとMEAT HOUSEとか、かっこいいバンドをいくつもやってるんだけど、そんな彼が“この『DEMO』が最高なのは、GOVERNMENT ISSUEのカヴァーで原曲のドラムが間違えてるところを再現して、わざと間違えて叩いてるからだ”と言ってくれて、感動した」
Z 「これ、本当にヤバい話があって。僕がKoheiくんに“GOVERNMENT ISSUEのカヴァーで、Hiroくんは毎回同じところで間違えるよね。でも、それもHiroくんのよさだから僕は今まで何も言わなかったし、あれはあれでいいと思う”って言ったら、Koheiくんが“あれは原曲通りだよ”って」
一同 「(笑)」
H 「僕は原曲に忠実にコピーしただけなんですけどね。それが、自分の知らないところでKoheiくんの憧れの人に響いてた」
K 「普通のバンドは“Hey, Ronnie”をカヴァーするとき、ちゃんと間違いを正して演奏するからね。だからこそ、間違いまで再現してるHiroぽんのドラムが最高だっていう」
H 「だって再現するしかないじゃん(笑)」
T 「それが、さっき言ったHiroくんだからこその、ハードコアとの距離感。今回のEPで鏡のことを気にしてくれる人が増えたんですけど、“鏡”という名前を、特に海外の人に知ってもらうきっかけになったのは『DEMO』だったという実感はあります」
H 「Bandcampにも上げてたし」
K 「一応、テープのUSエディションもSociety Bleeds Recordsから出してもらったもんね」
T 「こないだ僕がLAに遊びに行ったとき、G*U*N*NとかSEUDO YOUTHとかADVOIDSとかPEOPLE’S TEMPLEをやってるTonyが、鏡の『DEMO』を聴いた当時の感想を話してくれて。彼いわく“日本で聴かれていたであろう80sのUSハードコアと、いわゆるジャパニーズ・ハードコアが絶妙にミックスされた、ありそうでない感じがすごく魅力的だった”と。それって、僕らが鏡結成当初に思い描いていたスタイルが自然とかたちになっていたってことなんじゃないかなと、初めて外から気付かされてうれしかったですね」
K 「レヴューとかコメントでも“USハードコアとジャパニーズ・ハードコアの融合”みたいなことを書いてくれる人、けっこういる。ただ、俺は“ジャパニーズ”の部分はよくわからないんだよな」
T 「日本語で歌ってるからじゃない?」
――そういえばTeruくんは、SOLVENT COBALTの大塚智史さんが「鏡はちょっとOUTO感あるよね」と言ってくれたって。
T 「それもめっちゃうれしかったですね。恐れ多いけど、自分としてはOUTOをけっこう意識してます。たぶん、僕が一番聴いてるいわゆるジャパニーズ・ハードコアはOUTOの『正直者は馬鹿を見る』(1987, Selfish Records | Low-Brow)なんですよ。あと、ちょうど鏡を始めた頃に『My Meat’s Your Poison』(1987, 加害妄想 Records)っていうジャパコアのオムニバスを聴いてて。OUTOとかLIP CREAMとか、あとCHICKEN BOWELSっていう、ゑでぃまぁこんの元山ツトムさんが昔やってたバンドとかが入ってるんですけど、そこにあった疾走感に影響を受けてるかも」
――去年の12月にPEOPLE'S TEMPLEが来日したとき、Zieさんが「PEOPLE'S TEMPLEはクラシックなUSハードコアのスタイルが完成されてる。鏡は、やろうとしてることは似てるんだけど、どこかで必ずバグが発生してる」と言っていて、めちゃくちゃ納得したんです。自分が鏡に対して感じるある種の引っかかりは「バグ」だったんだって。
T 「バグだらけのバンドですね。今言ってくれた“引っかかり”を鏡の魅力みたいなものとして捉えてもらっているのだとしたら、それは間違いなくメンバーから見たらバグでしかないし、僕自身はそういう部分をすごく愛してます」
Z 「バグっていうか、誤解みたいな。やろうと思っていたのと別の方向に行っちゃうことが、このバンドはめちゃめちゃあって。でも、僕もそういうのが好きだし、逆にうまくできてるものに全然興味がないんですよ。バグとか誤解にこそ、その人のリアリティとかオリジナリティがあると思っているから」
T 「実存主義ハードコアみたいな」
H 「僕は、バグを感じる余裕もなかったですね。でも、去年の秋あたりからハードコア・バンドの来日ラッシュがあったじゃないですか。あと、今年の3月に僕もLAに行って、PEOPLE'S TEMPLEのTonyに連れられていろんなローカルのバンドを観たんですけど、そこでようやく“鏡って、こういうことをやりたかったんだな”って」
一同 「(笑)」
T 「LAではどんなバンドを観たの?」
H 「ANIMATED VIOLENCEとか、TonyとパートナーのKiana(ADVOIDS, DIODE)がやってるSEUDO YOUTHとか。オレンジカウンティのバンドが多かったと思う」
K 「オリンピアの、サーフ・パンクみたいなやつも観てなかった?」
H 「観た。THE GOBSね」
K 「鏡と似た系統というか、俺たちがやりたいスタイルのバンドがまず日本にいないからね。でもアメリカには、こういうちょっとルーズなパンク・バンドが今でもいる」
H 「めっちゃいるし、お客さんもめっちゃいる。だから去年の秋以降、だんだんハードコア・パンクというものがわかってきて。鏡の曲がなんでこうなっているのかとか、自分のドラムは本来はこうあるべきだったとか、そういうことにも気付けるようになったんですよね。このEPの曲も、音源とライヴではドラムの叩きかたがだいぶ違います。EPを録った2年前は全然わかってなかったから」
K 「いい話だな。あと、これはバグなのかわからないけど、去年の4月にGAGがジャパン・ツアーをやったとき、ヴォーカルのAdamに鏡の、当時マスタリングしたばっかりの、これから出す予定のKLONNSとのスプリットに入れた曲を……これ言っていいよね?」
T 「いいんじゃない?匂わせ的な感じで」
K 「なんか、MINUTEMENとハードコアを混ぜたような、Hiroぽんがドラムでツクツクツクって細かく刻む曲があって。それをAdamに聴かせたら“実験的に聞こえた”って言われたの。自分が曲を作ってるときにそういうことは全然意識してなかったから、びっくりした」
T 「あの曲は、Hiroくんがハードコア以外の音楽で蓄積してきたものが出てるかもしれない。かつ、それがカマしになってないというか、あくまで癖で出てるという意味で、バグなのかも」
K 「それが一周回って、より80s初期のハードコアに近付いた気がする。今の音楽って洗練されすぎて、リフの作りかたとかも過去の例をなぞってるから、“こうすればみんなモッシュする”みたいなパターンがあるんだよね。そういうのと比べて、THE TEEN IDLESとかのDCハードコアは謎にフェイザーが入ったり、いきなりヴォーカルにレゲエみたいなディレイがかかったり、前例がないから何をやってもいい」
T 「自分が言うのはおこがましいけど、鏡ではハードコアが生まれた瞬間みたいな現象が、4人それぞれのバグによって自然に起きてるんじゃないかな」
K 「そういうレヴューを書いてくれる人もけっこういて、めっちゃうれしい。“何も知らずにガレージで演奏し始めたような、初期衝動と探求心と怒りの産物”みたいな」
T 「僕が鏡というハードコア・バンドをやりたいと思ったきっかけは、2010年代後半のHOAXとかHANK WOOD AND THE HAMMERHEADSとかSHEER MAGの来日公演なんですよ。その頃の僕は、もちろんハードコア自体は10代から聴いてたんですけど、いわゆる現行の音楽はオルタナくらいしかチェックできてなくて。そういう状態で、僕はDO NOTというバンドでHANK WOOD AND THE HAMMERHEADSとかSHEER MAGと、VORTEX(三重・四日市)とかHUCK FINN(愛知・名古屋)で対バンして、めちゃくちゃ食らったんです。で、そのとき一緒にSHEER MAGを観てたカイチくんという、今、名古屋でDead Stalloneってバンドをやってる友達が……」
――SAGOSAIDの元ドラムのかたですね。
T 「そう。そのカイチくんがSHEER MAGのギタリストに“今、君たちの周りにいるハードコア・バンドでオススメは?”と質問したら、“IMPALERSだね”という答えが返ってきて。僕はそれを盗み聞きして、何も言わずに家に帰って“IMPALERS”で検索するっていう。さらに調べていくと、ミームになったEgg PunkとChain Punkの手書きのチャートが出てきたりして」
――真ん中にHOAXとDAWN OF HUMANSがいるやつ。
T 「そうそう。SHEER MAGより前にHOAXのライヴを観てたから“あ、HOAXってそういうことだったんだ?”と当時は思ったりして。そこから2010年代のUSハードコアを掘っていく中でKoheiのRASHŌMONにも出会いつつ、GAS RAGとかBLOTTERを聴いて“自分もこういうのやりたい!日本で!”みたいな。だから最初の『DEMO』の曲は、めっちゃGAS RAGとかBLOTTERを聴きながら作ってたんですよ。それをスタジオに持っていったら、僕の中にあった2010年代USハードコアへの憧れが、4人のバグによって謎のプリミティヴさを伴って再生産されたっていう」
K 「理想とするかたちがあってもその通りには絶対になぞれない、罰ゲームみたいバンドだね」
T 「でも、結果的にそれがよかったんですよね。もしバグがなかったら、ただのワナビーになっていたかもしれない」
K 「日本とアメリカのハードコア・パンクの流行りってけっこうズレてて、Teruが言ってたGAS RAGとかBLOTTERみたいな80sハードコア的なバンドが、アメリカでは周期的に出てくるんだよね。で、今またその流れが来てる。ミルウォーキーのUnlawful Assemblyってレーベルから音源を出してるようなバンドがまさにそうなんだけど」
――MUTATED VOIDとか。
K 「そうそう」
T 「INNUENDOとか」
K 「DCのBrendan ReichhardtがやってるCICADAとか、オースティンのNOSFERATUとかね。あとオースティンだったら、Unlawful Assemblyからは出してないけどSAVE OUR CHILDRENとか」
――NOSFERATUはめちゃくちゃ観たい。
T 「来日してほしいですね」
K 「今、そういうバンドがアメリカにめっちゃいるのはうれしいけど、日本にはいないのが寂しいっす。ただ、自分の中ではぶつかり合うふたつの気持ちがあって。ハードコア・パンク原理主義じゃないけど、俺はほとんどパンクしか聴かないし、80年代からタイムトラベルしてきたようなバンドがいっぱいいたほうがおもしろいと思ってるところがあるんだよね。一方で、さっきTeruが言ってたワナビーみたいな、80sのスタイルをなぞるだけじゃつまらないから、新しいことをやらなきゃいけないよなって」
T 「鏡の新しさみたいなものは、メンバー4人の、それぞれ別の方向を向いてる個性で補えてるのかなって。最近、Tonyとか周りの人からの感想を聞かせてもらって、そこに気付けた」
K 「そうだね。自分が4人いればバンドを好きなようにできるけど、バグとかは起こらないかも」
――Koheiくんが4人いたらバンドとして成立するのかな(笑)?
T 「ドラえもんがタイムマシンで未来の自分を4人連れてきて、最後にボコボコにされる回みたいになりそう(笑)」
K 「いや、俺が思う理想のライヴって、モッシュしてる人全員が自分なの。40人の俺がモッシュしてたらさ、ヤバくない?」
T 「完全にハードコア不法集会(Hardcore Unlawful Assembly)だね」
――「鏡」というバンド名の由来は、今日持ってきたんですが、『DEMO』のカセットテープの歌詞カードに書かれていて……。
K 「あ、そうだ。Teruのステイトメントが書いてあるんだよね。俺はめっちゃ共感した」
――改めて、由来について話してもらっていいですか?
T 「ちょっと、そのステイトメント見てもいいですか?」
K 「大丈夫?黒歴史になってない?」
T 「あ……いや、なってないです。まず鏡は……」
Z 「それ、僕も見せてもらっていいですか?」
T 「反省文みたいな文体でめっちゃ書いてる」
Z 「ヤバいっすねこれ。初めて見た」
T 「ハードコア・パンクをやるんだったら、今この社会で起きてる諸問題が、いかに自分の、個人的な規模での生活と直結してるかということを踏まえたうえで、自分がムカついてることや“おかしい”と思ってることを歌詞にしたいなって。じゃあ、自分はなんでムカついたりするのかといったら、自分の中にある欠陥とか負の側面を、自分以外の誰かの中に見出して重ねてるからなんじゃないか。要は、無意識に同族嫌悪的なものが掻き立てられてムカついてしまうんだと気付いたんですよ。この気付きは僕にとって大きくて、自分が社会に対して抱く問題意識の本質は間違いなくそこにあるから、それをそのままバンド名にしました」
K 「投影って感じでしょ」
T 「そう。“他人は僕自身を映す鏡なのだ”ってこと」
K 「誰かに対してムカついたとき、実は自分もその人と同じだからムカつくんじゃないかっていうのは、俺も生きててすごい感じる」
T 「そういう内省的な思索だけで完結してると、いわゆるアクションみたいな意味で何かをなすことはできないとは思うんです。ただ、鏡のライヴを観にきてくれた人にとって、例えば“¡Viva La Palestina!”であれば、今パレスチナで起こってることについて考えてもらうきっかけにはなってほしくて。その下地を作るためには、まずは自分を省みるところから始めることが大切なんじゃないか。それがあって初めて、社会の問題と個人を照らし合わせながら、ひとりひとりが行動に移せるようになると僕は思っていますね」
K 「素晴らしい」
T 「あと、このバンド名にはすごいミラクルがあって……」
K 「DEATH SIDEの“Mirror”?」
T 「それもね、こないだ気付いたんだけど、もっといい話がある」
K 「もっといいのあんのか……」
一同 「(笑)」
T 「僕は地球上に存在するすべてのハードコア・パンクの中でBREAKfASTが一番好きなんですよ。そのBREAKfASTの1stアルバム『眩暈』(2002, Thrash On Life Records)に“鏡”って曲と、“ミルク”って曲が入ってる……っていうのを、MILKのマツバラくんが教えてくれて。まったくの偶然だったから、ふたりで“これヤバくない!?”みたいな」
――歌詞は、すべてTeruくんが書いている?
T 「はい。自分で歌うから、自分で書くって感じですね」
――どの曲の歌詞にも「気付かないフリをしていたほうが快適に暮らせるが、気付いてしまった以上、無視できない」みたいな感じがあって。
T 「あ、本当にそればっかりですね。全部それなんでネタ切れになりそうなんですけど、そういう問題は無限に生まれ続けるから」
――Teruくんが映画をめちゃくちゃ観てるのは知ってるけど、本もけっこう読んでます?
T 「本は……なんだろう?パッと思い付いたのだと、トマス・ピンチョンとか好きですね」
H 「いや、かなり読んでると思いますよ。Teruくんの家の本棚にもめっちゃ本があったし」
――僕は、文章のうまさは摂取した文章の量にある程度比例すると思っているんですが、鏡の歌詞は相当インプットしてる人のそれじゃないかって。
H 「うんうん。めっちゃわかる」
K 「俺はTeruみたいな日本語の歌詞は絶対に書けない。よくわからないボキャブラリーもけっこうあるもん(笑)」
T 「歌詞を書くにあたって何か参考にする必要があると感じたときは、大島渚の映画とかを観てるかも」
K 「あと、歌詞なのか歌いかたなのかわからないけど、Teruのヴォーカルにはすごく名古屋を感じる。歌わないでしゃべるパートとかも、なんか名古屋っぽい」
T 「それは、THE ACT WE ACTの五味秀明さん(DO NOT, SIBAFÜ)のマネをしてるだけ(笑)」
K 「でも歌詞の書きかたとかも、失礼かもしれないけどある意味でステレオタイプっていうか、俺はけっこう名古屋の伝統的なスタイルを感じるっすね」
T 「音楽活動をするうえで、僕はひたすらTHE ACT WE ACTと松井一平さん(MALIMPLIKI, SOCIO LA DIFEKTA, TEASI, わすれろ草)とテライショウタさん(GOFISH, SIBAFÜ)のマネをし続けてるから」
K 「そんなことないよ」
T 「半分は冗談だけど。歌詞に関しては中ニ病的になりすぎず、かつ反知性でもなければインテリぶってるわけでもないところを狙っているつもりで。本でいうと……あ、そうだ、重信房子だ」
K 「重信房子?『パレスチナ解放闘争史: 1916-2024』(2024, 作品社)?」
T 「それは最近出たやつですね。僕は『日本赤軍私史: パレスチナと共に』(2009, 河出書房新社)ってやつ……を、鏡を始めたタイミングで、図書館で読んだりしてました」
――僕は、EPのA面1曲目「Recession」にある「知らない奴に励まされる」という歌詞がめちゃくちゃ好きで。
T 「めっちゃうれしい。でも、それってどういう状況だと解釈しました?“知らない人なのに、励ましてくれるなんてありがたいな”みたいな?」
――いや、逆。「会ったこともないお前に、なんで励まされなきゃいけないんだよ?」っていう、めっちゃムカつく状況ですね。
T 「ならよかった。ここ7、8年くらいかな、ある種の多様性みたいな、いわゆるリベラルな価値観がある程度一般に共有された状況を経て、“ひとりひとりが最高だよ”とか“あなたはひとりじゃない”とか“私は私らしく生きているから、あなただって大丈夫”とか言われるようになったじゃないですか。そういう考えかた自体は素晴らしいし、そういうことを友達に気付かせてもらえたらこれほどうれしいことはないし、そうあってほしいと思うんですよ。でも、広告とかテレビとか街頭モニターで、なんかきらびやかな身なりの人が図々しく発する“ひとりひとりが自分らしく”みたいな言葉で励まされたくなんかないっていう」
K 「偽りの前進だよね」
T 「そうそうそう」
K 「大企業とか広告代理店が作り上げたような、極めて資本主義的な」
T 「例えば……アメリカしか引き合いに出せなくて悔しいんですけど、多民族国家であるアメリカと比べて、日本はまだリベラルな価値観を共有することに慣れてないと思うんですよね。なおかつ、そういう価値観の扱いかたすらもガラパゴス的になっているというか。扱いを間違った結果として生まれた、商品化されたリベラルみたいな」
――何をするにしても、消費に誘導されていく感じがありますよね。社会全体にそう仕向けられているというか、ひと言でいうとさもしい。
K 「そう。俺がけっこう衝撃を受けたのは、Amazonプライムの“自分らしく生きるためには、これとこれを買おう”みたいな広告で。もう、アイデンティティを形成するにはなんらかの商品を購入する以外に選択肢がないっていう」
T 「“知らない奴に励まされる”の前にある“捏造された懐かしさ”という歌詞も、“オトナ帝国(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』2001)”的な、“いや、こんな喫茶店とか絶対なかっただろ?”みたいな感じの、誇張気味なレトロ趣味のことで」
K 「ノスタルジーの商品化でしょ」
T 「渋谷とか新宿を歩いてると、そういう実体のない懐かしさとか、知らない人が無節操に垂れ流す励ましの言葉がぐちゃぐちゃになったものに、自分は包まれている気がするんですよね」
K 「“You Found Liberty”の歌詞にも通じるものがあると思う。“プラスチックに刻まれた 消費される平等の旗”って俺はすごく好きなんだけど、真っ先に浮かんだのが東京レインボープライドなんだよね。あれのスポンサーに三井住友とかさ、絶対にLGBTQ+のことなんか考えてない企業が名を連ねてて、完全に商品化されちゃってる」
T 「もちろんそういうことを問題にした歌詞なんだけど、“プラスチックに刻まれた 消費される平等の旗”というラインを思いついたきっかけは別のところにあるんですよ。僕は鏡の初ライヴの直後くらいから何年か、コロナでお金がなくなって名古屋の実家に戻っていて。そのとき本屋で働いてたんですけど、レジ横でSDGsのピンバッジを売ってたんです。ある日、客のおじさんが『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)とかと一緒に“あ、ついでにこれも”と言ってピンバッジをレジに置いたあと、“ビニール袋に入れてください”って」
一同 「(笑)」
T 「しかもそのビニール袋、有料だから。そこで僕はけっこう食らって、マジでこれは悪いバグだなと」
――紙製のストローをビニールで包装するみたいな。
T 「そうですそうです」
K 「紙ストロー自体もまったく意味なくて。海洋プラスチック・ゴミ全体に占めるプラスチック・ストローの割合って1%未満だから、企業の“環境によさそうなことやってますよ”ってアピールでしかない。しかも、それによって生じる不便さとか責任は消費者に押し付けられるみたいな」
――それを行政にスライドさせると、公共の場にゴミ箱がないとか。
T 「あ、そうなんですよ。ちょっと話が逸れるけど、僕がLAに行ったとき現地の友人たちが、たぶん気を利かせて“アメリカと日本の違いで、何が一番興味深い?”って聞いてくれて。僕は半分ギャグ、半分ガチで“アメリカは、道端にゴミ箱がめっちゃ置いてあるのが最高”と答えたんです。それを聞いてみんな爆笑するんですけど、PEOPLE'S TEMPLEのTonyは“日本にゴミ箱がないのは、麻原彰晃のせいでしょ?”って」
K 「それもテロ対策っていう建前だよね」
――地下鉄サリン事件のあとに撤去されたのは駅のゴミ箱だから。なんだかんだ理由をこねて、本来は行政がやるべきことを個人に負担させている。
K 「そうそう。自治体としても国としても、金を出し渋りすぎだよね」
――今日はたまたま10月6日なんですが……もちろんイスラエルによるパレスチナの占領、虐殺、民族浄化、アパルトヘイトは2023年の10月7日に始まったのではなく、1948年からずっと続いていて。EPに収録されている「¡Viva La Palestina!」も録ったのは2年前で、それ以前からKoheiくんはパレスチナについて話していたし、「あらゆる植民地支配に反対する」とも言っていました。
K 「鏡を始めたときから、ずっとパレスチナの話はしてたからね」
T 「そうだね」
――おかげで自分もそういう問題に対してより意識的になれたし、そのうえで「¡Viva La Palestina!」の「俺は今日も 安全な家に帰る」という歌詞で、自分とその問題との距離感を自覚させられたというか。
T 「そう、その距離感みたいなものを認識することで、初めて自分にできることは何かを考え始められる。逆にいうと、自分の生活と照らし合わせるという過程をすっ飛ばしてしまったら、さっきのレインボープライドとかSDGsバッジのように、パレスチナ解放という運動すらもただ消費されるだけで終わりかねないと思ったんですよね」
K 「“¡Viva La Palestina!”をライヴでやり始めた頃、すげえムカつくことがあって。ロシアがウクライナに侵攻して、周りの人たちが一斉に盛り上がってウクライナを応援したじゃないですか。もちろん、ウクライナの市民が殺されていいわけがない。でも、70年以上も植民地支配と虐殺に苦しめられてるパレスチナの人たちはずっと無視してきたのに、白人が被害者になると急に態度が変わるって、おかしいよね?さっきの話にも繋がるけど、商品化されたジャスティスみたいなものが働いて、企業も自社製品にウクライナ国旗をあしらってイメージアップを図ろうとしたり、あと日本人はなぜか白人の側に立とうとするでしょ。それが白人至上主義なのか知らないけど、同じことが起きてるのに有色人種のほうは見ないで、自分たちが都合よく消費できる商品に乗っかるみたいな、ものすごい矛盾とディストピアを感じた」
――当時はパレスチナだけでなく、シリアやミャンマーも悲惨な状況だったのに。
K 「そうそうそう。イエメンとかソマリアもそう。世界中でたくさんの人が殺されたり故郷を追われたりしてるのに、白人の都合で扱いが変わる」
――仮にロンドンやニューヨークで白人のポケベルが爆発したら世界中の、少なくとも西側のニュースはそれ一色になり、犯人をテロリストと断じて非難しまくったでしょうね。
K 「レバノンで今起きてることも本当にヤバいよね。イスラエルは、数世紀前の帝国主義イギリスがインドやアフリカに対してやったことや、北アメリカで白人入植者がネイティヴ・アメリカンに対してやったことと同じレベルのことを、現在進行形でやってる。しかもその映像がSNSで全世界に発信されてるのに、国際社会は動かない。ありえないことなんだけど、それだけプロパガンダが浸透してるんだよね」
――プロパガンダといえば「輝いて見えた テレビのアメリカ 植え付けられる“正義”と“悪”の戦い」という歌詞も重くて。例えばハリウッドって、その時代のアメリカの仮想敵を悪役として登場させるじゃないですか。僕の場合、小さい頃に観ていたアメリカ映画はだいたいソ連が“悪”だったんですよ。
T 「『ロッキー4 / 炎の友情』(1985)とかですよね」
――『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)も反共プロパガンダだし、『ランボー3 / 怒りのアフガン』(1988)なんて、ソ連軍と戦うためにムジャーヒディーン(ジハード戦士)と手を組んでいましたから。
K 「ハリウッド自体がアメリカのプロパガンダだと考えておいたほうがいい。英米合作だけど、“007”シリーズもそうだよね」
――でも冷戦終結後は、僕は『トゥルーライズ』(1994)が特に印象に残っているんですが、悪役がアラブ人になって、アラブ人 = テロリストみたいな人種差別的な刷り込みが行われてきた。ついでにいうと、イスラエルが公然と国際法違反と戦争犯罪を続けられるのは、アメリカというパトロンがいるから。
T 「そう。僕が音楽や映像といった表現に対して、すごく俗っぽいレベルでかっこいい / かっこ悪いを判断する基準になっているのは、いまだに小さい頃に観ていたアメリカの映画とかなんですよね。特にスティーヴン・スピルバーグの映画がめっちゃ好きなんですけど、彼は去年の12月に、ハマスの攻撃は“ユダヤ人に対する筆舌に尽くしがたい蛮行”だってコメントを出したじゃないですか」
――正直、がっかりしました。
T 「僕も“マジか……”みたいな。『ミュンヘン』(2005)のような映画を撮っている人が、イスラエルによる占領の歴史を無視するような発言をするなんて。あと、僕が慣れ親しんできた、映画を含むアメリカ大衆文化の中にはシオニズム的な思想と結びついてるものもあると気付いたときとか、やっぱり絶望的な気分になるんです。それでも拭いきれないものとして、アメリカ的なものへの憧れはあって。だから、デモとかに行くと引き裂かれるような気持ちになるというか。例えばマクドナルドやスターバックスに行くのをやめることはできても、Amazonを利用するのをやめられるかというと……」
K 「ボイコットはやるべきだけど、無理はしなくていいと思うよ」
――本来なら、今このインタヴューを録音している僕のiPhoneもボイコット対象なので。
T 「そうなんですよね。そこでどうやって折り合いを付けるのかを自分で考えなきゃいけない。生活の中で」
K 「そもそも先進国に住んでる我々が享受してる便利さや快適さって、いわゆる発展途上国の人たちの犠牲の上に成り立ってるものだから」
――例えばコンゴがそうですよね。今言ったiPhoneをボイコットすべき理由のひとつでもあるけど、コンゴで違法に採掘されたコバルトとかの鉱物が、Appleの製品に使われている疑いがある。
K 「そうそうそう。コンゴでは資源をめぐる紛争がずっと続いてて、鉱山では低賃金労働とか児童労働とか重大な人権侵害がまかり通ってるし、たくさんの死者も出てる。そんな地域から奪った資源を、例えばスマホのバッテリーとかにして、我々は消費してるんだよね。生活の至るところに支配と搾取の構造がある」
――鏡の曲はTeruくんとKoheiくんが書いていて、最近はHiroくんも書くようになったとのことでしたが、Teruくんの曲とKoheiくんの曲の割合はどのくらい?
T 「割合としては、半々ですね」
Z 「ただ、作品単位だと『DEMO』は1曲目の“Look”以外はTeruくんの作曲です」
――一応持ってきたんですけど、『kagami demo + 2 unreleased tracks』という未発表曲入りのデモテープも……。
K 「そうだ、“Vortex”と“Family Man”の2曲があったんだ」
T 「これ、音源として世に出してたんだ?」
K 「たぶん15本くらいしか作ってないから、持ってる人はそんなにいない。“Vortex”は自分が書いたんで、未発表曲を入れるとTeruが5曲、俺が2曲になるのかな。デモテープの時点では」
Z 「EPはTeruくんが2曲、Koheiくんが4曲だから、トータルではだいたい半々」
T 「A、B面のそれぞれ1曲目が僕で、あとはKoheiです」
K 「B面2曲目の“¡Viva La Palestina!”は曖昧じゃなかった?スタジオで俺が編み出したリフを軸にみんなで組み立てた感じだったと思う」
Z 「TeruくんとKoheiくんは、けっこう作風が違うんで」
T 「たぶんパンクロック調なのがKoheiで、ハードコア調の、ストップ & ゴーのキメがあるのが僕ですね」
K 「勝手なイメージだけど、TeruはやっぱりDCハードコアに影響されて曲を書いてる感じがする」
T 「本当にそう。外を歩いてるときとかに聴くハードコアって、結局MINOR THREATだけなんで」
K 「EPはさ、 A面は速い曲ばっかりなんだけど、B面はぐねぐねしてるよね。ぐわーんみたいな」
――FLIPPERみたいな、屈折した遅さというか。
T 「今、めっちゃ“なるほど!”って思いました。うんうん、たしかにFLIPPERですね」
Z 「僕も弾いてて、FLIPPERっぽいなと思ってました」
T 「あ、今思い出したけど、『DEMO』を出したあとにコサカさんもFLIPPERに言及してくれたような」
K 「マジか。タカシやるな」
T 「でも、もう1回“FLIPPER”って言われて鳥肌立ちました」
――先月あたりにTeruくんとZieさんと話したとき、“鏡の曲はHiroくんがドラムで解説してくれる”みたいなことを言っていたんですけど、詳しく聞いてもいいですか?
Z 「Hiroくんは、曲の解釈能力がめちゃくちゃ高くて」
T 「すごいっすよ。例えば僕が作った曲をみんなにやってもらう場合、まず自分がその曲をギターで弾いてるところを動画に撮って、鏡のLINEグループに送るんです。で、スタジオに入るまでにKoheiは動画を見てギターを覚えてくれて、Zieさんは動画のギターに合うベースのフレーズを考えてくれる。ただ、ギター1本の動画だから、曲の展開とかはドラムの人からしたらわかりにくいはずなんですよ。それなのに、Hiroくんは“つまり、ここがAだとすると、ここがBじゃないですか”みたいな」
H 「ヤバいやつじゃん(笑)」
T 「ヤバいんですよ。ホワイトボードにAとBで色分けした伸ばし棒を書いて“まずAが2回あってからBがあって、一周して、今度はAが3回あってBだよね”みたいなことを、すごくいい意味で理屈っぽく解説しながら僕に確認してくれて。その流れが異常なくらいスムーズで、マジで助かる。最高です」
Z 「Hiroくんは、音楽の仕組みを一番わかってるような気がします。KLONNSとのスプリットに入る曲の中に、Koheiくんが作ったちょっと変な、ポストパンクみたいな曲があって。Koheiくんも自分が作った曲をギターで弾いてる動画を僕らに送ってくれるんですけど、動画の時点ですでにヤバかった」
K 「そんなのあったっけ?」
T 「さっきKoheiが、自分でMINUTEMENを引き合いに出してた曲」
Z 「“Escape”って曲なんですけど、その動画はリズムマシンのビートをバックに、Koheiくんが立ったままギターを弾いてて、しかも彼の全身が映るように撮ってるんですよ」
H 「和室でね」
K 「いや、Flying Vだから座って弾けないわけよ」
一同 「(笑)」
Z 「動画を見た限りでは、リズムは一定だけど、構成がけっこう不思議というかよくわからなくて。スタジオに入ったとき、Koheiくんに“この曲やるの、僕は無理かもしれない”と言ったんです。でもHiroくんはちゃんと叩いてくれて、だから僕はHiroくんのドラムに合わせてベースを考えるみたいな。Hiroくん、よくあれ叩けたね?」
H 「Strip Jointでも、曲を書いてる岸岡(大暉)から、ドラムが入ってない状態のデモを渡されるんで」
一同 「へええ」
Z 「岸岡くん自身はドラム叩けるよね?」
H 「叩けます。でも、試行錯誤の結果そこは任せてくれていて。だから、僕はギターとベースが入ったデモを聴いて、自分で曲を解釈してドラムの入れかたを考えるっていう。そういう脳みそは発達してると思います」
K 「センスがいいんだよ。Hiroぽんはアドリブっていうか、フィルとかもかっこいいし」
Z 「鏡の曲は、けっこう各々の解釈に委ねられてるところがある」
K 「そこも論理じゃなくてセンスなんだよね。あと、鏡は練習頻度がめっちゃ少ない。UMBROは2週間に1回、定期でスタジオに入ってるけど、鏡はライヴの前しか練習しないよね」
Z 「4人の都合がなかなか合わないから」
T 「Hiroくんは宇都宮在住だし、僕も、鏡を始めたときは横浜に住んでたけど、さっき言ったように一時期は名古屋に帰ってて」
Z 「だから、その頃は楽器隊の3人だけでスタジオに入ったりしてました」
T 「ライヴ直前に、僕がおばあちゃんの車を借りて東京に行って、スタジオで3人と合流して、そのままライヴハウスに直行みたいな」
K 「鏡は全部しっくりくるから、そんなに練習しなくても体が覚えてるっていうか、体に染みついてる」
――こないだ、ZieさんがTumblrで……。
Z 「Tumblr見てるのヤバいっすね(笑)」
K 「Tumblr使ってるほうもヤバいから、2024年に(笑)」
――鏡のベースについて「クロンズがうどん粉をこねる作業なら、こちらはキャベツの千切りみたいな演奏を心掛けました」と。言い得て妙だと思いました。
Z 「KLONNSの音楽は、個人的にはハードロック的というか、横ノリだと思っていて。鏡は縦ノリで、パンク的みたいな」
T 「グルーヴの質がまったく違いますね」
――それでいて、Zieさんのベース特有の色気みたいなものが随所にある。
T 「そこはたびたび突っ込んでもらえますね。“ベースがヤバい”って。例えばルートを外すときの駆け引き的なものは、完全にZieさんのオリジナルだと僕は思います」
K 「Zieのベースも、一周回って80sハードコアに繋がるんだよね。80年代は、いきなりうねうねしたベースで曲が始まったりするバンドもけっこういて。例えばWASTED YOUTHとかBATTALION OF SAINTSのベースラインって変態的でしょ。そういう自由度が高い音楽に戻ったような感覚が、俺はあるかな」
Z 「たぶん80年代は、まだハードコアとかニューウェイヴとかポストパンクみたいな区切りが今ほど明確じゃなくて。だからジャンル的なものに縛られないぶん、自由度が高く感じるんじゃないかな。僕もそういうベースのほうが好きだし」
T 「KLONNSと鏡の違いって、ほかにもありますか?」
Z 「音以前に、人のノリが全然違う。KLONNSは、これはいい意味で言うんですけど、ちょっと部活っぽいというか、みんなでひとつのことに打ち込む感じで。鏡はなんか……人間交差点みたいな」
一同 「(笑)」
T 「めっちゃ事故が多発してる交差点っすね」
Z 「だからKLONNSと鏡で遠征とかすると、すごく楽しい」
――Hiroくんは、Strip Jointと鏡の違いって、説明できます?
K 「何もかも違くない?スポーツでいえば野球とサッカーくらい違うよね?」
H 「違いを言葉で説明するのが難しいんですけど、とりあえずStrip Jointから鏡への切り替えというか、脳を鏡に適応させるのに3年くらいかかりました」
Z 「このメンバーで鏡を続けて4年半になりますけど、Hiroくんは一貫して“鏡は楽しい”って。ただ楽しいだけみたいな」
H 「それは間違いないですね。別にStrip Jointが楽しくないわけじゃないけど」
T 「正直、僕としてはそれが意外というか。僕はHiroくんが疲れてしまわないか、常に心配してたんですよ。ハードコアのライヴに10年以上通ってるほかの3人と違って、Hiroくんは突然こちら側に連れてこられた人間なわけで、ノリ的にも戸惑うかもしれないから」
K 「怖いよね。Hiroぽんがある日突然“鏡やめます”とか言いだしたら」
T 「まあ、そのときはそのときで。人間交差点なんでね」
H 「いや、自分の知らない世界だったけど、めっちゃいい世界に連れてきてもらったなみたいな。うん、なんか、ありがとう」
一同 「(笑)」
――去年のある時期から、Hiroくんの楽しそうな感じが増していったように思います。
H 「たしかにそうかも。“わかってきた”みたいな」
K 「前はもっと気を遣ってたよね」
H 「そう。まだわかってなかったし、自分自身によそ者感があったから。自分がよそ者だから周りも気を遣ってくれてたように思うし、気を遣われると余計にこっちも気を遣っちゃう。そういうのがなくなってきたから……あの、こういう話はやめません?」
一同 「(笑)」
K 「でもさ、TeruとZieと俺の3人は、一般的なバンド界隈の人たちにするような気の遣いかたをしなくていいでしょ?それに気付くのにちょっと時間かかったというか、時間が経つにつれて“この人たち、そういうの気にしないんだ?”みたいな」
T 「悪い意味での社会性みたいなものに囚われる必要がないってことなんですかね。わかんないけど」
H 「だいぶフリーダムになったのかな、このバンドを通じて。人間として」
K 「めっちゃいいことじゃん」
Z 「僕から見てこの3人は人当たりもめちゃめちゃいいから、相当勉強になります」
K 「みんな優しいっす。優しさがけっこう大きいと思う」
T 「なんか、だんだんグループ・セラピーみたいになってきた」
一同 「(笑)」
H 「アメリカの映画とかであるやつね。アル中の人とかが教会に集まったりして」
T 「“つらい体験を話してくれてありがとう”みたいな」
K 「あれカルトらしいよ」
一同 「(笑)」
H 「そう、まさに“あれカルトらしいよ”みたいな、よくわからないスリップの仕方をするの。話題が」
K 「いや、AA(Alcoholics Anonymous)とかの体系ってカルトと一緒なんだよね。もともとキリスト教の人が始めたやつだから」
T 「これですね(笑)。これが曲にも出てるから、GAS RAGとかBLOTTERのワナビーにならずに済んでる」
――BREAKfASTの『眩暈』に「鏡」と「ミルク」という曲が入っていたという話がありましたが、鏡と精神的に近いバンドはMILKなのかなと、僕も思っていました。
T 「MILKは、なんだかんだで影響を受けてしまっていると思います。去年の5月にKLONNSと鏡で台湾ツアーに行ったとき、台北のTOXIC BALDっていうバンドでギターを弾いてるChenくんから“Teruのヴォーカル・スタイルはMILKの影響を受けてるでしょ?”と言われて。僕としては、マツバラくんは自分とほぼ同世代なので、かなり切なかったんですけど」
一同 「(笑)」
T 「でも、MILKは一番多くライヴを観てるバンドだし、憧れてるのかなって」
K 「さっき、アメリカでは周期的に初期ハードコアのトレンドが来るって話をしたけど、MILKはそのトレンドに乗ってたしね」
T 「ちょっと脱線して、僕とMILKの繋がりについて話しておくと……僕は高校1年生のときからひとりでライヴに行って、ひとりでめっちゃモッシュして帰るみたいなことをやってたんですよ(笑)。学校に友達がひとりもいなくて。ある日、鶴舞DAYTRIP(愛知・名古屋)っていうライヴハウスにTHE ACT WE ACTを観に行ったとき……だったと思うけど、そこでマツバラくんとIna(MILK)が突然話しかけてきてくれたんです。“いつもライヴで暴れてますよね”って」
Z 「いい話っすね」
T 「“毎回気になってて、歳も近そうだから、次に行くライヴであなたがひとりで暴れてるのを見かけたら絶対に声かけようって、Inaとふたりで話してたんです”とマツバラくんは言ってくれて。そのとき僕は高校2年生で、マツバラくんとInaは大学1年生だったんですけど、以来、一緒にNICE VIEWとかのライヴを観たり、名古屋から東京まで鈍行に乗ってMETEO NIGHTに行ったりしてました。なので、僕はMILK最古参の自覚があって」
一同 「(笑)」
T 「MILK以外にも、THE ACT WE ACTとかodd eyesとか、自分と同世代かちょっと上のバンドには無意識に影響を受けてると思うし、そういうバンドの存在はすごく大事ですね」
――僕が「精神的に近い」と言ったのは、影響というよりは精神的な兄弟みたいな意味で。
T 「ああ、だとしたらうれしいです。台湾でChenくんに“MILKの影響を受けてるでしょ?”と言われたとき、本当は僕もそういうふうに“いや、俺たちは兄弟みたいなもんだから”って返したかったんですよ。だけど、そこでイキるのがちょっと怖かったんで“マジで?ははは、興味深いね”とか言って笑ってました」
K 「ひとつだけ、自分で言うのは恥ずかしいけど、鏡は10代のときから熱心にパンクを聴いてるメンバーが曲を作ってるから、リアルだと思う。そこだけは誇りたいし、俺らと同じようにパンクを聴き始めた人はそれをわかってくれるはず」
T 「ただ、日本で自分なりにハードコア・パンクをやっていて思うのは、ハードコア・パンクを熱心にチェックしてそうな人はすでにライヴハウスにいて、だいたい知り合い同士なんじゃないかってことなんですよ。名古屋みたいな地方都市だとそれがより顕著なんですけど、東京というハードコア・リスナーの絶対数が多い都市でも、まだまだ狭いコミュニティで。もちろんアンダーグラウンドな文化なのでただ大きくなればいいとは思ってないけど、僕としては、ハードコア・パンクのライヴに行ったことがない人が、鏡のライヴに来てくれたらうれしいです。さっきZieさんが言ってくれたように、4人とも人当たりはいいから」
Z 「そうっすね。僕は常々、楽しくバンドをやりたいと思っていて。楽しくやるのって難しいんですけど、今のところはそれができてるから、僕らを観にきてくれるお客さんも楽しくなってほしいです」
T 「すでにライヴハウスにいる人たちにも言いたいんですけど、普通に話しかけてください。バンドやってる人としか話さないとか、友達にならないとか、そんなことを考えてるメンバーはひとりもいないので」
K 「まだハードコア・パンクにたどり着けてないけど、たどり着いたらハマるであろう潜在的なリスナーの数は多い気がする。音楽的な部分だけじゃなくて、カルチャーとか思想的な部分でも。例えば今この社会で生活してて、自分の居場所がないとか、自分の考えかたが職場や学校の人たちから浮いちゃってるとか、なんかわかんないけど抑圧を感じてるとか、そういう人はめっちゃいると思うんだよね」
T 「うん、いると思う」
K 「あと、さっきの“プラスチックに刻まれた 消費される平等の旗”じゃないけど、消費社会的な、TikTokでバズったものが一瞬で消費されて忘れ去られるみたいな、そういう拡散とかスピードとか効率とかと、パンクのDIYカルチャーは対極にあるから。商品を購入するとかじゃなくて、自分たちの手でゆっくり築き上げる。そういう反資本主義的なコミュニティのほうが肌に合うっていうか、楽しめる人も絶対いるはず。俺はパンクのショウで高いチケット代を取りたくないし、もし“ライヴに行きたいけど金がない”って人がいれば、別に知り合いじゃなくてもDMとかで連絡してくれればタダで入れてあげる。だから消費が前提の社会に嫌気がさしてる人とかに、そうじゃない場所も存在するんだってことを知ってほしい」
――ただ、「そうじゃない場所」としてのライヴハウスには閉鎖的なイメージもあって、例えばたまたま通りかかった人とかがフラッと入れる感じではないんですよね。
K 「自分もアメリカから日本に戻ってきたとき、ライヴハウスでは毎回精神を削られてた。転換中とかに手持ち無沙汰だったりして。でも、そこで話しかけてくれたのが、UNARMのYagiちゃん(THE BREATH, SOCIO LA DIFEKTA)だったんだよね。もちろんそういうきっかけをくれる人が常にいるわけじゃないし、たしかに疎外感を覚えやすい環境ではあるんだけど、その場にいる人の多くは同じ価値観を共有してるから。そこに気付きさえすれば、ハードルは一気に下がると思う」
H 「僕もそういう感じでたどり着いたんで、本当にそうだと思います」
K 「そう、たどり着ければ“あ、わかる”みたいな、アハ体験じゃないけど」
T 「アハ体験、ひさびさに聞いた(笑)」
K 「そういう瞬間が絶対ある。パレスチナに連帯するプロテストも、数年前は全然人がいなかったり、いても活動家のおじいちゃんおばあちゃんだったりしたけど、最近は若い人もいっぱい参加してて。昨日の渋谷のプロテスト(『10.5 パレスチナのための東京マーチ』)も、雨の中ものすごい数の人が集まったじゃない。それはみんなが“おかしい”と気付いて、同じ考えを持つ人がいる場所に足を運んだからで。だからパンク・シーンにも希望はあるっす」
■ 2024年8月16日(金)発売
鏡 KAGAMI
『鏡 KAGAMI』
https://advancedperspective.bandcamp.com/album/kagami
[収録曲]
01. Recession
02. Truth
03. Bear the Guilt
04. You Found Liberty
05. My Fear
06. ¡Viva La Palestina!
07. Tough Guy
2024年11月7日(木)
東京 高田馬場 スタジオ音楽館 高田馬場駅前店
開場 19:30 / 開演 19:45
当日 1,500円(税込)
[出演]
鏡 KAGAMI / KLONNS / NAG (Atlanta, US) / Sorry No Camisole