無知を力に変えたい
そしてこのたび、「Boppin’」MVのリリースにあたり、インタビューを決行。コロナ禍での国を越えての移動、生活、制作について深谷玄周が語る。
取材・文 | 小嶋真理 Mari Kojima (gallomo co., ltd.) | 2021年5月
――いろいろサーチしちゃいましたが、まだあまりインタビューはされていないんですね。
「そうですね、今回初めてです。先週、英語でちっちゃいのをやったばかりで、今週初めてのインタビューが2回あったんです」
――まだメディアにあまり登場されていないということなので、まずはユニット紹介的なところをお願いします。
「Ghost In The Tapesは、“説明し辛い”をモットーにしてるくらいわかり辛いんで、誰が何をやっているかもわかり難いと思うんですけど、これはなんだろうな?とか逆に質問していただくか、僕が説明していくか、どちらがいいですかね(笑)」
――それでは、聞いていこうかな!答えていただくかたちでやっていきましょうか。紐解く感じで。それにしても深谷さん、お話が上手で、インタビュアーとしての才能がありそうな。
「とんでもないです(笑)」
――Ghost In The Tapesはユニットでやっていらっしゃるんですよね。
「はい、そうです。今まさにここに相方が座っています(Zoomのビデオ越し、深谷さんの後ろにSammy Abboudさん)」
――あ!ほんとだ!かなりそばに(笑)。一緒に住んでらっしゃるんですか?
「僕はロンドンで居候していて、Sammyは先週フランスから来て今は一緒に住んでいて。ここは東ロンドンにあるジャズ・スタジオみたいな、いろんなアーティストたちとのシェア・スペースで。そこでこの部屋を借りてて、音楽をやっている感じです」
――なるほど、イースト・ロンドンですか。
「はい」
――サウスロンドンの話題は最近いろいろ聞く気がします、ジャズ・シーンが盛り上がっていたりとか。イーストはどんな感じですか?
「イーストはサウスの前にちょっと若干舞い上がってたんで、今はたぶん、ちょっと落ち着いてきたかな。Gilles PetersonのBrownswoodとか、Nubya Garciaとか、あとフジロックに出たTHE COMET IS COMINGとかのスタジオがあって。それですぐ隣にいるのがTom MischとかYUSSEF KAMAALとかで。そのチームはすぐ近所にいますし、環境的にはすごくラッキーです」
――Tom Mischとか今を輝く存在ですよね、一緒にやっているYussef Dayes(YUSSEF KAMAAL)とかも。Tom Misch、コロナ渦中に自宅からライヴ的なのをやっていたけど、それもイースト・ロンドンから配信してたのかなぁ。
「自宅はわからないけど、スタジオはすぐそこにあって、Gilles Petersonが作ったスタジオで」
――いいところですね。
「はい、Gillesもけっこうこっちに出入りしてるし、僕としてもまだ来たばっかりだから、なんか毎日感動してます(笑)」
――イギリス本場の音楽シーンにどっぷり飛び込んだ感じですね。行ってすぐにそういう環境に巡り会えるのはすごくラッキーですね。
「ほんとにラッキーで、すごく幸せ。しかもこのコロナのご時世で、新しい人に会うことだけでも貴重なのに、スタジオがロックダウンの間ずっと開いてたんですよ。だから個人的にはうつ病になる要素とかなかったし、刺激ばかりでした」
――ほんと、いいところだなぁ。ところで、Ghost In The Tapesのユニットメイト、Sammy Abboudさんとはどのように出会ったんですか?
「SammyがM.A BEAT!っていうグループをやっていて、2015年に彼らが日本ツアーをやっているときに出会いましたね。彼らが僕の親友の家に泊まっていて、大勢のクルーで来てたから結果的に家から追い出されたんですよ。そしたら僕の親友がこいつらお前のところに泊めてくんない?って聞いてきて(笑)。ライヴ観に行ったらほんとすごくかっこよくて、それから仲良くなりました。次の年には僕がパリに行った時には彼らがパリにいたから、そこで一緒に音楽をやって、って感じですね」
――Sammyさんはパリ出身なんですよね?
「ナンシーってところです。誰も知らないと思うんですけど、東フランスなんですよ。でも、その日本ツアーの翌年は、たまたま彼らがパリに住んでいた時期でした。今はもうナンシーに拠点を置いていて」
――深谷さんはフランスと深い関係があるようですが、何か理由となるところは?
「えっと、僕の母親がフランスのハーフで、僕がクオーターなんですけど、東京でも日本の学校には行かないで、フランス学校にずっと通ってたんで、むしろ母国語がフランス語で、日本語は大学か社会人になってからしかちゃんと学んでない感じだったんです。家族もずっとフランスにいるし。大学で留学できたんですけど、行きたかったところは全部断られて、結果的にフランスに行ったんです。母国に留学って矛盾してると思うんですけど(笑)。そこで初めてフランスに住むチャンスができて、なんかすごい、内なるフランス人を覚醒できたかなと思って(笑)。いい経験だったと思います」
――そうなんですか。ルーツは常にフランスにあったわけですね。それでSammyさんと出会ったときも、ビビッとくるものがあったんですかね。
「そうですね(笑)」
――1stアルバム『Happily Confused』を聴かせていただきました!ラップされているのは、深谷さん以外にもいらっしゃいますよね。
「4、5人?もうちょっといるかな?」
――言語も、英語だったり日本語だったりフランス語だったり。そういう風にされたのは、ボーダレスにしていこうという意図があったからでしょうか?
「そうですね、やっぱり最初のアルバムというのもあるので、試したくて。自分の第3言語とか。英語はみんなにわかってもらえるから、英語は絶対に使いたかったんですけど、個人的には日本語でリリックを書くのも好きですし。あと、ナンシーにいるSammyの友達のラップ・クルーたちがいて、出会って仲良くなって1曲コラボしよう、ってなった感じです。出会ったミュージシャンたちとコラボしたり、あとはニューヨークとロンドンのラッパーもいるんですけど、それは学生生活のときに出会った人たちで。今までに知り合った友人たちがいっぱい乗っかってるアルバムになりました」
――なるほど。自分たちの周りにいる友人たちと築き上げたアルバムという感じですね。いきなりインスタからDMして一緒に音楽作りませんか?って感じではなく、気心知れた仲間たち、ですね。
「そうですね。いきなりDMはなかったかな~。でもアルバム・カヴァーは、いきなりDMでした」
――あれはFlying LotusとかThom Yorkeのアートワークを手掛けていたRuffmercy(ラフマシー)だったんですよね。それってハードル高くないです?
「SammyがRuffmercyにDMしたんですけど、即答で5分後に“あ、いいよ~”って来たから、すごく寛大なかただと思います。会ったことないけど(笑)」
――何か響くものがあったんだと思いますよ。いいヴァイブスを醸し出していたんだと思います。アートワークをお願いする際に、こういうインスピレーションで、とか指示をされたんですか?
「ちょっとバスキアっぽい、けっこうラフな絵が好きで、僕も巧くないけど描いてたんですけど、そういうのが欲しいって思っていて。彼のインスタでいろんなのを観ていて、気に入ったのが5枚くらいあって、これ何かに使ってますか?って聞いたんですよ。そしたら、これならいいよって返事が来て、それに決まったっていう、そういう流れでしたね」
――それはラッキーでしたね。Ruffmercyさんは、イギリス出身でしたよね。
「そうです。ブリストルの出身」
――『Happily Confused』』、USヒップホップの影響をすごく感じました。Kendrick Lamarのデビュー・アルバムっぽい色があったり。USのヒップホップにも影響を受けたところがありますか?
「Kendrickはナンバーワンだと思うので、ほんとにそれはありがたきお言葉です。僕、UKのヒップホップは全く聴かないんで……」
――そうなんですか!
「はい、Little Simz以外誰も聴かないです」
――UKって言うと、やっぱりグライムですよね。
「そうですね。僕たち、ちょっとグライムとかトラップを受けつけないみたいに頭固まっちゃってるところがあるかもしれません……。ヒップホップは90年代とかJ Dillaとかで育ってきて、それが一番のインスピレーションなので。そういう意味でもUKはそこまで惹かれるラッパーはいないかもしれないです。あと、自分がそんなに知らないのもあると思いますけど」
――音楽的にはUSのヒップホップとか聴いて育ってきて、でも深谷さんは今UKにいて、肌感でUKの音楽的な魅力っていうのはどこにあると思います?
「自分も東京にいたときはなんだかんだUKシーンとかはフォローしてたし、いろいろ探ってはいましたけど、実際このスタジオに来て、ほんとに隣の部屋の人とかその次の部屋の人とか、人とコミュニケーションしながら音楽を作るという体制になってから、さらに強い影響を感じられるようになりました。前は、誰かがジャズやってるけど、うちらはそういうジャンルでもないし、ちょっといいなって思っていただけで、ライヴとか観に行きましたけど、そんなに共通点は感じなかったんです。でもやっぱりこのスタジオの人たちに会って、バンドというよりも、バンドの中の個人個人、サックス・プレイヤーだったり詩人だったりとかと繋がるようになって。これは次のアルバムの話になるんですけど、ほぼUKのアーティストしか登場しないアルバムになる予定です」
――また1stとはガラッと変わる感じに。
「はい、そうですね。僕たちは人といっぱいコラボしてるから、どうしてもサウンドは変化していっちゃうと思いますね」
――1stの『Happily Confused』はほぼ全曲くらいコラボ・トラックでしたもんね。
「そうですね」
――『Happily Confused』を通して聴くと、エクスペリメンタルなものがあったり、テクノやIDMなどいろんな要素があって、これはジャンルレスであってヒップホップと限定するアルバムではないと思ったんですけど、お2人はどんなサウンドを目指して制作されたんですか。
「よく身内には言ってるんですけど、Sammyと僕はもともとヒップホップ・プロデューサーとはかけ離れているミュージシャンなので、スタジオの隣の部屋の20歳くらいの子とか、トラップやってます、みたいなクルーがいるんだけど、やっぱりそこはお互いエイリアンみたいに見えちゃうんだろうなと思うんです(笑)。だから、自分たちの無知を逆に力に変えたいというのはありますよね。第一に、なんだろう、ヒップホップってこんなもんかなーって思いながら作っている曲もありますし、あとはどれだけヒップホップから離れながら、あっ、こういうビートでもラップが乗せられるんだ、みたいなのとか、そういうサプライズをいつも目指してますね。それで、Sammyはロックとかエレクトロニックミ・ュージックのバックグラウンドから来てますし、僕はKendrickを聴いて音楽やりたいって思いましたし、もう1人はBjörkなんですよ。それも別にヒップホップじゃないから、そういう離れたレンジからのヒップホップって感じですかね」
――それすごい納得いきます。『Happily Confused』、どことなく昔のBjörkっぽさとかあったんですよ。ヒップホップに囚われていないところがあったので、今おっしゃったことすごくしっくりきました。Kendrickがきっかけでヒップホップを作るのに興味が沸いた?
「そうですね、興味がわき始めていた頃にKanye WestとかJay-Zとかいろいろ聴いてて、2015年にKendrickの『To Pimp a Butterfly』出ましたよね。あれで全部変わりましたね。ヒップホップで映画か本、作れるんだなって思いました。ナレーションの美学というか、そういうのにすごく圧倒されましたね。そういう意味では『Happily Confused』のナレーションは意味のわからないアルバムですけど、目指すゴールとしては見えました」
――ナレーションの美しさ、たしかに。ちなみに、音楽を作り始めたきっかけっていうのはありますか?ヒップホップ・フェイズの前から作ってましたか?
「そうですね。Sammyはそれこそ自分のプロジェクトを10年くらいやっていて、僕はハイスクール・バンドとかロックとかやっていたところから、エレクトロはプラスチック音楽だとか若いアホな感想があったときにBjörkを聴いて、すごいもん作れるんだなって思いましたね。だからエレクトロニックの前はドラムだけやってたんですけど、プロダクションはBjörkを聴いてから始めました」
――プロダクションやってみて、総合的にできるじゃん、ってなりました?
「そうですね。シンセだけでも素晴らしいいものが作れますけど、やっぱりエレクトロと、アコースティック、楽器を使うというのがテーマですかね。それはずっとそう」
――こだわりですね。そんなBjörkの影響を受ける前の小さい頃は、どんな少年でしたか?音楽はずっと好きだった?
「父親が音楽をやってたんで、それはすごく影響を受けましたね。そうですね、ちっちゃい頃は……、ドラムを始めたのが11か12歳のときで、そこからはドラム一筋で。いつも一筋なんですよね。その前はサッカー一筋。普通ですけど(笑)。サッカーはやるならプロになる、音楽もやるならプロになる、まぁ生活できればいいな、って感じで」
――ドラムを始めた理由は?憧れのドラマーがいたとか?
「本当にガチでやっていたときは、THE POLICEのStewart Copelandですね」
――渋い(笑)!80年代の。
「渋いですかね(笑)。父親の影響が大きかったからですかね」
――素晴らしいですね。そういう経験を積むうちに、一番衝撃を受けた、ライフチェンジング的な出来事ってあります?音楽に関して。
「最近で一番強いのは何度も言いますけど、やっぱりBjörkの存在かなぁ。前に持っていた考えを全部吹き飛ばされたっていうか。それはほんとにありますね、彼女の音楽では。あとは日本を初めて出たときに、カナダに1年住んだんですけど、そこで一緒に住んでいた友達。彼が当初ヒップホップを作り始めて、まぁけっこううまいラッパーとかだったんですけど、彼と毎日を過ごして、ビートメーカーになりたい気持ちが芽生えたり。ひとつだけっていうのはあまり思い浮かばないんですけど、出会いですかね。学生のときからずっと転々としているから、出会いっていうのはすごく大きいですね。全く違う音楽、Sammyももともと僕の知らない音楽、エレクトニカみたいなのをやっていたので、あぁ、こういうのもできるんだと思ったし、ライヴで生楽器とサンプルとシンセの3つをコンビネーションできる可能性があるとか、毎回の出会いに影響を受けましたね」
――深谷さんはラッパーだけじゃなくてトラックメイクもされる結構特殊なかただと思うんですよね、だから3つ使いこなすSammyさんにグッとくるというところもあったんだろうなと思いました。
「そうですね。それに僕、どっちにもそんなに自信がないんで。Sammyは経験もあって、全然僕の知らないプロダクションの面やスキルとかもあるので、先輩としてもすごく尊敬してますね」
――すごい。ちゃんとリスペクトのあるお2人がやってらっしゃる。いろんなジャンルのトラックを作ってラップを乗せたいっておっしゃってたの、すごく興味深くて。ロックに乗せる、とかあるじゃないですか。
「ありますね。ちょっと趣味悪いのも(笑)」
――そう(笑)!でも、深谷さんの思う、これとこれ、組み合わせてみたいっていうのあります?民族音楽と、とか。
「あぁ、やりたいですね、それはすごくやりたい。民族音楽とラップはやりたいです、著作権問題がなければ喜んでやります(笑)」
――民族系なら、なさそうですよね(笑)。私、アラブに住んでいたことがあって、そのときに、コーランっていうお祈りの曲が街中に流れるんですよ。決まった時間に爆音で。それとかもうほぼ、スローテンポなラップみたいな感じで。
「あぁ、わかります。すごい綺麗ですよね」
――綺麗ですよね。お経とかもそうだし、リズムに乗せる言語の気持ちよさ、語る気持ちよさっていうのはラップに通ずるものありますよね。そして!MV!まだ公開されていなくて、拝見していないので、観ないままで説明していただこうと思います!
「はい!」
――まずいくつか質問があるんですけど、「Boppin’」のMVを作ったきっかけは?
「1年前にロンドンにいて、僕いつもロンドンでは居候してるんですけど、友達の家のソファで寝たり。その友達(Arnaud Lin)がビデオを撮っている人で、ビデオ・エディターの彼女(Lorna Searl)がいて。それで僕が撮ってくれる人を探しているときに、まずArnaudが撮りたいって言ってくれていて。彼はけっこう経験があるので、コンセプトやアイディアも基本的に任せて、8mmカメラを使いながら2つ作ろうっていうことになったんですよ。すでに出てる“Spurs”っていうビデオは彼が撮っていて、それから1、2週間の差で撮影しました。それが、ヨーロッパがロックダウンに入る1、2週間前でしたね」
――ギリギリでしたね。そう考えると、リリースまで時間がかかりましたね。
「そうですね。“Spurs”が去年の冬とかで、夏だったかも。たしかに時間がかかってる。でもそうだ、最初のロックダウンって、全部ビジネス閉めたじゃないですか、それのせいですごく遅れたんですよ。フィルムを現像できなかったんです。今回の新しいビデオはアニメーションも8mm映像の上に描かれてるんですけど、それにも時間がかかったので、けっこう待ちましたね」
――コロナ禍でMV制作するって大変だと思っていたけど、やはりそんな影響があったんですね。現像ラボとのやり取りとか。
「そのとき僕は日本にいたので、何もやってないんですけど(笑)。イギリスの友達が進めてくれました」
――アニメーションを担当したのも、ディレクターのArnaudさん?
「いや、別のアーティストです。Alix Bortoliっていうフランス人の女性です。業界で話題のイラストレーターさんです」
――素敵ですね。「Boppin’」では、Ghost In The Tapesのお2人とも出演されてるんですか?
「撮影のとき、Sammyはフランスかモロッコ……まぁどっかにいて……忘れちゃった(笑)、僕だけロンドンにいたので、それで今回のトラック、僕がラップやってるので、結果的に出演は僕だけでしたね」
――出演するとき、緊張しました?
「すごく嫌ですね、映像で自分見るの(笑)。ほんとに嫌だ~(笑)。慣れません。自分の声聞くのもほんと嫌です!」
――でもラッパーですし(笑)!
「まぁそうですね~、いつかは慣れないと~(笑)」
――でも素敵な声ですよ、深みのある。ラッパーさんでなかなかいない気が。
「たしかに。こんな低いのはそんなにいないかも。“Boppin’”についてもうちょっとお話しすると、一部は北ロンドンのすごいランダムなコインランドリーを借りて撮影して、東ロンドンのパートは僕が夢を見てるような感じにして、夢の後はArnaudが撮った南フランスの海とかの映像なんですよね。だから、ロンドンとフランスの映像って感じです」
――ドリーミーな場所と、現実の場所を分けたって感じですね。
「そうですね。現実は寒い寒いロンドンの冬って感じです」
――今、ロンドンで新しいアルバムをレコーディング中だと思うんですが、日本でレコーディングするときとの環境の違いってありますか?
「やっぱりどうしても機材が第一ですよね。僕は全く機材買わない派で、サミーは機材買いまくる派なんですけど、日本は僕の拠点なんで、制作スペースにほとんど何もないんですよ。正直、日本での制作ってあまりしてないんですよ。『Happily Confused』も声を録音したくらい。あと、歌詞を書いたり、僕が簡単なアイディアを作ったりする程度ですね。どうしても曲を最後にギュッて絞るときは、Sammyのナンシーにあるホームスタジオと、隣にレーベルのスタジオあって、そこでコンプレッサーだのミキサーだの、テープマシンとか、いろいろな機材にかけて、そこからミキシングとかエディティングとかしている感じですね。ロンドンも今、新しいアルバムを制作中だけど、隣人の機材を借りたりしてようやく自分たちの簡単なスペースができて。あともうひとつ、日本とかフランスとかイギリスで毎回変わるのって、さっきも言いましたけど、コラボする人ですかね。やっぱり直接会うじゃないですか。だからこのスタジオでも、毎日ラッパーとか呼びながらやったりとかしていたし。東京は一緒に座って作ってはいなくて、Julia Shortreed(Black Boboi, ODEO)とか、まだこれからだけど、そこと繋がって話したり、録音してもらったり、そういう感じですね」
――その土地に根付いたアーティストたちと出会えるのはいいですね、広がりますね。コロナ禍でも深谷さんはずっと移動されていたと思うんですが、日本からフランス、フランスからイギリスに行ったり。まだヨーロッパのほう、コロナの余波は強く感じます?
「数字的には感染者が多いとかあるんですけど。僕、最初フランスにいたんですよね、イギリスに来る前に。そしたら、フランスとイギリスで全然信じられないくらい差がありました。イギリスは誰もマスク着けてないから」
――(笑)!やばい!
「もう、誰も着けてないです。ロックダウンでも誰もマスク着けてなかったから。逆に生活しやすかったです。こっちは」
――信じられない世界(笑)。逆にもう諦め、仕方ないって感じなんでしょうかね。
「たぶん着けたくないんじゃないですか(笑)。でもそう思うとフランス、意外ですよね。厳しいし、みんなマスク着けてるから」
――フランスの美学に反しそうですよね、マスクっていう存在が。
「そうそう。それで、フランスからロンドンの駅に着いて電車を出たら、誰もマスクしてなかった。わぁ~って思って。すごかった。フランスのロックダウンだけ経験したんですけど、外出するときに申請しないと罰金食らうとか、すごい厳しいルールから、こっちのトータル・フリーダムに移ったので、あっちに戻れなくなっちゃって。だからイギリスではライヴもやってるし、お店とか行っても誰もマスクしてないし、もうみんな忘れてるっていうか。夏に浸ってますね」
――そんな場所が存在するなんて知らなかったです(笑)。
「本当にこっちに来られて、ある意味ラッキーでした」
――クラブはどうですか?イギリスって聞くと、Coucou ChloeとかShygirlがクラブ・シーンを盛り上げたイメージがあるんですけど、今はどんな感じですか?
「やっぱりクラブはずっと閉まってたんで、レイヴなら行ける感じですけど、イギリスって、なんか全てにクラブ・ミュージックを注入できる文化じゃないですか。嗜好として。すごく好きじゃないですか。だからたしかにそれは消えてないですね。車がいっぱい走ってる道で朝の10時からドラムンベース聴こえてくる街ってあまりないと思うんですよ。ガチなやつ(笑)。だからその感覚は好きですね。でも最近の流行りってなんだろな、僕、あまり最近の音楽、サンプル探りとかしてないんですよ」
――ぜんぜん大丈夫ですよ!
「やっぱり、近いところではソウルとヒップホップとかが、相変わらずですね」
――イギリスでGreentea Pengっていうネオソウル・シンガーとか……。
「ちょうどその子のこと考えてました(笑)」
――私も今、流行りの音楽って聞いたとき思い浮かんだのが、彼女でした(笑)。こんなご時世ですが、日本に帰ってくる予定は?ツアーは?
「今ツアー組もうとしてるんですよ、イギリスで。それができたら夏はずっとイギリスで、新しいアルバムはやっぱりこっちで終わらせたいから、今のところは12月か、完全にアルバムをこっちで終わらせるなら、来年の春ですね」
――新作は、夏前にリリースですかね。
「そうですね。それで、夏には日本でツアーできたら完璧です!」
■ 2021年4月14日(水)発売
Ghost In The Tapes
『Happily Confused』
BMM045
https://lnk.to/Happily_Confused
[Side A]
01. Lyrical Fitness (feat. Joseph Wallace)
02. Boppin’
03. Spurs (feat. Joseph Wallace)
04. Strawberries (feat. Jugo)
05. Oranjebaan (feat. LGDC)
[Side B]
01. Black Mass
02. A-hum
03. Dazed (feat. Julia Shortreed & Joseph Wallace)
04. Madrugada (feat. Willfromqnz)
05. Illusions (feat. Julia Shortreed)