Column「Mosh Sommelier」


文・撮影 | Ngrauder + Lil Mercy (PAYBACK BOYS)

| 第1回: クイーンズNYのDENIEDとALL SHALL SUFFER

 PAYBACK BOYSのギタリスト・Ngrauder(以下 N)。自らを“モッシュ・ソムリエ”と称する氏の偏愛をPAYBACK BOYSのヴォーカル・Lil Mercy(以下 M)が訊く連載です。第1回は2021年初夏にリリースされたALL SHALL SUFFER『The Way of Pain』とその前身バンドであるDENIEDについて訊きました。話したいことがあるかたが多い話題だと思います。その思いをAVE | CORNER PRINTINGもしくはNgrauderのTwitterまで連絡お待ちしてます。

M 「イントロ懐かしいですね」
N 「“Ressurection”は、この『I Profit From Your Pain』(2001)デモのほうが好きって人も多いかもしれない。こっちのほうがイケイケなんだよな」
M 「DENIEDってこのデモの印象強いですよね。クレジット見る限りこれはMySpaceより前の時代ですよね」
N 「MySpaceあったら作ってそうだもんね。メンバーは変わらないんだよね。7″(RELENTLESSとのスプリット)もクレジット見たら変わってなかった。このデモは煽りが効きまくってる」
M 「今気づいたんですけど、これデモって勝手に日本で呼んでただけで『I Profit From Your Pain』ってミニ・アルバムなんじゃないですか?デモ改めこのミニ・アルバムはDENIEDって感じですよね。サウンド的にはイケイケになったBULLDOZEってシンプルに言えると思うけど」

N 「落としかたはBULLDOZEまんまだけどね」
M 「DENIEDが日本のバンドに与えた影響もですけど、2000年代以降に出てきたメタリック・ハードコア・バンドに与えた影響ってすごく大きいと思うんですが、どうですか?」
N 「うんうん。BULLDOZEより大きいと思う。メタリックさ加減がBULLDOZEはわかりにくいじゃん。ディストーション効いてて重いけど、全然メタリックじゃない」
M 「当時BULLDOZEは作品として手に入れるハードルが高かったアイテムですよね。ちょっと自慢していいですか?BULLDOZEのオリジナル・ヴァージョン。このジャケット持ってる人少ないと思うんですよ」
N 「OUT TA BOMB(*1)に最初に入って来た時はこっちだったんだよね。でも次はバンダナ・ジャケットになっちゃうんだよね?こっちはこっちでめちゃくちゃかっこいいと思ったけどね」
*1 所沢を拠点に高田馬場で実店舗を出していたこともあった日本を代表するハードコア・ディストリビューション / レーベル。Lil Mercyは昔そこで働いていました。
M 「バンダナ・ジャケットになると歌詞が付いてるんですよ。3rdプレスはライヴDVDが付いてるんだよな。BULLDOZEはNYHCの中でも、あまりリズムがないような気もする。クラストのバンドとかで極悪ハードコア / ビートダウンを感じるものがあるんだけど、その逆のような。そう考えるとDENIEDっていい意味で劣化版BULLDOZEのイメージもあるんだけど、BULLDOZEの音楽を一気にリズムのある音楽にしてきたような気がしますね。BULLDOZEもリズムのある音楽なんだけどさ」
N 「壮大なイントロが入ってきますね。この泣きメロの感じは後のアルバムにも繋がって来ますよね。1stには泣きのメロディーは入ってこないんだよね。全く。そして、元気一杯のモッシュ・パートですね。アルバムの印象がBULLDOZE過ぎたという感じで、そんなにBULLDOZEじゃないんだよね、実は」
M 「DENIEDはIRATEと同じ時期のバンドなんですよね。New Found Hope RecordsのコンピにINSIDE JOBとかBORNとかと一緒に入ってますよね。INSIDE JOBってEVERYBODY GETS HURTの前身だと思うんですけど。あ、サンクスにGOATAMENTISE入ってますね」
N 「あれだよね、Martin(Gonzalez)がいたバンドだよね。BILLY CLUB SANDWICHの前に」

M 「住所にフラッシングって書いてあるからクイーンズのメッツ・スタジアム(シティ・フィールド)のほうのバンドなんですかね、DENIED。チャイナタウンとかもある場所だと思う。てか、DENIEDの高音と低音のヴォーカルの絡みってG.F.Y.に通ずるところありません?」
N 「たぶん、BIOHAZARDのツイン・ヴォーカルみたいなことをやろうとしたらこうなっちゃったんだと思うんだけど」
M 「いろんな意味で落としますね」
N 「ひとつのテンポではないんだよね。幅広い階段みたいな。アルバムも捨てがたいし、デモも捨てがたい」
M 「こういうことやってるバンドあまりいないですよね。複雑というか、だらだらしてないんだけど、ぼーっと聴いてるとテンポが変わる。全編モッシュ・パートとも言えるような」
N 「前置きみたいなリフとかもないしね」
M 「デモの段階でニュージャージー味もありますね」
N 「ちょっとニュースクールっぽさもありますね。『Together As None』が1998年。このデモCD-R(*2)が2001年なんだね。2000年代かあ。E-TOWN CONCRETEが2nd(*3)出したときもこのくらいなじゃないかな。こういうノリがあったのかな」
*2 たぶんデモじゃないんですけどね(笑)。
*3 編集部註: 『The Second Coming』Triple Crown Records, 2000

M 「ここでALL SHALL SUFFER聴いてみましょうか」
N 「比べて聴くと違うね。重要なのはフィジカルのディティールだと思うんですよ。ペラ紙1枚とか。今時ってのもあるんだけど、ペラ紙1枚の懐かしいと思った。盤がCD-Rっていうのが今っぽく感じたな。あと、曲のタイトルがそうっすね、ってことしか言ってないのが丸わかりなんですよ」
M 「盤がCD-Rって今っぽいの(*4)?タイトル完全にそうですね。“Time Heals Nothing”とか、1998年からってそういうことなの?っていう」
*4 と思いましたが、少しわかる気がします。
N 「そういうこと、そういうこと。“Suffering Day By Day”みたいな。完全に継承してるじゃないですか。ツラいなあっていう。続いていく悲哀をビートダウンしてるのかもしれない。これはバンド名変える必要あったのか?っていうね。メンバーも変わってないし。ふとした疑問なんだけど、ヴォーカルがさっきのデモだとあまり歌ってなくない?いや、声が変わってるのかな」

M 「にしてもズズズズズンズンズンズンなクイーンズのビートダウンのスタイルというか、こういうのなかなかできないよね」
N 「こういうところでドラム跳ねてみたりもするし、複雑なパターンを組んでたりもする。これがビートダウンなんだよね」
M 「あ、このイントロの壮大な感じも来るんですね」
N 「ミッシングリンクな感じしますね。ALL SHALL SUFFERを踏まえてFilled With Hate Recordsからのアルバム『Prayer For The Enemy』(2009)を聴くとよりおもしろそうですね。あとはあれでしょ、最後の曲がDENIEDのセルフ・カヴァーっていうね。 “Stand Strong”。これもう、バンド名DENIEDでいいじゃん」

M 「変わってないと言えば変わってないのか……悲しみの中で溺れていく。“Stand Strong”が収録されたDENIEDの1st『Together As None』のジャケットのコラージュなんで猫は前向きなのに犬は後ろ向きなんだろ。コーラスの入れかたがいいですよね。比べて聴くと、というか、DENIEDって実際聴くと頭の中にあるイメージとだいぶ違うバンドですよね。速いパートにも力点ありますよね。BULLDOZE、HOMICIDALは落とすのが3段落ちだったりするけど。DENIEDは緩急ありますね」
N 「とはいえ、“Stand Strong”はBULLDOZEなのに、それがさらにBULLDOZEになってる」
M 「Ngrauderの好きなギター・パターンですよね」
N 「開放弦から入らないパターン。1フレット開放っていう。良く気づいてくれた。そこから下がるっていうね。大好きなパターン」

M 「これNgrauderじゃないですか……」
N 「これのテンポ上げると“Kills””(*5)みたいになる」
*5 PAYBACK BOYS『Struggle For Pride』(WDsounds, 2014)収録
M 「この曲は趣もあってビート的には完璧ですよね。にしても忙しい曲ですね」
N 「あーって感じでしょ。このモッシュ・パートはベスト10入りますね。ただ、ベスト10の中のベスト8は同じようなリフ入ってるから。BULLDOZEも」
M 「BULLDOZEはただの怖いバンドですよね。全編ビートダウン地獄。さっきから聴いていて思うんですけど、DENIEDはヘンな、例えば爆破音みたいなギターとか入ってこないですよね。さっきと全然違うこと言いますけど、ある意味シンプルですよね」

N 「これをshe luv itがカヴァーしてたんだよね。これはもうアガりますよね」
M 「DENIEDって、SECOND TO NONEやshe luv itの大阪ハードコアのヘヴィさとも通ずるところがありません?DENIEDの人たちって何を聴いてたと思います?」
N 「BULLDOZEのメンバーも何聴いてたかわからないじゃない?DENIEDはBULLDOZEしか聴いてなかったんじゃないか?ってのはどう?」
M 「聴いてるバンド数が少なかったが故にすさまじくなった的な」
N 「NYのバンドだけどMADBALLの影響とか見当たらないもんな」
M 「ギターでリズム刻んでる音楽ですよね」
N 「16では刻まないよね。ジャンプはできないんだよ。スネアとかずっタンタンて入るんだけど跳ねてこない。大好きなんだよな。忙しい展開」
M 「クイーンズのバンドでも忙しいほうですよね。EGHも長くて展開するけど、DENIEDは短いスパンで展開しますよね」
N 「盛岡のDIKTATORがTERROR ZONEとかBULLDOZE好きらしいから、そのあたりの話をしてみたいんだよね。ALL SHALL SUFFERのセルフ・カヴァーはDENIED好きなんだなーって感じだよな」
M 「若干締まりましたね。Ngrauderの音楽の好みにも言及したいんですけど。曲は一緒だけどALL SHALL SUFFERのほうが映像が浮かびますね。DENIEDのはモッシュピットしか浮かばない。自分への憎しみというか。畜生っていう表現」
N 「そういう意味では少し社会的というか、外に向いた表現になってるんだね。成長した俺たちの“Stand Strong”」
M 「“Lies Upon Lies”だと、成長してもまだここかーっていう。メンバーが変わらないバンド好きですよね」
N 「INDECISIONとMOST PRECIOUS BLOODとかね。INDECISIONのヴォーカルが変わって、またヴォーカルが戻ってMOST PRECIOUS BLOODになって、INDECISIONも復活するっていう」
M 「また自慢してもいいですか?NYでその復活を観たんですよ。INDECISIONも2000年代以降のハードコアの原型のひとつだと思います。あの辺はなんて言うんですかね?でもビートダウンも実体が謎じゃないですか。なんというか、それぞれの出身や住んでる地域のリズムにすごく影響を受けてる気がする。個人的にアップタウンのほうの音楽な気がする。ドミニカンだったり、プエルトリカンだったり」
N 「ドミニカンだとFAHRENHEIT 451のメンバーがDOMINICAN DAY PARADEっていうバンドをやっていたりするんだよね。H2Oが25周年ライヴを2デイズやって、1日目にFAHRENHEIT 451が復活して、2日目はSHUTDOWNが復活する」
M 「SHUTDOWNとINDECISIONの話もこの連載でやりたいですね。SELF DECAYせっかく持ってきたんで聴きますか?」

N 「SELF DECAYとDENIEDは同じタイミングでTime-Served Records(*6)から出てる。これは超隠れた名盤ですよ。 1曲目のモッシュ・パート聴けばわかるんすよ。イントロは『ウォリアーズ』のラジオで呼びかけてるやつね。デッデデデー。1曲目が最高なんだよね。ILL-TEE(ROCKCRIMAZ | MidNightMeal)がすごい好きって言ってましたね」
*6 編集部註: BULLDOZE~TERROR ZONEのKevin Cea aka Kevoneさんが運営していたレーベル。
M 「ILL-TEE絶対好きそう」
N 「ONE 4 ONEのヴォーカルがゲストで歌ってるっぽい。すごいタイミングで2バス踏むよね(*7)
*7 編集部註: SELF DECAYのドラマー・Rigg Rossさんは後にHATEBREED、MADBALL、RAG MEN、SKARHEADでプレイし、現在もSUBZEROの一員として活躍しています。
M 「ヴォーカル縦ノリっすよね……」
N 「これしか出てないからわからないバンドだよね」

M 「前振りが全くないモッシュ・パートだよね」
N 「これ、どっちかというと速いパートに重点があるバンドですね」
M 「これNJのバンドかな?」
N 「ONE 4 ONE入ってるしNJじゃないのかなー(*8)
*8 編集部註: NYアップステイト・ポキプシー(Poughkeepsie)という街のバンドだったようです。
M 「『Step To The Plate』(*9)のDENIEDも聴きますか?」
*9 編集部註: コンピレーション | Thornz Records, 2000
N 「あ、これはデモと内容一緒」
M 「あ、デモじゃなくてミニ・アルバムですよ。CD-Rですけどデモじゃないですから」

Ngrauder
Twitter

NgrauderPAYBACK BOYS | DIRTY MOSH BRIGADE

編集部便り

 「Mosh Sommelier」第1回、いかがでしたか?PAYBACK BOYSメンバーによるハードコア・ネタのテキスト、読みたいな~と思っていた人は多いのではないでしょうか。編集部的には、ずいぶん前からMercyさんとやりとりしていた企画なので、とっても嬉しいです。

 今回はやっぱり、CD-Rについてのトピックがグッときましたね!2000年代のビートダウン・ハードコアには欠かせないアイテム。盤に油性ペンで手書きのタイトル、ゼロックス・コピーのペラ紙インサートね。90年代はまだ、CD-Rバーニングって設備投資のコスト的にハードルが高かったんじゃないかな。PCなんて高くて買えなかったし(僕自身、もちろん90年代はPCを持っていなかった)、Photoshopだってまだまだ一部の人にしか扱えなかったもんね。個人的に思い出深いのは、クイーンズNYじゃなくてボストンだけど、BETRAYED BY ALLのデモ(たぶん2005年)。ロゴ一発のジャケなんだけど、位置がめちゃくちゃセンターからズレていて、これで正解……なのか……?と訝しんだものです。後にEP『Disrespect』(2008 | 2019年にFilled With Hate Recordsからデモ・インでリイシューされました)が出たときにはロゴがちゃんとセンターだったから、たぶん不正解だったんだと思います。紙もたぶんカッターじゃなくてハサミで切っているっぽくて、ガタガタなんだよね(笑)。

Photo ©久保田千史

 ALL SHALL SUFFER『The Way of Pain』は2021年作品だから、さすがにファクトリー・プレスを想定して注文したけど、現物が届いたらCD-Rで、最高かよ!!!!! って大興奮。Mercyさんがおっしゃっているように、アルバム・サイズでもCD-Rってザラなんですよね、ビートダウン。ていうか、デモ / 正規作品、EP / アルバムとかの概念やら境界線すらもアヤしい。イーストハンプトンMAのSWEAR TO GODなんかは、デモCD-Rの曲をコンパイルした編集盤もゼロックス・コピーのCD-Rでリリースしていて最強だと思います。しかもそういう編集盤を何枚も出してるんだよね。やばい。それでOKな奴だけが持っていて、かつそれでしか曲が聴けないという、ローカルの極み。素晴らしいですね。近年だと、Filled With Hate Recordsがレジェンダリーなデモのリイシューに力を入れている(?)んだけど、現代の再発なのに、どれもCD-Rなんだよね。さすが、わかってんな~って思います。クイーンズNYものだと、NEXT TO LASTの編集盤がおすすめ。ガワは立派なデジパックだけど、盤はばっちりCD-R。褒めていいのかわかんないけど、エラい(笑)!

 あと、DENIED~ALL SHALL SUFFERで忘れてはならないのは、結成時からのメンバーに女性(Melissaさん)がいるということ。タフ“ガイ”にカテゴライズされるバンドのトップに君臨する伝説が、女性のパワーなくしては存在し得なかったというのは、文句なしにかっこいい。Ngrauderさんが大好きなINDECISION~MOST PRECIOUS BLOODもそうだよね。Rachel RosenさんがいないINDECISION / MPBなんて、考えられない。RosenさんはSFAで弾いていたことがある時点で只者じゃないけどね。INDECISION / MPBは本当に特別なバンドだと思うから、また別途語りまくる機会を設けたいですね。

(久保田千史)