短歌・撮影・音響 | UNCIVILIZED GIRLS MEMORY (玉野勇希, dotphob)
「四十五階」
肉饅の熱き花片をひらきゆき資本主義の甘き朝焼け
9月某日 都庁南展望台にてモデルナ社製コロナワクチン1回目接種
銀色の匣 飛び降りの速度持て四十五階へまつすぐに堕つ
列をなす生者だれしも恋文を持ちつ望みし銀の一刺し
ちくりとします、とふ聲の後わが腕に《対象》の流る密かな快楽
塵匣に溢るるばかりの注射器を眺めつ「はい」と幾度か云ひ
灰色を遥か見下ろす展望に「全き新世界」言祝ぐピアノ
片腕に熱宿しいる人々を乗せ鋼鉄の戸は閉まりゆき
残酷な午後の陽射しを逃れつつドラッグストアで黒揚翅舞ひ
ぬばたまの路に一輪のまんじゆしゃげ堕つたまゆらに夏は朽ち果つ
百年の十五夜すべて紅き眼の兎(落涙) 寝台に伏す
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