道草的散歩対談: 新宿御苑にて
構成 | 宇波 拓 | 2026年3月
撮影 | 山口こすも
協力 | 七針 (東京・八丁堀)
――今現在、おふたりの音楽に対するアプローチについてお話していただけたら。
K 「たしかにそれは聞きたいかも」
N 「ね。私も気になる」
――自分の出した音との距離感が一番違う楽器ですね。沼尾さんは自分の声帯を震わせているし、角矢さんは電子楽器。
K 「あまり考えたことなかった」
N 「でも、角矢さんは生きた音というか、人の血が通った感じがあって、自分とあまり遠いっていう印象はないです」
K 「そうですね。ライヴみがないとつまらない。作ったトラックを流すのはあまり好きじゃないんです」
――沼尾さんはヴォーカルですが、自分の中にあるものを出すというよりは、空間に鳴らした音との関係、フィードバックを大事にしている気がします。
N 「それは絶対そう。やっぱり声は言葉も使える楽器だから、自分を表現するという方向になる人もいるけど、私が興味があることはそれじゃない。だから、どちらかというと楽器でありたいと思ってます」
K 「音程の取りかたというか、音の動きがすごく楽器っぽいって思った。よくある歌みたいに近い音じゃないところまで飛んだりするから」
N 「ああ、やりますね。自分の頭にある音、鳴らしたい音が、誰かの声とか、自分の声とか言葉とかっていうよりは、それこそ電子楽器的なものをイメージしていることもある」
K 「急に飛んでおおー、すげーみたいな」
N 「それはめっちゃ嬉しい。楽器の人がやっているような考えかたでやりたいって思ってるかも。だから角矢さんとすごく遠くはない。遠いところからやってきてお互い近いところにいるような」
――この門は混んでいるので向こうから入りましょう。
N 「どの楽器が最初ですか?」
K 「最初ピアノです、実は。全然うまくはないけど」
N 「でもそうですよね、HYPER GALは鍵盤ができないと無理じゃないかな?って」
K 「たまに“ピアノやってましたか?”ってお客さんとかに聞かれます」
N 「私も最初の楽器はピアノ。どれくらいやっていたんですか?」
K 「中学くらいまでかな。練習が嫌いで、クラシック弾けたりとかはしない」
N 「でもやっているのとやってないのでは、発想のしかたが違うなって最近思います。私もピアノの“譜面を見て”みたいなところから入っているけど、いろんな人に会って話を聞いていて、そうじゃない人と音楽の捉えかたが全然違うんだなと思って」
K 「ノイズをやっている人とかも、他の楽器を弾ける人と楽器を何も弾けない人では全然違うっていうか。私は楽器が弾けるからガチのスカムみたいなのはできない」
N 「始まっているところが違う人って違うなって。昨日のHYPER GALもずっとキーボードを弾いてましたね」
K 「キーボードを弾いて、足元にルーパーがあって。たまに失敗しますけど。久しぶりにライヴすると鍵盤がすごくへたになってる」
N 「でも失敗があるっていう状態で演奏しているのっていいですよね。普段練習しますか?」
K 「あまりしないです」
N 「ドラムも?」
K 「ライヴ前に練習するくらい。練習ではないけど、曲を作っているときとか」
N 「曲を作る中で叩いている?」
K 「そうです」
N 「ドラムはいつから?」
K 「HYPER GALを始めるちょっと前くらいから」
N 「え!ではまだ10年経っていない?」
K 「経ってないです」
N 「すごい!私も10年やったらドラムできるかな」
K 「絶対できる。最初に出した音源とかは、叩けなくて、それはひどいありさまのドラム。叩けていないのを切り貼りして」
N 「すごい。ドラム本当にかっこいい。音もいいし、リズムもめっちゃイケイケじゃん!って。あと音の使いかた、ミュートのしかたとか、ヤバ、と思って見ていて。だから、ドラム歴が長いのかな?って思ってました」
K 「やったー、嬉しい!」
――SUICAとかで入れるみたいです。
K 「ICOCAはいけるのかな?いけた!」
N 「おおー」
――とりあえず温室に行きましょう。角矢さんはソロのとき、どれくらい決めているんですか?
K 「全然決めてないです。機材くらいです。機材もその日に変えたりすることがあります」
N 「そもそも荷物が多いですよね」
K 「機材を忘れてもいけるだろうって心の中で無自覚に思っちゃっていて。よく忘れました、ってなる」
N 「角矢さんのソロ、聴いているほうからするとすごく構築されている印象です」
K 「ライヴが終わると、観に来てくれた人にけっこう質問されるんですけど、何も考えていないことが多いから、欲しいであろう答えをあげられなくて。“何考えてるんですか?”って聞かれても、何も……みたいな」
N 「その質問って答えられないことが多いですよね」
K 「“どういう風な手順でライヴを進めていますか?”って聞かれても。ううーん、みたいな感じによくなってしまって」
N 「でも聞きたくなる気持ちはめっちゃわかる。ソロも長いんですか?」
K 「ソロのほうが長いです。18歳くらいからかな」
N 「あ、ではそれが最初のスタイル?」
K 「そうですね」
(ポゴスティックで跳ねている子供がいる)
N 「あれ私もやりたい」
K 「私絶対できない気がする。運動神経悪くて」
N 「私も悪い」
K 「2回跳べるか?」
N 「たしかに。あの子うまい気がする」
K 「絶対うまい。新宿にこんなところあるんですね」
N 「ときどき緑を持ってますよね、東京って。温室こんな風になってるんだ。南国」
K 「温室でふたりでしゃべってたら花の話ばかりしちゃいそう」
N 「ね」
――沼尾さんは、同じ曲でも観る度にすごく変わるイメージがあります。
N 「それはみんなに言われるし、本当にそうだと思います。曲があるけど、私はいったいこの曲のどこまでを曲だと思っているんだろう?って思うくらい姿が変わるというか」
――それは角矢さんが同じ機材でも同じライヴにならないように、沼尾さんは曲があっても賭けに出ているというか。
N 「たしかに。さっき角矢さんが言っていた、失敗したり、へたになったりもするっていうのがいいなって思っていて。それと同じようなリスクを背負っていたい。常に同じトラックが用意されているみたいな、いつも変わらない演奏を毎回するみたいなのには全く興味がなくて」
K 「私も興味ない。HYPER GALも作ったトラックをパソコンで流せば簡単なはずだけど」
N 「でもそれは別におもしろくないかも」
K 「うん、ライヴやらなくても、音源作るだけでいいんじゃない?って思っちゃう。逆に音源を作るときはライヴじゃない音も入れたい」
N 「作るときは作る」
――音楽に限ったことではないけど、1回やってうまくいったことって繰り返してしまうことはありますよね。
N 「でも、うまくいったことを繰り返してしまう怖さもある」
K 「わかります」
N 「その怖さが私はあまり好きじゃない。その怖さのほうが怖くて、新しいことを探していくほうが楽しい」
K 「楽しい、ね」
N 「そこに失敗の可能性があったとしても、ってやっぱり思う」
――柳の下のドジョウは探さないということでしょうか。
N 「それなんでしたっけ?」
K 「ピンときてない」
――同じところでドジョウは獲れないということわざですが……。
N 「ああ、ドジョウがいない」
K 「知りませんでした」
N 「パッとわからなかった。いや、それはしないですね。キタダケソウ……」
K 「アメリカに行ったときに、咲いている花の色が全然日本の感じと違っておもしろかった」
N 「植生っておもしろいですよね。木の感じを見たら、ここは日本じゃないんだ、とかある」
K 「建物とかより植物のほうが異国に来た感じがする」
N 「緑の色も違うし。私、食虫植物好きです。育てたことないんですけど」
――おふたりとも、ソロもやってバンドもありますが、意識の違いはありますか?
K 「一緒にやってるはっちゃん(石田小榛)は自分と全然違う発想があるなあと思っていて。たぶん自分と似たタイプの人とバンドってやらない気がするんですよね、私」
N 「ああ、そうなんですね」
K 「違うセンスの人とやるから新しいものが生まれそうみたいな。ドジョウ……」
N 「あっちにドジョウ……」
――ドジョウの使いかたが間違っています。
K 「自分と似たタイプの人とやっても良くなるだろうけど、良くなる可能性がなんとなく予想できるじゃないですか。これくらいの良さで止まるじゃないけど、天井が見えてしまう気がする」
N 「そこの塩梅、バランスがある気がします。あまりに一緒過ぎても行き止まりがすぐに見えるっていうのはわかる。私はいろんな人と演奏することがけっこうあるから、その中でこれは間違いなくおもしろいよねって始めたやつが、意外とすぐに、おもしろかったけれど、おもしろくないことはないけれど、これ以上まだやりたいか?どうなんだろうか?って疑問に思うことはあるから、それに近いのかも。それでなんだか守りに入ってしまうみたいな状態?」
K 「あるかもしれないですね」
N 「常にちょっとリスクというか、見えないわからなさがあることのほうが、続けたいって思える」
K 「ワクワクする」
――かえってソロのほうがリスクを負いやすいということはありますか?
K 「逆に人に迷惑をかけることがないから、なんでもできるかもしれない」
N 「ソロでもやっているっていうのは強いと思っていて、まず自分がやりたいと思ったことを100%自分の状態で出せる。そういう形態を持っているのって、いいなって。自分ひとりでやるときもいろんなことができたらいいと思っているので、それがあって、人とのやつもあって、というのがいいのかも。人とやるときは、その人のパワーで広がりがあって、それがめっちゃおもしろいけど、ある程度頼っている部分があるから、そうじゃないときがあるのはいいなって思ってます」
K 「たしかに。人からフィードバックされるときもあるし」
N 「ある。めっちゃわかります。シークヮーサー……。沖縄に行きたくなる。めっちゃトゲある」
K 「沖縄行ったことないんですよね。あ、こういう垂れている枝好きなんですよね。周りに葉っぱがびっしり這っている家に住みたくて。ああいう家に住んだらかっこいいなって」
N 「ちょっと古い家ですよね。そんな家から角矢さんの音が聞こえてくるっていうのはヤバいかもしれない。エジプト、パピルス?紙なんですね。シダ?」
K 「これかわいい。モコモコ」
N 「かわいい、カーペット感。なんだか植物じゃないような質感。チェリモヤ。名前が気になる。チェリモヤ」
K 「あれかわいいですね」
N 「あ、あれかわいい!」
K 「チリチリ、あの木、独特」
N 「あれって何か別のものが生えているんですか?」
K 「でも繋がっているような。奥に別のやつがあるのか」
N 「どうなんだろう?あそこに土みたいなのが溜まっているから、そこから生えている可能性が。家に植物ありますか?」
K 「ないです。枯らしてしまうので」
N 「あ!同じです!」
K 「でも去年の夏はプチトマト栽培に挑戦して、食べられました」
N 「尊敬します、それは」
K 「トマトがめっちゃ採れちゃって、食べるのが義務みたいになっちゃって」
N 「でもそれはいいですね。角矢さんリコピンめっちゃ摂ってる」
K 「義務になっちゃって、趣味としてはあまり良くない……」
N 「今年はやらない?」
K 「悩み中です」
N 「でもすごい。私は本当に枯らしてしまう。絶対に枯れないような丈夫な植物も。ほったらかしちゃうんです。いつの間にか干からびてる」
K 「花は飾るときありますけどね。花瓶に」
N 「あるといいですよね」
――皇族の何かだった建物です。
K 「素敵、お嬢様が住んでそう。天気いいですね」
――沼尾さんはどんなペースで曲を作っているんですか?
N 「全然作っていないです……、でも時によるんですけど。すごい作るときもあれば」
K 「私もそうです。ガッと作ったり。でも最近は作ってない。季節とかもあるかもしれないです」
――入れるみたいです。
N 「曲ってどうやって作ります?」
K 「手を動かさないと作れなくて。布団の上にキーボードを置いて寝ながら触って、ニュニュニュニュニューって遊んで」
N 「では作るときはアナログ?」
K 「めっちゃアナログです。ひとりでスタジオ入るときもあるし」
N 「ドラムを叩きながら?」
K 「ドラムもだし、キーボードもでかい音で出したほうがいい気がする」
N 「よりライヴに近い状態で。あはは、温室で植物を鑑賞される際の休憩室。壁紙も床もにぎやかで、これで休憩するのか……」
K 「あ、かわいいあの椅子。家にあったらいいなあ」
N 「欲しい!持っていきましょうか」
K 「あの椅子で沼尾さんがライヴしたらかっこいい」
N 「たしかに。椅子を持ち歩いて……」
――ボイラーマンがいたんですね。
K 「すごい。お風呂を沸かすだけの仕事」
N 「お嬢様、お風呂をお沸かし致します……。電気がかわいいですね。全体的に色がいい」
――温室に行く専用の廊下があるようです。いいご身分ですね。
N 「いいご身分なんです」
K 「やっぱかわいいな、あの椅子。クジャク?植物?」
――温室に合わせているのかもしれません。
N 「ちゃんとデザインして」
K 「特注……。あ、かわいい、あの花」
N 「かわいい、なにこれ。ポップコーン」
K 「たしかにポップコーンっぽい。ああ、壁紙も植物だし」
N 「温室を意識しているんですね。お邪魔しました」
――演奏しながら、マズいって思う瞬間はありますか?
K 「最近は人とやることが少ないんですけど、初対面でデュオみたいなときは何回か思ったことがあります」
N 「それはある。それこそ初対面で」
K 「音的には合うと思って組んでもらって、良くなりそうなのに、性格が全然合わないのかな。逆にすごくうまくいくこともあるけど」
――角矢さんの音楽に性格みたいなことは反映されているんですか。
K 「反映されていると思います。思い切りの良さとか、あまり迷わなかったりするので。探り探りに来られると戸惑っちゃって。ガッと来られたほうがガッと行きやすいというか」
N 「私も出音がそんなに大きくないから、そっと弾いてあげようみたいなことをやられたときはマズいっていう状況になりやすいです」
K 「そうですよね。遠慮しちゃわないほうがいいですよね」
N 「そういう捉えかたを私はして欲しくないし。“この人は、はい、そっとやりましょう”みたいな」
K 「あと、一緒にやっている人に“メインはこっちだから”みたいな態度をとられると、うまくいかないことが多い」
N 「あ、ありますね。すごい気を遣って向こうの本来のパワーじゃない状態でこっちを立てるようにしたりとか、遠慮したりとかっていうのは……。決めてかかってこられるのは困る」
K 「うまくいかないがちですよね」
N 「うん、いかないがち。それはすごいわかる。向こうも本来の姿じゃないし、こっちも本気出せないしみたいなときはマズいってなるかも」
K 「マズい、冷や汗……みたいな。おお、いい天気」
N 「いい天気、なんだか、楽園だ……」
――池のほうに行ってみましょう。
N 「池……。曲の作りかたがまだ気になってます。スタジオに入って?」
K 「スタジオに行っても全然うまくいかない日のほうが多いですね。ボツが多すぎ」
N 「え、ボツにする曲多いですか?」
K 「多いです。私がリフを考えてからはっちゃんに渡すんですけど」
N 「そこに歌を乗っけてもらうんですか?」
K 「そうです。でも、渡すまでにも至っていないやつが大量にある。ひとりで勝手にボツになってる」
N 「歌から先に作ることはないんですか?」
K 「ないと思う。でもトラックも全部作るわけじゃなくて、ループのリフだけ決めて、なんとなくそれに合わせた構成でドラムを叩いて渡すけど、歌が乗って構成が変わるから……みたいな感じですかね」
――完成形はどの程度見えているんですか?骨組みだけ?
K 「そうですね。リフだけ」
N 「歌が乗って広がったりとか」
K 「そう、だから変な倍数の曲多いと思いますよ。4の倍数でBメロに行かない曲。歌詞にあわせて回数が決まってるから」
N 「基本は共同で作っているんですね」
K 「はい、共同で。あと、私たぶん3拍子が好きなので、音楽に詳しい人だと歌が載せられないかも。変な拍子の曲もけっこうあって、そこにうまく乗せてすごいなっていつも思う」
N 「言葉の乗せかたがすごくいいなと思ってます」
――ミックスしているときに意外と歌詞が重要なんだなと気が付きました。
K 「歌詞は重要ですね」
N 「“全部知ってる おまえのことも”でしたっけ?HYPER GALの1stアルバムの1曲目。あれ、好きすぎる。聴いたあとずっと頭の中で鳴ってました。歌詞いいですよね。全部お任せなんですか?」
K 「全部任せてます。あ、池だ。池を眺めましょう」
N 「私、誰かと曲を作ることってほぼできないんですよ」
K 「私もたぶんできないです」
N 「HYPER GALは分業?曲的なところは角矢さん?」
K 「歌詞のメロディを作ったりもあまりしないです」
N 「ああなるほど。歌詞とメロディは石田さん」
K 「たまにやりますけど、でも1、2曲くらいしかやっていないですね。全部自分が決めちゃうとおもしろくない」
N 「そこもなんですね。曲を作る段階でも人の予測不可能要素が欲しい?」
K 「欲しいです。自分が思ってもいないメロディがあったほうが」
N 「たしかにそれはおもしろいですね」
――沼尾さんも、曲があるという段階では完成形が見えていない、曲を再現するというつもりでは演奏していない?
N 「そうですね。ある程度ひとりで演奏するかたち、ギター弾きながら歌うという状態はできてる。私の場合は、歌詞がある曲だと、メロディに歌詞を乗っけた状態で完成とするので、そこまではやるんですけど。でも、細かいアレンジとかは決められないし、決めないので。けっこう崩す余地というか、解釈の余地がいっぱいあるから、人と演奏すると姿が変わるし、やるときによっても変わる。そこに余地があるものを作りたいと思っている。だから変わっていく状態なのかな?自分でやるときも、ピアノで作った曲はあとからがんばってギターで練習するみたいなことがけっこう多くて」
K 「難しそう……」
N 「そう!難しかったりする。ピアノだと押さえられたコードが、ギターだと指がめっちゃ開いちゃうとか。でもそれでまた新しい状態になるとか、それこそさっき角矢さんが言っていたのと一緒で、誰かとやったのがフィードバックして、この曲がこういう姿にもなるんだったら、弾き語りのときもこんなやりかたができるかも、みたいなこともあるし。できたときに一応曲のかたちは定まっているけれど、全然変わる余地がある状態。そこに予測不可能な要素がある、あってほしいと思っていて」
K 「たしかに、予測不可能要素大事」
N 「大事!見えていたら、うーん」
――沼尾さんを“シンガー・ソングライター”みたいに言うことにすごく抵抗があります。作った曲を歌っているというよりは、その場で音楽にしているというか。
N 「そうですね」
K 「沼尾さんに対してシンガー・ソングライターとか言いたくないな。軽く見ているように感じてしまう。シンガー・ソングライターが悪いわけじゃないですけど」
N 「そう言っていただけるのはめっちゃ嬉しいというか、シンガー・ソングライターは好きなんですけど、でも自分にはなんだか当てはまっていないと思う」
K 「“女性シンガー・ソングライター”とか書かれるとイラついてしまうかもしれない」
N 「だから説明するとき難しくて。自分の書いた曲を歌っていますって言ったら、それだけ聞いた人は“やっぱりシンガー・ソングライターみたいなことだね”って言われて。もう面倒臭いときは、はいって言うけど」
K 「モヤっと」
N 「当てはまんねーみたいな」
K 「なんでもカテゴリーにしようとするのもモヤっとします」
N 「ああ、わかります」
――角矢さんも“若手女性ノイズ・アーティスト”とか言われてきたのでは?
K 「さんざん言われて。よくイラッとしてました」
N 「そうですよね」
――角矢さんや沼尾さんの演奏を実際に聴いたら、そこにラベルを付ける必要がないということはわかると思います。でも聴かないでカテゴライズしたい人はいますからね。
K 「そうなんですよね。演奏を観たらわかってくれると思うので。いつもライヴに来てくれる人とかはあまり言わないですね。現場に来ない自称ノイズ好きの人に書かれがち。たぶんカテゴライズしたいんですよね」
N 「“この人はここ”みたいなボックスを用意して、遠くから観て、遠くから聴いて勝手にカテゴライズしたい人。聴かないで何をやっているか知りたい人には、まあちょっと知りませんね、みたいな」
K 「HYPER GALもけっこうカテゴライズできない音楽をやっているから、難しいですね。文章とかにされるとき」
N 「うん、そう!プロフィールを書くときの肩書みたいなのが難しい」
K 「どんなジャンルの音楽か、とか書けない。とりあえず聴いてくださいということなんですけど」
N 「本当はそうなんですけどね。でもその前の文章となると、難しい」
K 「ノイズの音源も、そんなにノイズじゃないしな。あまり同年代のノイズの人がいないからそうなっているだけで。全然ど真ん中でノイズはやっていないから」
N 「そう呼びたい人が出てくる。世の中にいろんなものが溢れているから、まとめたい気持ちもわかるけど」
K 「でもいろんなものがとっ散らかっている状態で、それでいいのになあと思います」
N 「そうしておいてほしい」
K 「ここって桜とか咲くんですか?」
N 「これ桜ですよね?」
――ここは安倍が桜を見る会をやっていたところですよ。
K 「あ!ここか!」
N 「やばい。世の中……」
K 「世の中のことを考えずに音楽やれたらいいですけどね」
N 「ね、本当にそうですよね」
――ではあとはおふたりだけで……。
N 「散歩しながら話してきます。何を喋りましょう」
K 「戻って来られるかな?何喋りましょう。でも共通点がいっぱいあって」
N 「ね」
K 「ジャンルも全然違っていないのかも。昨日のライヴでも、静と動とみたいな」
N 「なんだか不思議ですけど、結局一緒なんじゃないかという」
K 「一緒な気がしてきた」
N 「一番表面の出音だけが違うけど」
K 「私はけっこう音で埋めている感じがするけど、沼尾さんは空気がピタッみたいな感じがあって」
N 「たしかに、空気が止まった状態?」
K 「ライヴで、曲と曲の間で拍手が起きなかったのが、すごかった」
N 「けっこうあるけど、昨日は特にならなかったですね。一旦その曲は終わったけど、続いている。ワンセット続いていけたらと思っているし、それが聴いている人に伝わったときは、ああなる」
K 「曲の間の空気が独特っていうか。あれがライヴっぽくて。緊張感があるし」
N 「そうですね。ずっとある状態、弛緩しないというか」
K 「こちらは物音を立てられない」
N 「そう、緊張感は強要しているというか、ワンステージぜんぶ終わるまで途切れることなく聞いていただいているみたいな部分はあるなあと思っていて。曲の中の間と一緒に曲と曲の間も現れる」
K 「(客席にいた)子供の声とかも楽器の一部みたいでした」
N 「あ、そういう風に聴こえてたら嬉しいなって思ってました」
K 「場所によって全然違うんだろうなっていう印象があります。聴こえかたとか、昨日は物音を立てないお客さんばかりだったけど、野外とかでも観てみたい。こういうところとか。環境音的な感じになって、めちゃくちゃいいんじゃないか」
N 「そう、それけっこう今やりたいことかも。嬉しい。半分の意識くらいで聴いてもらうときもあったらいいなって」
K 「それもいいし、昨日みたいにグッと真剣に聴くのもいいし」
N 「やっぱり真剣に聴いていただくことが多いし、特に七針なんかは集中する空間で、人によっては緊張するって聞いたことあるけど」
K 「公園でやったらいいな。聴いている人もいるし聴いてない人もいる、みたいなのはけっこう好き」
N 「めっちゃわかります。それ、演奏する側も心地良いですよね。それすごくやりたいこと。楽しそう」
K 「ヨーロッパでライヴすると、日本より好きに聴いている人がけっこう多くて」
N 「たしかに、過ごしたいように過ごしてくれている感じですよね」
K 「なんか咲いてる、桃?桜?」
N 「本当だ。桜っぽいですね。もうあったかいか。きれい。全然音楽と関係ないけど、自炊ってしますか?」
K 「自炊しますけど、こだわりなくて、適当。納豆ご飯とか」
N 「めっちゃ一緒かもしれない。納豆ご飯多いです」
K 「凝った食べ物を作ったりはしない、鍋のような何か、とか」
N 「うわ、めっちゃわかる!私の場合は家のコンロがひとつなんですよ。だから鍋ひとつに、すべてを入れる」
K 「私もひとつで。鍋と言えるほどの存在ではない」
N 「めっちゃ一緒だ。やだ。家にある何かを煮込んだもの」
K 「家にある野菜と肉を煮込んで、それにポン酢をかけて食べたりとか」
N 「やってます。それでご飯食べて。納豆を食べるときもあるし」
K 「納豆とかキムチとか。自炊してますと堂々とは言えないかもしれない」
N 「一緒です。凝ったものじゃなく、シンプルに作ればいいのよっていう。料理が好きですとは口が裂けても言えない」
N 「でも出来合いのものを買ったりはしないですよね」
K 「しないかな。コンビニのごはんは嫌いだし、おいしくない。添加物みを感じるのが嫌で。だから作っているけど、好きなものが出来合いで売っていればたぶん買ってる」
N 「ないですもんね。家で作る適当に何か煮たみたいなものは。わかります。私もそんなんです」
K 「しゃーなし自炊ですね」
N 「そう、とにかく栄養を摂るみたいな」
K 「ちょっと調子悪くなったら野菜を多めに煮たりして」
N 「そうそう。タンパク質と思ったら必死に肉買ってきて、煮る」
K 「面倒臭くて、昼も夜も納豆ご飯しか食べていないみたいな日もある。あれ、今日おかず食べてないかも、みたいな。自炊するのがだるくて、おなかすいてるけど寝ちゃう日もありますね」
N 「えー、それは私ないかも。おなかすいているのには勝てない」
K 「食べたいものないな、ってなって。しゃーなし納豆ご飯食べるか、寝るかどうしようってなって、寝る日もあります」
N 「そっか、でもそれが気になって聞きました。やっぱり忙しかったりすると、自炊ができないけど売っているものは食べたくなくて、でもおなかもすいてどうしよう、みたいな」
K 「食べなきゃいけないけど、コンビニのご飯は嫌だ」
N 「そうそう、同年代の同じような生活をしている人が、どういう食生活をしているのかちょっと気になるところで。自分がうまくいってないから」
K 「丁寧な暮らしをしている人はすごい」
N 「無理!」
K 「沼尾さん、第一印象だとけっこう丁寧な暮らしに見られそう」
N 「よく言われます。まあだから、そう思っておいてくださいと思ってます。おいしいものは好き」
K 「私も。ひとりで飲みに行ったりけっこうします。誰も話しかけてくるなオーラを出して」
N 「そうなんですね。なるほど、ずっとひとりで。私はひとりで食べるのがあまり得意じゃないって最近気づきました。ひとりだと面倒臭いが勝ちがち。だから人とおいしいもの食べに行くとかはめっちゃ好き」
K 「面倒臭いも勝つけど。人と食べるのも好きだけど、ひとりでも全然楽しめる」
N 「時々ひとり飲み時間も取れるっていうことですよね。話しかけるなオーラを出しながら」
K 「バイトの終わりに梅田の駅ビルで、とか。でも髪切ってから話しかけられなくなった」
N 「あー、ひらひらってブロンドだったら声かけてくる。やだ。髪を切った理由は?」
K 「特に理由はなくて、でも坊主は人生で1回やってみたいってずっと思っていて、やっと踏み込めた」
N 「めっちゃかっこいいし、色で遊んでいるのもいい。私も6年くらい前かな、坊主にしたんですよ。人生のどこかでやらなきゃいけないっていう気持ちはあって。バリカンでウィーンって刈りました。今、私が下側だけ刈っているのは気持ちが半分あるじゃないですけど。金髪とかしたかったなって。でも青めっちゃいい。ドラムを叩いているのも髪型に合ってるなって思って見てました」
K 「えー嬉しい。昔は髪長いドラマーが好きで。髪をぶんってするのがかっこいいなって。それであまり切らないようにしていたんだけど。もはやどっちでもいいかな。でもノイズも髪長い人が多いかも。動きが映える。躍動感が付くのかな」
N 「たしかに動きが出るし、顔を隠せる。でも切ったんですね」
K 「切ったら意外と似合ってよかった」
N 「ね。めっちゃ似合う」
K 「切るまではどうなるか不安で、美容師さんに頭のかたち大丈夫ですかね?って聞いたんですけど。10年くらい通っている人だったから、信用して」
N 「いいな、私もやりたくなっちゃうな」
K 「でもめっちゃ楽ですよ。洗ってふいたら乾いてるし。最近バリカン買って自分でやっていて、染めるのも自分で、美容室代がかからなくなった」
N 「自分で刈れるのすごいですね。私はうまくいかなくて、結局人にやってもらわないと無理だってなって」
K 「最初はひどくて、ボコボコになったけど、だんだんうまくなってきた」
N 「やっぱり継続ですね。そうか、自分でできたら坊主もいいなあ。何mmで刈るんですか?」
K 「11mmだったかな。うまくいかなかったところはハサミで」
N 「すごい。そうなんですね」
K 「どこか忘れちゃった。あの辺?こうなる気がしてた」
N 「迷子……。あっちのほうから歩いてきた気がするから向かいましょう」
K 「場所とか全然覚えられなくて」
N 「私も、方向わからなくなります。全然無理ですね」
K 「北とか言われても、は?みたいな」
N 「ね、そう。方角は全然わからない。私は大きい空間が捉えられない」
K 「私もキャパとか言われても全然わかんないし。お客さんの人数を聞かれても、わからない」
N 「でかいとかちっちゃいとかでしか言えない。人口とか、国の面積とか数字で言われてもピンとこないし、めっちゃ大きいんです、とか言ってしまう。なんだか共通することが多すぎて、同意して終わってしまいそう」
K 「ライヴハウスとかも、何人入るくらいとか言われても広さがさっぱりわからない。池はどこだ?」
N 「けっこう歩いちゃったのかもしれないですね。私は、わかんないけど適当にいればなんとかなるだろうって思っちゃう派なんです」
K 「ああ、私もまあ、そう。このくらい、みたいな」
N 「でもふたりとも作っている音楽的にやっぱり空間が影響するというか。大きさとか響きかたとか」
K 「影響しますね。たしかにそれは共通しているかも。狭い場所と広い場所では全然聴こえかたが違うし。PAとかでも」
N 「だから空間がすごく重要ですよね。昨日はそれがすごく良かった。七針でのHYPER GALヤバかった。広い場所でも聴きたいって思うけど、昨日はよかったですね」
K 「なかなかできない組み合わせ」
N 「ちゃんと夕方になってきましたね」
K 「沼尾さんは歌詞と曲だったらどっちから?」
N 「ほぼ曲からですね。歌詞はすごいあとなんですよ。昨日の1曲目は新しい曲で、歌詞がまだ付いてなかったんですけど」
K 「付ける予定なんですね。ああいう曲なのかと思った」
N 「それでもいいんですけど、付けてもいいと思っていて。歌詞があることとないことがすごく違わない、自分の中ではそんなに差がなくて。でも、表現は変わるし、音の動きも言葉が付いたら変わるから、どの状態でも歌えるようにしていたい。歌詞がついてる曲を“Uh-”だけで歌うときもあって。だから先に曲があって、音の動きから言葉を拾ってくるみたいなことがけっこう多いかも。角矢さんは先にトラックを作るんですよね」
K 「そこに言葉が乗ってくる」
N 「おもしろいですね。でもきっと曲の印象から生まれてきてる」
K 「それもあるのかな。どうなんだろう。はっちゃんに聞いてみないとわからない。メロディも作ってないし」
N 「そこを分担しているのめっちゃおもしろいですね。すごいな。私も1回、トラックみたいなのを作ってくれて、メロディと歌詞乗っけられますか?っていうのをやったことがあって。それ普段は本当にやっていないから、全然難しくて」
K 「歌のメロディを考えちゃうと言葉が制限されちゃうから、文字数とかをはまらせないと」
N 「そう、だからそのとききっちりしたメロディが作れなくて。ABCとか曲の構成がしっかりしたものにできなくて。かなりかたちの定まりきらない、トラックの上で言葉を喋っているくらいの緩いメロディを作っちゃって。それはそれで完成させて、作品としてできたんですけど」
K 「それでいいかなって思ってるかもしれない。でも別に決まっていなくていいし、そもそも音楽って」
N 「ね、決めたけどライヴ毎に違うとか」
K 「音源では違うことができたり」
N 「うんうん、それもやはり予測できないこと」
K 「共通点が」
N 「共通点多すぎますよね。結局めっちゃわかるわかるってなっちゃうことばかり。あまり違うかもってならない」
K 「わかるわかる話。写真を撮ったときもマッチしていて」
N 「あんなに出音が違うのに、っていうのがヤバい。めっちゃおもしろいです」
HYPER GAL Instagram | https://www.instagram.com/hypergal__/
沼尾翔子 Official Site | http://shoko-numao.com/
■ 2026年4月10日(金)発売
HYPER GAL
『Our Hyper』
SKiN GRAFT Records
https://hypergal.bandcamp.com/album/our-hyper
[収録曲]
01. Killua
02. Null
03. Hazy
04. I said,You said
05. I do me
06. Fade Out
07. Tinnitus
08. Mere Wisp
■ HYPER GAL Tour of Europe 2026
2026年4月25日(土)ルクセンブルク "Out Of The Crowd Festival"
2026年4月27日(月)フランス リヨン Sonic
2026年4月28日(tue)スイス ジュネーブ Bongo Joe Records
2026年4月29日(火)スイス ローザンヌ La Brèche
2026年5月1日(金)ベルギー ブリュッセル Magasin 4
2026年5月2日(土)ベルギー シャルルロワ Le Vecteur
2026年5月3日(日)ベルギー リエージュ KulturA
2026年5月5日(火)ベルギー ヘント Klub 9030
2026年5月6日(水)オランダ デンハーグ Musicon
2026年5月7日(水)ドイツ ハンブルク Hafenklang
2026年5月8日(金)デンマーク コペンハーゲン "A Colossal Weekend"
2026年5月9日(土)ドイツ ベルリン Kastanienkeller
■ 2026年4月12日(日)発売
Uquwa
『Peering into flowers』
CD UQW001 3,000円 + 税
https://lit.link/uquwa
[収録曲]
01. Drizzle
02. Amber Flower
03. The Wind Chime
04. 山吹色の海 Yamabuki Coloured Sea
05. Birds Are Coming
06. 雨音 Amaoto
07. ゆきどけ Snow Melting
08. 蛻 Monuke
09. Uruwashi
10. つづみ Tsuzumi
■ 2025年11月1日(土)発売
沼尾翔子
『The Siwnin Sails 青い帆』
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https://www.elsewheremusic.net/store/p147/The_Siwnin_Sails.html
[収録曲]
01. Drizzle
02. Ocean Voyage 船旅
03. Pyrethrum
04. Monuke 蛻
05. A Rumor of Foxes 狐の噂
06. Notsuki ノツキ草
07. Reminiscence
08. Glory Bush Nobotan
■ 沼尾翔子
ソロアルバム『The Siwning Sails – 青い帆』CDリリース記念コンサート
2026年5月23日(土)
東京 早稲田 早稲田奉仕園 スコットホール
開場 17:30 / 開演 18:00
前売 2,500円 / 当日 3,000円(税込)
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※ お問い合わせ: elsewhere







