文 | 鷹取 愛
写真提供 schole | Photo ©髙橋 花
昨年の年末、東京・下北沢で友人たちとのんびり開催していたフリマに来てくれた髙橋 花ちゃん。目がキラキラで礼儀正しくて、でも、ちゃんと人との出会いをつかんでいく勢いもあって、とってもかわいくて気になる人だった。
人に興味があるのがわかる。おもしろい人、楽しいことへの欲があるのがわかる。そういう人の視点は、やっぱりどうにも一目置いてしまう。さらに、ちゃんと一定の距離を保って自然に輪の中に入れて、いつの間にか花ちゃんの魅力にみんなが惹かれていってしまう。
そんな花ちゃんと出会ったとき、もうすぐ古着屋を小田急線の梅ヶ丘駅の近くにオープンすると話していた。出会った日にメールをくれて、必ず行くと約束する。お店の名前は「schole」。ギリシャ語で“余暇”を意味する。
実店舗ができるのを楽しみに待ちながら、オフィシャル・サイトを眺めていた。花ちゃんは東京生まれ。中学から大学まで一貫制の美術学校に通い、高校の終わりまでは油絵を、大学ではファッション・テキスタイルを学んでいたという。何度も訪れたくなるような、気持ちのいいウェブサイトは、そんな花ちゃんのセンスが煌めく、作品のようなものだと思った。最近、20代前半の人たちと接していると、その世代ならではの鋭い価値観、表現だと感じることがあって、「schole」のウェブサイトもそうだと思う。写真の色も構図も見せかたも、私には到底想像できない美的センスがある。日々サイトを眺めて、真っ赤なてろんとしたフード付きのシャツを買わせてもらった。みんなに自慢したくなる、美しいフォルムの状態のいいお洋服。
花ちゃんは、実店舗を2021年5月にオープンした。24歳のとき。小田急線の梅ヶ丘駅から徒歩30秒、全面ガラス張りの広々とした2Fの店舗。一見ショウルームみたいに整った店内で、Uの形で覆う長いオーガンジーのカーテンが壁面に揺れている美しい空間。彫金のオリジナル・ハンガーラックに、真ん中には建築家さんがプレゼントしてくれた大きな丸い押し花の照明がある。格別にかっこいい……!そこにお行儀よく洋服たちが並んでいる。端から端までじっくりと洋服をめくりながら、細部までかっこよくて、潔くて、こんなに古着って楽しいんだと、花ちゃんが選ぶ古着で初めて気づいたかもしれない。古着だけど“お”を付けたくなる特別な“お洋服”。古着って世界でたったひとつの、特別な出会いの感じがあるから嬉しくて、なんだか自分がこの古着に選ばれたような気分になった。
お店のオープンのときに購入した黒いワンピースは、嬉しくて友人たちに花ちゃんのお店で買ったんだよと自慢した。いつも、好きな人が選んだもの、作ったものを衣食住に組み込んでいくことが本来自然だと思っているので、花ちゃんのお店はそんな自分にとっての日々の生活の“かっこいい循環”のひとつになった。
花ちゃんは今、25歳。洋服のデザイナーとしてお仕事をしたのち、学生時代勤めていた古着の仕事をもう一度始めたことから、良い出会いと流れに恵まれて、共同経営でお店を出すところまでとんとんと今に続いていく。こんなに立派なお店を25歳で手に入れること。人それぞれに人生でそういう節目のようなタイミングはあるんだろうなとは思いつつも羨ましくもなるけれど、花ちゃんはまだまだ満足していなくて、もっともっとやりたいことにあふれている。
いっぱいやりたいことがあるのも本当にいいな~と思う。そういう気持ちをちゃんと素直にしゃべってくれるのでとにかくかわいい。お店が始まってからも、アメリカへの買い付けは変わらず2、3ヶ月おきに続けていて、きっと買い付け以外のインプットも自然とたくさんしている。どんどん、広がっていくんだろうな、本当に希望だなと感じる。そして愛おしくて、何か力になれたらと思う。それも花ちゃんの力だな。
自分は30歳を超えたあたりから、友達の幅が広がっていき、同世代じゃなくても老若男女、友達だよな、って思えるようになってきた。花ちゃんと私は干支ひとまわりくらい違うけど、「愛ちゃん」って呼んでくれる花ちゃんを見ていると、友達って何歳でもいいんだなと思う。今後何かむしゃくしゃすることがあっても、お店に行って花ちゃんにかわいい服を選んでもらって、たくさん話してたら、きっと帰る頃には良い気分になっていると思う。scholeはたぶん、みんなにとってそういう場所になっていくんじゃないかな。
〒154-0022 東京都世田谷区梅丘1丁目34-4 2F
13:00-19:00
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東京、京都を中心に「山ト波」という屋号でイベントや展示の企画をしています。近年は、京都「かめおか霧の芸術祭」の「KIRIマルシェ」運営、東京・学芸大学「SUNNY BOY BOOKS」の展示サポート・メンバー。1日1人ずつ日記を書くサイト「一日遅れの日記」主宰。山フーズ、画家・山口洋佑とのトリオ「バー人間」や、映像作家・玉田伸太郎との映像と音楽のプロジェクト「安身立命」でもたまに活動。京都で店をやってた本屋「homehome」名義での出店も。