Interview | MIDI Provocateur (小林うてな + ダイアナチアキ)


好きか嫌いか、踊れるか踊れないか。全部が共存できる世界

 近年はJulia Shortreed、ermhoiと組んだBlack Boboiとして勢力的に活動し、ソロでも冲方 丁原作映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019, 堤 幸彦監督)の劇伴を手がけるなど、常にフレッシュな驚きを届けてくれる小林うてな(BINDIVIDUAL / 以下 K)と、10代から活躍するトップ・モデルとしてのみならず、DJやノイズ / エレクトロニック・ミュージックのクリエイターとしても名高いダイアナチアキ(以下 C)が、“ダンス・ミュージック”に特化したプロジェクト“MIDI Provocateur”をスタート。YOSHIROTTENが手がけたヴィジュアルと相まってフューチャリスティックかつハイパースティシャスなイメージを纏う今年6月のデビューEP『Episode 1』に続き、10月31日(木)には早くも各曲に女神の名を冠した新作『Episode 2』のリリースを控えています。本稿では、2人の考える“ダンス・ミュージック”とその今後について、バックグラウンドを交えて語っていただきました。

取材・文・撮影 | 久保田千史 | 2019年8月


――お2人はお付き合い長いんですか?

C 「存在を知り合ってからはたぶん数年経ってるけど、2人とも自分から話しかけるタイプじゃないから、がっつり喋り始めたのは1年前くらい。仕事で一緒に曲を作ることがあって。まだ1年しか経ってないですね」
K 「まじか」
C 「もっと前のことみたいだよね」
K 「うん」

――仕事がきっかけで仲良くなったんですね。
C 「でもまあ、いずれは喋ることになってたと思う。同じイベントに出ることもよくあったから」

――そこからMIDI Provocateurになった経緯は?
C 「当時、わたしが女の子と2人でPALE COREっていう、名前も顔も一切出さない覆面デュオをやっていたんですよ。今のMIDI Provocateurに繋がるようなダンス・ミュージックだったんですけど、うてなちゃんと仕事で一緒になるタイミングでもう一人の子が抜けることになって。ライヴでPALE COREとうてなちゃんは共演していたから、どんな音楽かわかってるし、“入る?”って聞いてみたんです」
K 「それで覆面はやめてフツーにやろ、ってことになったんだよね。覆面だと告知ができない(笑)」
C 「そうなの。覆面だと、なにかと不自由なことがあって。たのしいこともたくさんあったけど」

――当初からプロフィールに書いてあるような、ゲームのイメージだったんですか?
K 「そういうコンセプトは、『Episode 1』を作る過程で出てきたものかな」
C 「最初から2人で考えていたのは、“ダンス・ミュージックを作ろう”っていうことだけですね」

――“ダンス・ミュージック”つっても、いろいろありますよね。お2人はもともと、ダンス・ミュージックに近接した音楽は作っていたわけですが、そこをさらに、プロフィールにもあるような、うてなさんのEDM趣味に寄せた感じなのでしょうか。
K 「寄せようとは思ってないですね。ひとりでやるにはテンションが……みたいなところはありますけど。EDMって、“アイドル”とかもそうだと思うんですけど、“EDM”っていう単語から想像する音楽が人それぞれだと思うんですよ。“テクノ”とか“4つ打ち”もそうかな。だから、EDMを軸にするとズレが生じてしまうかもしれないです。“自分たちが好きなダンス・ミュージックを作ろう!”っていうのが共通認識です」

――そうなんですね。MIDI Provocateurの情報が流布するにあたって、なんとなく、EDMが一人歩きしているイメージがあったから。
C 「うん、たしかに……」
K 「それはそれで、おもしろいからいいですけどね。わたしはプロフィールに明記してるし、人にも“EDMが好き”って言うんですけど、それに対して“えっ、意外”みたいな反応をもらうこともあります。そういうの、なんかおもしろいな〜って思う。EDMって聞いて“Ultra”みたいなものを想像する人がいるかもしれないし、そうじゃない人もいる」

――なるほど。じゃあ、ザ・EDMみたいな人でもわかってくれそうなところで言うと、どんなのがお好きなんですか?
K 「Skrillex大好き(笑)」

――Skrillexを聴いてみたチアキさんの感想は?
C 「う~ん……曲はかっこいいと思う……」

――(笑)。どこはダメなんですか?
K 「インスタでしょ(笑)?」
C 「“Skrillexのインスタが嫌い”って言ってたらしいです。覚えてないけど」
K 「わたしだって別に、Skrillexのインスタは見ないよ!音しか聴いてないから、逆にインスタのこと考えてなかった(笑)。でもたしかに、音から入るのと、ヴィジュアルから入るのでは全然違うもんね」
C 「音は好き。Skrillexって宇多田ヒカルさんとやってたじゃないですか。あれゲーム(スクウェア・エニックス『キングダム ハーツIII』)の音楽でしたよね?わたしゲーム好きだから、Skrillexのそういう部分は“いいね”と思って」
K 「そっかそっか」

――あ~、たしかに。Skrillexはゲーム好きを押し出したりもしますよね。8bit使ったり。
C 「うん」

――チアキさんご自身は、ダンス・ミュージックを作るに当たってゲーム・ミュージックからのインスパイアってあるんでしょうか。
C 「それはないなあ。ゲームは好きだけど、プレイに集中してるから、音楽はあまり意識してなくて」

――まあね、音楽に集中してたらゲームできないですもんね(笑)。
C 「うん(笑)」

MIDI Provocateur | 小林うてな + ダイアナチアキ

――逆に“ゲームっぽい音楽”って難しいですよね。8bit使っていればゲームっぽいのかもしれないですけど、今のゲーム音楽ってフツーにPCMだし。
K 「うん、だからゲーム音楽は全然意識してないですね。そもそもわたしはゲーム音楽とか知らないし」

――資料には“ステルス・ゲーム”って書いてありましたけど、ステルスつったら基本『メタルギア』ですよね。
C 「そうですね、大好きです」

――『Episode 1』はイメージ的に、メタルギアなら『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』か『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』かなーって思ってたんですけど。
C 「それは全然考えてなかった。フィールドによって曲が変わるとか、ビートと一緒にスクロールするとか、そういうのがゲームっぽいと思っただけなんですよね。PALE COREがわりとコンセプチュアルなプロジェクトだったから、うてなちゃんと一緒に曲を作ったときにもコンセプトを持たせたくなったんだと思います。自然に」
K 「仮想空間の物語みたいな感じだよね。我々の曲は歌詞がないから、空想の場面を当てはめている感じです」

――それは聴き手がイメージし易いように、ということ?
C 「違います。わたしたちが、ていうかわたしが楽しいから。“ゲーム”っていう言葉を出さなかったら、ゲームを連想しない人も多いと思うんですよ。だから、人それぞれで、なんでも好きに受け取ってもらえれば。次のEPは、ゲーム要素もEDM要素も考えてないですよ」

――今度はどんな感じ?
C + K 「BPM 133のテクノ」

――イーヴンキック?
C 「うん、4つ打ちです。最初にうてなちゃんに聴かせたときは“ワルいね~”って言ってた」
K 「ワルいし、なんか暗い(笑)」

――インダストリアルっぽいってこと?
K 「そうですね、インダストリアルっぽかったり、サイバーっぽかったり」
C 「サイバーパンク、インダストリアル・テクノ、みたいな感じ」

――そういう部分は『Episode 1』と共通しているんですね、『Episode 1』もインダストリアルっぽい質感はあるし。
K 「おお。そうだったら嬉しい」
C 「『Episode 1』でインダストリアル感を出そうとはしてなかったけど、たしかに、そう言われたことはある」

――硬質だし、好きなんだろうな、っていうのはすごくわかりますよ。
C 「好きですね、超好きです」
K 「でも『Episode 1』では、あえてそこは出そうとしてなくて」

――あえてなんですか。
K 「うん。ポップなものを作ろうと思ってたから。『Episode 2』はもともと2人が好きなインダストリアルをフツーに作っちゃおう、みたいな感じですね」

――展開が自由ですね。
C 「うん。決めることもすごく少なくて。インダストリアルで133、キーワードはそれくらい」
K 「2人でタクシー乗ってるときに決めたんだよね(笑)」
C 「うん(笑)。それ意外は本当に何も決めてない」

――133というのは、どういう基準?
C 「わたし、1ヶ月置きくらいに気分が変わっちゃうんですけど、そのときは自分がDJをやるときに135が好みだったんですよ」
K 「わたしはその頃131が気になってて。間を採って133にしたんだよね(笑)」
C 「そうそう」

――(笑)。BPMを先に決めるっていうのは、ある意味EDMっぽいのかもしれないですね。EDMってけっこうルールが明確にあるじゃないですか。BPMがある程度決まっていて、ドロップがなきゃダメ、とか。
K 「うんうん。なんかそれ、おもしろいですよね。フツーに楽しい。ソロとかだと歌メロに沿って作るから、どうしてもビート重視の曲にはならない感覚があるんですよ」

――でも、お2人のノリから察するに、ゆくゆくはもしかしたら歌を入れることもあるかもしれないですよね?
K 「うん、あるかもしれない。それなら誰かをゲストで入れるのがいいですね。自分で歌うよりは」
C 「誰かに歌ってもらいたいとか、ラップ入れたらおもしろそうだね、とかっていうのは何度か話に出てきてます」

――いいですね。『Episode 1』はトラップのノリもちょっとありますもんね。これからどうなってゆくのか、全然想像つかないですね(笑)。
C 「うちらも全然わかってないから。たぶん、本当にその時々の気分をその都度やっていくだけだと思います。やりたいことは常に出てくるから、あれやりたい、これやりたい、っていう感じで、ずっと楽しそうだな、って思います」
K 「『Episode 2.5』のアイディアも決まってます(笑)」

――(笑)。BPMの流行の移り変わりとか、おもしろいですよね。
C 「流行りとかは、よくわかってないんですけどね。今の自分がどういう気分か、っていう感じ。クラブに行ったり、ライヴに行ったりして、いろんな人の曲を聴いて“いいな”って思ったのが自分の気分と合致することが多い気がする」

――現場の感覚ってことですよね。
C 「空気感染ですね。何か聴きに行くときは“空気感染しに行く”って思ってます」
K 「“空気感染”いいね」

――チアキさん的には、MIDI Provocateurの曲をDJで使う意図もあったりするんですか?
C 「えっ、1人でDJのときに?自分たちの曲をかけるってことですか?」

――はい。
C 「それは、1人ではやらないかも……(笑)」

――なるほど。ダンス・ミュージックって、BPM、キックの数、ベースの長さだけでもいろいろできるじゃないですか。それも含めて、いろんな組み合わせのおもしろさを2人で試している感じもあるのかなーって気がします。
C 「うん。1人のDJでも、セットが1時間なのか3時間なのか、どうもっていきたいか、どういう場所なのかで変えたりするじゃないですか。MIDI Provocateurでも1曲1曲で終わらせるっていうライヴにはならないと思う」
K 「そうだね。ライヴでいろんなプレイをするためのピースを、全部自分たちでいっぱい作っておこう、っていう感じです」

――ライヴにDJの感覚を投入するっていうのはおもしろいですね。楽曲にナラティヴィティを持たせているのも、DJの緩急に近しい感覚なのでしょうか。
K 「たしかに、ライヴセットを組むことになったら、よりそういうことを考えそうですね」

――Black Boboiのときはどうですか?ライヴに緩急付けるための曲作りをするんでしょうか。
K 「そうですね。ソロでもそうだし。ストーリー性とまではいかなくても、ライヴで自分たちがプレイするにあたって、ある程度の流れが必要じゃないですか。お客さんのことを考え過ぎないにしても。例えば、すごいゆっくりな曲からいきなり速い曲になって、その後はずっとゆっくり……みたいな感じだと、自分たちの気持ちのやりどころがなくなっちゃうじゃないですか。“この速い曲、どんな気持ちでやるよ?”みたいな。“その後の遅い曲って……?”ってなる。」
C 「おもしろそうだけどね、いきなり速くなって、その後ずっと静かなの」
K 「おもしろそうだけどさ、“来ないんかい!”みたいになるじゃん(笑)。わたしは来るなら来てほしい。EDMが好きなのは、緩急があって飽きないからなんだよ。そこが魅力だと思ってるから」
C 「飽きないの大事!わたしけっこう飽きちゃうからなあ~。人のライヴとか行っても」
K 「1曲単位でも、ブレイクを作るんだったら、その後はそれ相応の対価を払わないといけないと思うんですよ」
C 「わかる」

――対価(笑)。
C 「こないだも、それについて話していて。長いブレイクを作っちゃったら、よっぽどの何かが来ないと、この長さは成り立たないよね、みたいな。“これだけ待ったんだから、いいのちょうだい!”みたいな。ブレイクの後って、期待しちゃうもんね(笑)」
K 「期待しちゃう(笑)。最近だと、Floating Pointsの新曲とか、ウオー!ってなってから、シ~ン……ってなるんですよ」

――そっか(笑)。
K 「いや、めちゃめちゃ好きなんですよ。すごい、もう、神の領域だな、って思った。あのブレイク。ブレイクっていうか無音」
C 「そういうの大人っぽいよね、タメても何もしないっていうのは」
K 「そうそう、かっこいい。でも個人的には、ブレイクしたら、ちょっとギフト欲しい」
C 「そうだね、ひとつでもいいからギフト欲しいよね。“休む前とは違うあなたを見せて!”みたいな」
K 「だよね(笑)。ライヴだと、それをすごく大きく考えてセットリストを組むと思うんですよ。しかも自分たちの曲だけで組むしかないから、“こういう曲があるといいね”っていうのは必然的に出てくる」
C 「ライヴになるとアレンジも変えられるから、それも楽しみ。3分の曲を6分にしたっていいわけだし。シチュエーションによっていろいろ変えられるのは楽しそう」

――“曲の流れ”みたいなところで言うと、アルバム単位での作品は考えていないんですか?
K 「わたし個人で言ったら、最近はもう、アルバムというものがそんなに成立していないと思っていて。自分では一気に8曲とか、なかなか聴けなくて。歌詞があったり、アルバム自体に意味を持たせるとかだったら勿論いいとは思うんですけど、MIDI Provocateurに関してはアルバムとは遠い所にあるんじゃないかな。EPでコンセプトを持ちながら、ある程度のスパンで3、4曲ずつ出していったほうがいいのかな、と思いますね」

――そこはフツーにテクノの感覚ですね。12″カルチャーの流れにある感じの。
K 「うん。だって、4つ打ちのアルバムとか聴かないしなあ(笑)」
C 「そうだねえ」

――たしかに。もしくは、アルバムになると全然別のことをやったりしますよね。アルバムという尺の中で何ができるか?みたいな。
K 「ああ~。長く活動してたらそういう感覚になることもあるかもしれないですね。まだ我々は始まってから1年経ってないから」

――『Episode 1』から『Episode 2』にかけての活動期間では、何か変化ありました?
C 「曲の作り方が変わりましたね。『Episode 1』は1曲を半々くらいで作ったけど、『Episode 2』は、それぞれ個人でガッツリ作るスタイルなんですよ。1曲を7:3とか8:2くらいの割合で作っていて、EPとしてまとまったときにちょうど半々になる感じ」
K 「今の作り方のほうがさ、我々っぽいよね。そもそも“お互いの要素を全部混ぜよう”みたいな感じじゃないから、そのほうがたぶんたくさん作れる」
C 「そうだね。書き出して送るっていう作業をしなくていいし。ひとりがファイルを管理して、最後だけ投げるっていうほうが便利」
K 「構成とかアレンジとかだけは、一緒に話しながら考えますけどね」
C 「そうそう。さっき言ったみたいな、ブレイクの後はどうする?とか。人がずっと踊り続けるにはやっぱり、ブレイクがあったり、新しい音が入ってきたり、いろいろないと難しいじゃないですか。DJだったら使える部分を繋げばいいけど、MIDI Provocateurはライヴを想定しているから1曲の中でそれを維持しなきゃいけない。そういうのを考えるのはおもしろいですね」

――1曲の中でいろんな展開っていうのは、90sのトランスとかもそうだった気がするんですけど、どうですか?好きだったりします?
C 「わたしトランス超好きなんですよ。ゴアトランス、サイケトランスとか。90年代は小学生だったんで、わたしが聴いてたのは2000年代に入ってからですけど。Yoji BIomehanikaさんとかめっちゃ好きだった」

――わー!まじっすか。よかった。僕もトランス大好きなんですけど、さっきのEDMの話と同じで、トランスが好きっていうとヘンな顔されることが多くて(笑)。
C 「そう。トランスも“えーっ”て感じになりますよね。“意外”ってわたしも言われる」
K 「へえ~。そうなんだ」

――トランスいいっすよね〜。
C 「うん、大好き。わたしはジャンルに対する執着全くないですね。ジャングルもダブステップも、ヒップホップも好きだし、ハードコアもパンクも好きだし。なんでも好き。全部好きかも。音楽が好き(笑)」
K 「それは幸せな話や(笑)」

――いろいろ好きな中で、エレクトロニックなダンス・ミュージックに特化する意味みたいなことって考えます?
K 「楽しいからじゃない(笑)?」
C 「まあね(笑)。わたしは、もともとバンドをやっていたのが大きいと思います。バンドって、人と一緒じゃないと進まないじゃないですか。人に楽器を弾いてもらわないと音楽が成り立たない。でもこういう曲はひとりでPCで作れるから、メンバーに頼る必要がないっていうところから始まって、こうなっちゃっただけですね。これが好きだから始めたっていうよりは。MIDI Provocateurも、“うてなちゃんと出会ったから”っていうシチュエーションのほうが先かも」
K 「たしかにそうだね。全然ジャンルとかわからずに作ってるし……。そもそもわたし、まじ4つ打ち聴かないんで。ハウスめっちゃ苦手なんですよ」
C 「わたしも。明るいハウス、ディスコはダメなんですよね。そこは一緒なの」

――まじすか。90s初頭のシカゴとか好きそうなのに。
C 「ってよく言われるんですけど、ちょっとわからないんですよ……」
K 「なんか脳が停止する」
C 「レフトフィールド・ハウスとかは好きなんですけど……」
K 「よくわかんない。感覚でしか聴いてないから。クラブに行くのは、ライヴが終わって、いこ〜ぜ〜ってとき。“リサーチしとこう”みたいなノリで(笑)。だから、何かを求めて聴きに行く感じじゃないんですよ。とりあえず行って、そこで流れてるものを聴いて、好きか嫌いか、踊れるか踊れないか。ジャンルがわからないぶん、4つ打ちばかりだと聴いてて飽きちゃうっていうか、“そこ来ないんかい!”みたいなことがすごくあるから、MIDI Provocateurではそうじゃない4つ打ちで曲を作れたらおもしろいな、とは思ってますね」
C 「ちょっとヘンな曲をたまにかけてくれないと、ずっとストイックなダンス・ミュージックだとけっこうしんどい」

――Berghainっぽいミニマルな感じはダメってこと?
C 「ああ~、ちょっとずっとは聴いてられないかも……」
K 「ミニマルってどんだけミニマルなの?」
C 「う~ん、ちょっと説明が難しいなあ……。なんか、ずっとかっこいい曲みたいな」
K 「へえ~。聴いてみたい」
C 「たぶん飽きるよ。今話してた感じだと。そういう意味で言うと、“わたしダンス・ミュージックそんなに好きじゃないのかも?”って思うときある。だって、みんなはミニマルでもずっと踊ってられるじゃん」
K 「わたしはわりと2、3時間踊り続けるけど、お酒ダメなんで、スーパーシラフなんですよ。EDM箱に行っても、シラフで踊り狂っててコワイって言われる(笑)ジムだと思ってクラブに行ってるから。シラフだから、テンション上げるためには音楽を聴くしかないわけですよ。そうなるとやっぱり、展開を求めちゃう。どんなに音が良くても、曲が平坦だと止まってしまう」

MIDI Provocateur | 小林うてな + ダイアナチアキ

――ダンス・ミュージックを作る人が、音以上に曲ありきっていうのはおもしろいですね。
K 「曲ありきでしかない」
C 「あと、わたしはけっこう見た目も大事」

――それはなんとなくロックっぽい感覚ですね。たしかにYojiさんは見た目もすごいですけど。
C 「うん。寡黙にやっていても、その様子を見ていたい人っているじゃないですか。そういう人だと、オーディエンスとして、よりテンションが上がりますね。ロックバンドでも、たいしてかっこよくないのにずっとかっこつてるだけのバンドは飽きちゃう。曲が超キレイとかだったらいいけど、そうじゃないんだったら、やっぱり、わたしは見ていて楽しい人のほうがいい」

――けっこう、DJらしからぬ発言ですね(笑)。
K 「うん。それはおもしろいね(笑)」
C 「だから、わたしはたぶん、ちゃんとしたDJじゃないんですよ」

――ちゃんとしたDJがどんなかわからないですけど……。チアキさんは、DJもある程度パフォーマーとして見ているということですよね?
C 「う~ん……あと顔とか?」

――顔。
C 「うん。その人がなんでそれをやっているのか、顔からちょっと伝わってくるような人のほうが好き。この人は本当にこれが好きなんだな、ってわかったり。あとは活動の仕方とか。そういうのが納得できる人がいい」

――なんか、お2人ともおもしろいですね(笑)。
C + K 「あはは(笑)」

――2人でがんがん踊りに行ったりしてるのかと思ってました。
K 「行ったことないけど、行ったらヤバそうだね(笑)」
C 「うてなちゃんおすすめのクラブに、後から行ってみたことはありますよ」

――チャラ箱?
C 「チャラ箱。“周りは誰も楽しんでなかったけど、わたしは超楽しかったよ!”ってうてなちゃんが言ってて。わたしも全く同じでした(笑)」

――ああ~。でも、もしかしたら今、チャラ箱がいろんな意味で実はおもしろいのかも。
K 「うん。EDMとかかけてくれるし。ずっと4つ打ち聴かされるより楽しい(笑)」

――僕はBerghain的なストイックな感じのも大好きなんですけど、今たしかに、トランスとかデステクノばっかりかかってるチャラ箱があったらそっち行きたい気分はあります(笑)。
C 「トランス楽しいですよね。ハードコアがダンスミュージックになったらトランス、みたいに思う時がある。ブラックメタルも」

――そうですね、実際繋がりもありますし。でもMIDI Provocateurだって、Berghainでかかってても全然ハマりそうな曲もありますよ。
K 「そっか。じゃあ出たいね(笑)」
C 「でもさ、最高峰って言われてるとこでしょ?」
K 「しかもさ、入口でチェックがあるんじゃなかったっけ?入れなかったらめっちゃ傷つくわ……。早く食べろって顔されるラーメン屋みたいな気分になりそう」

――(笑)。
K 「チャラ箱ってそういうのなくないですか?誰もが誰のことも別に気にしてない、みたいな。新宿って感じ。全員が好きなように生きている感じがいい。そういう箱がいいな、わたしは。クラブに行かない人が語っていい話だとは全然思ってないですけどね(笑)」

――行かない人ならではの意見というのもあるわけだから。そう考えると、所謂まじ超EDMのイベントって、誰でもウェルカムな感じありますね。
K 「うん。まあ、目的が違うんでしょうけどね。みんないろんな目的でその場に集まってる。そういうのも含めて、全部共存できる世界がいいな。“リズムに乗れない奴はダサい”みたいに思われるのとか嫌じゃん。“あいつの踊り方は素人だな?”みたいな(笑)」

――わかる(笑)。僕が遊びに行くとき絶対ひとりなのは、そういうのが嫌だからなのかも。
C 「個人個人で好きなことするのがいいね。“みんなで一緒に!”みたいなのじゃなくて。来たい人は来て、帰りたい人は帰る、みたいな。そういうのがいいな、わたしは。演者側から“騒げ~”みたいな煽りアプローチがあるわけでもなく、DJも客も好き放題やる感じのがいい」
K 「わたしは煽るDJ好きだけど(笑)。“みんな朝まで踊ってくか~い!?”みたいな。超おもしろいよ(笑)」
C 「まじか(笑)」
K 「すぐフェイダー下げて喋るんだよ(笑)」
C 「へえ~」
K 「うるせー!おまえに言われなくてもこっちは踊ってんだよ!って思うんだけど、それがまたいいんだよ(笑)。なんか、やり取りした気持ちになるんだよ」
C 「ああ……その後はなんか、アガるんだろうね……(困惑)」
K 「我々も、ジャンルとかステイタスどうこうっていうんじゃなくて、楽しいプレイをしたいな」
C 「それはそうだね。好きに楽しんでもらえたらいいな」

MIDI Provocateur Instagram | https://www.instagram.com/midiprovocateur/
小林うてな Instagram | https://www.instagram.com/utenakobayashi/
Diana Chiaki Instagram | https://www.instagram.com/diana__chiaki___/

MIDI Provocateur 'Episode 1'■ 2019年6月14日(金)発売
MIDI Provocateur
『Episode 1』

https://smarturl.it/MIDIP

[収録曲]
01. ⋈ Artemis ⋈
02. ⊱ Uranus ⊰
03. ⊹ Saturn ⊹

MIDI Provocateur 'Episode 2'■ 2019年10月31日(木)発売
MIDI Provocateur
『Episode 2』

https://smarturl.it/MIDIP2

[収録曲]
01. Prologue
02. Izanami
03. Medusa
04. Freyja
05. Pele
06. Epilogue

NF #13 -GEN GEN AN-
https://sakanaction.jp/feature/nf13

2019年12月7日(土)
東京 恵比寿 LIQUIDROOM

開場 / 開演 24:00(終演 5:00)
前売 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
※ 20歳未満入場不可