Column「たまちゃんのバイクパッキング紀行」


文・写真 | 玉田伸太郎

北海道編 2

| 「北海道編 1」から読む

2025年5月14日 | 2日目

| 6:30
 目が覚める。朝日を見なければいけない。重い鉄の扉を開けると、あまりの眩しさで前が見えなくなった。日はとっくに上がっていた。風呂が開いたのでそのまま風呂へ。光が乱反射して寝起きには強烈だった。

| 7:30
 風呂上がりに外の風を浴びていると朝食のアナウンス。朝もバイキング。お腹も空いてきた。とにかく時間があるので、時間を目一杯使って3回分の食事をする。他の人の盛り付けを頭の中で批評して過ごす。

Photo ©玉田伸太郎

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| 8:30
 食べ過ぎて動けないくらい苦しかったので、少し横になっていると寝ていた。

| 11:00
 最後にもう一度風呂に入る。風呂に何度も入ると、服の脱ぎ着が面倒だと思った。

| 12:00
 甲板で景色を見ていると到着のアナウンスが流れる。荷物をまとめ出発に備える。

Photo ©玉田伸太郎

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| 13:30
 およそ18時間かけ、苫小牧に到着。

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| 14:00
 自転車の出発は一番最後だったのでなかなか出られない。フェリーの中は徐々にガラガラになっていく。港を出た時はもう人の気配はなかった。その間に自転車屋を見つけた。「サイクルベースあさひ」という全国チェーン。水戸で気になっていた自転車の不調。この先で何かあったら怖い。ここから20分のところにある自転車屋さんを目指す。

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 やっぱり自転車は不調だった。 店員さんに「タイヤが一部が盛り上がって楕円になっている」「ギアの入りが悪い」と、調子の悪い箇所を伝えてしばらく待つ。楕円の原因はタイヤがフレームにきちんと入っていなかった。ギアの調子は、水戸で自転車を組んだ時、タイヤがフレームにしっかりはまっていなかった。すべて自分の不十分な整備が原因だった。単純な問題で本当に安心した。自転車はみごとに完璧な状態に戻った。この先の心配ごとがなくなった。

 精算をお願いすると、「大したことはしていないのでいいですよ」と言われる。たしかに話を聞いた感じだと、修理のような具体的な作業はしていない。整備士の感覚としては、ほどけていた靴ひもを直すくらいの感覚だろうか。とにかく無料でいいと言う。しかし、これから170km走る側からしたら感覚が全く違う。命の恩人でしかない。丁寧に診断していただいたことも嬉しかった。こちらの気が収まらないので大洗で買ったお土産を早速渡した。とても喜んでいたので安心した。お金のやり取りが発生しないときは物で恩を返す。自転車で伊勢に行った際に実感したことがここでも役に立った。

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| 15:30
 ようやく走り出す。予定の時間より1時間近く遅い。35km先にあるむかわ町に向かう。公衆浴場があったのでそこを目的地にした。

| 16:00
 苫小牧の街を抜けると日高本線の勇払駅というところに着いた。廃線なのか現役なのか区別がつかないくらい殺風景だった。暑くなると脱いで、寒くなると着る。刻々と変わる状況と体調に合わせ、とにかく服を脱いでは着たりを永遠に繰り返していた。

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| 17:00
 勇払から浜厚真駅までの10km。風が強くて自転車が進まない。大型トラックも多い。地平線まで一直線の道でスピードも速い。すれ違う度にに衝撃波のような風が当たる。トラックが来るたびに叫んで気を紛らす。途中、骨になった狐を見つけて生き物の痕跡をみつけ少し安心したがそれ以外何もなかった。

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| 17:30
 手書きの看板を見つけたので寄ってみることに。寄り道するには時間がない行程だったが、ひたすら続く荒野と向かい風で気分は落ち気味傾向だったので気分転換。行ってみるとFORT by THE COASTという大きな建物があった。そこは養鶏場が経営するカフェだった。まだ食事の気分じゃなかったが、食べられるタイミングで済ます方がいいかと思いオムライスを注文。店主の方とお話をした(自転車旅はすごく人恋しくなる)。旅をしていることを伝えると、「目的地の浦川へ向かう途中に兄の経営するバーバーがあるから寄ってみてよ。きっとお茶くらいは出してくれるよ!」と言われ、調べるとたしかにルート上だった。寄るか迷うが、今日のようにまた風が強かったら本当に寄るかもな。

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| 18:30
 休憩ができて持ち直した。今日のゴール地点、鵡川駅まではあと7km。風はまだあったが、休んだ後の道はずいぶん気が楽だった。

| 19:00
 日が暮れたかけた頃、目的地の「むかわ温泉 四季の湯」に到着。振り返ればたった35kmだが、とてつもなく遠かった印象。疲れたけどまだやることはある。野営地探し。暗くなる前に野営しても安全そうな場所を探す。事前に、Googleの航空写真とストリートビューで気になる箇所に当たりをつけている。今回は海の近くの原っぱを拠点にすることにした。野営地探しのコツはもっと細かくあるんだけど、また別の機会に。

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| 19:30
 場所探しでうろうろしていたら暗くなってしまった。テントを設営して、焚き火用の枯れ木を集めておく。旅で焚火なんて面倒なのだけれど、今日はどうしても焚火をしたい。新しく買った焚き火台もあるし使いたい(どうしても試したいんです!)。暗くて気づかなかったが、テントの入り口にうんこがあった。大きさ的に熊じゃないが、いつか踏むくらい目の前にあった。踏まないように枯れ木を集中させて置いた(別に踏んでもいいんだけど)。

| 20:30
 設営も落ち着いたので風呂へ行って休憩。給水器から今晩と明日使う水を汲む。エントランスで袋麺を買う。

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| 22:00
 拠点に戻る。予定よりも遅いし、明日もある。寝ようかと思ったが、焚き火の衝動に負けて火を起こす。山火事のニュースが多かったので焚火の周辺を整えると30分過ぎていた。そこまでしてやる必要があるのか?とも思うが獣除けにもなるかもと自分を説得させた。

火を絶やさない

その場から動かない

火を見つめる

繰り返す

そのうちに無心

休憩

 新しい焚火台を使いたいという欲にまみれた焚火から、休憩状態に至るプロセスに気づきゾーンに入る。

| 1:00
 冷え込んできたなと時間を見るとこんな時間だった。気温は7℃。寒いしそろそろ寝よう。結露、獣対策でテント内にすべてしまい込み、就寝。夜中なのに知らない鳥の鳴き声が鳴りやまなかった。

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北海道編 3へつづく……

Photo ©玉田伸太郎玉田伸太郎
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Videographer。1983年生まれ。2009年、多摩美術大学院 絵画専攻版画研究領域修了。2011年、東京・高円寺 ASOKOに参加。2014年、本格的な映像制作を始める。VJ、MV、CM、ドキュメンタリーなど幅広く活動中。