Column「実録・KLONNS欧州紀行」


文 | SHV (KLONNS)
写真 | KLONNS

Day 10

 10日間に及ぶヨーロッパ・ツアーもついに最終日。この連載も最終回となりますので、バルセロナ~帰国まで一気に書き上げたいと思います!ぜひ最後までお付き合いください!

 フランス・サン=テティエンヌからスペイン・バルセロナまでは車で約7時間。600km超えなので東京~岡山よりもやや遠いくらいで、そこそこのロング・ドライブ。途中、フランスのサービスエリアに寄ったのですが、Ryan曰くまたトイレの便座がなかったらしいです(笑)。なんで便座なしがデフォなんだ……。

 早めに出発した甲斐あってバルセロナには16時前くらいに到着!本日の会場の「VOL」はやたらステージの高いヴェニューで、深夜はクラブ・イベントもやっているようでした。主観ですが、雰囲気がかなりSOCORE FACTORYに似ていると思います。7年くらい行けていないので曖昧な記憶ですが……。ちなみにトイレ2つのうち1つは、またしても便座がありませんでした。逆に便座があるほうがおかしいのかもしれません。日本のトイレ最高!

Photo ©KLONNS
ただいまバルセロナ。
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ツアー・ファイナルの会場「VOL」。
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VOLのスケジュール表。
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VOL、ステージ高くてイイね。

 本日のプロモーターはDay 0にも登場した「GREETINGS FROM BARCELONA」。もともとは我々のブッキング・エージェントのDiegoが主催していたようですが、彼は現在ライプツィヒ在住のため、Nirzarほか数名で引き継いで運営しているそうです。Nirzarの切り絵を駆使したデザインは一見の価値ありだと思います。

ゴジラのフライヤーには度肝を抜かれました。

 さて、毎度気になるディナータイム。といっても食事が用意されてるので隙間時間で適当に食べてという感じなのですが。スペインといえばパエリアか?などとワクワクドキドキしている我々に主催チームの皆さんから悲報が……

 「ディナーは私たちの友達が作った和食よ!」

 わ、和食……?! バルセロナまで来て……?スペイン料理食べたい……。なぜか「どうだ嬉しいだろ?」みたいなテンションの女性陣と、微妙に申し訳なさそうな表情のNirzarのコントラスト(笑)。申し訳ないと思うなら指摘してくれ……。そして、気になるお味は……かなり普通でした(笑)。オチなし。まあバルセロナの食材でよくここまで再現したな、とは思います。ちなみに岡本さんと三浦くんは抜け駆けしてパエリアの名店みたいなところに行ったらしい。許されざる者たち……。

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なぜ私はスペインでたこ焼きを食べているのだろう?
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どうして「非現実(ここ)」にいるんだろう?空の夢に埋もれてゆく……。
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岡本 & 三浦が抜け駆けして召し上がったスペイン料理。これは許し難いですね。

 共演のEL NUCLIはIRREALのXaviがドラムを叩く、Oi!フレイヴァのあるハードコア・パンク。BLITZ感溢れつつ現行Oi!特有のビートが強いタイプのサウンドでカッコ良かったです。物販がなかったのが残念。もう一方のBAIXA PERMANENTは初期NYHCのような雰囲気がありつつ、崩壊寸前な演奏でなんとも形容し難いサウンドでした。

 自分たちのライヴは、サウンドチェックはいい感じだったのに本番だけドラムのスネアにマイキングされてなかったり、アンプから煙が出たりとトラブル多めで、正直ツアー・ファイナルとしてはやや消化不良気味でした。しかし、お客さんは楽しんで観てくれたようなので、まあよしとしましょう。日本で共演したIRREALのメンバーやCromiさんも観に来てくれて嬉しかったです。

 とにもかくにも全てから解放されたし、酒でも飲みまくるかと思ったのですが、ライヴ終わった瞬間に緊張の糸が途切れたのか一気に襲い来る疲労……。正直最後のほうはかなり記憶が曖昧です(笑)。

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Nirzarおつかれ。

 この日はプロモーターチームのKimiaというアメリカ人の女の子の家に泊まる手筈だったのですが、帰りのフライトは翌朝なので、Kimia宅に向かう前にNirzarの家にバンと機材を返すというラスト・ミッションが……!みんな疲れているのに加えて、バルセロナの道はとても複雑。しかもNirzarは別行動。予定より時間がかかってなんとか到着したのですが、Nirzar宅は真っ暗……。先に彼のパートナーであるOlgaが帰っているはずなのですが、寝てしまったようだ……。申し訳ないが叩き起こさせていただきました(笑)。彼女はものすごく聡明なかたなのですが、信じられないくらい寝ぼけていて、ちょっとおもしろかったです。本当にごめん(笑)。

 なんとか返却し終わると、Kimiaが手配してくれたタクシーがありえない爆速と爆音でド派手に登場!閑静なエリアなのですが(笑)。横幅が車両1.5台分くらいしかない細い道を物凄いスピードで走り抜ける!しかも真夜中とは思えない音量でチャラめのEDMを垂れ流しながら……。なんかカッコよかったです。
 
 無事にKimia宅に到着したのが深夜3時頃。数時間しか寝られないし、さっさと寝よう!となったところでヤバすぎる事実が浮かび上がる……。岡本さん、シンバルを機材車に置き忘れる痛恨のミス……!しっかり全員で持ち物を確認するべきでしたが、疲れすぎていて頭が回りませんでした……。今からどうすることもできないので、明日予定より早めに起きてNirzar宅に寄ってから空港へ向かうことに……。

 2~3時間寝て気合いの起床。二手に別れて、筆者と岡本さんはNirzar宅経由で空港に向かうことに。時刻は朝8時前。Nirzar宅になんとか到着しましたが、当然Olgaは寝ています。再び叩き起こされるOlga(笑)。本当にすいません……。俺らも限界だったので許してください(笑)。ギリギリのダメージを受けながらなんとかバルセロナ空港へ……!

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早朝のバルセロナ。治安の悪いエリアらしい。
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タクシーなかなか来ないぜ。

 Ryan含め無事にチェックイン完了し、いよいよ別れのとき……!いろいろありましたが、今回無事ツアーをやり遂げられたのは完全にRyanのおかげです。この場を借りて、改めて感謝!!! 実はRyanとは年内に再会予定なのですが、素晴らしいアナウンスが控えていますよ。お楽しみに!

 帰りのフライトも行きと同じくエティハド航空。やはり値段と比較してかなりの快適さ。マジでおすすめです。機内食はインドカレーとビリヤニで、なかなかのお味。行きで『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の『二つの塔』まで観たので、締めに『王の帰還』観ますか……!ということでインスタのストーリーにアップしたらMomo(Day 1参照。ASPHALT, THE CHISELなどのメンバーのナイスガイ)からメッセージが……

 「なに……!? 俺も今『ロード・オブ・ザ・リング』観てるぜ!!!」」

 なんでだよ(笑)!まあ『指輪物語』もツアー日記みたいなもんですからね(違う)。

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行きと帰りで『ロード・オブ・ザ・リング』三部作すべて観直しました。人生で10回目くらい。
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帰りの機内食めちゃうまかった。
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このタイミングでビリヤニ食えるとは思わなかったぜ。ワインも飲みまくった。
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アブダビ空港にて。

 そんなこんなで、なんとか10日間ぶっ続けのEU / UKツアーを完遂しました。今までオーストラリア、台湾、韓国と海外遠征をしてきましたが、まあぶっちぎりで一番大変でしたね(笑)。というのも、今までツアーをした国ではツアーのシステムが日本とほとんど同じく、1人(台湾はチームみんなでした)のプロモーターが全日程に帯同してくれる、ありがたすぎる待遇でした。一方、ヨーロッパのようにブッキング・エージェントを噛ませたシステムでは、バンやドライバーは斡旋してくれるものの、各都市間の移動は自分たちの責任で行わなければなりません。つまり、ガソリン代やらバンや機材のレンタル費用やらエージェントへ払うマージンやら、そういったものはすべて自分らで計算して管理しつつ行動する必要があります。もちろん物販も。フランス~イギリス間のフェリーも自分たちで予約しました。まあこれもDIYっていうことですね!もっと規模の大きいバンドだとツアー・マネージャーを雇って演奏に専念するということもあるのでしょうが。

 機材も日本のライヴハウスのように整っていないので、毎回搬入があたりまえで普通に疲れます。また、シンバル類は消耗品扱いなので基本借りられません。だからバンドは最低限、竿とシンバルは自国から持参するか現地調達する必要があると考えていいでしょう。

 とはいえ、ヨーロッパでは宿 / 飯は各プロモーターが用意してくれるので、ある程度海外慣れしていたり、語学が堪能であれば余裕と言えば余裕です。ただ、逆に言えばプロモーターやブッキング・マネージャー次第ではひどい目に遭う可能性も高いです(笑)。同じブッキング・エージェント・チームに世話になっている知人から、ドライバーと揉めて終始険悪なツアーだった、なんていう話も耳にしたり……。その点、我々はありがたいことに、今回はけっこう恵まれていましたね。UKの就労ビザとかも向こうがほぼすべてやってくれたので、簡単な書類を提出するくらいしかやることがなかった……。

 などと、まあ散々脅すようなことを書き殴りましたが、個人的には今回のツアーは本当に得難い体験だったと、この文章を書きながら改めて思っています。言語も文化もわからない土地を毎日移動し、音楽を通じて他者とコミュニケートする日々は本当に刺激的で、自国に留まっていては絶対に得られない収穫があると思います。インスピレーション湧きまくり。また、バズ至上主義とか知名度がどうとかじゃなく、純粋に音楽の内容を評価して敬意を払う土壌があると感じました。別に海外に対して過剰な幻想を抱いているわけではないし、その場所その場所に固有の問題やトラブルがあると思いますが、やはり音楽やアートに対する一般的な捉えかたが少し違うと思いますね。もっと生活に密接しているというか……。

 あと、ずっと演奏してるので単純に上手くなります(笑)。上手くなるというか締まる。ツアーに行くチャンスがあるバンドには絶対に行ってほしいと思います。我々もありがたいことに、この先もいろいろお話をいただいているので、可能な限りいろんな土地に行っていろんなカルチャーやライフスタイルに触れてみたいと思います。

 ずいぶんと長くなってしまいましたが、今回のツアー・レポはこれにて幕とさせていただきます。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました!!!

これにて大団円……ではないぞ~!! 旅の続きをEARTHDOMにて目撃せよ!
詳しくは↓公演情報↓を見てね。

KLONNS presents VERSUSKLONNS presents
VERSUS

2024年7月6日(土)
東京 新大久保 EARTHDOM

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 2,500円 / 当日 3,000円(税込 / 別途ドリンク代500円)
U25 2,000円(税込 / 別途ドリンク代500円 / ※ 要ID)
TIGET

[出演]
BELMADIGULA / KLONNS / moreru / TIVE

KLONNS 'Heaven'■ 2024年4月26日(金)発売
KLONNS
『Heaven』

LUNGS​-​270 | BHR039
https://ironlungrecords.bandcamp.com/album/heaven-lungs-270

[収録曲]
01. Plug-In prod. by Shine of Ugly Jewel
02. Heathen
03. Creep
04. Beherit feat. Arisa Katsu, Bl00dR4y, Golpe Mortal, Lil-D, O.Tatakau, SAGO & 1797071
05. Realm feat. セーラーかんな子
06. Another
07. Nemesis
08. Drown
09. Hill
10. Replica feat. O.Tatakau & 富烈
11. Heaven feat. Golpe Mortal
12. Un-Plug prod. by Shine of Ugly Jewel