「俺たち、これからどうなるんだろう」と話した冬の夜、雪が降る駅のホームで曲が出てきた
そんなアルバムの背景にあったのは、2018年にリリースした前作『シースケープ』以降の彼が直面した迷いの時間、環境の変化でもあった。そうした時期を経て、彼は自分から自然に出てきたメロディや言葉、感情をとても素直にそのまま表現するようになったとも言える。
インタビューはライヴの前に行ったが、自然体でありながらも次の自分に向かいつつある彼の言葉が、このやりとりからもやっぱりこぼれ出していると思う。
取材・文 | 松永良平 | 2022年7月
Main Photo | ©鈴木竜一朗
――2nd『シースケープ』からほぼ4年?
「そうですね。2018年3月リリースだったから」
――とはいえ、その間の2020年6月に、3曲収録のEP『each night, each morning』や、DJのHAPPFATくんと制作した『polū』、台湾の人気バンドDSPSのAmi(曾稔文)をフィーチャーした21年4月のシングル『Town of Light』といったデジタル・リリースが中継点のようにあったから、ものすごく間が空いている気はしない。とはいえ、1stアルバム『far/close』(2014年10月)からは約8年ですよね。ソロ・アルバムとしては4年に1枚ずつで、ある意味着実ともいえるし、マイペースな人にも見える。
「どの時点から僕を見てもらってるかにもよりますよね。2ndの『シースケープ』で知った人は“ゆっくりだな”と思ってるかも。『far/close』からの人は、それなりにコンスタント感があるように見てくれてるんじゃないかな」
――古川 麦という人はceroのサポートだけでなく、いつもなにかしら音楽の近くで関わっている音楽家だけど、自分の曲をアウトプットしようと思うときのギアみたいなものはあるんですか?
「うーん、基本的にはライヴが好きな人間なので、曲を作ってまずライヴでやってみる。それとリリースはギアという点ではちょっと違う。リリースは自分の力だけではなかなかできないし、他の人にも関わってもらってできることだから。自分で決めるか、他の誰かに尻を叩いてもらうかしないといけないから、時間がちょっとかかっちゃうというのはあるかな」
――でも何か作っていたいという気持ちは常にある。
「そうですね。新曲があったほうがライヴを聴きに来てくれるんじゃないかという思い込みがある、というのもあるんだけど(笑)。ライヴがあると“せっかくだから作ろう”とも思うし。そうやって作った曲をリハでバンドに落とし込むとき、すんなりアレンジが決まるかどうかで、“今後もやりましょう”とか“パッケージ化しましょう”とか、方向性がその段階で決まるかな」
――弾き語りでもライヴをよくやっているじゃないですか。でも、作品にするからには、バンド的なアレンジ、音楽的なビルドアップが必要と考えるタイプ?
「以前はあまり自信がなかったから、人に認めてもらわないとその先の一歩が進められなかった。最近は、別にもう自分で全部決めちゃってもいいかな、と思っているけど。今回の『Xìn』はその中間というか、みんなに関わってもらってるけど最終地点は自分で決めなくちゃいけないと思った作品でした」
――実は久々に『far/close』を聴き直したんですよ。当時はこんな才能を持っているという発見に驚いたんだけど、今聴くとまだ自分を主役として考えるよりは中間の人というか、プロダクションの中で人と人を繋ぐタイプを意識しているような印象があの作品にはあったんですよ。つまり、自分をぐいぐい出すというタイプではないのかな、って。でもそこからいろいろ作っていくうちに、そういうハブ的な意識がだんだん取れていって、『Xìn』は“古川 麦”自身の作品になってきてると感じたんです。
「小さいころから転校が多かったし、アメリカやオーストラリアとかで暮らしたことによって、“様子を見る”というのが自分のコンセプトになっていったんですよ。最初に決めつけて動かない。その場の流れのほうに自分を適応させることのほうが多くなるというか、くせになる。それは別に悪いことじゃないし、環境に適応していくことは好きで、得意でもあるんだけど、ストレスが溜まってくることでもあった。そういうストレスの発散が『far/close』ではあったし、“こういう自分もある”ということをあそこで発見できたかな」
――特にリリースのライヴ(2015年3月17日, 東京・渋谷 WWW)における大編成の古川麦オーケストラでの演奏に誰もが感じたと思うんです。“なに?この人、バリバリ自分があるじゃん!”って。ミュージシャンたちを組織して俯瞰して指揮しながらも、やっぱり自分で歌いたいし、自分で表現したいことがある人なんだ、という印象。
「あの日、ああやってアウトプットできることが純粋に喜びとしてあったと思う」
――ああいう大きくてパブリックな表現もできるけど、小さなスペースで弾き語りをしている麦くんにもクローズでインティメイトな魅力があって。ソロではいつもその中間にある作品を作っているというイメージだったんだけど、今回の『Xìn』ではそこがだんだん変わってきているというか。混ざり合うというより、インティメイトなまま表に出てきてると感じました。
「『シースケープ』のときは、“こういうこともできるんだぜ”みたいに、挑戦的というか、拡大して自分を見せたい意識があったんだと思うんです。正直ちょっと無理もしていたので、その後にしばらくガクンと落ち込む期間もあって。そこで“自分のペースってなんだろう?”と考えている中でコロナ禍になって、自分が何をしていけばいいのかをもっと見つめ直さなくちゃいけなくなった。そこで、結局自分が落ち着いてできるものって、松永さんの言う“インティメイトさ”みたいなものが根幹にある。そこからまただんだん広げられるかな、という思いで今回は作っていったかな」
――そこからもう一度、自分の本質に立ち返ってみようと意識するきっかけはあった?
「まあ、新しい恋人ができたということは大きかった。彼女とのやりとりや、お互いがいいと思うものをシェアしていく感じは素敵な行為だと思ったし、そこから“また作りたいな”という気持ちも大きくなっていった」
――古川 麦の曲は、割と広くて大きな意味での美しさとかを扱ってるような印象の人もいるかもしれないけど、もともとラヴソングも多いですよね。
「全然多い。そういう意味でも、今回は本当にラブレター的な曲もあるし、もっとプライベートな場所に寄せた意識はあります」
――そういえば、初めてインタビューしたときは「歌詞に自信がない」と言っていて、意外に感じた記憶があります。
「今も自信はないけど(笑)」
――あの頃は、プライベートな気持ちから繋がっているような言葉を率直に出すことに躊躇があったのでは?
「歌詞に気持ちをフォーカスしてなかったということもあるけど、これを歌えばいいという感情がそんなになかった。でも、今回は歌詞という点では、わりと暗い歌が多いかも。悲しげというか」
――暗いっていうのかな。率直という表現のほうが合ってるかも。
「そうか。そうかもね」
――今回、アルバムに先駆けてデジタルでシングルをどんどん先行リリースしましたよね。
「自分で考えていたことでもあるんですけど、プロモーションをお願いしたFRIENDSHIP.さんからもそういう提案をいただいたので、やってみたという感じです。結果的にすごくよかったと思う」
――プロモーションの助力やプレイリストに入った効果もあったとは思うけど、やっぱりそこを支えるのは楽曲の良さだから。それだけキャラクターの際立った曲ができてきたというのも大きかったのでは?
「たとえば“Vacilando”とかはブラジルっぽさがわかりやすく出ているし、感触としてもJ-WAVEとかに合う感じがあるな、とは思ってました」
――デジタル・ジャケットも思い切った感じありますよね。プール・ジャケだし。南 佳孝『忘れられた夏』の21世紀版みたい。
「それはよく言われます(笑)」
――もちろんこれまでもアートワークにはこだわってきた人ではあるんですけど、今回の一連のシングルはそれぞれ独立した写真でおもしろいですよね。以前だったら、もっとアルバムの世界観に寄せた統一感を出していたと思う。
「もともと曲も別々に作っていたし。でも最終的にアルバムのコンセプトをまとめるにあたって、今回はけっこう悩んだ。曲の個性が本当にバラバラだから、“これをまとめる言葉やテーマは何だろう?”って。それで手紙みたいなコンセプトが浮かんできた。手紙だったらいろんなところから届くしね。だから、どの曲もシングル・リリースしていいくらいなんですよ」
――つまり、それくらいの強度で曲が溜まっていってたということですよね。
「まあ、“each night, each morning”の“灯火”や“見つからなかった”、“Town of Light”とか、すでにリリースしていた曲もあったし」
――実は、最初に『Xìn』の音源データを送ってもらったとき、ちょっと驚いたんですよ。10曲すべて4分前後の、ちゃんとした曲だったから。変な言いかたになるけど、今はインタールード的な短い曲が入るのが普通じゃないですか。それが『Xìn』は最初から最後までびっちりとシングルになりうる強い曲が詰まってるんです。
「そういうフワーっとしたインタールードを入れる案もあったんだけど、“10曲あるし、入れないでいっか!”となって。わりとそれぞれ曲の中にもフワーっとした“合間感”があるから」
――僕はインタールードがないのが良かったので、その判断を歓迎しているんですけどね。“正真正銘の10曲入り”。あと、“手紙”というテーマも、古川 麦の基本コンセプトに合ってます。場所とか時間はバラバラでよくて、そこからこっちに届けばいい、という。
「今回はアレンジをいろんな人に頼んだし、それによって曲ごとのカラーも変わっていったのもバラバラ感になっているかも」
――そういう1曲毎の違いも気になるので、1曲1曲、本人解説をもらってもいいですか?まずは1曲目の「Angel」。
「作ったのは2019年かな。ツアー用のCD-Rに入れた曲でした。そのときは弾き語りで録音したんだけど、アルバムに入れるからには違うようにしたいと思って、アレンジを五味俊也くんにお願いしました。彼は僕がアルゼンチンやブラジルの音楽が好きだということをすごく汲んでくれてるので、それをチェンバーロック的な感じでまとめてくれた」
――アレンジを任せるというのは、もう完全に手放しで?下絵みたいなイメージは伝えるんですか?
「全然伝えない。基本的に完全に任せちゃいますね。だって、下絵があるんだったら自分でやったほうが早い(笑)。“その下絵を守ってください”ってお願いするのも野暮でしょ。自由にしてもらうのが礼儀じゃないかな」
――そうか、自分では想像もしないものを求めているんですね。
「“うん?”って疑問に思うようなときもあるけど、それもおもしろいかな」
――自分の弾き語りで完結できるという部分もあるしね。
「“弾き語りで完結してるから、あえてアレンジでやることないですよ”とも言われたりしましたけどね。だけど“そこをなんとか”とお願いする。だから、どうやるかはお任せします、になる」
――「Angel」はアルバムのご挨拶を担うに相応しい曲です。
「まあ、ちょっと背筋が伸びるようなあの感じは、アルバムで他の場所には置きづらかった。1曲目に置くしかなかったかな」
――2曲目は「Ritual」。これはシングル配信時のジャケット写真もよかったですね。
「あれは竜ちゃん(鈴木竜一朗 | 写真家)が撮ってくれた写真が良かった。ペルーに行ったときに撮った写真らしいけど、デザイナーの川村(格夫)くんともこれがいいって意見が一致した。あの写真はヴィジュアルとして強いから、アルバムのジャケット候補にも挙がってたんですよ」
――配信の再生回数も「Angel」や「Vacilando」と並んで多いですよね。
「アルバムから最初にリリースされたシングルということもあるし、作ってる段階でキャッチー路線だと自分でも思っていたかな」
――キャッチーさは意識します?
「うん。下世話さとキャッチーさは違うじゃないですか。でも、自分の中でキャッチーな曲を作らなきゃ、っていつも思っているわけでは全然ないんで。たまたまそういう感じの曲ができて、いいアウトプットができたらと思ってるだけで」
――タイトルの“Ritual”は?
「“儀式”っていうことだけど、自分の中でこの何年かでちょっと転換点があって、その転換の最中、みたいな意味合いではあるかな」
――「Weep」。
「“Weep”は“Angel”と同じ時期に作った曲で、元は全部打ち込みでエレクトロな感じだったんです。でもそのスタイルはやめて、千葉(広樹)くんに全体のアレンジをお願いした。曲の構造自体は変わってないんだけど、途中にラップを入れたあたりが新しいかな」
――あのラップ、いいじゃないですか。
「ありがとうございます。なんでラップしたのか自分でもよくわからないんだけど(笑)。最初はもっと簡単にしていたんだけど、その後ゲーム音楽の仕事(『Travis Strikes Again: No More Heroes』2019, Grasshopper Manufacture)の関係でokumura.っていうアメリカの黒人ヒップホップ・グループとちょっと関わることになって。その繋がりだったんですけどね」
――へえ、そんな仕事を!
「彼らの音源をけっこう聴かせてもらって触発されたところもあって、ラップがああなった」
――4曲目、角銅真実さんをヴォーカルに迎えた「Why」。
「この曲はもともとインストとして作っていて、たぶん2014年にはできていたんです。だから、曲としてはアルバムの中で一番古い。ずっとインストとしてライヴでもたまにやっていて、いつか歌にしたいと思って何回かトライしてはいたんですよ。去年くらいからピアノで杉本 亮くんが参加してくれるようになって、この曲はすごくピアノが合うからまたやろうと思い、そこでようやく歌詞をつけた。それはけっこう最近。角ちゃん(角銅)に歌ってもらうという前提は歌詞を考える上では大きかった。自分では使わない言葉かもしれないけど、角ちゃんが歌ってくれるなら使ってみようかな、という部分はあります」
――ちなみに、曲順はどうやって決めたんですか?
「曲順を考えたのは千葉くんなんですよ。みんなで考えていたんだけど、千葉くんの案がけっこう新鮮で、“これ、いい”ってなって他の案が思い浮かばなくなった。こういうピタッとドラマチックにハマるような曲順は自分ではちょっと出せないですね。“この曲ってそういう意味合いがあったんだ”って、自分が曲順によって思わされるんです」
――では、その千葉くんが5曲目に置いた「雪」。
「これがまさに曲順の妙ですよね。自分だったら絶対、“Why”と“雪”は並べられない。この流れがあるから6曲目の“Vacilando”でハッとなる。その流れが“この曲順がいい!”と思った決め手でした」
――曲そのものに関しては?
「冬の夜、チェロの関口(将史)くんと飲んだ帰りに駅のホームで作ったんです。あのとき、ホームに誰もいなかったんですよね。しかも雪が降っていた。いい気持ちだし、持っていたギターを弾いてみたら、この曲のアルペジオのフレーズが浮かんで曲ができたんですよ。そのあとに、この曲はすごく単純だし、ピアノがすごく合いそうだと思ってピアノを入れて、関口くんと飲んだときにできた曲だから、その縁で彼に弦のアレンジを書いてもらった」
――適度に酔っ払っていて、エモくなっていたってことですよね。でも、そんなふうにして曲が生まれるなんて最高じゃないですか。
「そうそう。関口くんとも“俺たちこれからどうなるんだろう”みたいな淋しくなる話をしていたし。めちゃくちゃフォークソング的です。そのときの感情がそのまま入っているし、わりと“Bob Dylanみ”がある。歌詞を改めて読むと、“人気のないホームで電車を待つ”みたいなことを歌っているから、本当にそのままなんですけどね(笑)」
――ヴォイスメモに録っておいて家に帰って再現した、とかじゃなく、その場で弾かずにはいられなかった、っていうのがいいです。
「そういうのが好きだから。この場で弾くっていうことの特別感にかなり持ち上げられるタイプなんですよ」
――そして、そこからの「Vacilando」への流れはたしかに鮮やか。
「この曲はEP『each night, each morning』の頃に実はもうできていたんですよ。新しい恋人ができそうだという高揚感が込められていた。ただ、曲はわりとブラジルっぽいジャンル感があったから、これはちゃんとバンドでやらないと説得力があまり出ないと思ったのかな。ちょうどその頃、あだち(麗三郎)くんのバンドでシンリズムくんと知り合っていて、今回ちょっと音を足してもらった」
――リズムくんの名前が出たので話題を繋げるわけじゃないけど、自分の曲のリズムに関してはどう考えてます?
「僕の曲の場合は、ギターから来るリズムの要素が大きいから、そこで決まっちゃうんですよね。ブラジル感とかは、まさにそうだし。だから、バンドでアレンジするときはむしろそこをあえて外してもらうか、もしくはより強固なものにしていくか、どっちかの方向性だと思ってる。“Vacilando”はかなり強化したほうですね。でも、その次の“灯火”は、ギターはボサノヴァのスタイルだけど、リズムに関していえばブラジルっぽさをちょっと外して、定義しづらいものになってる。それによってむしろ最近のブラジルっぽさに近くなるっていうのもおもしろいと思いますね」
――なるほど。じゃあその流れで「灯火」。ここからの3曲は既発なので、“Xìn mix”での再収録ということになってます。
「“灯火”は千葉くんにアレンジしてもらっていて、今回ミックスをやり直してもらうことでよりすっきりしました。千葉くんには何もリクエストはしなかったけど、けっこう変わりました。アルバムの流れを意識して変えてくれたんだと思います。“見つからなかった”も、ほぼ同じ工程でしたね」
――一度EPで出した曲をアルバムに入れたのは?
「もともとEPの時点でアルバムには入れたいと思っていたんですよ。再録しようかな、とも考えていたんだけど、あれはあれですごくいい仕上がりだったので。でもミックスはし直して。“見つからなかった”は、今回のアルバムのインティメイトさの起点にはなっているかもしれない。あの曲の歌詞に手紙っぽさがすでにけっこうあるし」
――もう1曲の既発曲は「Town of Light」。
「今回は杉本くんがキーボードを足してくれて、それに伴ってミックスをやり直すことになったけど、それでよかったですね。前のヴァージョンよりも自分で納得できるものになった」
――そして、いよいよ最後の「Gomennasai」。超名曲であり、問題作でもあります。
「この曲も置き場に困るタイプなんですよ(笑)。でも、この曲が最後でいいんじゃないかと提案してくれたのは杉本くん。“カーテンコール的な感じがいいんじゃないか”って言ってくれて。アレンジは田中(佑司)にお願いしたけど、コーラスを入れるアイディアは杉本くん。自分で全部声を重ねてやりました」
――これはもう“出てきちゃったから仕方ない”っていうタイプの曲ですよね。
「そうそう。この曲は本当に“ゴメンナサイ”ってフレーズがポロンって出てきちゃったんですよ。聴いた人は、咀嚼にちょっと時間かかるかもしれないけど。あと、この曲には自分なりの元ネタがあるんですよ」
――そうなんですか?
「ハワイのSam Kapuっていう歌手です」
――ああ、カタコト日本語の「Chotto Matte Kudasai(チョットマッテクダサイ)」っていうヒット曲がある。
「そう、あの“チョットマッテクダサイ”の語感。あの曲って“クダサイ”っていう日本語の使いかたが変なところがあるんですけど、響きだけ取り出して当てはめる感じがすごくいいなって思って、僕も日本語と英語の折衷みたいにしたかったんですよ。あと、元ネタがもうひとつあって。はしもっちゃん(橋本 翼 | cero)が前にDJでかけていたShun Shunの“今夜は最高”っていう曲。お酒の名前を延々と言い続ける曲で、日本語の歌詞としてほとんど意味がないんだけど、それが印象に残っていたというのもある」
――意味がないって言うけど、この曲には含羞がある。照れ隠しみたいな感じがして好きですけどね、僕は。
「関口くんに歌詞を“情けなさすぎるんじゃないか”って指摘されて、ちょっと直しましたけどね」
――でも、こういう曲がけっこうレパートリーとして残っていくのでは?
「まあ、それこそキャッチーさがあるし、ライヴでやるときは気持ちの置き場にちょっと困りそうだけど、おもしろいですよね」
――以上、10曲の解説聞いてみると、バラバラとは言いつつ、やっぱり古川 麦の現在形として筋が通ってる感じが濃厚にありますよ。手紙というテーマも、強いていえばコロナ禍っぽいのかもしれないけど。
「そうね。別にコロナ禍に限定はしてない。自分のテーマとしてそこは置いてはいなかったかな。むしろどの時代に聴いてもそれなりにいいと思える作品になったらいいな、と思ってた」
――あと過去2枚のソロを出した頃よりも、ceroでのサポートの役割がはっきりとしてきているから、聴く側もアクセスがしやすくなっている部分もある気がします。
「そうですよね。“ceroで経験したこともアルバムの中に含まれているよね”みたいな感想をツイートしてくれている人もいて。ラップとかもそういうふうに捉えてくれているんじゃないかな。今回のceroのツアー("TREK")もかなりアコースティックなアレンジがあってダイナミクスが広かった。そういう変化は、僕がいることでできることに寄せてきてくれてるのかな、とも思うし」
――ceroのメンバーとも関係が長くなっているけど、今回の『Xìn』に参加した中心メンバーとも、けっこう付き合いが長いですよね。お互いによく知っていて、さらにこの関係の先を見てるようなところもあって。
「そう。それはかなり大きいですね。僕もだんだんアレンジを投げるようになったし、向こうもいろいろやりたがっているし、コラボレーション感はより生まれていると思う」
――4年に1枚はマイペースに見えるかもしれないけど、空間的にも時間的にもほどよい関係が保たれているんだな、と思います。
「もっといいペースで普通に作りたいですけどね(笑)。今年中にまた録音を始めようと思っています。アルバムなのか、EPになるのかはわからないけど。次はみんなの手を借りずに自分で全部やりたくなるかもしれないし」
■ 2022年7月6日(水)発売
古川 麦
『Xìn』
CD GROWRE-002 2,500円 + 税
https://friendship.lnk.to/Xin | Bandcamp
[収録曲]
01. Angel
02. Ritual
03. Weep
04. Why feat. Manami Kakudo
05. 雪
06. Vacilando
07. 灯火 (Xìn mix)
08. つからなかった (Xìn mix)
09. Town of Light feat. 曾稔文 (Xìn mix)
10. Gomennasai
■ 2022年11月16日(水)発売
古川 麦
『シースケープ』
Vinyl LP PLP-7882 3,980円 + 税
完全限定生産
[Side A]
01. シースケープ
02. コメット
03. Coming of the Light
04. Summer Song
[Side B]
01. Here Lies the Sun (feat. MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO)
02. Halo
03. Coo Coo (feat. 優河)
04. Frutas
05. Love現在地
■ Baku Furukawa
"Xìn" Release Tour 2022 神戸
2022年8月11日(木・祝)
兵庫 神戸 海辺のポルカ
開場 17:30 / 開演 18:30
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約 | umibenopolka@gmail.com | 090-6208-1106
※ 件名を「古川麦 神戸公演」とし、ご来場者様全員の「お名前(フルネーム)」「お電話番号」および「チケット枚数」を明記の上、ご送信ください。
[出演]
Baku Furukawa e Ondulações (古川 麦 + 千葉広樹 + 杉本 亮 + 田中佑司)
■ Baku Furukawa
"Xìn" Release Tour 2022 京都
2022年8月12日(金)
京都 木屋町 UrBANGUILD
開場 19:00 / 開演 20:00
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約
[出演]
Baku Furukawa e Ondulações (古川 麦 + 千葉広樹 + 杉本 亮 + 田中佑司)
■ Baku Furukawa
"Xìn" Release Tour 2022 岡山
2022年8月13日(土)
岡山 城下公会堂
開場 19:00 / 開演 19:30
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約
[出演]
Baku Furukawa e Ondulações (古川 麦 + 千葉広樹 + 杉本 亮 + 田中佑司)
■ Baku Furukawa
"Xìn" Release Tour 2022 名古屋
2022年8月14日(日)
愛知 名古屋 金山ブラジルコーヒー
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
| 予約 | nqlunch@gmail.com
※ 件名を「古川麦 名古屋公演」とし、ご来場者様全員の「お名前(フルネーム)」「お電話番号」および「チケット枚数」を明記の上、ご送信ください。
[出演]
Baku Furukawa e Ondulações (古川 麦 + 千葉広樹 + 杉本 亮 + 田中佑司)