Interview | Rei


ストロボみたいに瞬間的に照らすだけでも

 アーティスト / ミュージシャンには、激しい表現衝動を抱えた人と、どういう音をどう鳴らすか冷静に考え抜く人の2タイプいると感じていた。むろん現実には、それぞれが様々な割合で両面を併せ持つのだろうが、なんとなくそれらは反比例の関係にあるという先入観があった。極端な例として、技術的には拙くてもエモーショナルに叫ぶロッカーを前者、依頼通りに曲を書いたり演奏する職人系を後者のイメージとしてあげれば、わかりやすいだろうか。しかし、このReiという人は、そのどちらをも極めて高いレベルで有している、狭い真部分集合のエリアに佇む希少な存在だ。その意味で、彼女がクラシック・ギターとブルーズを共に出自としている事実は、非常に象徴的だと思う。

 並外れたギタリストであることが強いファースト・インプレッションをもたらすため、どうしても“ギターが上手すぎる女の子”的なイメージが先行する状況に、必ずしも本人は満足していない様子?と以前から気にかかっていたのだが、最新作『VOICE』は、そこにしっかりと向き合った作品となった。歌と言葉へ注力した結果、ギターは看板スターの役目だけでなく影の功労者となるスキルを拡張し、歌詞は自己主張を肥大させることなく俯瞰的な視野を広げた。サウンド面では「CITY」でのマンドリン、「Call My Name」のストリングス、「朝」の鍵盤類などますます豊かになり、その結果、えも言われぬポップ感を煌めかせている。


 コラボレーション・アルバム『QUILT』を経て到達した大きな成果として評価しているが、Rei自身の話を聞くと、これもまた通過点でしかない、という感じがしてくるから、まったくもって油断がならない。


取材・文 | 鈴木喜之 | 2023年12月

撮影 | 久保田千史


――最新作『VOICE』については、これまで以上に歌や言葉に注力した作品と説明されていますね。Reiさんは自己紹介のとき、ずっと“シンガー・ソングライター / ギタリスト”と名乗っていることからも、自分はまずシンガー・ソングライターだという意識を強く持っているのだと思いますが、このタイミングで、こういう方向性に踏み出そうと考えた理由は何でしょうか?

 「ギターがきっかけで私の存在を知って、今も好きでいてくれるリスナーのことも大切にしていますし、光栄に思っているのですが、自分を構成する要素として、シンガーでありソングライターであるということも、より伝えていきたいなっていう気持ちがありました。ギターと比較して歌について言及されることもあって、技術的な部分で甘いんじゃないかとか、そういったご意見を、プロデビューするといろいろいただいて、それまで純粋な思いで曲を作ったり歌ったりしていた女の子が、歌ったり表現すること自体が怖くなった時期があったんです。仕事として、リスナーの皆さんに作品を買っていただくからには、避けて通れない道だとは思うんですけど、ちょっと自分の中で歌うことへの抵抗感が強くなってしまって。それが、『QUILT』という前作を、細野晴臣さんや長岡亮介さん、山崎まさよしさんといった交流のある様々なミュージシャンの方々とコラボレーションして作ったことによって、克服することができたという自覚を持てました。なので、歌うことへの恐怖心に打ち勝ったタイミングで、今だからこそ歌と曲作りをテーマにした作品を作りたいと思いました」

――Reiさんは、あれだけ優れたギタリストであるにもかかわらず、ひたすらテクニカルなことを追求する、いわゆる“ギター・ヒーロー”的な在りかたにいかないというか、ほとんど興味がないようにも感じられますね。
 「ギターは自分にとって大切な友達であり、相棒でもあるので、やっぱりギターにしか打ち明けられないことはたくさんあります。私たちにしかわからない絆があって、それはもう本当に他人が介入できるような、やわな関係ではないんですね。だからそういう意味でも、とっても愛おしく思っているんですけれども、それとは別のベクトルで、私が生きていて表現したいことっていうのは、歌とか歌詞とかルックスとかライヴとか、そういう具体的なことではなくて、人生を以って伝えたいメッセージがあります。そのメッセージを伝えるための表現方法として、音楽だったり楽器だったり、歌だったりというものを選択しているっていうような考えかたです。だから、それがギターである日があってもいいし、歌である日があってもいいし、インタビューでの言動でもいい」

――今作で、言葉を強調するために行なったことのひとつとして、歌詞における日本語の比重を増やしたという点が挙げられると思います。これについて、何か大変だったことなどはありましたか?
 「私にとってファースト・ランゲージは、どちらかというと英語なので、日本語に対しても、歌と同じようにコンプレックスというか苦手意識が長らくありました。苦手であるがゆえに、固執して高めようとする力っていうのは、歌に対しても日本語に対しても作用してきたかな、と思います。その結果が今回、作品に反映されていると思います。これまでは、歌詞において“意味”と“響き”のどちらを重要視していますか?と質問されたときに、“響き”だと答えていて、例えば、韻をきちんと踏むとか、リズミカルであるかとか、メロディとどう合うかとかなんですけど、それが英語をたくさん使ってきた理由でもあります。でも今回は初めて、“意味”を優先しようという決意のもとで歌詞を書き始めました。私見ですけれども、日本人は心と言葉の距離がとても近いな、って感じることがあります。歌詞もものすごく重要視して歌を聴いていると思います。だから、皆さんの心に一歩でも近づきたいという気持ちから、今作では日本語の表現を突き詰めて作りました」

――『VOICE』がリリースされてから、すでに多くの反響を受け取っていると思いますが、これまで以上に歌の部分が伝わっているという実感を得られているのではないでしょうか?
 「そうですね。ただ、やっぱり歌声がテーマとなってくると、ギターが物足りないって言われるんじゃないかという危惧はしていました。リリース前には、こんなメロウな曲調は求めていない!という意見も多数届く可能性もあると思っていたんですけど、意外と蓋を開けてみたら、ソングライティングの部分だったり、自分の音楽の特徴のひとつでもあるジャンルの多様性とか、そういったところを楽しんでいただけたみたいです。もちろん今作でも、歌がテーマですと言いつつ、全曲ギターも弾いているし、ギターの見せどころというのもかなり意識して作ってはいましたが、恐れていたよりも皆さん好きだって言ってくださいましたね」

――以前から、例えば「My Name is Rei」なんかまさに自己紹介だし、「Categorizing Me」も“勝手に私を枠にはめないで”という歌だし、歌の中で自分自身をかなり出してきていましたよね。それが今作では、より個人的な内容という感触が強くなるのかと思いきや、意外とそうでもなくて、逆に時代とか社会とか、そういう視点の広がりを感じられたことが興味深かったです。
 「そういう風に言っていただけて嬉しいです。人によっては“私小説的な作品だね”って言うかたもいるんですが。そうですね、今の社会とか世界に対して俯瞰で見た、自分なりの“2023年、地球”みたいなアルバムでもあります」

――例えば「Call My Name」では、「新しいギターを買ったよ」という一節が出てくるので、みんなReiさん本人のことだと受け止めて、そのまま冒頭部分で枯れた花を見ているのも、実際にReiさんが見た風景なんだと捉えると思うんですが、実は単に自分の寂しい気持ちを綴っているだけじゃなくて、世の中にたくさんいる孤独を抱えた人のことを考えながら歌っているんですよね。
 「そうですね、これは“愛しい人には存在を認めてもらいたい”っていう曲で。それはもちろん恋愛においても当てはまると思うんですが、家族だったり、仕事だったり、友情だったり、学校だったり、いろんな場所で、自分の存在自体をないものとして扱われる境遇のかたとか、拒否されているかたもいると思うし。自分の在りかたというのは、いろんな要素で構成されていると思いますけど……名前もそうだし、育ってきた環境とか国籍とか、文化とかジェンダーとか、いろんなことで人のアイデンティティって構成されていて、それを自分の大切な人には、肯定されなくてもいいから認めてほしい、みたいな曲でもあって。なので、そういう色んな境遇の方にとって、お守りになればいいなと思いました。ひとつひとつのモチーフ、例えば“枯れた花”っていうのは、もう蘇ることのない事象の比喩でもあるので、それを主人公は見ているわけです。生きている年数が長ければ長いほど、自分のアイデンティティというのが確立されてきて、いい意味でも悪い意味でも、もうそこが覆されることはないんじゃないかな?っていう気持ちになるときって誰でもあるじゃないですか。見た目もそうだし、仕事とか才能とかいろんなことが、長く生きてきた分だけ自分という存在はもう変えられないものとして確立してしまった、と感じる悲しさみたいなことを、枯れた花に例えています。でも、いつか名前を呼んでほしい、ある日その花がもしかしたら蘇るかもしれない、という希望の曲でもあるんです」

Rei | Photo ©久保田千史

――それから「RICH KIDS」も、自分だけのことではなくて、ひとつの世代について歌っていますよね。
 「はい。いわゆるマイ・ジェネレーションの曲を書きたいなあ、と。それなりに活動の年数を重ねてきたことで、同じ志の仲間、話の通じる仲間ができてきたな、という気持ちに最近なれたので、そういう同世代のがんばっている人たちとの関係を描きたいと思いました。コラボレーション・アルバム『QUILT』を出したときもお話しさせてもらったのですが、自分がその音楽の景色の一部になっているっていう喜びがあります。例えば、かつて大瀧詠一さん、山下達郎さん、細野晴臣さん、矢野顕子さん、大貫妙子さん、吉田美奈子さんとか渡辺香津美さんも、優れたミュージシャンがお互いの作品に参加していて、あの時代の素晴らしい音楽の景色が広がっていたな、って思うんです。それで自分も今、この2020年代の音楽の景色の1シーンになっているという気持ちに、一昨年くらいからなれたので。そういう、今描かれている東京の音楽シーンみたいなのを曲にしたいなって思いました」

――“リッチ”という言葉を選んだのには、どんな理由があったのですか?
 「精神的に豊かでみずみずしいっていう意味で、“リッチキッズ”っていう総称を付けさせてもらいました。みんなそうだと思うんですけど、夢を描いたり、追いかけたりしていると、いろんな犠牲を払って、休みとかプライベートとかお金とか、いろんなものを投げ打ったりしていますよね。でも徐々に、自分の心の豊かさだったり、クオリティ・オブ・ライフに目を向けている同世代がちょこちょこ増えてきて、なんかすごくいいことだなって思います。一生懸命に働くけど、一生懸命休んだり遊んだりもする、みたいな。今っぽくて素敵な考えかただと思って、そういう人たちの総称としてリッチキッズって名付けました」

――よく“今の日本は暗い時代で若者にも未来がない”みたいな言説が聞こえてきますが、そういう状況を意識したところもありますか?
 「私は、リスナーの考えを尊重して委ねたいと思っているタイプの表現者なので、リスナーの意思がちゃんと反映される余白があるような作品作りっていうのを心がけていますが、やっぱり今の時代、同世代や、さらに若い世代の生活とか未来が脅かされていたり、困窮してる若者が多いということには危機感を覚えます。どの時代にも困ったことや大変なことがあるわけで、それは今に始まった話ではないとは思うんですけれども、同じ時代を生きるミュージシャンとして、やっぱり悲しんでいる人に、どういうメッセージを伝えていくべきかなっていう使命感は少なからずあります」

Rei | Photo ©久保田千史

――『VOICE』という作品が全体的に明るく軽やかなトーンになっているのも、そういう気持ちの表れなのかと感じました。実際、しっとりした感触の「朝」に続いて、最終曲の「RUN, RUN, RUN」が始まると、ものすごい開放感に満たされます。
 「“RUN, RUN, RUN”は、“がんばるな、逃げろ”っていう曲なんです(笑)。意識が高いほど、今だけはがんばらないと……みたいな気持ちになると思うのですが、ちょっと逃げちゃえ!っていう曲が今っぽいかな、と思って作りました」

――今作に関して、いわゆるシティポップが引き合いに出されたり、“新しいJ-POP”みたいに形容されたりしていますが、このサウンド・イメージというのは、いつくらいから思い描いていたものなのですか?
 「アルバムに向けての曲作りで、今回の作品に対しては新曲で50くらい、ストックから出したものが20~30くらいだったと思うんですけど、そこから何回も熟考を重ね、選曲してアレンジしてっていう過程を経て、その中で自然とできてきました。“ポップス”っていう言葉は、なかなか複雑というか主観的な言葉で、なんとなくポップスが苦手というか……抵抗があるかたっているんですよね。それは単純に、みんなが好きなものは好きじゃないっていうことかもしれないし、ビジネスっぽいみたいな意味でポップスが苦手なかたもいるかもしれないんですが。ちょっと“ポップス”という言葉にまとわりつくイメージみたいなものを改めて解きほぐしたいっていう気持ちが、作っている中でだんだん出てきました。ポップスって、サウンドの部分を形容するときもあると思うんですけれども、純粋にポピュラー・ミュージックの略称としてのポップスっていう意味もありますよね。ジャズがポップスだった時代もあれば、ビバップがポップスだった時代もあるし、ソウルとかR & Bとかブルーズとかクラシックがポップスだった時代もあるわけで、そういうポップスっていう言葉にまとわりつくいろんなイメージを自分なりに解き放つ作品にしたいなあと思ってました」

――ちなみに、1970年代のシティポップと90年代からのJ-POPの間、80年代には、大瀧さんや細野さんが手がけたアイドル歌謡の時代があって、それとも通じる空気を個人的には感じたのですが、具体的には松田聖子さんとか中森明菜さんとかの作品も聴かれたりしますか?
 「はい、たくさん聴いてきました。薬師丸ひろ子さんも好きですし、演歌も歌謡曲もいっぱい聴いて、影響を受けています。あの頃の細野さんとか、めちゃくちゃ硬派なガチンコの音楽をやりつつ、ああいうふうにアイドルの楽曲提供とかやってらっしゃって。私が尊敬してるミュージシャンのかたは、ジャンルで音楽の善し悪しを区別しないところがあると思います」

――改めて、本当にたくさんの音楽を聴いているんだなと実感させられました。
 「(笑)。音楽がすごく好きで……それに、いろんな音楽が好きなんです。そのことが良くも悪くも自分の活動には反映されていて。なんかこう……それこそビジネス的なことで言うと、みなさんに覚えていただくためには、固定のスタイルで、固定のルックスで、同じギターを使って、とかのほうが戦略としてはいいのかもしれないんですけど、やっぱり“2度と同じものは作りたくない”っていう想いが強くて、そしていろんな音楽が好きなので、毎回作風が変わるっていうのはあります」

――「New Days」という曲でも、新しい日々に向けて“やり直し!”と歌ってますし、常に新しいものを求めようとする傾向が強いのですね。
 「今は積み上げてきたキャリアがあるから、壊せる材料ができたっていうことにゾクゾクしてます。目の前に積んであるものとか完成してるものがないと壊せないですから、壊す材料ができたなって(笑)」

――破壊願望が強かったりするのでしょうか?
 「壊す、っていうのともまたちょっと違って、刷新したい!っていう感じでしょうか。例えば、1,000種類の感情があったとして、その中で私は“驚きの感情”が一番好きなんです。だから驚かせたいなって思う」

――最初の話に戻りますが、やはり前作『QUILT』での、全て種類の違う格闘技で百人組手とでもいうか、それこそ自分の持っている引き出しを全解放して出し切るみたいな経験は非常に大きかったようですね。
 「そうですね。私、ぼっちライフを送ってきたので……クラシック・ギターもステージで独りだし、ブルーズも弾き語り、デビューもソロで。普段人見知りなので、けっこう孤立してきた人生なんです。だけど、ここにきて、そういうところを無理やりこじ開けた感じの作品だったので、音楽的にはもちろんそうですけど、人として成長させてもらったというか、キャパが広がったな、っていう感じはあります」

――孤独感というのは、Reiさんが表現に向かう原動力のひとつだと思うんですが、それが『QUILT』を経て出来上がった最新作では、「Call My Name」も同じく孤独がテーマの曲なのに、自分の気持ちだけでなく、もっとたくさんの人々の孤独に目が向けられているという事実にも、変化が表れているように思います。
 「壇蜜さんが結婚したとき、“自分ひとりでも生きられる自信がついたから誰かと一緒にいられるようになった”とインタビューでおっしゃっていて、ああそうだなあ、ってすごく納得して。今、人との交流を図れるのも自分の在りかたが確立したからだなって思いますね。ふにゃふにゃコケながら立っているうちは、やっぱり人とは対等に愛しあえないなって。それがやっとここ最近、自分の足でもちゃんと凛と立っていられるようになったから、自立して初めて人と交わるっていうのはタイミング的にもよかったなあって思っています」

――ちなみに、『QUILT』にも参加していた藤原さくらさんのラジオ番組にゲスト出演された時、お2人でTHE BEATLESの話をしていて、そこでReiさんがかけていた曲が「With a Little Help From My Friends」だったのですが、あの曲の内容に『QUILT』のコンセプトと共通するものを感じていたのでしょうか?
 「そうですね、それももちろんそうですし、あと私はJoe Cockerの、Woodstockでのライヴ・ヴァージョンもすごく好きなので、選曲しました」

――さて、2月からは本作の曲を実演するツアーが始まりますが、新しい領域を切り拓いた自分を、どんなふうに見せるステージにしようと考えていますか?
 「ギターが好きなかたも曲が好きなかたも、みなさんが楽しんでいけるツアーにしたいと思っています。作品でも心がけていたことなんですが、来週、明後日、明日、今夜、1時間後、とにかくどれだけ近くても遠くてもいいから、未来を少しでも明るく照らせる作品だったりライヴだったらいいなと。それがストロボみたいに瞬間的に照らすだけでも、その光が積もっていって、人の未来は明るくなると思うので。私には幸いなことに表現する場があって、自分の感情の発露ができるんですけど、この世の中には、自分の身に起こった辛いこと、大変だったこと、悲しいこと、もちろん嬉しかったことでもいいと思うんですが、そういう感情を自分の中に閉じ込めているかたってたくさんいると思うので、そういう人たちの心のドアをノックして、その感情が溢れ出すきっかけを音楽で作れたら嬉しいですね。私は、音楽っていう海に住んでいる、ちっちゃな魚なんですけど、作品に触れたかたに何か希望が届けられたらな、と思います」

――きっと『VOICE』をきっかけに、さらに大きな世界が開けて、どんどん突き進んでいくことになるのだろうと思うのですが、一方で、オルタナティヴというか、ハードコアな側面もReiさんの大きな魅力のひとつだと思いますので、そちらもポップな王道路線と並行してやっていってくれることも期待しています。具体的には、セッション・プロジェクト「JAM! JAM! JAM!」もそうですし、昨年やっていた「versus DRUMMER」(3人のゲスト・ドラマー、伊藤大地、山口美代子、BOBOを迎えたライヴ・シリーズで、ツアー最終日にはその3人全員との共演が行なわれた)という試みも本当に刺激的でした。
 「いやあ、あれはもう本当に嬉しかったです。3人とも全然違うドラマーで、大変だったんですけど、楽しかった」

――私みたいなリスナーは、BOBOさんが叩いているだけで感動的で、しかもReiさんは、最近の売れっ子セッション・ドラマーになる以前、54-71時代からBOBOさんを知っていて、なんでも地方公演では「Life Is Octopus」(『I'm not fine, thank you. And you?』2008, contrarede)のカヴァーまで披露されたそうですね。あのベースラインありきみたいな曲を、ギターとドラムだけでどうやったのですか?
 「ギターとベースをドッキングしたアレンジで、ベースラインが印象的なところはそこを弾きながら歌う、みたいな感じでやりました。またいつかやりたいと思います」

Rei | Photo ©久保田千史

――ぜひ観に行きたいと思います。ところで、『VOICE』の限定盤に付いているDVDには、会場までの道のりを辿るオープニング映像が入っていて、そこで「TAMIYA」のTシャツを着ていたじゃないですか。そういうところも、いちいち刺さってくるんですが、これだけ音楽に没入する人生を送っていながら、一方でミニカーを集めていたり、真空管を買いに秋葉原に出かけたり、アンプの上にはエレキングのソフビが置いてあったり、あと最近ではフィルムのカメラで撮った写真のInstagramも始めていますよね。そちらの話も少し教えてください。
 「そうですね……気づいたらっていう感じなんですけど(笑)、車が好きなので。免許は3年くらい前に取ったんですけど、それまでは乗れなかったので、ミニカーを集めたりしていました。60年代の国産の軽トラと、Citroën、フランスの旧車が主に好きです。あとグリコのおまけが、70年代にヴィニールでできたシリーズを出していて、それのミニカーとか。ミニカーのブランドも、ヨーロッパとかにいろいろいいのがいっぱいありますよね。私は機能美が好きなので、車もそうですし、特撮は……なんで好きなのかな、わからないですけど(笑)」

――エレキングの人形をアンプに置いているのは、やっぱりエレキとかけているのでしょうか?
 「あそこで電気の供給をしてもらっています(笑)」

――それから、ギターだけでなく、シンセもかなりお好きな様子なんですが、普段の作曲って、どのように進めているのですか?
 「もちろんギターから作ることもありますが手法を毎回変えるようにしています。鍵盤、ベース、打ち込みとか、あとは歌から始めるときもあります。曲になるまでは自分の心の中で“感覚”があって、その感覚を、曲っていう具体性を持ったものに出力しているような。だから、その出力をどれでやるかっていうことだけを選択しているっていう感じです」

――以前、Reiさん所有の細野晴臣グッズの写真を見たときに、松武秀樹さんの著書『たった1人のフルバンド: Logic message YMOとシンセサイザーの秘密』(1981, 勁文社)が混ざっていたのを覚えてるんですが、バンド幻想もあんまりないほうなのでしょうか?
 「いや、バンド音楽を聴いてきましたし、だから幻想というか、憧れがありますね。ただ、うーん、バンドは本当に楽しそうで、羨ましいと思うこともありますけど、やっぱり他人と一緒にやるって一筋縄ではいかないな、っていう大変さも近くで見てきていますから。ソロだと自分のモチベーション次第でいくらでもがんばれるっていうのは、しんどいけど楽です。自分のコントロール外の外的要素に進捗が左右されないので。でもバンドは、続けていれば続けているほど本当にすごいと思います。尊敬の眼差しです」

――そうした資質が、Reiさんのアーティストとしての独自性に繋がっているのではないでしょうか?
 「どうなんでしょう、そういう風に言っていただけてとてもうれしいですが、まだまだ表現の高みを目指したいと常々思っています。一番最初の問いに戻ると、自分の人生で伝えたいメッセージには、セルフラヴと、孤独な人に届けたいっていう2本の柱があって。独自性も大切にしつつ、一番はひとりひとりに深く刺さる音楽を作っていきたいです」

Rei | Photo ©久保田千史

Rei 'Love is Beautiful with Ginger Root'■ 2024年3月1日(金)発売
Rei
『Love is Beautiful with Ginger Root』

7" Vinyl UCKJ-9013 2,000円 + 税 | 初回プレス完全限定盤
https://store.universal-music.co.jp/product/uckj9013

[Side A]
01. Love is Beautiful

[Side B]
01. Love is Beautiful (Instrumental)

Rei Release Tour 2024 "VOICE MESSAGE"Rei Release Tour 2024
"VOICE MESSAGE"

[出演]
Rei (vo, g)
真船勝博 (b) / 中西道彦 (b | 福岡公演) / 澤村一平 (dr) / 須原 杏 (vn | 東京公演) / TAIHEI (key)

| 2024年2月11日(日)
北海道 札幌 PENNY LANE 24
開場 18:00 / 開演 18:30/span>
前売 5,500円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ

※ お問い合わせ: wess 011-614-9999

| 2024年2月22日(木)
愛知 名古屋 THE BOTTOM LINE
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 5,500円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ

※ お問い合わせ: ジェイルハウス 052-936-6041

| 2024年2月23日(金)
大阪 心斎橋 BIGCAT
開場 16:15 / 開演 17:00
前売 5,500円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ

※ お問い合わせ: サウンドクリエーター 06-6357-4400

| 2024年2月25日(日)
福岡 薬院 BEAT STATION
開場 16:30 / 開演 17:00
前売 5,500円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ

※ お問い合わせ: キョードー西日本 0570-09-2424

| 2024年3月1日(金)
東京 渋谷 CLUB QUATTRO
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 5,500円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ

※ お問い合わせ: HOT STUFF 050-5211-6077

Rei "VOICE -Limited Edition-"■ 2023年11月29日(水)発売
Rei
『VOICE -Limited Edition-』

SHM-CD + DVD UCCJ-9247 4,800円 + 税
7"紙ジャケ仕様
https://umj.lnk.to/Rei_VOICE

[収録曲]
01. Love is Beautiful with Ginger Root
02. Sunflower
03. CITY
04. Call My Name
05. RICH KIDS
06. 朝
07. RUN, RUN, RUN

[Bonus DVD]
Reiny Friday -Rei & Friends- Vol.14 "with QUILT friends"

Rei "VOICE -Standard Edition-"■ 2023年11月29日(水)発売
Rei
『VOICE -Standard Edition-』

SHM-CD UCCJ-2231 2,300円 + 税
https://umj.lnk.to/Rei_VOICE

[収録曲]
01. Love is Beautiful with Ginger Root
02. Sunflower
03. CITY
04. Call My Name
05. RICH KIDS
06. 朝
07. RUN, RUN, RUN