文 | SHV (KLONNS)
写真 | KLONNS
シンガポール編
2時間ほど寝て、なんとか朝6時台に起床。さすがに全く疲労は取れませんでしたが、ツアー・アドレナリンでなんとかベッドから脱出成功。AizuとDeanに空港まで車で送ってもらい、別れのハグ。Deanが持っていたチェキみたいなカメラ格好良かったな。Zieがミスってスマホを楽器ケースの中に入れたまま預け荷物に渡してしまうプチ・トラブルがありつつも、難なく出国!
クアラルンプールからシンガポールまでは約1時間のごく短いフライト。ちなみにバスや車で行くルートもあるみたいです。今回はこれまた諸事情で筆者とZieはマレーシア航空、OkamotoとMiuraはシンガポール航空に分かれて、それぞれ午前10時台の便をチョイス。どちらもフラッグキャリアなのでFarhanから「お前らリッチだな!」とイジられましたが、預け荷物無料という点を加味すればむしろLCCより安かったです。ただ、機内食のパンケーキで何故かお腹を壊しました。世の中は厳しい。
やや発着が遅れたものの、無事シンガポールはチャンギ国際空港に到着!シンガポールも入国カードの完全電子化 & 自動化ゲートが導入されており、余裕で入国審査を通過できました。出国ゲートで無事Farhanと落ち合い、タクシーで市街地へと向かいました。
まず辿り着いたのは、やや古めの商業雑居ビル。地方都市の建て替えられていないデパートのような雰囲気で、どこか懐かしい感覚を覚えました。このビルにはSIAL、DOLDREY、LIFELOCKらシンガポール・パンクスたちによって運営されているスタジオや、SIALのベーシスト・Zafran(Zhafran Mohd)が運営するレコード・ショップ「Surface Noise Records」が入っているとのこと。まずはエレベーターで上の階に上がり、スタジオを見学させてもらいました。このスタジオは筆者がシンガポールのパンク・シーンを知るきっかけとなったYouTubeのライヴビデオ・チャンネル「Static City」の舞台となった場所だと気付いて感動……。ちなみにこの場所でGLUEやHARAMがライヴしたとのこと。
しばらくスタジオで談笑した後は、RM(マレーシア・リンギット)をS$(シンガポール・ドル)に替えるため、外貨両替店へ。なんと同じビルの1階の駄菓子屋みたいな売店で両替できました。多分空港の両替店よりレート良かったです。ちなみに1S$は110円くらいで、日本よりやや物価が高い印象を受けました。
無事S$をゲットし、地元民が集まるというフードコートへ。集合住宅が立ち並ぶエリアに位置しており、様々な料理のお店が入っていました。Farhanのおすすめはチキンライスとのことで、そちらをオーダー。日本でいうチキンライスとはまったく別物で、所謂カオマンガイのことでした。これが本ツアー中ベスト級の美味で最高でした……。シンガポールの料理というと、個人的にバクテーのイメージが強かったのですが、Farhanによるとマレー系の人には馴染みの薄い食べ物だそうです。もうひとつ、サトウキビ・ジュースなるものを薦められてオーダーしたのですが、なんとも生々しい味でした(笑)。
続いてカンポン・グラム地区へ向かいました。日本でいうところの原宿的なエリアらしく、レストランや服屋をはじめとする様々なお店が立ち並んでいました。その光景に、なんというか、東南アジアというよりヨーロッパの一都市にいるような感覚を覚えました。有名な「スルタン・モスク」などを眺めつつ、この近辺にDOLDREYのベーシスト・Danishが勤務する床屋があるとのことで顔を出してみたりしました。いつか髪を切ってもらおうかな(笑)。
再びビルに戻り、「Surface Noise Records」へ。それほど広いお店ではありませんが、パンクやハードコアを中心に、様々なジャンルのレコードが取り揃えられていました。KLONNSや筆者がギタリストとして参加している珠鬼 TAMAKIのフィジカルもしっかり置いてあって嬉しかったです。ちなみに珠鬼 TAMAKIのテープはZafranが運営するレーベル「4490 Records」からのリリースなので、改めてチェックよろしくお願いします!
「Surface Noise Records」で小一時間ダラダラした後、二手に分かれて会場へと向かいました。筆者とOkamotoはFarhanと共にホテルのチェックインを済ませてから向かうことに。ホテルはかなり綺麗だったのですが、ワンルームくらいの大きさの部屋に2台の二段ベッドが詰め込まれていて、スーツケースを広げることができない程度には狭い(笑)。しかも手前側二段ベッド上段の至近距離にエアコンがあるため、ここで寝る人は地獄を見ることになりそう……。一方、お風呂はシャワー室タイプではなく、しっかり浴槽付きのユニットバスで素晴らしかったです。MASAKREもツアー時にこのホテルに泊まったらしく、Farhan的定番の宿のようです。
本日の会場もシークレットとのことなので名前は念のため伏せますが、日本のハコで例えるなら、clubasiaの1階メイン・フロアくらいの規模感で、300人くらいは入りそうな広さ。機材も最新設備が揃っていて、デカ箱特有の広がりがある音でめちゃくちゃやりやすかったです。シンガポール公演はFarhanが運営する「Neural Damage」の仕切りで、素晴らしい待遇でした……感謝。オープン前から会場の入口に人だかりができており、期待感が高まりました。
トップバッターはAGENDAというバンドで、この日がデビュー・ライヴとのこと。ヴォーカルがENDのシャツを着ていた通り、ダークでモダンめなハードコアでした。続く2番手はFarhan率いる我らがDOLDREY!今夏の来日ツアーで観たかたはご存じの通り、ハードコア・パンク特有の縦ノリでポゴれるビートにデスメタル由来の邪悪なリフが絡む独自のスタイルで最高すぎました。彼らの地元で共演できて感無量……。あくまでメタルではなくハードコア・パンクであるところが素晴らしいですよね……。あと、日本で会ったときはそんな印象なかったのですが、ギターのRalph(Safari)が完全に石油王みたいなルックスになっていてよかったです。
3番手はシンガポールが世界に誇るノイズ・ハードコア・パンクSIAL!2023年にBLACK HOLEの招聘で来日ツアーもやっているので、知っているかたも多いと思います。地元で観るSIALは、それはそれは凄まじすぎて……。モッシュピットの激しさに精神的にも物理的にも見事に吹っ飛ばされました(笑)。パンクスにもハードコア・キッズにも両方から支持されている感じも印象的でした。トリ前のPLAGUE BEARERはトリプル・ギターが泣きまくるクロスオーヴァー・スラッシュで、あまりの泣きっぷりに驚かされました(笑)。日本には絶妙にいないタイプのバンドだと思います。
夜も更けてきて、なぜかエントランスにケーキが用意されていることに気付きました。なんとこの日はSIALのドラマーIzzad(Radzali Shah)の誕生日とのこと。とりあえずハッピーバースデーを歌っておきました(笑)。
そんなこんなで我々の出番に。気づけば100人越えのお客さんが詰めかけており、かなりフロアが暖まった状態でした。この日はいい意味で力みすぎず、普段通りのパフォーマンスができたと思います。凄まじい盛り上がりを見せていただき、ただただ最高でした。2回目のアンコールのとき、曲を始めた次の瞬間に3歳くらいの子供がステージに上がってきて、幻覚でも見ているのかと思いました(笑)。天使が舞い降りて、我々はあの世に向かうのかと……(笑)。ちなみに終演後、この子が買ってくれたレコードにメンバー全員でサインしてあげました。
この日はあり得ないくらい物販が売れ、翌日のジャカルタで売るものがほとんどなくなるという、ありがたい悲鳴……。売り子をやってくれたURALのメンバーのかた、本当にありがとうございます!そして、待ち受けるチェコ公演以来のサイン責め祭り……。完全に束の間のロックスター気分を味わわせていただきました。Miuraが、目をキラキラ輝かせた男性のお客さんに「おれ今40代なんだけど、今からハードコア・パンク始められるかな!?」と尋ねられるなど、心温まるエピソードもありつつ、無事終演!FUSEのメンバーも遊びに来てくれて嬉しかったです。
シンガポールはもともと、DOLDREYやSIALをはじめとする友人知人がが多いこともあり、ほとんどアウェイ感がありませんでした。自分たちも、形成されつつある新世代のアジアン・パンク・コミュニティの一部になれつつあるような気がして、とても感慨深かったです。
寝る前に軽く食事をしようということで、ホテルのすぐそばのレストランへ。Farhanの目当てのレストランは閉まっていたらしく、別のお店に入ったのですが、かなり微妙な味(笑)。あまりの微妙さに謝罪し始めるFarhan(笑)。Aidil(Iskandar | DOLDREYのシンガー)が食べていたカレーっぽいスープだけはおいしかったです。あれは何ていう料理なんだろう?ちなみに、マレーシアでもそうでしたが、シンガポールもレストランには基本的にお酒は置いていないみたいです。それと、終始SIALのギタリストHazif(Mohammad Shamsudin)がしょうもないオヤジギャグをかましまくっていてヤバかったです。こんなキャラだっけ……(笑)。レストラン前で記念写真を撮り、Miuraがコンビニで買ってきてくれたビールをお土産にホテルへ帰還。今夜は5時間くらいは寝られそうなので天国。就寝!!!
インドネシア編につづく……
■ 2024年4月26日(金)発売
KLONNS
『Heaven』
LUNGS-270 | BHR039
https://ironlungrecords.bandcamp.com/album/heaven-lungs-270
[収録曲]
01. Plug-In prod. by Shine of Ugly Jewel
02. Heathen
03. Creep
04. Beherit feat. Arisa Katsu, Bl00dR4y, Golpe Mortal, Lil-D, O.Tatakau, SAGO & 1797071
05. Realm feat. セーラーかんな子
06. Another
07. Nemesis
08. Drown
09. Hill
10. Replica feat. O.Tatakau & 富烈
11. Heaven feat. Golpe Mortal
12. Un-Plug prod. by Shine of Ugly Jewel