Column「Mosh Sommelier」


文・撮影 | Ngrauder + Lil Mercy (PAYBACK BOYS | PAYBACK BOOK) feat. Koya aka BROWN Jr. (DIKTATOR | BROWN Records)

| 第2回: BULLDOZE

 PAYBACK BOYS / PAYBACK BOOKの私Lil Mercy | 以下 M)とNgrauder氏(以下 N)による不定期連載「Mosh Sommelier」。SWORN ENEMYをフィーチャーした第1.5回に続く第2回目は、ビートダウン・ハードコアの始祖であり、永遠の謎であるBULLDOZE。ニューヨークのバンドと捉えるのかニュージャージーのバンドと捉えるのかという地域的なトピックから落としかたまで、答えが出ることはなく、謎は常に深まるばかりですが、考察を続けることで得る新たな知見は私たちにモッシュピットへと入る勇気を与えてくれます。

 BULLDOZEのカヴァー・コンピレーション『Straight Up Beatdown』を9月1日(日)にリリースするDIKTATOR / BROWN Records・Koya氏(以下 K)の提案でBULLDOZEについて話すことができました。究極のテーマ。


N 「BULLDOZEとの出会い的なところは段階を追っていくと、TERROR ZONEか『New York's Hardest』(1995, Ijt Records)のどっちかなんだよね。『The Final Beatdown』(1996, Time Records)を聴く前に、『East Coast Assault II』(1997, Too Damn Hype Records)でTRAIN OF THOUGHTは聴いてた。ただ当時はTRAIN OF THOUGHTのメンバーがex-BULLDOZEだったって知る由もなく」

M 「自分もTERROR ZONEの『Lord of Wrath』(1995, Eyeball Records)とかのほうが買ったのは早いですね。Gain Groundのほうが買いやすかったですよね。VINYL(東京・新宿)かUPSTATE(東京・原宿)で買ってると思う」
N 「TERROR ZONEの5曲入りのCD(『Self Realization: A True Lesson In Hard Core』1996, Gain Ground)もdiskunionで普通に買ったと思うんだよな。赤のジュエルケースのやつでさ」

TERROR ZONE 'Self Realization: A True Lesson In Hard Core' CD

M 「TERROR ZONEはBULLDOZEのヴォーカルが始めたバンドだっていう認識があったんだけど、その情報をどこで知ったかは定かではない。説明が書いてあったのかな」
N 「TERROR ZONEのCDのクレジットに“Kevone (BULLDOZE)”みたいに書いてあった気がするな。今聴くとめちゃくちゃかっこいいんだけど、当時は比較対象がないから、なんだかわからなかったすよね」

 1990年中頃はJohn JosephのBOTH WORLDSの『Beyond Zero Gravity』(1996, Another Planet Records)のリリースがあったり、『N.Y.H.C.』ドキュメンタリー(1999)には108が取り上げられていたり、ニューヨーク・ハードコアとハレー・クリシュナ(クリシュナ意識国際協会)には親和性があるものだと受け止めていました。

M 「当時はクリシュナの影響は大きかったですよね。流行っていたというか。そういうバンドもたくさんいたし、その中でごついバンドみたいな」
N 「“クリシュナがある意味スタンダードなのかな”っていう勘違いは生み出してるよね」
M 「けっこう聴き込みましたよね。CRO-MAGSよりTERROR ZONEのほうが聴き込んでた」
N 「BULLDOZEは『New York's Hardest』に入っている2曲を聴いてはいたんだけど、VISION OF DISORDERとSKARHEADのほうがわかりやすくハードコアで、そっちばかり聴いてた。あのコンピでBULLDOZEにやられたっていうのは当時はなかった」
M 「TRAIN OF THOUGHTもBULLDOZEのKevone以外のメンバーがやっているのは知っていたけど、なんで知ってたんですかね。ジンとか?TERROR ZONEっていうのはクリシュナ・ビートダウンじゃないですか、当時はクリシュナだからこういう音なんじゃないかって理解でした」
N 「フレーズの使いかたね。オリエンタルな響きあるよね。そうなるとTRAIN OF THOUGHTも内向きの、自分を見つめ直すような、内省的なものを感じるんだけど、あれにはクリシュナを感じないんだよね。TERROR ZONEのインタビュー、OUT TA BOMBの初期のジンに載ってた。1冊目か2冊目。25年前くらいになるんじゃない?そのインタビューで、Kevoneが“BULLDOZEに比べてTERROR ZONEはSLAYERやMETALLICAの影響を押し出してるんだ”って言ってたんだけど、どこが!? だよね。またそこで俺たちの勘違いが始まるんだよ。そうなのか、って」
M 「OUT TA BOMBは大きいですね。OTBを介して知ったものが多い。カタログにも“ex-BULLDOZEのKevoneのバンド”みたいに端的な情報はあったよね。BULLDOZEが一番最初に出したのは7"(『Remember Who's Strong』1994, Hardway Records)で、今日持ってきたのはベルギーのReality Recordsからの再発盤(2014)だけど、当時レーベルとコンタクトしていたらCONGRESSのメンバーが運営していて、INTEGRITYのジャパン・ツアー以来久しぶりって話したと同時にCONGRESSにもBULLDOZEの影響を探しちゃったよね(笑)」
N 「自分がBULLDOZEを知ったときにはもう7"は売ってなくて。『DOLL』の“売ります買います”のコーナーで連絡すると、個人売買のカタログを送ってくれて、BULLDOZEとDARKSIDE NYCが2大人気。5,000円は超えてたよ」
M 「もう30年経っているんですよね。BULLDOZEって、Representin' 1994じゃないですか」

BULLDOZE 'Remember Who's Strong'

N 「昔のLOFT(東京・新宿)の前でERAが、“この間OUT TA BOMBに入ったBULLDOZEの編集盤やばいよ”って話していて、25 TA LIFEより全然かっこいいって。比較対象がTA LIFEっていう。それで次のOUT TA BOMBのカタログが届いて買ったのがこれ(2ndプレス) だったっていう」
M 「自分は偶然オリジナルの1stプレスをOTBで買っているんですよね。ただ、1stプレスには歌詞とか載ってないんですよ(笑)。写真がけっこう違うんだよね。2ndは歌詞があるっていう」
N 「俺はバンダナ・ジャケットのほうで、みんなこっちだよね」
M 「このジャケットのイメージがBULLDOZEだよな。メタル色が前面に出てないじゃないですか。それでゴツゴツしてるっていう」
N 「どういう影響をのちに与えたかって考えたときにさ、ルーツがまるで見えないところあるよね。ヘヴィメタルとも違うし」
K 「ドラムのChris(Golas | AGENTS OF MAN, TRAIN OF THOUGHT)にインタビューしたんですけど(トリビュート盤CDのライナーノーツに掲載)、みんなMEGADEATHとかMETALLICAとかを聴いていて、Kevone以外の4人がRETRIBUTIONっていうスラッシュメタル・バンドをやっていて、Puda(George Mananedakis | AGENTS OF MAN, HOMICIDAL, TRAIN OF THOUGHT)がベースに専念したくなってヴォーカルを探してKevin(Clark aka Kevone)が入って、BULLDOZEができたみたいです」

BULLDOZE 'The Final Beatdown' 1st Press

M 「AGENTS OF MANから聞いたけど、年齢がかなり離れてるんですよね。Kevone以外は中学生くらいだったけど、何があってもKevoneは張ってくれたっていう話をしてくれました。“いいお兄ちゃんだった”みたいな」
N 「インタビューすればMEGADEATHやMETALLICAのこの部分が、っていう話ができるけど、当時はまあ情報がないからさ、何をどうやったらこの音楽ができるんだろうって考えたよね。ビートダウンとかはこれでやりたいって思うんだけど、曲じゃなくてパーツでしか再現できない」
M 「そもそもいろんなタイプの曲がありますよね。跳ねてるラッピン・ヴォーカルな曲もあるし」
N 「アルペジオの曲もあるしね」
M 「それをMETALLICAの影響ということにしておくということでいいのかな?アルペジオだったら全部METALLICAの影響に自分は入れてしまいがちですが(笑)」
N 「アルペジオの曲を聴いた人たちがBULLDOZEに影響を受けたって言ってそこ持って来ないよね(笑)」
M 「みんなが共通でイメージしているBULLDOZE像ってあると思うんですけど、ビートダウンの部分ですよね」
N 「NUMBの“Freeway”(『Platinumb』2000, Impak Muzik)の最後であったりとか、パーツとしてはあるんだけど。全体としてBULLDOZEっていうのはそれこそDENIEDが出て来るまではみんな再現できなかったよね」
M 「DENIEDですら再現できているのかどうかって話にはなってくる」

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Photo ©Ngrauder + Lil Mercy (PAYBACK BOYS)

Column「Mosh Sommelier」

文・撮影 | Ngrauder + Lil Mercy (PAYBACK BOYS) | 第1回: クイーンズNYのDENIEDとALL SHALL SUFFER

 NUMBの「Freeway」は全面的にBULLDOZEのビートダウンを体現した最初の日本のハードコア・バンドの楽曲。DENIEDからの影響を受けたバンドが多いのでは?と話していますが、「Freeway」からの影響を受けたバンドも多いのでは?そんなNUMBがBULLDOZEカヴァー・コンピレーションに参加しているのは歴史的に価値がありますし、聴かせていただきましたがBULLDOZEへの解釈がかなり進んだところにいるように感じました。さすがDa Tokyo's Hardest。

N 「何年も経ってからSHEER TERRORのスロウな部分からなんじゃないか?たしかに半音の使いかたは似ている……と考えるようになった」
M 「SHEER TERRORはムカつくライヴを潰すためにPaul Bearerが腕回したっていうのがモッシュ最初説あるじゃないですか。BULLDOZEの“ぶちのめす beatdown”みたいなのとリンクしているんじゃないかな。あとこれとSHEER TERRORの『Old, New, Borrowed And Blue』(1993, Blackout! Records)ってジャケットのテイストが似てない?」
N 「METALLICAとかMEGADEATHをやる技量はなかったから、その中でよりルーツであるCELTIC FROSTなんじゃないかっていう説はあると思う。普通だったら使わない半音の音の使いかたをするから、そうかな?と思うんだよね。思うのが、Kevoneのヴォーカルが乗ってちゃんと完成しているよね。若干ラッピン・ヴォーカル調だったり。当時もさ、E-TOWN CONCRETEまではラップできないけど、BULLDOZEがちょうどいいみたいのはあったんじゃないかね」

 E-TOWN CONCRETEの『Time 2 Shine』(Back Ta Basics Records)のリリースが1997年、BULLDOZEの編集版は1stプレスが1996年、2ndプレスが1998年、かなり近いタイミングでリリースされている事実を改めて確認する。TERROR ZONE『Self Realization』は1996年にリリース。

M 「声が軽くないというかヘヴィじゃないですか。AGENTS OF MANのツアーのあとに、アメリカでPuda、Chris、Zack(Thorne | AGENTS OF MAN, HOMICIDAL, ONE 4 ONE, SKARHEAD, TRAIN OF THOUGHT, TRUTH & RIGHTS)とAOMギターのRey(Fonseca | ONE 4 ONE, TRAIN OF THOUGHT, TRUTH & RIGHTS)が住んでいるニュージャージーの家に行ったんですけど、SLAYERのポスターの隣にBOOT CAMP CLICKのポスター貼ってあった。ヒップホップとメタルっていう印象はすごくありました。BULLDOZEはMikey Bull(Mike Milewski | HOMICIDAL, TRAIN OF THOUGHT, ZERO TRUST)が曲を作っていると思うんですけど」
N 「Zackじゃないの?」
M 「Mikeがいないバンドになると曲調だいぶ変わりませんか。AOMもTRUTH & RIGHTSも」
N 「あー。Zackはメロディアスなことをやりたい感じがするね」
M 「HOMICIDALのイントロの曲あるじゃないですか、BULLDOZEのライヴでもやってるやつ。たぶんなんですけど、家に行ったときに原型を作っているんですよ。たぶんPudaがドラムを叩いていて、Mikeは別の家に住んでいるんだけど、Mikeがリフを弾いていて“これやばいじゃん”って言いながらジャムってた。地下がスタジオになってたんですよ。こんな風に落とすの?って思ったんですよ、3段落ち極まれりですよね。あれはBULLDOZEに近いと思うんですよね。だからMikeが作っているんじゃないかという確信っぽいやつ」
N 「それは伝説的な瞬間に立ち会ったね」
M 「AGENTS OF MANのスタジオと家だけど、全然違う曲を作ってるっていうね(笑)」
K 「Mikeがキーマンなんじゃないかっていう話出ますよね」
N 「TOT、AOM、TRUTH & RIGHTSだとZackが前に出てるじゃない?だから、BULLDOZEが解散してああいうメロディアスな方向に進んだのかな?って思ったんだよね。TOTの“Hourglass”っていう曲あるじゃん?イントロ、ベースから入ってさ、ヴォーカル入ってからがほぼ“Remember Who's Strong”と一緒なんだよね。どうしてもTRAIN OF THOUGHTの話が出ちゃうんだよね」
K 「この曲についてメンバーに聞いたんですよ。BULLDOZE時代に作った曲で、できてすぐにBULLDOZEが止まっちゃったみたいですね」
M 「TERROR ZONEも活動期間短いけど、TRAIN OF THOUGHTも短いですよね」
N 「スタジオ録音が10曲しかないのに、10曲でやり切っているところがありますよね。93年から95年の2年で」
M 「BULLDOZEの編集版って1stプレスだとまだTime Served RecordsじゃなくてTime Recordsなんですね」

BULLDOZE 'The Final Beatdown' 1st Press

N 「これは、音楽的なところでイントロっていう概念が相当でかいよね。“Beatdown”の頭の部分はみんな真似しようと思ったよね。登場曲みたいなさ。近いところで言えばLEEWAYの1曲目だけど、もっと洗練されているというか」
K 「あのイントロでBULLDOZEを表してますよね」
M 「曲名が“Beatdown”ですからね。この曲の印象が強すぎるっていうのはある。この1曲が与えた影響がでかすぎるっていうのはあると思うんです」
N 「TERROR ZONEもそうなんだけど、イントロが強すぎる。みんなもうわかるじゃん、あれ聴いた瞬間。プロレスラーの入場くらいインパクトあるもんね。日本でも、音源にはなっていないけどライヴ用にイントロ持ってくるバンドいるじゃない?あれ全部BULLDOZEの影響だと思う。LEEWAYの影響で持ってきているバンドはいないと思うんだよね」

 ここではイントロとして楽曲「Beatdown」の話をしていますが、3rdプレス(DVD付き)以降の再発では曲順が変わり、1曲目が「Truth」になっているので、いつ編集版を手にしたかが、それぞれのBULLDOZE観形成に大きな影響を与えているのは間違いないでしょう。

M 「ニューヨークで開催された20周年ショウを観に行ったんですけど、めちゃくちゃ怖かった。モッシュピットで、昔からの人もキッズも死ぬ気でモッシュしているみたいな。顔がシリアスでした。“俺たち20年やってきた”って言ってたんですけど、20年やってないんじゃ……って。そこも含めてやばかったですね。何も変わってない感がすごかった」
N 「3年くらいでしょ」
M 「オリジナル・メンバーでやっていて、曲も怖いと思うんですけど、それ以上に存在が怖く感じました」
N 「脅しにくるみたいな音楽だもんね」
M 「BULLDOZEって、スポーティな要素がないじゃないですか。自分の中では1stアルバム以降のHATEBREEDでもスポーティ枠に入ってくるんですけど。スポーティ論争って当時あったじゃないですか。スポーティなハードコアは認めないというか。その路線で言うと、全くその要素を感じさせないというか。だから、怖いですよね。怖いというところが中心にあると思う」
N 「これにデスメタルを足すと、誰でもできるっていうか、わかりやすい音楽じゃない?そうなっていないところに、本当に悪い人がやってんだなーって思うよね。それこそ1曲目で“DMS Beatdown”って言ってるじゃない」

BULLDOZE 'The Final Beatdown'

M 「“DAK Crew Beatdown”ってなってると思うんだけど」
K 「それ誤字らしいんですよ。“DAH”で“Drink As Hard Crew”で、“DAH Crew Beatdown”って言ってるんですよね」
N 「なるほどね」
M 「新たなことがわかりました」
N 「“Suffering”とかは“Suffering Day By Day”って毎日辛くて、良いことないんか、っていう。歌い回しのフレーズが残りやすいよね。Kevoneが意図的にそうしているのかな。“Herb”もいいよな。相性はいいけど、そういう印象はないよね」
M 「でもそう言われたらそういう音楽だと思っちゃうかも。ストーナー感はあるよね。あえてそこに言及する必要はない気もするけど(笑)」

 こちらの映像はLil Mercy撮影によるもの。撮影したデヴァイスのせいで音がものすごく悪いのですが、そこにすら何かの意思を感じてしまいます。ライヴ企画自体はLord EzecのILL-ROCが主催、SKARHEAD(この日はPuerto Rican Mykeが久しぶりにSKARHEADで歌ったショウでした)も出演。DMSの集まりといった趣きを感じるライヴでした。

BULLDOZE 'The Final Beatdown' 2nd PressK 「“All I Have”は弟に向けた曲らしいですね(In memory of Vincent A. Cea II)」
N 「母親もそうだし、すごく家族愛がある」
M 「メンバーも本当のお兄ちゃんみたいに思ってたって言ってました」
N 「2ndプレスの盤面は“KINGS OF THE BEATDOWN STYLE!”って書いてあるんだね」
M 「これ1stプレスだと“the final beatdown (R.I.P)”って“R.I.P”が入るんですよね」
N 「元のCDにも入っているライヴはYouTubeでそのときの映像が観られるんだよね。それがTime Recordsの第1弾のテープなんだよね。白いやつ。ここですでにTERROR ZONEの告知がされているっていう。Kevone以外のメンバーはニュージャージーにいるじゃない?なんでそこのメンバーとやろうとしたのか謎じゃない?」

サブスクでもなぜか解禁されているBULLDOZEのデモテープ(Time Records第1弾)。

M 「ニューアークなので、NYから30分くらいなんですよ。渋谷と大宮みたいな感じですよ」
N 「ニューヨーク・ハードコアでもありつつニュージャージー・ハードコアでもあるという」
M 「BULLDOZEにはニュージャージー感はあまりないと思うんですよ」
N 「AOM、TRAIN OF THOUGHTはNJHCを感じる」
M 「どこでどのようにスタジオに入っていたかにもよってくるのかな」
N 「BULLDOZEが続いていたらどうなっていたのかっていうのは、まあ興味あるよね」
M 「2000年代にもしっかり活動するような話も当時Mikeからは聞いたんですけど、結局リリースはないですもんね。HOMIDICALはBULLDOZEを継いでいる感じもあるんですが。この当時のバンドっていうのは変わっていくスピード感も良かったと思うんですよね。FIVE MINUTES MAJORとかはBULLDOZEと近いものを感じません?メタル感もないし。DMSのバンドだけど、IDSのバンドのほうが影響受けてるんじゃないかな?っていう。DMIZEはBULLDOZEに近いものを感じる。年代的にも同じくらいですよね。このあたりのゴツゴツしたNYHCが生まれてくる転換期みたいなところがあると思うんですよね。そこが後に与える影響っていう部分では大きいんだと思います」
N 「BULLDOZEはTime Servedで若いバンドを早い段階でフックアップしてる。そこから繋がっていく部分はあるよね。SET BACK、DENIED、SELF DECAY、そしてNJのONE 4 ONE」
M 「ONE 4 ONEはチェックすべきですよね。これも謎が多いんだよな。Seth(Meyer | 25 TA LIFE, HELL BRIGADE, HOMICIDAL)がヴォーカルなのがFAT NUTSですよね」
N 「ONE 4 ONEは後期がメロディアスで」
M 「後期苦手なんですよね。ONE 4 ONEも何かの原型になったバンドだと思うんですよね。BULLDOZEって、閉じているようで開いているような存在ですよね」
N 「ある種のカルチャーみたいなもんじゃん、BULLDOZEって」
M 「そういえば、CDの写真とサンクス・リストがプレスによって違うんですよね。あ、大江さん(OUT TA BOMB)入ってるじゃん」
N 「大江さんの名前はたくさんいろんなところで見たよね。当時はNY以外のところで興味を持ってくれる人なんて、ましてや日本でね。2~30枚くらいになりそうだよね、大江さんがサンクスに入っているCD。DENIEDも入ってるね。Raybeezが死んだあとなんだよね。DENIEDのメンバーはとにかく世話になったって言ってるよね。単純に大ファンすぎてDENIEDを組んでライヴやり出して、まさかTime Servedから出してくれると思わなかった、って」

BULLDOZE 'The Final Beatdown' 2nd Press

M 「BULLDOZEよりDENIEDのほうが影響力は大きいんだよな。BULLDOZEから影響を受けたバンドのほうが多い。BULLDOZEから直接的に影響を受けたかっていうとわかんないもんな」
K 「最初僕らもDENIEDでした」
N 「取り組みやすいのはあるよね」
M 「“BULLDOZEのカヴァーをやろう”っていうのはあるけど、“BULLDOZEのような曲を作ろう”っていう影響ではないと思うんですよ」
N 「戻っちゃうけど、この10曲ですごいヴァラエティがあるから、どの曲のようなことをやるんだっていう。だからこのコンピレーションはすごく意義があると思う。“Remember Who's Strong”は絶妙なテンポ・チェンジがある。ビートダウンの一番難しいところだと思うんだよね。永遠の1曲は“Truth”かな。自分でカヴァーしたときに、なんでこんなフレーズになるんだ?って思った。あとは、ワンリフで落とすっていうのも当時なかったと思う。曲は謎のまま終わるっていう」

 全ては謎のまま終わるのだけれど、視点の増える鼎談だった。スカのリズムを落としてレゲエとハードコア・パンクを遅くしてビートダウン、というNgrauderの雑な論点、雑ゆえに正しい可能性がある論点がこのあと飛び出したことも付け加えて、BULLDOZEについては引き続き考察を続けていきます。

 HOMICIDALがBULLDOZEに一番近いんじゃないか?BULLDOZEが今も活動していたら?的なこともよく2人で話すのだけれど、2022年のライヴ映像を見る限りでは(MikeとZackのツイン・ギター!!)その考察は当たってなさそう。

 「NEW AGE CREATION」(H8CALL、ZAP THE ALL TOWN、DIKTATORのメンバーによるウェブ・メディア)にて、対談第2弾も来週公開予定です。

P.S.
 この対談をしていて思い出したんですが、自分が一番最初にCDのプレスに携わったのって、TRAIN OF THOUGHT『Bliss』CDなんですよね。AGENTS OF MANのジャパン・ツアー時に作りたいということで、当時OUT TA BOMBのスタッフだった自分がOTBとは別業務というかたちで制作と流通に協力させていただきました。そんなCDももはや廃盤、というところで10"(Daze)がリリースになっているのは本当すごい時代ですね。もちろん買わせていただきました。

 AOMのジャパン・ツアーでは、Mikeも帯同していたので数公演でBULLDOZE「Beatdown」やりましたね。TRAIN OF THOUGHTの「Hourglass」はたしか、三茶と水海道でしかやらなかったのかな。

NgrauderNgrauder
Twitter

PAYBACK BOYS | DIRTY MOSH BRIGADE

'Straight Up Beatdown'■ 2024年9月1日(日)発売
『Straight Up Beatdown』
BROWN Records
CD BRW-003 税込2,000円
https://brown58.thebase.in/items/89290940

[収録曲]
01. Beatdown | KILL DEM ALREADY (JPN)
02. The Truth | she luv it (JPN)
03. Bulldoze | SECTOR (USA)
04. All I Have | KEEP IT REAL (IDN)
05. Suffering | SECOND NATURE (CA)
06. Our Way | H8CALL (JPN)
07. Herb feat. Nate Xibalba | TWO GUNS (USA)
08. Respect Through Fear | DOMINATE (JPN)
09. Remember Who's Strong | DIKTATOR (JPN)
10. Hypocrite | NUMB (JPN)

バンダナ付きバンドル
税込3,500円
Color: Navy / Wine / Green
受注期間: 2024年8月1日(木)00:00-15日(木)23:59

https://brown58.thebase.in/items/89290879

編集部便り

 いや~!「Mosh Sommelier」第2回、お楽しみいただけましたでしょうか。Lil MercyさんとNgrauderさんのお2人がBULLDOZEをフィーチャーしないわけにはいきませんものね、素晴らしかったですね!編集部的には、BULLDOZEに辿り着いた経緯や、その特異性に対する見解がNgrauderさんと完全に一緒で、ホッとしたと言いますか、同じ時代を生きたのだなあ……と実感した次第です(笑)。Mercyさんの回想の数々にも胸が熱くなりました。そこへKoyaさんの発言が加わり、見解が収束と拡散を繰り返してゆく……。情報過多な現在においては考え難いことですけど、かつては各々が持ち得る情報と見解のみが対象の像を形成していたのだということをじわじわと思い出す鼎談でありました。

 筆者もやはり、ダイレクトにBULLDOZEではなく、導入はTERROR ZONEでした。かつて、「笑っていいとも!」でおなじみの東京・新宿 ALTAには、時代を象徴するレコード・ショップのひとつ「CISCO」が入居しておりまして(先日THE BREATH / UMBROのIxTxOxPさんとお話させていただいた際にこのお店の話題になり、童心に返る思いでございました)、そこで『Lord of Wrath』の7"を購入した記憶があるのですが、定かではありません。同作は(体感ですが)大変人気のあった作品で、筆者は当時、東京・幡ヶ谷のCLUB HEAVY SICKという会場で開催されていたハードコア・オンリーのDJパーティにて毎月出演させていただいていたのですが、再生する度にその7"の所有を大変羨ましがられたものでございます。次作『Self Realization: A True Lesson In Hard Core』7"のバック・カヴァーには“Strictly Limited Edition Of 1,500 Copies”と印字されており、1,500枚なんて現代の感覚からするとめっちゃプレスされているように思えるのですが、それでも当時からちょっとしたプレ値が付いていたので(今はもっと高騰しているようですが……)、どれだけ人気があったかがおわかりいただけるでしょう。つまり、先だってリリースされていたBULLDOZEの7"ヴァイナル『Remember Who's Strong』がいかに貴重であったか、ということでございます。それだけに、「Time Records」~「Time Served Records」からの編集盤『The Final Beatdown』の登場は我々にとって事件だったのであります。「Time Served Records」はある種神格化され、続くSETBACK、ONE 4 ONE、DENIED、SELF DECAYの作品も手に取らざるを得ない状況であったことはご想像いただけるでしょう。

 FIVE MINUTES MAJORやDMIZEにBULLDOZEと近い感触を見出していらっしゃるMercyさんの発言にはフル同意なのですが、この『Remember Who's Strong』のオリジナルがKICKBACKのStephen Bessacさんによる「Hardway Records」からのリリースであったことを加味すると(Bessacさんの審美眼に寄せると)、実は一番近似しているのはCONFUSIONなのではないかと筆者は考えております。CONFUSIONが『East Coast Assault』、TRAIN OF THOUGHTが『East Coast Assault II』に収められた流れも、なんだかしっくりくるんですよね。「Daze」がCONFUSIONの編集盤とTRAIN OF THOUGHTのリイシューを手掛けているのは、そのあたりを踏まえてのことのような気がします。「Hardway Records」のレーベルメイトで言うと、ALL OUT WARがCELTIC FROSTを基礎にボルトスロウィングを含むデスメタル度を増量したのに対し、NgrauderさんもおっしゃっているようにSHEER TERRORのCELTIC FROST観をキープしつつ何らかの異変が起きたのがBULLDOZE、という見解であります。いずれにしても、PRONGやCARNIVORE~TYPE O NEGATIVEはもちろん、WHITE ZOMBIEのようなバンドもうっすら包括する“NYHC”という、ジャンルたり得ない謎音楽ならではの特異性 / 多様性の顕現、といったところなのではないでしょうか。スカのリズムを落としてレゲエとハードコア・パンクを遅くしてビートダウンというNgrauderさん説も、さもありなんと考えていて、CRO-MAGSとBAD BRAINSの関係性を考えれば全然普通にあり得ると思うんですよね。あと、あんま関係ないし、たぶん勘違いだけど、TRAIN OF THOUGHTは今聴くと、CYNIC『Focus』の影響があるような気がする!

 クリシュナ・チャージ問題も興味深い話題ですね!VISION OF DISORDERだってRay Cappoの「Supersoul Recordings」からアルバムを出したわけだし、同じくCappoがファウンダーである「Equal Vision Records」(たぶん今もクリシュナのロゴですよね??)の影響力を考えたら、一過性のものではない感じはしますよね。筆者的には、KREATORのファンなので、TERROR ZONEというバンド名を知ったときにどうしてもKREATORの「Terror Zone」が浮かんじゃったんですけど、KREATORは時折ヒンドゥー / 仏教的なモチーフを使うバンドなので、若さゆえで妙に(勝手に)納得した思い出がございます。本当にKREATORから拝借していたらおもしろいんだけど(笑)。本稿でも触れられているスラッシュメタル問題については、またちょっとエリアが違うけど、STIGMATAの変化を聴くとわかりやすいと思うんですよね。なぜか完パケ状態では全然再発されない極初期の作品(『The Heart Grows Harder』『The Calling Of The Just』)はほぼスラッシュメタルっていうか完全にMETALLICAだけど、『Hymns For An Unknown God』ではその薫りを残しつつさらに極悪になってるっていう……余計にわからないか……。話が飛んでしまったけど、あとTRAIN OF THOUGHTのクリシュナ感あるなし問題については、CROWN OF THORNSってクリシュナの影響がどれくらいあるのかな?どうなんだろ?っていう感覚になんとなく似ている気がする。みんな大好きなアンセム「Juggernaut」って、端的に『X-MEN』のジャガーノートのことを歌っているんだけど、“ジャガーノート”の語源ってヒンディーの“ジャガンナータ”で、つまりクリシュナのことなんだよね。「Equal Vision Records」作品だし……考えすぎ?どちらにしても、取っ散らかってしまったので、このへんで!

(久保田千史)