佐賀出身 / 関東拠点の美術家・西村友輝が、1月から3月にかけて開催した「Collection」(東京・表参道 K Art Gallery)、「Studies for The Thing」(東京・代官山 蔦屋書店)に続くソロ・エキシビション「WORDS ARE NETS CAST AT THE STARS」を8月28日(木)から9月7日(日)まで東京・中目黒 COMPLEXBOOSTにて開催。
同展は、昨年7月に松井一平(MALIMPLIKI, SOCIO LA DIFEKTA, TEASI, わすれろ草)、村松朋広、佐々木亮平と共に参加したグループ展「c/o」(東京・神宮前 THE PLUG)同様、井上貴裕(SHUT YOUR MOUTH)によるキュレーションで開催されるもの。アルミホイルで包んだ物体を描く絵画シリーズ「The-Thing」に加え、新シリーズ「Words are nets cast at the stars」も出展されます。
「言葉とは星に向かって投げる網のようなものである」
このような文章を、昔何かの本で読んだことがある。
無数に存在する星を捉えようと網を投げたとしても、星は網の隙間からころころとこぼれ落ちてしまい、わずかな数しか残らない。
私たちはしばしば言葉を使ったコミュニケーションにおいて、伝えたいことを的確に表現することの難しさに直面する。
多くの言葉を用いたからといって、自身が伝えたいことが相手に伝わっているかどうかなど、結局のところわかりようがない。
「犬」や「猫」と聞いたときに想像するその生き物の姿は、個人の記憶から想起されるものだと思う。
どの言葉にも、言葉がもつ概念とは別に、個人の記憶や感覚がその言葉の周辺をぐるりと囲んで形成されているように感じる。
誤解を恐れずに言えば、一つの事象を完璧に同じ感覚で他者と理解し合うことは不可能に思える。
伝える努力を怠るわけではないが、違う感覚をもつ者同士が、極めて限定的なツール(言葉)を使用してコミュニケーションを取る以上、この問題は生じうるものだと思う。
今回、新たに制作した《Words are nets cast at the stars》は、モチーフをキャンバスに描いたのちに、アクリルの板を上から設置している。
絵を描く際、モチーフがあるその状況から、自身が選び取った情報を画面に描き移していく行為には、紛れもなく“私”というバイアスを通過したものがキャンバスに表出する。
結果として、キャンバス上には私が観察した集積が現れるが、鑑賞者は画面を通してモチーフの質感やその実態を想像できると思う。
しかしながら、そこにあるのは個人の感覚のフィルターを通して描かれたものである。
本来そのモチーフが存在する状況からは、抜け落ちたいくつもの情報があることもまた事実である。
その、本来は非常に曖昧で危うげな「伝える」という行為をより明確に表現するために、今作はキャンバスの上にアクリル板を設置した状態をもって完成とした。
――西村友輝
■ 西村友輝
WORDS ARE NETS CAST AT THE STARS
2025年8月28日(木)-9月7日(日)
東京 中目黒 COMPLEXBOOST
12:00-19:00 | 月休廊
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