Interview | OTUS


人間の醜さを直視する

Photo ©Takuma Kagawa

 2012年の結成以降、東京を拠点に精力的な活動を繰り広げてきたダーク・ハードコア・バンドOTUSが、2013年のデモ、TRAGIC FILM、YOUNG LIZARDとの3ウェイ・スプリット作品『Caucasus』(2014)、米「Six Feet Under Records」からリリースされたEP『Overglaze』(2016)、2017年のカセットテープEP『Mold』を経て、満を持してフル・アルバム『Murk』(Daymare Recordings)を1月に発表。録音 / ミックスにDevu(Devu Recording Studio | HopelessDew)、マスタリングにBrad Boatright(Audiosiege | DEATHREAT, FROM ASHES RISE, NO PARADE)、カヴァー・アートにAndrew Gomez IV(Glory Kid Records)を迎えた布陣からも窺えるように、90sパワーヴァイオレンス期のUSハードコアとクラシック・ニュースクール、ローカルとグローバルの感覚が絶妙なバランスでミックスされた好作に仕上がっています。同作までの道程や内容について、メンバー全員にメールで答えていただきました。

取材・文 | 久保田千史 | 2020年2月


――まずはみなさんの自己紹介をお願い致します!BREAK YOUR FIST、FREEGAN、FRIENDSHIP、HETH、INSIDE、SCARFACE、STILL I REGRET、UMBRAGE、WILL YOU REMEMBERのメンバー在籍!ってフツーに考えたら音が全く想像できないと思うので(笑)、リスナーとしての好みや、バンド遍歴なども併せて教えてください。

Takashi 「ベースのタカシです。OTUSと並行してINSIDEというストレートエッジ・バンドでもプレイしています。LOYAL TO THE GRAVEではサポートでベースをプレイさせてもらってます。過去にはUMBRAGEという90〜00sスタイルの一般的に言うニュースクール・スタイルのバンドでギター、FALLING APARTというユースクルー・スタイルのバンドでギター、STILL I REGRETという90s中期スタイルのハードコア・バンドでギターをプレイしていました。90sのメタリックなハードコアがとても好きで、一番好きなバンドはEARTH CRISISです。New Age Records、Catalyst Records、Genet Records、Life Sentenceなどのレーベルのリリースにフェイヴァリットが多いです。現行のハードコア・バンド、ハードコア・シーンも常にチェックしていて、最近はDIVISION OF MIND、ORTHODOX、OMEGA POINT、TYPECASTEをよく聴いてます。CODE ORANGEの新しいアルバムはとんでもない仕上がりですね。現行のレーベルではやっぱりClosed Casket Activitiesのバンドが好きです。ヘヴィ、ダークなバンドを好んで聴いています。今までずっとハードコアしか聴いてこなかったんですが、近頃はローファイ・ヒップホップもよく聴いてます」
Tatsunobu 「ギターのタツノブです。解散済みですが、過去にやっていたバンドとしてはSO MANY MEN、FAKE COUNT、ELEPHANT STONEというバンドでギター、ベースを弾いていました。現状はOTUSでギター、HETH、FRIENDSHIP、FREEGANでベースを弾いています。サポートではSUPER STRUCTUREやBLINDSIDEなどでギターを弾いたり弾かなかったりしています。好みとしては、HIS HERO IS GONEやCURSED、CULT LEADERなど陰鬱だけど陰鬱過ぎないバンドが好きっぽいです。でも星野 源も超好きだったりします。最近だとUKのLEECHEDは刺さりました。国内だと岡山のILSKA、東京のHORSEHEAD NEBULAは説得力ある音を出していて最高です」
Makimura 「ヴォーカルのマキムラです。WILL YOU REMEMBERでドラム叩いてましたが去年円満解散したので現在の在籍はOTUSのみです。ヘヴィさやマイナースケールを打ち出すバンド・サウンドや、ドローン / アンビエント、IDM、アートコアなどの冷たさのあるアトモスフェリックなジャンルを好んで聴いています。去年から現在までのリリースでは、Triple-B Records(FUMING MOUTH, SAIGAN TERROR, GHOSTEMANE等)やRelapse Records(DEVIL MASTER, COFFINS, MYRKUR等)が印象的でした。スウェーデンのハードコア / メタル、アンビエントも好きで、レーベルで言うとMonument Records、Desperate Fight Records、Cryo Chamberなどが好みです。あとは最近の発見なんですが、PARADISE LOST、MY DYING BRIDEあたりが再熱してPeaceville Recordsを改めてディグっていて、姉妹レーベルDreamtimeの存在を知りました。エレクトロ / インダストリアルやサイケを主に扱っていたレーベルなんですが、それらがヘヴィなジャンルと繋がっていた事実に、自己満気味に“やはり間違ってなかったんだな”と独りほくそ笑んでいます」

――Dreamtimeヤバいですね(笑)!一時期SONIC VIOLENCEのヴァイナルはよく中古で見かけましたけど、最近ぜんぜん見ないですね……。OTUSの一員としては、そういう趣味が反映されている部分ってあるのでしょうか……。
Makimura 「今回のアルバムではバンド・アンサンブルではないトラックを自分が作らせてもらったり、創作面の1ヒントにはなっていると思いますが、まだまだ荒削りですし、ズバリDreamtime感やSONIC VIOLENCE感はなさそうな気がします(笑)。聴いてもらって感じるレベルというよりは、あくまで個人的なコンセプト程度に収まっていると思います」

――なるほど。今後そういう要素がどんどん出てきてもおもしろそうですね。自己紹介の腰を折ってすいません……びっくりしちゃって(笑)。次はドラムのSekinoさん。
Sekino 「セキノです。メンバーの中で唯一後加入なんですが、経緯としては、元々ドラムを叩いてたSCARFACEの活動が落ち着き始めたタイミングでOTUSが正式なドラマーを探していて、ベースのタカシさんに声を掛けてもらったのがきっかけで加入しました。BREAK YOUR FISTはSCARFACEが所属していたDeath Blow Musicの大先輩で、当時からすごく面倒見ていただいた縁もあって叩かせてもらってます。HETHはザモーとマモーのスリーピースでヨロシクやってます。デスメタルもしくはそれ由来の音楽性に、生っぽいグルーヴみたいなのが感じられるバンドが特に好きで、DYINGRACEはドラムの教科書だと思ってます。昨年はBLOOD INCANTATIONの新譜がすごく良くて、ヒップホップだとYUKSTA-ILLの新譜がグッときましたね」

――セキノさんのドラミングは、“デスメタル”と“デスメタリック”のニュアンスの違いをハードコア・サイドで表現している感じがすごくするので、DYINGRACEめっちゃ納得です!ヒップホップも昔からお好きなのでしょうか。
Sekino 「10代の頃にTHA BLUE HERBの『Stilling, Still Dreaming』を聴いてヤバ(笑)!ってなったのがきっかけで、そこからLAMP EYE、四街道ネイチャーとか、さんピン世代のラッパーをディグったりしてハマっていきました。当時ちょうどSEEDAとOKIの『TERIYAKI BEEF』がYouTubeにアップされて話題になってたりして、そういうのもハマった要因のひとつだった気がします。 USのラッパーはSCARFACEのヴォーカルのシュウが当時よく教えてくれました。最近の若手だとPouyaが好きですね」

OTUS | Photo ©Takuma Kagawa
Photo ©Takuma Kagawa

――結成当初の構想について聞かせてください。初期はCURSED、NAILS、RISE AND FALLインスパイア、というイメージを持っていたのですが、どうなんでしょう。Holy Terrorテイストもありつつちょっと違う、HM2ブーム前夜のダーク・ハードコアというか。これは主にKawamuraさんに宛てての意見になってしまいますが、CARRY ON、INTERNAL AFFAIRSの人がNAILSを始めるというのと、INSIDEからの流れは近いものがあるのかな?と思っていました。
Takashi 「結成当初はCURSED、RISE AND FALL、NAILS……まさにそんな感じですね(笑)。それに加えて、DISEMBODIEDのように不穏な雰囲気を持つメタリックな90sハードコアに、TRAGEDYのようなスピード感とドラマティックさをミックスしたようなハードコアをやりたいと思って曲を書き始めて、メンバーを探しました。メンバーを探し始めた2011年くらいはそこまでHM2ハードコア全盛という感じではなかったので、あまり意識はしていませんでしたが、ダークなハードコアをやりたい、というのは根源的なテーマとしてありました。メンバーを探すにあたっては、メンバー募集的なことはせず、自分の目で見て、内面というか、深淵に闇を抱えていそうな人たちをひとりひとり選んで(笑)、声をかけました。なので、当時それぞれのメンバーがやっていたバンドからはあまり想像できない音楽性だったかもしれませんが、当初からこの人たちならいけるだろう、自分が考えている音楽を一緒に作っていくことができるだろう、と思っていました。自分はTodd Jonesほど変わった人間ではないと思いますが、もしかしたら流れは近いものがあるかもしれません。INSIDEをやっているときからもっとヘヴィでダークな音楽を突き詰めてやってみたいという思いはあったので、INSIDEが一時的に活動を休止するタイミングでOTUSを始めることにしました。自分の中にある音楽ベクトルのひとつを伸長させて、新しい表現に挑戦したいという思いがありました」

――TRAGEDYのスピード感、大事っぽいですね!不穏な90sメタリック + ドラマティックだと、もしかしたらTHE SECRETみたいになったかもしれないですもんね。
Takashi 「そうですね。THE SECRETもすごく好きですし、ドラマティックさも重要だとは思うんですが、やはりハードコア・パンクの疾走感、性急さに魅力を感じますし、そういった部分をこのバンドでは表現したいと思っています」

――Six Feet Under Recordsのレーベルメイトで言えば、PALMはCURSED、NAILS、RISE AND FALLの路線をメタリックに先鋭化させた上で日本語詞の投入などによって特異性に繋げていると思うのですが、OTUSはクラシックなニュースクール・ハードコアをビルドアップした要素が特徴的だと思っています。Andrew Gomez IVさん(Glory Kid Records)のアートワークにかなり引っ張られた意見という自覚はありつつ、2010年前後にNew Age RecordsがそれこそTIME FOR CHANGEとか、KINGDOM、SEVEN GENERATIONSなどをリリースして盛り返していたり、Catalyst RecordsもDEATHBED、UNVEIL、WOLF DOWNとか良いリリースが続いて、New Eden Recordsが元気だったりした頃のワクワク感がOTUSからは伝わってきて、DARASUUM(初期)、THIS TIME TOMORROW、PARASITIC SKIES、RUN WITH THE HUNTEDなんかはかなり近いムードを感じます。DARASUUMもRUN WITH THE HUNTEDもTIME FOR CHANGEも鳥ジャケですし(笑)。そのあたりやっぱり皆さんお好きなんでしょうか。
Takashi 「“クラシックなニュースクール・ハードコアをビルドアップした”というのはとても嬉しい表現です(笑)。ありがとうございます。自分はまさに2000年代後半から2010年代前半のハードコア、SEVEN GENERATIONS、GATHER、RISEN、TIME FOR CHANGE、ABANDON、RESTRAINED、THE SEPARATION(CA)あたりのバンドを夢中になって聴いていたので、OTUSの作曲に大いに影響があると思います。今回Andrewにアートワークを頼んだのも、そういった音楽やシーンに対する憧れやリスペクトという部分もあります。それらのバンドやシーンにおけるストレートエッジ、ヴィーガニズム、環境問題や政治的な問題に対するアプローチや表現、活動は自分の思想や信条に多大なる影響を与えたと思います。たしかに鳥ジャケのバンド、多いかもしれませんね(笑)。『Murk』のアートワークに関しては、Andrewに音を聴いてもらう前にアルバムの歌詞を全て送って、このバンドで表現したいことを伝えた上で彼にコンセプトを考えてもらいました。それに関しては彼がウェブサイトに詳しく書いてくれています。アートワークを作成する上で幾度とないやりとりを重ねましたが、とても真摯に自分と向き合ってくれて、この人と作品を作ることができて本当に良かったと思っています」

――SECTのこと言うのすっかり忘れてました!OTUSの、ある種のオールスター感は、通じるものがある気がします。来日のサポートもされていますよね。音楽的にシンパシーを感じる部分はありますか?
Takashi 「EARTH CRISIS / SECTのツアーは、Alliance Traxに誘ってもらって個人的に全公演帯同したんですよね。メンバーは全員それぞれ個性がありつつも大人で、ものすごく優しい良い人たちでした。SECTの楽曲は大好きですが、音楽的には似ているようでけっこう違う気がしています。音作りも違いますね。SECTは激しい音像の中にもどこか儚さというか、叙情性があり、その部分が独創性を高めていように思います。OTUSの曲にはあまりない部分かもしれませんね。歌詞については人間の愚かさや苦しみをとても深いレベルで表現していて、その部分ではシンパシーを感じているところがあります。ヴォーカルのChrisはとても個性的な人ですね。話していておもしろいです。ギターのJimmyとベースのSteveはDAY OF SUFFERINGのメンバーなので、昔の話も色々聞かせてもらいました(笑)。DAY OF SUFFERINGでの来日も熱望していました」

――DAY OF SUFFERING来日、まじ熱望です……。あと、時折出てくる315 / ANOTHER VICTIM感が、LOYAL TO THE GRAVE経由で鳴らされているように聴こえるのもなんか良いんですよね~。考え過ぎでしょうか?
Takashi 「シラキュース・ハードコアからは個人的にものすごく影響を受けています。OTUSと並行してLOYAL TO THE GRAVEのサポートをずっと続けているのも、もしかしたら影響があるかもしれませんね(笑)。ANOTHER VICTIMはOTUSでカヴァーもしたことがありますし、SANTA SANGRE、THE PROMISE等、シラキュースのバンド独特のコード感は意識している部分があります。THE PROMISEは歌詞においても影響を受けています。LOYAL TO THE GRAVEのコハマさんにはいろいろなことを教わったので、きっとその経験も活きていると思います。『Murk』では“Eroded Mind”という曲でANOTHER VICTIM“Free In Constraint”ばりのトライバルな打楽器パートが一瞬出てくるのですが、そこがとても気に入ってます。発案者のセキノは意識していないかもしれませんが(笑)」

OTUS | Photo ©Miwa Yuzawa
Photo ©Miwa Yuzawa

――シラキュースで言うと、Jim Wintersさんはテクニカルなメタル・ギタリストとしても高名ですけど、皆さんデスメタル以外のメタルも聴いたりしますか?
Takashi 「自分はもともとあまりメタルを通っていないので、マキムラやセキノに教えてもらって勉強してます」
Sekino 「デスメタルに拘らず聴きます。SEPULTURA、SOULFLYあたりのトライバル感はプレイにも影響受けてると思います」
Makimura 「OTUSへのインフルエンスは特に意識せず、1リスナーとしてですが、今でもよく聴きます。ゼロ年代のRoadrunner Records、Century Media Recordsなどなど、挙げればキリがないですが、総じて自分にとっては青春にあたります。最近MVを観た中ではORBIT CULTURE“Nensha”、ARISE IN STABILITY“Madness Gives Rise to Enlightenment”の2曲はとてもユニークかつ曲展開がすさまじくてシビれました。東亜重工。先日はLOVEBITESのライヴにお邪魔したり、振り返ると、メタルはほとんど地続きで聴いてきている感じがします」

――ここ数年のダーク・ハードコアを構成する要素のひとつとして、パワーヴァイオレンス・リヴァイヴァルがあると思うんですけど、OTUSは入っていそうなムードはあるものの、ほとんど入っていない気がします。意識的にそうしているようにも感じるのですが、いかがでしょう。
Takashi 「たしかに、OTUSを始めた2012年頃はパワーヴァイオレンス的な音楽のバンドが一気に増えた時期だったように思います。素晴らしいバンドが日本でも海外でも多数登場して、ビートダウン的な要素が大部分を占めていた当時のヘヴィなハードコアに新しい潮流をもたらしたと思います。OTUSはブラストビート等のパワーヴァイオレンスに含まれる要素は多分に楽曲に折り込まれていると思いますが、自分としても所謂“パワーヴァイオレンス的”なバンドにはならないよう意識していた部分はあります。周りで流行っていたから、違うことをやりたかったというのもあるかもしれませんね(笑)」
Tatsunobu 「パワーヴァイオレンスは好きですし、作曲時に意識したことはあったんですが、OTUSがそもそも持っている雰囲気にマッチするかというと、微妙にズレている感覚があったので、最終的には意識しないようになりました。ここ数年リヴァイヴァルの流れが来ている中で、無理矢理ぶち込んで“あのバンドとやってること同じじゃない?”ってなるのも嫌だったので。あとは根本的に音作りが違うことも、取り入れていない理由のひとつです」

――アルバムのマスタリングはBrad Boatrightさん(Audiosiege)が担当されています。FBページのプロフィールに“バンドの趣味・関心 CURSED, DISEMBODIED, TRAGEDY”と記されているOTUSだけに、BoatrightさんがFROM ASHES RISEの一員であることも起用の一因となっているのでしょうか。資料に挙げられているCONVERGE、NAILS、FULL OF HELL、SUNN O)))、SLEEPのほかにも、これまでにOTUSと共演しているCODE ORANGEやHARMS WAY、TWITCHING TONGUES、XIBALBAとかも手がけていらっしゃいますよね。CHOKEHOLDのリマスタリングというお仕事も外せません!
Takashi 「アルバムを作る上で、新しいことに挑戦したいと考えていました。自分たちはそれぞれ楽器の音づくりにものすごくこだわりがあるので、ミックスは立ち合いのもと日本語で細かくやり取りができることが必要だと考えていました。ただ、海外の音源を聴いている中で、ダイナミクスや抜け感、ヘヴィさに圧倒的な違いがあると感じていた部分がありました。現代のヘヴィなハードコアバンドの多くがAudiosiegeでのマスタリングを行っており、それらのバンドが行っているマスタリングを、自分達が納得がいくまでミックスした音源に対して行ったらどんな効果が生まれるだろうという期待があり、新しい挑戦の一つとしてAudiosiegeにマスタリングを依頼することにしました。言語の面での不安はありましたが、1テイク目にマスタリングを提供してもらった音源に対して“もうちょっとヘヴィにパンチがある感じだといいな〜”という非常に曖昧な要望を出したんですが、一両日中に修正版が送付されてきて、ドンズバで自分達の要望を反映したものになっていて、“この人分かってる”感がとてもあり衝撃を受けました。あと、マスタリングが完了するとマスター音源ファイルとともにAudiosiegeオリジナル・サルサのレシピが送られてきます」

――サルサ、レシピ通りに作ってみました??
Takashi 「作ってないんです(笑)。今度チャレンジしてみます」

――録音ロケーションとしてDevu Recording Studioを選択した理由や、サウンドメイキングに対しての拘りなどあれば教えてください。
Tatsunobu 「OTUSは『Demo 2013』と『Caucasus』3ウェイ・スプリットを除いて、全てDevuさんにレコーディングをお願いしています。彼自身がヴォーカル、ギター、ベース、ドラムができるマルチ・プレイヤーなので、音に対してのやり取りがスムーズにいく点、提案力もあるので自然な流れで決まりました。今作に関しては製作前の時点でサウンド・メイキングについて理想の音像をかなり強めに持っていて、そこにいかにして近付けるかという作業をしました。各パートの好みは最大限考慮しつつ、帯域 / 音量など引く所は引いて、音場を相当意識してミキシングしています。個人的にはとても気に入っていて、Devuさんと一緒でなければ作れなかったと思っています」
Takashi 「エンジニアのDevuさんは古くからの先輩なのでコミュニケーションが取りやすく、些細なことでもいろいろと相談できるのでとてもやりやすいです。自分たちがやりたいことをしっかり理解してくださっているのも心強かったです。ベースの音作りに関しては、ハードさとヘヴィさの共存を目指しました。今回のアルバムで実現したかったベースの音は、バンド・サウンドを陰で支える“縁の下の力持ち”的なサウンドではなく、ギターと同列にリフを奏でる攻撃的な弦楽器であることを意識しました。ヘヴィでありながらも鋼鉄な歪み感が出せているかと思います。バンド・アンサンブルを乱さないことは大前提としてありますが、特徴的なベースの音になっていると思うので、ハードな音楽をプレイするベーシストのかたには、ぜひ一度聴いていただきたいですね。レコーディング時には使っていませんが、ライヴではギター用のアンプもベースで鳴らしています。自分のサウンドの特徴のひとつになっているかもしれません。“Eroded Mind”MVにそのヒント(というか答え)が映っているので、ぜひ観てみてください。バンド全体のサウンドバランス、ミックスに関してはものすごく時間をかけましたし、苦労しました。“音”というある種抽象的で、言語化して説明することが難しいものを複数人で理想に近づけるためには、比較対象となるリファレンスがあることが重要だと今回痛感しました」

Sekino 「今作『Murk』は14曲というヴォリュームの中で、ローテンポからミドル、ハイテンポまで様々な色の楽曲があって、それらに対するベストなフレージングを叩き出すのが今回の目標でした。加入当時、ここまで手数が多いとOTUSっぽくないか……など自分の手癖を出し切れてない部分がぶっちゃけあったんですが、どうもモヤモヤするんで、とある時期から吹っ切れて、そのタイミングで楽曲も昔より幅が広がってきて、ちょうど良いじゃん、ってなって。フレーズを考えるときにドラムが歌ってる感みたいなのをよく意識するんですが、それとそもそもの手癖とが相まって個人的には満足してます。“Eroded Mind”の後半でトライバル感を出す為に小口径のタムを使ったのなんかは新しい挑戦でした。Devuさんにはドラムのチューニングもお願いしていて、ローで厚みがあるけど抜けてくるような音作りは自分の要望通りだったので、本当に感謝してます。ありがとうございました」
Makimura 「前作と明確に違うのは“熱量最優先”“各楽曲のキャラクターをめちゃめちゃ意識した”点です。正直な話、今までの自身を振り返ると綺麗な歌(叫び)といいますか、“完璧なディストーション”みたいな虚像のみを追い求めて空回っていたと思っていまして……。レコーディング前にメンバーから意見をもらったのもあり、今作が転機になれたのかな……と思います。『Murk』は先にも挙がったDISEMBODIEDライクな楽曲もシラキュースノリやクラスティな要素もブラストビートも混在しているので、各楽曲のキャラクターを意識したキーや譜割りを模索しました。キャラクターを提示するという意味では“Eroded Mind”ではサイバー・ディストピアっぽい雰囲気をイメージしたダブリング、“Palace of Delusion”ではMACHINE HEADをリファレンスにメロをつけてみたりもしています。もしかしたら、気づかないような些細なことばかりかもですが、“やらずにナシと判断する前に1回やってみよう”で採用された試みは多かったように感じます。それらを積み立てていった上で、最終的には熱量が伝わるかどうかを軸にテイクを選びました。歌詞を見ながら聴いたとき、ライヴで対面したときにどちらでも熱を感じるかどうか。ディストーションの綺麗さばかりに囚われていた頃よりも、かえって今までで一番自身で聴いていてスッと入る感覚を得ています。前作までの自分からちょっとは成長できていたらいいなと思います。14曲はシンプルに疲れましたが(笑)、徹底的に付き合ってくれたメンバーとDevuさんにこの場を借りて感謝申し上げます。あと、月並みですが、Jamey Jasta(HATEBREED)、Anderson Bradshaw(ANOTHER VICTIM, THE PROMISE)、John Tardy(OBITUARY)、Matti Kärki(DISMEMBER)あたりをリファレンスにして、自分なりにミックスしています」

――これもTakashiさん宛てになってしまいますが、INSIDE、STILL I REGRETは90s New Age Recordsの思想的な側面を日本語フォーマットで表現するには?というテーマを感じていたのですが、OTUSは全編英語詞ですよね。言葉の扱いに対する考え方に変化があったのであれば、教えてください。歌う立場でもあり、アルバムでは一部作詞にもたずさわっていらっしゃるMakimuraさんを含め、メンバーのみなさんはリリックについてどう思っているのでしょう。
Takashi 「自分はINSIDEでは一部の楽曲の作詞を担当していますが、今までプレイしてきたその他のバンドはそれぞれのヴォーカルが作詞を担当しています。OTUSを始めたときに、このバンドは英語詞にしようと考えていました。大きな理由はふたつあります。ひとつは世界を意識したときに日本語より英語の方が歌詞の意味が伝わりやすい、何を歌っているかわかりやすいということ、ふたつ目は英語独特の言い回しや表現、発声時の音感がハードコアという音楽をやる場合に日本語よりも適していると感じたことです。もちろん、INSIDEやSTILL I REGRETのように日本語詞でハードコアを表現することはある種強力な個性となり得ますし、母国語で自らの考えや思想を明確に描くという点においては難しくもありますが、素晴らしいことだと思います。言葉はある種の道具であると考えているため、言葉の扱いに対する変化があったのかと問われると、そうではないと思っています。OTUSの歌詞は日本語で書き始める場合と、英語で書き始める場合の2パターンがあります。自分がある程度英語に習熟してきたので、日本語ほどではないですが、英語で物事を表現できるようになってきた部分もあります。ハードコアの歌詞は常に意味のあるものです。人生の規範を示すもの、一個人の心情を掘り下げるもの、表現の内容や方法は様々ですが自分はハードコアという音楽の歌詞から非常に多くのことを学びました。それ故に、歌詞は1人でも多くの人が読むことができ、それぞれの個人が自分の中で解釈できるべきであると考えています。新しいアルバムもそうですが、これまでの音源を手に取ってくれたかたならわかると思うのですが、OTUSの音源作品には必ず英語詞に加えて日本語詞を付けています。ただの日本語訳ではなく、日本語詞として付帯させているものです。日本を中心に活動する上で、日本語がわかる人にしか伝わらない表現もきっとあると思います。逆もまた然りです。1人でも多くの人に自分が、自分たちが歌っていることや表現していることが伝わればいいと考えています。ヴォーカルのマキムラには、自分が書いた歌詞の背景や意味を事細かに説明して一緒に歌載せを考えていくので、意味は深く伝わっていると思います。他のメンバーにも歌詞の意味を伝えていて、理解してもらった上で曲を完成させていますが、実際のところどう思っているかは気になりますね(笑)。アルバムではマキムラが2曲で歌詞を書いていますが、自分とは異なる視点から書かれていたり、なるほど、と思うことも多く、とても興味深かったです。彼の書く歌詞をもっと読んでみたいですね」
Makimura 「言語のチョイスや、歌詞と楽曲がセットになって提示する内容に関しては、バンドを立ち上げる / コンポージングをする人間がメイン・ヴィジョンを持つべき、という考えが根底にあります。ただ、その一方で、自分は作詞のみならず、あらゆるアウトプットが苦手だったので、ヴォーカルでありながら歌詞を書かないことへの葛藤や、周りからどう思われているかを意識している側面がありました。今回“Integration”と“Truculence”の2曲を担当するにあたって、アルバム全体を俯瞰したときに“歌詞が指す世界にサウンドトラックとして曲があるような構成”ひいては“表現のレイヤーを深くさせること”を意識して臨みました。例を挙げると、“Integration”は“カルト、ミリタリズム、私刑を良しとする世界”を肯定……するかのようなフェイクを取り入れた歌詞がメインの楽曲です。歌詞は“上から下へ順序通り読み進めていくもの”、先にタカシさんが言っていたようにハードコアのリリックは“人生の規範を示すもの”という前提を逆手にとり、何も知らずに歌詞を読むと“何を歌っているんだこいつは”と思われるような内容になっています。読み進めていくと、それらを最後の4行で俯瞰 / 否定する人物の言葉で終わるような構成をとりました。また遊びとして、過去曲“The Hanged Man”とリンクする描写を入れたり、世界設定的に通ずる部分を持つとあるゲームの楽曲と、とあるバンドの歌詞から一節ずつサンプリングしましたが、バンドのほうの曲名と収録アルバムのタイトルがそのまま“Integration”の世界のネタバレになっています。“Truculence”は登場人物の1人称としての発言と、脳内の“誰か”の発言が入り乱れるような歌詞にして、アンコントローラブルな感情や、破滅願望、絶望のまま他人に危害を加える人間性を失ったものを“獣”になぞらえて歌っています。当初はジェヴォーダンの獣、創作物の中のダークヒーローと呼ばれる存在から着想を得て描き進めて、内容の最終的な着地点は別のものをイメージしていましたが、当時“川崎刺傷事件”と“京アニ放火殺傷事件”が立て続けに起き、そのときに抱いた強いショックや憤りを、どうしてもかたちにしなければいけないと思い至りました。そこから、上記のような伝説や創作物 = フィクションと現実の境がつかない状況や、他人を傷つけて大事なものや命を奪うことを正当化する人らを、感情を制御できない獣のイメージとミックスし、歌詞の登場人物として再定義することで“Truculence”になりました。2度と起きて欲しくない凄惨な事件だからこそ、かたちにして忘れないようにしたかったという思いがあります。そういう歌詞と世界設定を作り込み、そこに当てはまるサウンドトラックのように楽器隊やヴォーカルがあるような構成を感じてもらえるように、個人的には意識しました。それは、拙いながらも、歌詞を読んでもらえたときに、より没入感を得てもらえたらいいな……と思ったことに起因しています。サウンドトラックは、冒頭で触れたように個人的な別側面の音楽的ルーツですが、一見関係なさそうなインプットを自分のフィールドでのアウトプットに活かすように考えられるようになったのは、些細ながら自分のもうひとつの成長点なのかな?と感じています。他所でのインプットを引っ張ってこられたのは、今回自分がヴォーカルレスのトラックを作るに至ったことにも現れているのかもしれません。世界設定を作って表現すると言うと、大げさな響きだと自分でも思うんですが、今まで苦手だったことを不格好なりにも形にできたのは達成感がありましたし、少なくともこのバンドの中では自分にしか出せないアプローチだと思うので、これからも突き詰めたいです。個人的な試みに回答が偏ってしまいましたが、自分に小さいチャレンジをさせてくれたタカシさんと、英語表現 / 翻訳の面で助けてくれたAkira(BROKEN)に感謝します」
Tatsunobu 「作詞に携わっていないのでテクニック的な部分は考えたことがありませんが、テーマとして怒りがあり、共感する部分は多いです」
Sekino 「ザックリ言うと人間の弱い部分に対する歌詞が印象的ですが、そこと自分が重なって聞こえるときがある気がするのはココだけの話にして下さい。また、今作からマキムラ作詞の曲が加わって、歌詞の世界観がより広がったと感じています」

OTUS | Photo ©Takuma Kagawa
Photo ©Takuma Kagawa

――“Tokyo Negative Hardcore”と銘打っていますが、はっきり言ってOTUSにはポジティヴな印象しか持っていません。“Negative”という単語の扱いや、歌詞中の、ある種ネガティヴなイメージの捉え方について聞かせてください。
Takashi 「OTUSを始めたときはそう表現していましたね。“Negative Hardcore”という言葉は、ポジティヴな気持ちを否定するものではないです。自分自身の中の否定的な感情やネガティヴな考え方に対して目を背けるのではなく、しっかりと向き合って、それらを表現として昇華することを目標として考えた結果のひとつです。自分の中の暗部を直視して明確に捉えること、人間という存在の醜さや浅ましさを受け入れて表現することを考えて曲や歌詞を書いています。今までの作品に比べて、今回のアルバムはより個人的な、自分自身の内面を掘り下げて書いた歌詞が多いと思います。全然関係ないですが、OTUSで一緒にジャパン・ツアーを回ったFORCED ORDERのメンバーが新しく始めたCONSTRICTというバンドがいるんですけど、“Los Angels Negative Hardcore”と名乗っていて、親近感を持つと同時にニヤリとしました(笑)」

――個人と集団の間での主義・主張のありかたについて聞かせてください。例えば、Takashiさんがストレートエッジであることと、HETHがNaiChopLawさん(舐達麻)を起用することの間に、ギャップというか、矛盾をOTUSに対して感じる人もいるのではないか?と思うんです。特に、今みたいな時代は。バンドとして打ち出すのもかっこいいとは思いますけど、集団の仮想人格が、個人の人格に重ねられる現象はなんかなあ…って思っていて。個人的には、FUGAZIとTHE OBSESSEDとか、EARTH CRISISとDMSみたいな関係性、めっちゃ好きなんですけどね~。BURN IT DOWN、TURMOILがストーナーになるとか。KICKBACKとブレイクエッジ後のARKANGELとか。CAPITALIST CASUALTIESとMONSTER Xのスプリットとか最高です。
Takashi 「とても興味深い質問です。まず、自分がストレートエッジであることに関して、これについては自分自身にとって非常に重要な事項ですが、あくまで自分自身の信条、考え方であって、他人やOTUSというバンドに関係するものではありません。自分自身は全てのドラッグ・カルチャーを厳格に許容しませんが、それはあくまで一個人としての考え方です。HETHはHETHなりの考え方や音楽性を以てして活動していると思います。それについて自分自身は関知しませんし、敬意を持っています。OTUSは、自分以外のメンバーは全員煙草も吸いますし、酒も飲みます。それは自分にはないことですが、それがあるからといってバンドを一緒にやっていくことが難しいということはないです。個々人の生き方、考え方をリスペクトしています。ほかのメンバーもきっと自分のことを理解してくれていると思っています。自分自身としては、バンドや集団に対して仮想的な人格を求めること、ある種の偶像崇拝的な考え方に対しては否定的です。OTUSは4人のメンバーの個としての集合体であり、それ以上のものではありません。周囲がどう捉えるかということについてあまり意識はしていませんが、集団としてのカルトを築きたいものでもありません。それぞれの人の考え方は時と共に変化するものだと思っています。自分自身もきっとそうだと思います。メンバーに対しては、差別的な行為、思想に加担すること、法律を侵す行為があってはならない(法律そのものが絶対ということではなく、法律を犯すことで被るリスクを想定して行動できるべきであり、法律を犯すことで自らがコントロールできない事象に影響が及ぶことを考慮できる必要があると考えているためです)、受け入れられないと思っていますが、そもそも多様な思想や信条を持つ人と接することが新しいことや優れたものを生み出すうえで必要な要素ではあると思います。自分の中での基準は明確に持って、多種多様な考え方をリスペクトして学んでいきたいなと常に考えています。OTUSはレイシズム、セクシズムをはじめとする全ての差別主義に明確に反対していますし、LGBTQIA+等、多様化するマイノリティや様々な存在について学び、理解していきたいと考えています。自分自身もマイノリティのひとりだという自覚を常に持ちたいです」
Tatsunobu 「バンドとしての人格が個人の人格に重ねられることについて、自分が他のバンドに対して重ねることがないのであまり理解出来ないです。HETHというバンドに大麻信仰があるわけではないですし、OTUSでSxEをライフスタイルとしているのはタカシさんだけなので、バンドとしての相互関係はないと思っています。発信しているメッセージも異なるので、必要だとも思っていません」
Sekino 「OTUSとHETHはメンバーが2人被っていますが、全くの別物として活動しているので、矛盾的な部分に関しては気にしたことがないです。OTUS自体、ストレートエッジのバンドなわけではないですしね。何年も前に、ライヴハウスでINSIDEのマーチを買おうとしていて、でも俺ストレートエッジじゃないしな……って悩んでたら、タカシさんが“俺らがストレートエッジってだけだからそんなん気にするな”って言ってくれたのが今でも印象深いです。やや脱線しましたが、そういうことだと思います」

――“カルト”や“偶像崇拝”という単語が出てきたので、お伺いしたいのですが、宗教についてはどう考えていらっしゃるのでしょうか。僕自身は、あらゆる宗教について信仰を持っていませんし、営利団体的な運営の宗教は宗教としてすら認める気にはなりません。しかし、宗教は人類にとって重要なものという認識はありますし、ある種のカルトはマイノリティとしての苦しみがあると思うんですよね……。
Takashi 「そうですね。自分も同じような認識かもしれません。個人的にはあらゆる宗教的な観念は持っていませんし、盲目的に何かを信仰し、自らの考えを失う状態になることは危険だと思っています。アルバムの曲でも“Adherent”や“Integration”において、そういった盲信的になることによる過ちに対して否定的な考えを表現しています。人類史における宗教としての在りかたを考えたときに、少なからず文明や文化の発展に寄与していると思いますし、人間はやはり弱い生き物だという認識があるので、そういった面で精神的な拠り所になるための宗教の役割は意味があるもののような気もしています。ただ、そこに依存すること、その結果として他者を否定すること、本来の幸福の追求を逸脱した活動や在りかたによる弊害も大きいと考えています。カルトに所属することによって個の存在を曖昧にして、集団的なパワーを手に入れたように錯覚することがあると思うんです。社会生活におけるいろいろなことに言えると思いますが。宗教自体を否定するということではありませんが、自分にとっては必要のないものだと思っています。個としての存在や意思を保ちつつ、そういったものと適切な関係を築いていくことができるなら、それも素晴らしいことだと思います」

OTUS | Photo ©Miwa Yuzawa
Photo ©Miwa Yuzawa

――様々なスタイルのバンドと共演されていますが、マインドが近いと思うバンドはいますか?
Takashi 「音楽性は全く異なりますが、HOLLOW SUNSは音楽やシーンに対する考えかた、バンドに対する熱量について個人的にマインドが近いと思っています。ギター・ヴォーカルのBone$さんとは特によく話をしますが、とても熱い人たちの集まりだと思います。彼らの1stショウはOTUSとの共同企画でしたね。音楽性は違っても、一緒に続けていけることでお互いの世界が広がったと思っています。これからのHOLLOW SUNSの動きも楽しみだし、また一緒に何かできたら嬉しいですね。柏のBLINDSIDEは年齢も近いし、OTUSとは深い関わりのあるバンドです。OTUSのメンバーは全員BLINDSIDEのヘルプ・メンバーとしてプレイしたことがあります(笑)。ヴォーカルのTKCとは今後の自分たちのシーンに関する話をよくしています。一緒に未来を作っていきたいバンドのひとつですし、負けたくないバンドのひとつでもあります」
Tatsunobu 「仲の良いバンドはたくさんいますが、バンドとしてマインドが近いバンドはいないと思います」
Sekino 「BLINDSIDEとNUMBERNINEです。最近のライヴでの、大前提としてまずは自分たちが楽しむっしょ的なノリがすごく良くて、それでいてバンドよがりになってないところとか、スゴイなって思います。世代も近いですし、共演することも多いんで、今後も一緒におもしろいことができたらな、と考えてます」
Makimura 「BLINDSIDE、HOLLOW SUNS、NUMBERNINE、FOR LIFEです。過去に同じような境遇をわかり合ったり、最近では仕事でお世話になるメンバーさんもいたりで、公私共にマインド面で影響受けています。蜜月です。カイ(NUMBERNINE)は歳が同じなこともあって、この間も日常で思ったこと、愚痴に近いものを電話して聞いてもらいました。ここだけ切り取るとギャルみたいですね。逆にマインドが近ければ別のスタイル / 界隈のバンドとは積極的に共演したいです。今作でDaymareからリリースさせてもらったこともキッカケにして、フィールドを拡げられれば、と思っています」

――Daymareカタログの中で、共演してみたいバンドは?
Makimura 「マインドが近いかどうかはわからないし、おこがましい部分もありますが、SUNN O)))、THE BODY、Chelsea Wolfe、OATHBREAKER……キリないですね。 単純に観たいリストな気がしてきてます。ハマダさん、僕は観たいです。ご検討よろしくお願いいたします。あと国内は“まだやったことがない”を前提とするならheaven in her armsです」

――TRAGIC FILM、YOUNG LIZARDとの3ウェイでOTUSを知った人も多いと思うのですが、あれから時を経て、いずれのバンドも徐々に各々の活動スタイルを確立していったように思います。各バンドの歩みについての所見を聞かせてください。
Takashi 「ウェイ・スプリットを発表したのは2014年ですが、その当時、個人的なつながりはあったものの、ハードコア・バンドとして大きな括りは同じであるはずなのに、微妙に細分化したそれぞれのシーン間での隔たりがあると感じていて、その垣根のようなものを減らすことができたらと思い、スプリットを出すことが決まりました。結果、3バンド同士の距離はもちろん、それぞれがメインでプレイしていたシーン同士の接近のようなものも少しは実現できたのかな、と今は思っています。TRAGIC FILMはもう完全にスタイルを確立していますよね。どこでプレイしてもブレないバンドだと思います。一緒にライヴするタイミングも結構ありますが、毎回観ていて飽きないです。ドラムの人にはOTUSも参加しているコンピを一刻も早く出していただきたいと思っていますが、大好きなバンドです。YOUNG LIZARDはメンバーの都合もあって最近はあまり活動できていないようですが、あの強烈なライブをまた観たいし、今のOTUSで一緒にやりたいです。ギター・ヴォーカルのカツヤくんが描く絵がとても好きなので、いつかOTUSでもなんらかのかたちで関われたらなあ、と思っています。3ウェイ・スプリットを出すきっかけになった八王子でのASTHENIA企画のライヴがあったのですが、最近TRAGIC FILMのメンバーと、あのメンツで今もう一度ライヴをしたいね、という話をしました。近いうちに実現できたらおもしろいと思います」
Tatsunobu 「3ウェイ・スプリットがなければ今のOTUSはありませんし、TRAGIC FILM / YOUNG LIZARD共に確固たるバンド・イメージを築いていると思います。それぞれ好きなことを突き詰めて好き放題やっているバンドという印象なので、あたりまえに今でも大好きです」

――差支えなければ、お答えいただける範囲で、今後のリリースやライヴの予定について教えてください!
Takashi 「アルバムはCDでリリースしていますが、LPレコードでも出したいです。海外のレーベルから出せたらいいな、と思っています。サブスクリプション / ストリーミング配信も開始する予定です。初期音源の3ウェイ・スプリット、『Demo 2013』もサブスクリプション配信していないので、Devu Recordingsでリマスタリングした音源を初期音源集として配信する予定です。『Murk』の最後に収録されている“Watching Your Nightmare II”は、実は『Demo 2013』の1曲目に収録されている“Watching Your Nightmare”の続編です。一番最初に出した音源の1曲目から、アルバムの最後の曲でひとつの繋がりを示しています。OTUSのバンドとしてのコンセプトを表現したそれぞれの楽曲を通して、バンドの変遷と、変わらないテーマを感じていただけたら嬉しいです。OTUSのSNSアカウントも是非チェックしてください。4月以降、少しずつではありますが、いろいろな地方にリリース・ツアーとしてライヴをしにいく予定です。アルバムの曲をプレイするのが楽しみですね。アルバムだけで14曲あるので、ロングセットも対応可能です(笑)。海外ツアーもやりたいですね。個人的には、It’s For Life Bookingという名義でツアー / ライヴ・ブッキングを手がけているので、2月に開催したTHE GEEKS Japan Tourに続いて、年内に海外のバンドを招聘したいと考えています。そちらもお楽しみに」

OTUS 'Murk'■ 2020年1月22日(金)発売
OTUS
『Murk』

DYMC-339 2,400円 + 税

[収録曲]
01. Drop Back
02. Eroded Mind 02:34
03. Mind Restraint
04. Palace of Delusion
05. Integration 02:34
06. Truculence
07. Malignance
08. Remorse
09. Fear of Deprivation
10. Adherent
11. Breathe
12. Resignation
13. A War of Your Own
14. Watching Your Nightmare II