kiss the gamblerがニュー・シングル『ベルリンの森』をリリース 岩出拓十郎 (本日休演) プロデュース


 昨年初のフル・アルバム『黙想』を発表し、今年も本 秀康主宰「雷音レコード」から発売された同作のヴァイナル・エディションや5月発表のシングル『台風のあとで』が好評を博しているkiss the gamblerが、ニュー・シングル『ベルリンの森』をリリース。7月23日(土)より各プラットフォームでの配信が開始されます。

 ベルリン旅行やヴィクトール・フランクル『夜と霧』、学生時代における機微の回想などからインスピレーションを得て制作されたという同作は、『台風のあとで』に引き続き岩出拓十郎(本日休演)によるプロデュースのもと、同氏のホームスタジオ「仏間サウンズ」にて録音。演奏にはかなふぁん aka kiss the gambler(vo, key)に加え、あきさんぽ(cho)、amaen(cho)、樋口拓美(dr | 本日休演)、岩出(ag, cho)、河村勇之介(key, cho | THE ROMANS) 、櫻木勇人(b)、屋敷(ag, cho)が参加し、エディットは河村、カヴァー・アートはあきさんぽが担当。ミキシングは、マスタリングも手がけるカタヤマミチヒロと河村が共同で務めています。

 kiss the gamblerの音楽は自身に立ち昇った感情をただ歌にするのではなく、その心持ちに至ったメカニズムを探す過程を歌っている。そう簡単に結論を出すわけでも、きれいな物語に帰結させるわけでもない。それでも今言えることをなんとかつかみとろうとするさまに、度々心が鷲掴みにされるのだ。
 ベルリン旅行の記憶や、ヴィクトール・フランクル『夜と霧』からインスピレーションを受けたという本曲も、苦しみや悲しみの発露に考えを巡らせている。そして孤独でも生きて行けるように心の居場所は決めておくことや、この音は忘れてはいけないということは、そっと心に決めている。また「空が暗くなるから 夜の散歩に連れて行ってよ」の一節には忌野清志郎の優しさと強かさを借りるような意識も感じられた。
 しかしこの曲の魅力は、そんな感情をかなふぁんのハツラツとした歌唱と、プロデュースを手掛けた岩出拓十郎を始めとする仲間たちとの演奏によって、ユーモアに置換しているところにある。朗らかなスカのリズムに、反復するメロディライン、キラキラのギターアルペジオ、ほんのりサイケがかったキーボードの音色など、どこをとってもかわいがりたくなってしまう率直なポップ・ソングなのだ。
 そしてもうひとつだけ確かなことに気づく。心の居場所は、歌の中にあるじゃないかと。

――峯 大貴(『ANTENNA』誌副編集長)

『森へ』
 つい先日、はじめてkiss the gamblerの中の人、かなふぁんとじっくり話す機会があった。その虚飾のないすんなりとした話しぶりや、自身を取り巻く人、環境、ひいては世界との距離の測り方に心打たれた。感受性きわめてつよく、ささやかな日々の泡を取り溢さずたいせつにポケットに収集する彼女の、あかるいのかくらいのかわからない不思議な感触の作品たちの謎が、ほんのすこし解けた気がした。そんなかなふぁんが、ライブで既に披露されている楽曲『ベルリンの森』を配信リリースすると聞き、彼女らしいなと強く思った。
 キャッチーで人懐こく、みんなのうたに採用されるんじゃないかとさえ思える牧歌的なメロディーにやんちゃなアレンジ。しかし、そこに乗っけられているのはそうした朗らな曲調とは対極にあるような、辛辣かつ内省的な歌詞である。彼女自身の実体験にもとづいた、あるいは書物から読み取ったらしき深い怒りや悲しみ、憤りといったいわゆる負の感情が、飾らぬ文体で素直に綴られている。聴く者の多くはおそらく、この詞曲のアンバランスさ、ギャップに戸惑うだろう。かく言う自分もまた、かなりの回数聴き込んだにも関わらず、いまだにどんな感情を抱けばよいかわからず、歌の世界をあてどなく彷徨っているのだ。
 が。この、聴き手が楽曲に翻弄され迷子になっている状態、複雑な心情の揺れがもたらす奇妙な恍惚こそが、kiss the gamblerが紡ぎ出すポップソングのめくるめく効能なのではなかろうか。既発の傑作アルバム『黙想』においても、なかなかにスパイシーな印象を与えるナンバーがぽんぽん散りばめられていたが、おそらくこの作風の在り方はかなふぁんによる、ごく自然なソングライティング法なのだろう。かつて誰かが言い放った、歌の本質は悲しみを忘れさせるのではなく、忘れさせなくするところにある、という重い言葉。かなふぁんは感覚的にそれをよくわかっているのかも知れない。
 表現の核に辛辣さがあることは優れたポップミュージックの必須条件だと思う。口当たりのよい単調な味付けのカレーより、複雑で奥行きのあるスパイスカレーのほうが偉いなんて言うつもりはないけど(スパイスといえば多作のかなふぁんはつい先日『ジンジャー』なる7吋盤をドロップしたばかりだ)、どうせ食べるなら自分は辛い!旨い!辛い!とのたうちながら、ちょっと手強いひと皿と闘いたい。あかるくてたのしいうたや、くらくてかなしいうたがはびこる世界の端っこに、あかるくてかなしいうたが生まれた。ちまたにはいろんなうたがあるほうがいい。それだけは絶対間違いない。
 そんなわけで。自分はベルリンには行ったことがないし、今後行く予定もないけど、我らがkiss the gamblerによるただならぬ一曲に出会えたことがもう果てしない旅だと思う。この、あかるいのかくらいのかわからない尊き音楽の森で、皆さんも存分に迷子になってみませんか。

――マサモトススム

■ 2022年7月23日(土)発売
kiss the gambler
『ベルリンの森』

https://linkco.re/pPCRTfaR

WHO DO YOU LOVE? x kiss the gambler
はにかみジンジャー

2022年8月21日(日)
東京 下北沢 BASEMENTBAR
開場 11:30 / 開演 12:00

予約 2,500円 / 当日 2,900円

[出演]
kiss the gambler / フー・ドゥ・ユー・ラブ

kiss the gambler with 岡林風穂
JAPAN TOUR 金沢

2022年8月26日(金)
石川 金沢 もっきりや
開場 18:30 / 開演 19:00

予約 2,000円 / 当日 2,500円

[出演]
貴一 / kiss the gambler / 岡林風穂

kiss the gambler with 岡林風穂
JAPAN TOUR 長野

2022年8月27日(土)
長野 ネオンホール
開場 18:00 / 開演 18:30

予約 2,000円 / 当日 2,500円

[出演]
金馬車 / 貴一 / kiss the gambler / 岡林風穂

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