文・撮影 | SAI
初めましての人も、そうでない人もこんにちは。SAIと申します。1人で音楽をやったり、Ms.Machineというバンドのヴォーカルを務めたりしています。
今回は“ひとり”をテーマに書いてみようと思います。この原稿を書き始める前に、Bill Evansの映画を観てきて(もちろんひとりで)、Billの卒業写真がスクリーンに映った時、昨年アメリカの写真家の撮影に参加したことを思い出しました。その日、スタイリスト、モデルたちはほぼ写真家と知り合いで、日本人のモデルは私だけ、しかもみんなとは初対面。当然アウェ〜な雰囲気に。輪に入れず、1人でスティールパンのアプリをやっていたのを忘れはしません。日本で“変わった女の子”として育ってきて、日本はみんな同じ型にはめておにぎりみたい!海外に行ったらみんなの輪に入れるに決まってる!なんで海外留学しなかったんだ!と学生時代を後悔した日もあったのですが、私はきっと海外に行っても浮いた存在だったのでしょう。『ゴーストワールド』のイーニドのように…。
| 谷川俊太郎『ひとり』
椎名林檎さん、King Krule、あとラッパーの歌詞など以外、自分の心を救ってくれる言葉はあまりないのですが、谷川俊太郎さんの『ひとり』はどんな時に何度読み返しても愛用のスヌーピーのような安心感に包まれます。冒頭の“ほっといてほしいのおねがいだから”は、大好きな曲のイントロを聴いている時のような気分。そう、ほっといてほしいですよね。よくそういう気分になります。“ほんとのにしぬのはわるいことだから / おんがくもきかずあおぞらもみずに / わたしひとりでもくせいまでいってくるわ”。悲しくなった時や絶望した時に「死ぬ!」とか言い出すのではなく「私、ひとりで木星まで行ってくるわ」というこの詩の主人公の柔らかさは、言葉を選ぶ時のお手本にしたいです。
| ISOLATED YOUTH『Warfare』
私、数年前から北欧の音楽や映画をディグり始めていまして、今は特にスウェーデンにハマってます。そして見つけてしまいました。スウェーデンはストックホルムのポストパンク・バンド、ISOLATED YOUTH。日本語に訳すと“孤立した青年”ですね。その1st EP『Warfare』は、歌詞はスウェーデン語ではなく、英語で歌われています。「Safety」という曲に“I’m alone”という歌詞があり、なんだかとてもシンパシーを感じてしまうのです。だって、ヴォーカルのAxel…クラスにいたら絶対根暗キャラで端っこの席に座ってるよね?ギタリストのWilliam(Axelのお兄ちゃん)も陰ありすぎだし…とか、メンバーのプライベートを色々考えながら、どうやってこの作品ができたのかを想像しながら楽しむのもおもしろいです。
EPは「Fabrika Records」からのリリースでKÆLAN MIKLA *とレーベルメイトだったり、LEBANON HANOVERのQual(William Maybelline)が彼らの曲をリミックスしていたり…。私の好きなアーティストと繋がりがあるんだ!とパソコンの前で小躍りしたという点においても最近一番ハマらざるを得ないバンドがISOLATED YOUTHなのです。ヨーロッパのポストパンクのシーンは、新しく見つけたアーティストのライヴ情報を調べていると共演相手が私の好きなアーティストだったりして、リアルタイムで追うのがすごく楽しい。ちなみにISOLATED YOUTHは、9月に日本盤のリリースと来日が予定されているようです。とても楽しみ。
* アイスランド・レイキャヴィクのポストパンク・バンド。数年前にレイキャヴィクのフェス「Air Waves」で出会ってから、一気にファンになりました。去年メンバーのSólveigが来日した時にMs.Machine(バンド)で共演したのですが、彼女のソロ作品もすごく良いので聴いてみてくださいね。
スウェーデンの話をもう少しさせていただくと、ストックホルムに「KLUBB DÖD」という会場がありまして、そこで昨年、KÆLAN MIKLAとQualが共演していたイベントがあったのです。行きたかったなあ…。今年1月にレコーディングでスウェーデンに行った時には足を運べなかった会場なので、次回は絶対に行きたいです。
https://jaghetersai.tumblr.com/
https://twitter.com/jaghetersai
Ms.Machineのヴォーカリスト / リリシスト。
硬質でノイジーなサウンドと“Riot Grrrl”のアティチュードを持ったバンドとして各方面から注目される。
Norr Records Music Studio(スウェーデン)にて制作した初ソロ作品『Dröm Sött』を2019年8月上旬にリリース予定。
ラーメンとカレーと梅干しサワーが好き。