文・写真 | 相谷レイナ
「わたしは東京の街をうまく歩けてるのかしら?」この問いかけから書き始めたマンスリー連載も今回で15回目となる。上京して1年と3ヶ月を経たわけだが、今のところこの問いかけへの答えは強めの“No!”である。さらに言うと「新宿を歩く」のが本当に下手だ。JR新宿駅東口から東京の吉本本社への最短ルートしか上手に歩けない。
ただ、“道に迷う”というのは未知との遭遇の可能性を高めるものでもあり……小田急エースを探し、迷い、歩き、小田急エース北館に着き、目的地は小田急エース南館だったと気付き、20分ほど迷い、歩き、なぜか小田急ハルクに辿り着き、自暴自棄、諦めて左側を向いたときに見つけたのが今回のお店「ピース」である。
15時頃に訪れた店内には、PCと向き合う会社員、派手な髪をしたカップル、仲良さそうなおじいちゃんおばあちゃん夫婦、何とも言えない怪しげな男女(歌舞伎町の匂いがぷーん)……など様々で、ざっと数えて20卓ほどあるテーブルはほぼ満席だった。モクモクとしたタバコの煙は「こちらが老舗の喫茶店です!ピースと申します!」なんて意気揚々と訴えかけているようだった。わたしは非喫煙者なのだが、それは喉が弱いからであり、もし強靭な咽頭を持ち合わせていたらスッパスッパとタバコを吸う人生を送ってみたかったな、と時々考えたりもする。ライダースを着てデニムを綺麗に履きこなしている女性が一点を見つめながら一服している姿には、色気やその人の素性が見え隠れしてドキッとする。
シンプルなミートソースのスパゲティ。麺はやや太め、ずっしりとした質感で満腹になった。ミートソース・スパゲティといえば、麺とソースを絡めて食べていくうちにどちらかが多く残ってしまう、みたいな定番ストーリーがあるが、贅沢にソースを絡めて食べ始めてちょうど麺とソース同時にフィニッシュできる量で大満足!なにより、タバスコと粉チーズを私たちお客に託してくれるのが嬉しい。粉チーズは+ 100円、なんていう飲食店も多い中、全てを私たちに託してくれる懐の深さ!著名人の話だったか、身近な人の話だったか忘れてしまったけれど「昔、粉チーズを家庭で禁止されていて(太ってしまうから?)。だから今は粉チーズをこれでもか!というほどにかけてミートソース・スパゲティを食べるんです!」とソースを口の周りにつけながら幸せそうに話していた人のことを思い出した(顔だけぼんやりしてる、どなただったかな……)。そんなエピソードを頭の中で反復しながら、わたしも粉チーズを少しだけ多くかけて食べた。きっと幸せに満ち溢れた表情だったと思う。
ミートソース・スパゲティはあたりまえのように美味しかったが、さらにわたしのテンションをあげてくれたもの。それこそがミルク氷珈琲!
珈琲で作った氷にミルクを注ぐと、少しずつ珈琲が溶け出てきて、美味しいカフェオレに仕上がっていく。風味も見た目も時間が経つにつれてわかりやすく変化する……。まさに味変界の師匠みたいな存在だ。ついてきたスプーンで氷をすくって食べてみても美味しい!あたりを見渡すとミルク氷珈琲を頼んでいるお客さんがちらりほらり。アイスクリームをのせたフロートにも変更可能。ミルク氷珈琲、だいぶとおすすめでっす。
先日、大阪でのライヴに合わせて1週間ほど奈良に帰省した。年内ラストとなる大阪でのライヴ(北堀江 club vijon にて)には大切な人たちが駆けつけてくれて、元気な顔を見せてくれた。こんな1年だったからこそ、みんなと普通に笑い合えることが身に沁みて、特別な一夜となった(感謝の気持ちよ、関西の皆さんに届け!)。
この連載で第1回目に紹介した堀江の老舗喫茶店FLORIANにも久しぶりに遊びに行くことができた。マスターと写真もパシャリと。わたしがFLORIANにお世話になったのは約3年前の話だが(詳しくはぜひ第1回の連載記事を!)、年に何度かお店を訪れるとマスターも、マスターの息子さんも、マユミさん(長く働いてらっしゃるかた!)も「東京で元気にやってるんか?調子はどうや?お菓子でも食べるか?」心配しながらお菓子をくれる。小さな温かさの積み重なりで人生が豊かになっていることに気づかせてくれるのがこの場所で、関西で、わたしの地元。おっきい花火をあげるまでは帰りたくないけれど、胸を張って地元を歩くためにも来年こそガツンと一発「たまや~」を響かせないと。
変な時期に帰省をしたのは訳があって、いつも寝転びながら紅白歌合戦を見て家族と年越しを迎えていたわたしだが、今年は恵比寿 LIQUIDROOM主催のパーティで歌わせてもらうことになった!話をいただいたとき「あ、上京して良かった。」と素直に嬉しい気持ちが溢れた。キャリア初として先月出したアルバム『HYPER IMAGE』からたくさん曲を持っていきます。ひとりぼっちなんだったら年越し是非一緒に迎えましょね。東京の街も、新宿も、もちろん恵比寿も。まだまだうまく歩けないけど来年への覚悟を決めて東京で年を越すよ。
人に評価されて反省 / 内省するのも仕事の一部だったりするけれど、本当はできなかったことより、できたことを丁寧に数えて生きていきたいね。
大好きな喫茶店のご飯と、日々の活動について綴ってきた本連載、1年間ありがとうございました!それではまた、2022年の1月に!良いお年を!
どろんっ。
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-5-1
9:00~22:45 (LO 22:30)
1月1日~3日 定休
※ 営業時間は変更となる場合があります。
■ liquidroom presents
NEW YEAR PARTY 2022
2021年12月31日(金)-2022年1月1日(土)
東京 恵比寿 LIQUIDROOM
開場 / 開演 21:00
前売 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ
※ 本公演は深夜公演につき20歳未満の方のご入場はお断り致します。本人及び年齢確認のため、ご入場時に顔写真付きの身分証明書(免許書 / パスポート / 住民基本台帳カード / マイナンバーカード / 在留カード / 特別永住者証明書 / 社員証 / 学生証)をご提示いただきます。ご提示いただけない場合はいかなる理由でもご入場いただけませんのであらかじめご了承ください。
[出演]
相谷レイナ / 新しい学校のリーダーズ / BUDDHAHOUSE / DENYEN都市 / Dr.Pay / どんぐりず / Flat Line Classics / gato / 原島”ど真ん中”宙芳 / JUN INAGAWA / KenKen (BASS HERO) / Licaxxx / Maika Loubté / MÖSHI / 野崎くん / オカモトレイジ (OKAMOTO’S) / Seiho / 釈迦坊主 / 週末CITY PLAY BOYZ / TAKKYU ISHINO / tamanaramen / TOMMY(BOY) / xiangyu / Yohji Igarashi / ZOMBIE-CHANG
[VJ]
DEVICEGIRLS / Hana Watanabe / s a d a k a t a
■ 2021年11月17日(水)発売
相谷レイナ
『HYPER IMAGE』
[収録曲]
01. Sensation feat. pinoko
02. Translucent
03. Wingding
04. 403 feat. Kick a Show
05. Randomizer
06. Vanilla
07. Cells
08. Paradigm Savage
09. Worms
10. Daydream
Twitter | Instagram
Official Site @YOSHIMOTO MUSIC | http://yoshimoto-me.co.jp/artist/aitanireina/
よしもとミュージック所属のシンガー・ソングライター、相谷レイナです。好きな寿司ネタはトロたくです。2020年に上京しまして、東京にフィッティング・インすべく試運転中です。お気に入りのお店をレビューしていきます(マンスリー寄稿)。