クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマンらをキャストに迎えた2015年の監督作品『ラスト・ナイツ Last Knights』が話題となった紀里谷和明(KIRIYA PICTURES)が、新作長編『新世界』の制作を発表。併せて、クラウドファンディング・プラットフォーム「Makuake」にてパイロット映像(約90秒)制作のサポーターを募るプロジェクトがスタートしています。
紀里谷がかねてより構想を温めていたという『新世界』は、近未来の日本を舞台に、戦国時代の人物をモチーフに設定されたキャラクターが登場する作品。宇多田ヒカル『traveling』のMVや、長編『CASSHERN』(2004)、『GOEMON』(2009)などの紀里谷作品でもタッグを組んだVFXプロダクション「エヌ・デザイン」との制作が決定しています。
パイロット映像は、クラウドファンディングの受付が終了する8月から約2-3ヶ月をかけて、基本的に全作業リモートでの制作を予定。制作期間中には、打ち合わせの模様をライヴ配信する試みや、質疑応答を設けたインタラクティヴなオンライン・イベントも実施され、プロセスも重視した内容となっています。
映画と呼ばれるものは、莫大な制作費がかかります。その為、その資金を拠出する映画会社は「ヒットしそう」な作品を制作したがります。映画はビジネスなので、その気持ちはよく分かりますし、否定するつもりもありません。
しかし、ここがいつもぶつかる問題なのですが、ビジネスの世界が求めるヒットする安心感と、私が作りたい、と思うものの間には大きな溝があるのです。それは私だけではなく、多くのクリエイターが抱えるジレンマではないでしょうか? 事実、「マーケットのニーズにそぐわない」という理由で却下された脚本がいくつも存在します。この「新世界」も、その脚本の一つです。
それに加えて、「ヒットしそうと思われるものが、確実にヒットするのか?」という疑問もあります。実際には、予想通りの結果を生み出している作品は少数です。逆に「ヒットしない」と思われていた作品が、出来上がってみたら長きにわたってオーディエンスに愛されているという事実もあります。
要は、「作ってみない限り、その作品がヒットするのかしないのかなど、誰にもわからない」のです。
では、なぜ、ビジネスサイドが考える不確実なロジックに従って、クリエイターは創作しなければならないのでしょうか?多くのクリエイターは、そのロジックに苦しめられ、自らの創造性を犠牲にしています。そもそも芸術とは可能性の提案であり、これまでなかったものを作るのが、その本分であると私は信じています。よって最初は理解されなくて当然なのです。しかし、それではあまりにもリスクが高すぎる、というのがお金を出す方の言い分です。
繰り返しますが、誰が悪いわけでもないのです。
要は、仕組みに問題があり、それに代わる新しい仕組みが必要だと思うのです。
この問題の解決策をこの数年考えてきました。そして一つの答えに到達しました。ここではその構想の全貌を明かすことはできませんが、制作から発表までの全てを根本から考え直すものです。もしこの試みが成功すると、もっと自由な創作の環境が出来上がると確信しています。
今回は、その構想の第一ステップとして、クラウドファンディングによるみなさんの協力をお願いします。クラウドファンディングによる制作資金の調達には限界があります。よって、今回制作できる作品は90秒程のトレーラーだと思ってください。
たった90秒?と思われるかもしれません。しかし、それはとても大きな第一歩です。その先に広がる大きな物語と重要な試みの大切なステップなのです。
折しも今回のコロナウイルスの発生で、映画どころか、世界を取り巻く環境は困難なものとなっています。しかし、その困難をチャンスとして生かすことができると私は信じています。全ての業界において、新しいシステムの確立が求められています。
その新しい世界に対しての一つのビジョンとしてこの「新世界」を皆さんにお届けしたいと願っております。
みんなで新世界を作りましょう。
――紀里谷和明
■ 紀里谷和明監督作品『新世界』サポーター募集
https://www.makuake.com/project/shinsekai/
[実施期間]
2020年6月10日(水)-8月10日(月)
[目標金額]
1,300万円
[目的]
『新世界』パイロット映像(約90秒)の制作
Gallery