マジックを信用しない的な
音源を聴いてインタビューをしたいなと話していたところ、ちょうど翌日に松本で自分がライヴで訪れるタイミングだったこともあり、急遽インタビューが実現。場所は「DA POINT 117」。ラップもこの記事も瞬発力を届けたいと思います。
取材・文 | COTTON DOPE (WDsounds | Riverside Reading Club) | 2024年7月
B 「長野市のもう少し奥、山ノ内町というところでラップとビートメイクしています。BOMB WALKERです」
M 「松本市のMASS-HOLEです」
B 「僕、覚えているんですけど、“水脈” (長野市で定期開催されているパーティ)のレギュラーになった後に、イベントとして目立つ場所が“DEVIL'S PIE”(松本市で夏と冬に開催されているMASS-HOLE主催のパーティ)だったんですよ。それで“DEVIL'S PIE”に遊びに行って、MASS-HOLEさんに“今日ライヴやらせてくれませんか?”っていう感じで急遽、ラウンジのほうでライヴさせてもらったんですよ。それがきっかけで次から呼んでもらえるようになりました」
B 「僕は『PAReDE』のリリース・パーティを長野市のヴェニューで観ていました」
M 「MIYA da STRAIGHTから“ラップがやばい幼馴染がいるんですよ”って聞いていて、それがBOMB WALKERだったんで。ライヴが終わって、ラウンジでみんなで遊ぶ時間になったときに“ライヴやらせてほしい”って言われたから、“やっちゃいなよ”って。そうしたらめちゃくちゃやばくて。空気変わる感じで。“こいつやべーじゃん”ってなって。そこからMIYAのEPとかを作り始めたときに毎週末くらいMIYAと一緒にうちにきて、遊びながら曲を作ったりとか。そんな感じでずっと遊んでたよね、半年くらい」
B 「ビートメイクとラップだと、ラップのほうが先です。Q.S.Iっていう奴が同期というか、ひとつ上なんですけど、唯一ビートを作っていて。彼がMASCHINEを買ったときに“前の機材を貸してくれ”って言ってビートを作り始めた感じですね。その時の機材はBOSSのSP-505とかそんなのでしたね。今はMPCで作っています」
M 「ヒップホップをやる前、BOMB WALKERはフィンガースケートでプロだったんですよ」
B 「そうなんですよ。今もプロです」
M 「BOMB WALKERモデルとか出ているらしいですよ」
B 「スケートが一番最初。DGKっていうブランドがめっちゃ好きで、そっちから音楽を知って、という感じで」
M 「前々回くらいの“水脈”にDJで出させてもらったんですけど、ライヴが終わったあとに“このあと幕張でフィンガースケートの大会あるんでお先失礼します”みたいな感じで」
B 「ひたすら弾くみたいな。持久力みたいなのはビートを作るときもありますよね。あと、フィンガースケートは映像とかをみんなで見せ合うんですけど、クルーも存在していて、そういうところはヒップホップと似ている部分もあるんじゃないかな」
M 「MIYAの“yukiyama dojo”とかEftraのEPにはもちろん参加してます。起点はニケ(DUSTY HUSKY)のアルバムに参加したっていうのが大きかったですね。そこから認知度が一気に広がったので、ここで作ったほうがいいかなって。最初、去年12月にリリースした自分のシングルで2曲ともBOMB WALKERをフィーチャリングしている流れでソロのアルバムを作ろうと思ったんですけど、なかなか前に進まなかったから近いところで作品を作ったほうがモチベーションが上がると思って制作に誘いました」
M 「去年の12月に出したのが2曲で、あとはここ半年で5曲くらい作った感じ。BOMB WALKERのほうもレコーディング環境がしっかりあるし、集まってではなくそれぞれで録って送り合って作りました。あと、ボムヲはビートがやばいですね。それを広めていく作業も個人的に随時やっていますね。基本、彼は無職なんで(笑)。朝方寝て、夕方起きるみたいな。ラッパーの鑑ですね。だからビートをたくさん作っているんですよ」
B 「ビートが売れたら次のパーティでお金使っても大丈夫だって」
M 「ビート代もらったら郊外のリユーズショップ行って服買うんでしょ。それかGROW AROUNDに行ってBIG FAFが店番をしていたら服を買う、っていうのを繰り返してるんですよね」
B 「Nasですかね。アルバムだと『The Lost Tapes』(2002, Ill Will Records | Columbia)」
M 「トラップとかじゃないの?」
B 「TygaとかYGとかも聴いていたり。最近Griseldaとか出てきて、それでガチっとハマったというか」
M 「よくいろんなかたからビートをもらったりするんですけど、その影響下よりも新しさを感じるんですよ。彼のビートはラップが乗るようなビートばかりですね。それが新鮮な感じがした」
B 「間みたいなところは狙っていますね。トラップみたいな拍でもそっちに寄らないっていうのは意識しています」
M 「ビートはパキパキしていましたね、サンプリングすると土臭くなるっていうのはあるんですけど、サンプリングしていてもパキっとしていて、それがすごく新しいな。低音は出ているし。どうしてもヘヴィな感じになると重くなっちゃうんだけど、ドラムは軽くても音はしっかりしているというか」
M 「Q.S.Iは初期にBIG FAFのEPに参加していたよね」
B 「FAF君はひとつ上ですね。前に中目黒でMEGA-GさんのリリパにMIYAが呼ばれて、一緒に行ったらそこにFAF君たちも出ていて、そこで知り合いました」
M 「そういえば今日、富山からDA POINT 117に来てくれた子がいるんですけど、渋谷でBES & GRADIS NICEのリリース・パーティを観に行ってBOMB WALKERがやばかったって言ってくれていましたね。そういうの嬉しいです」
M 「今回の作品は1曲目がNAGMATIC、2曲目がCREEK、3曲目がGQっすね。屈強。あまり最近ないようなヒップホップにはなっているかな」
M 「テーマはなかったっすね。ビートでグっときたやつをチョイスして」
M 「そこはけっこう前提ですよね。フリースタイルじゃないけど、場所は問わず、すぐに書いて、すぐ録って、それが良ければOK。今作は一歩下がった見かたをして、まとめるのは自分がやって。あくまでもボムヲの名刺代わりというか」
M 「ラップしている姿に華があるし、声もいいし、ラップしている内容もおもしろいですよ。必要な要素は全て備わっていると思うんで。あとはどれくらい広まるかというか」
M 「よくよく聴くと楽しいと思いますよ。“DOWN HILL”っていう曲のVILLAG O.Gのバース、ちょっと書き直してもらっているんですけど。めちゃくちゃ良くなって。原田のラインとか(1998年長野オリンピックのスキージャンプ・原田雅彦の話)。生活の歌詞よりおもしろいことを言うっていうのが俺は好きだから」
B 「あれ、しかも2回目っていうことですよね。“2本目決める”って」
M 「そういうところもメタファーで含んでいるんですよ」
M 「そうです。原田は1回失敗して、2回目でデカいジャンプをしてK点越えっていう。VILLAGE O.Gも2回目(2本目)で大ジャンプをしているんですよ。流石の相方です。あとは“杉田より長野の水脈”っていうライン。仲間内で聴いて、おもしろいとかやばいと思うのが自分としてはいい」
M 「個人的な見解ですが、MIYAが今活動できていないから、彼はもっといけたんじゃないかっていうのが、俺の中で後悔もあるし。お金の回しかたと動きかた。こうしたら良かったかなっていうのもあって、今回に関しては自由にやらせたりとかそういうのは考えましたね。リリックに関しては載せているのでぜひ読んでください」
B 「ずっと部屋ですね。携帯で流して、音止めて、無音の状態で携帯で書いてますね」
M 「普通のラッパーだと16小節で1回送ってきてっていうのが多いと思うんですけど、ボムヲの場合4とか8とかで送ってくるんですよ。この感じでいきたいんですけどって。その小節で細かく切っていくっていうのは新しかったです」
B 「8できたら1回録って、そこから繋げていって最後に1本で録るっていうのはありますね。今回は、いつもよりばっちりやらないといけないと思いましたけど、気付いたらリラックスしてやらせてもらっていました」
M 「ミックスとかも自分でやっちゃうんで、今回8ronixさんに頼んだけど、個人的にボムヲの声はあまりいじるところがないと思いました」
B 「ニュアンスは自分で伝えて」
M 「自分の周波数とかをわかっているので、ここをブーストしてほしいと、かそういう指示は的確にあって、出来上がってるなーと。なんというか、マジックを信用しない的な」
B 「自分の周りで一番近くでレックできるのが水脈のfastriverさんで。移動に1時間ちょっとかかっちゃうんですよね……距離が。自分の住む場所は上のほうで新潟寄りなんですよ。だから自分でミックスをやるしかないという。上越まで30分」
M 「近いね海。家も大家族なんですよ。フィリピンとのダブルで、家族が多くいる中でヴォーカルを録っている感じとかが伝わってきていいんですよ」
B 「階段が近いんですよ、キッチンも近くて。今のレックめっちゃ良かったっていうのに、ドンドンドンとか音が入っているんですよ。猫とかもいるんで。そういうのに気を付けながら」
M 「瞬発力だね」
M 「2人の対比というか。スタイルが違うから、それが1曲に収まるところ。7曲で短いんで、何周もすれば何回でも楽しめるかなっていうのはありますね」
B 「自分のことになっちゃうんですけど、フロウに寄せるっていうのをやっていて、いける人は全部追いつけると思うんですけど、いけない人は全部流れちゃうと思うんですよ。そこはリリック見ながら付いてきてほしいです。リリックもこだわってるので」
B 「“DOWN HILL”のフックとかで“まるで山に見える マセラティ”。ロゴの感じが山に見えるんですよ(笑)」
M 「7曲目“FACE”の“ソーダが無いプリングルスだ”。あれも印象に残ってるな。自分の表現と違うな」
B 「MASSさんが“波乗りジョニー”できたんで」
M 「俺はオヤジギャグになっちゃうから(笑)」
B 「最後は“真冬の果実”にしました」
M 「“BANDIT”の頭で“フッ軽で狩るぜ”っていう言葉、俺、最初意味がわからなかったもん。あー、フットワーク軽めっていうことか、って調べてわかったもん(笑)」
B 「迷いましたねあれは。“BANDIT”は自分的には余裕ある感じでいきたくて、普段使っている言葉を入れました」
B 「とりあえず作って、車の中で聴いて、あーいいなで終わっちゃいますね(笑)。ひたすら未発表曲を作っているみたいな」
M 「今作は車で聴くとスピードが出ちゃう。西ノリのCoolin' Highな感じじゃなくて、高速に乗るときに合うんですよ。仕事の関係で甲府まで車で通っているので、気付いたらスピードが出ているみたいな。あと、どうしても暗いほうに振ってしまうラッパーが多いから、この界隈のアンダーグラウンド特有というか。それを打破しないとオリジナリティは出せないと思う」
B 「ライヴは意識していますね」
M 「去年末の“DEVIL'S PIE”もすごかったですね。わいわいやってましたね」
M 「地元は歌ってくれるっていうところまで出来上がっていますので」
B 「作品を作ってライヴをやって、みんなでアガりたいですね。あと、今年はビートテープとEPを出したくて。来年にソロ・アルバムを考えています。 チェックお願いしたいです」
M 「 自分もアルバムをこの流れで作りたいし、楽曲提供は多いので引き続き。まだ長野にもシークレットな奴がいるのでリリースしていけたらと思います」
MASS-HOLE Instagram | https://www.instagram.com/masshole19821128/
■ 2024年7月12日(金)発売
BOMB WALKER & MASS-HOLE
『BANDIT』
DIRTRAIN
https://lnk.to/BM_BANDIT
[収録曲]
01. BANDIT
02. STUCK feat. BOMB WALKER
03. DOWNHILL feat. VILLAGE O.G & ARTMC
04. WAVE feat. MAC ASS TIGER
05. DAWN feat. Village O.G & BOMB WALKER
06. T.W.O.T.O.P
07. FACE
Mix by 8ronix
Master by senna
Artwork by BOMB WALKER & OLD JOE
Photo by lil-k