文・撮影 | パンス
2024年11月
私は年に3回くらい韓国に行っていて、そのたびに「旅行記を書きたいな」と考えるのですが、日々のドタバタ、もしくは次の韓国旅行の計画を立てているうちに結局書けぬままとなってしまいがちでした。しかし、最近になって時間もそれなりに工面できるようになったので、去年11月に行った際の記録を書き、ここに公開します。主に食べたものについてです。
東大門デザインプラザ(동대문디자인플라자 | DDP)近くの小さな宿に到着。無人と聞いていたが、中に入ってみると主人がいて、会うなりみかんを6ついただいた。先日台北に行ったときも宿のおじいちゃんにみかんをもらったので、不思議な縁である。
荷物を置いて、早速外出。まず行きたかったのが「空間ティットンサン(공간 뒷동산)」というレストラン。2020年にオープンしたお店。入ると店員のかたがDJしながら注文を取っている。予約せずふらりと来てしまったのだが、カウンターの席を案内してもらった。モダンジャズ期の渡辺貞夫がかかっていて素敵である。
ここで食べたかったのは、ごま油で和えたまぜそば。Google翻訳で青唐辛子、サンチュ、椎茸を和えていますと説明された。香ばしくてスルスルと食べられるし、つまみにもなりそう。というわけで、自家製マッコリをボトルで頼む。これが実にうまい。ほとんどアルコールを感じないので、カルピスを飲んでいるような気分になるのだが、だんだんほろ酔いになってくる。付け合わせで出てきた米麹に漬けたという大根キムチもつまみながら、ひとりで500ml全部飲んでしまった。店主は空間デザイナーでもあるそうで、おしゃれ過ぎない、ちょうどいい感覚のあるインテリアがたくさん。
すでにかなり満足だが、もう1杯くらい行きたいなと、忠武路に移動してぶらぶら散歩。いい感じの酒場が立ち並んでいるものの、どこもそろそろ閉店しそうな雰囲気なので入りづらい。乙支路3街まで歩き、「The Edge」というバーに。昼は「Clique Records」として営業していて、90年代ハウスやテクノ、ニューウェイヴ、その他バレアリックな12"を取り扱う素敵なレコード店である。壁にはYMOのレコードが何枚も飾ってあった。ジントニックを飲んで、いい気分のまま乙支路から東大門のホテルまで徒歩で戻る。
昨日は少々飲みすぎたけど、気分良く起きられた。朝から早速動き出そうと決意。朝ごはんを軽く食べたいと思い、ホテル近くの平和市場あたりをうろうろ。
まずは焼き魚定食を出す店が並ぶ「焼き魚横丁(생선구이 골목)」へ。炭火で焼いた魚の匂いが漂ってきていい感じだが、魚がデカい。しかもサービスでもう1匹もらえることもあると聞いていたので、それでは量が多くてひとりでは食べられなさそうなので、近くにある동진분식(トンジンブンシッ)に。분식(粉食 / ブンシッ)とは“粉もの”みたいな意味だが、粉ものなどを含む軽食全般を指しており、韓国ラーメン、トッポッキ、キンパプなど簡単なものを食べることができる。ここは市場で働く人たちが腹ごしらえをする店のようで、入ると朝から活気があり、席はすっかり埋まっている。どうしようかなと思ったら、2階が空いていると案内された。참치김밥(チャムチキンパプ: ツナのキンパプ)と라볶이(ラポッキ: ラーメンとトッポッキのかけ合わせ)を注文してみたら、かなりのボリューム。わかめスープもついてきた。
一旦ホテルに戻って腹を休めてから、レコードの旅に。まずは鍾路周辺を。松田聖子のLPが日本円で4,500円くらいになっているのが印象的だった。これもNJZ効果か。
とりあえず鍾路の北に向かい、久々に食べたかった을지면옥(ウルチミョノク / 乙支麺屋)に。以前は乙支路にあったのだが、再開発でここに移動したのだ。店内はコンクリート作りのおしゃれな感じになっていたが、味は以前と変わらず感動。しかしさっき食べ過ぎたあとだったので、けっこうしんどかった……。
午後は「SEOUL ART BOOK FAIR」へ。ソウル郊外の하계(下渓 / ハゲ)という街で開催されていて、東大門から二度くらい乗り換えてようやく着いた。日本から来た友達や韓国の友達に挨拶して、いくつか購入。喉が渇いたので美術館に併設されているカフェに入るが、クレジットカードがうまく読み込めず、ワタワタしてしまい断念。近くの商店でオレンジジュースを買って、歩き疲れたので休憩所みたいな部屋のソファーに座って休む。
ひとしきり見て回ったので、僕はひとりで再びレコードの旅へ。1時間くらいかけて신당(新堂 / シンダン)に戻り、また喉が渇いてきたので、ソウル中央市場周辺でどこかカフェに入ろうと検索したら、家具店が揃う通りに1軒あった。いちごジュースを飲む。若い店員さんは突然日本人が来たことに驚いていて、日本語で話しかけてくれた。勉強しているそうだ。
あちこちの店でレコードを見たけれど、今日のところは1枚買って満足し、ホテルに戻って少し寝る。
夜になって腹が減ってきたので外出し、今回行きたかったウズベキスタン料理の店に。東大門には中央アジアから来た人たちのコミュニティがあり、通りの一角に彼らが集う店が立ち並んでいる。朝の早い時間には中央アジアの食品などを売る小さな市場も開かれていて、以前から気になっていたのだった。
中でも代表的な店「サマルカンド」に入ると一気に風景が変わり、お客さんも中央アジアの人ばかりである。僕の目当ては「ラグマン」。ウズベキスタンなどで食べられている、うどんのような料理である。ほんのりとクミンの香りがするトマトスープで、セロリ、玉ねぎ、ピーマンなどと一緒に、ボソッとした食感のうどんのような麺が入っている。卓上の塩で味を調整しつつ食べる。ビールも頼むと、付け合わせで人参を千切りにしたピクルスのような料理が出てきた。写真だといまいち大きさが伝わらないのだが、ひとりで食べるにはわりと多い。完食できるか不安だったが、ほどよい酸味でビールにぴったり。ガツガツ食べてしまった。その後、電車で梨泰院のクラブ「cakeshop」に移動し、少し飲んで帰宅。
11月16日(土)につづく!
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テキスト・ユニット「T.V.O.D.」の片方。
「百万年書房LIVE!』にて「ポスト・サブカル焼け跡派」連載終了、現在単行本制作中。
東アジアの近現代史とポップカルチャーを追う日々。
DJするのも好きです。