Column「たまちゃんのバイクパッキング紀行」


文・写真 | 玉田伸太郎

北海道編 3

| 「北海道編 1」から読む
| 「北海道編 2」から読む

2025年5月15日 | 3日目

Photo ©玉田伸太郎

| 7:00
 起床。寒かった。北海道を舐めていた……。夜は7℃くらいまで下がった。寝ているのか起きているのか状態。

| 9:00
 2度目の起床。太陽が出て、暖かくなったので2度寝した。

Photo ©玉田伸太郎

 朝食。まずはお湯を作る。今回はガス缶を持ってきた。沸いたら即、水筒に入れる。燃料をつかったし、なるべく冷ましたくない。移動中、白湯を飲むと疲れが和らぐ。

Photo ©玉田伸太郎

 沸かしたお湯が少し残った。もったいないので持っていたじゃがりこに入れた。ふやけたじゃがりこをつぶすとポテトサラダの完成。一緒にゼリーも食べる。洗い物が出ないように効率よく計算して食事をするのも楽しい。ものが減っていく。どんどんシンプルになってほしい。

| 11:30
 荷造りを終えて出発。時計を見て驚いた。もう昼じゃん。今日の天気は本当にいい。空が広くて、草花が色味が美しい。牧歌的で北海道に来たなぁという気持ちで嬉しい。今日は荒野と違い、畑や、牧場、廃墟が点在するようになった。でも人は全くいない。radikoをかけて気を紛らわす。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

| 13:30
 17km走ったところで「いずみ食堂」に到着。牧場の高村さんに事前に教えてもらった店。看板が見えて安心した。立ち寄らないとこの先また数時間、何もない。定食屋だと思っていたが、メニューを見るとそば屋だった。周りを見て、何を注文するか決める。天ぷらそばにタコ飯を注文。アスパラ天も頼んだら2人前くらいの食事がくる。頼みすぎたかもと思ったが食べられた。疲れてるのか、昆布がいいのか、体に沁みわたるような味だった。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

| 14:00
 出発。また海が出てきた。海岸に沿って続く道路が遠くまで続いている。人工物もないのでとても遠くにも感じるし、意外と近いような気もする。東京で言うとどこまで行くのかな、など考えては忘れ、ひたすら繰り返し進む。この道路は、苫小牧から何kmという看板が立っていてちょうど50kmを過ぎた。もう50kmなのか。まだ50kmなのかわからないが、うれしい。車で1時間程度の距離を、1日半使っている。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

| 15:00
 慶能舞川の手前、海に反れる道があったので息抜きに海に行くことにした。砂浜になっていたので、自転車を押して進む。振り返ると砂にできた足跡とタイヤの跡が並んでいた。仲良しの距離感のように見えてきて、優しい気持ちになった。寄り道してよかったな。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

| 16:00
 昨日行ったカフェ「FORT by THE COAST」で聞いたバーバーがあった。本当に行くべきなのか一度素通りして考える。なんて言って扉を開ければいいんだろう。旅の話が先か、弟さんの話が先か。すぐにここまでの流れを説明するのか、髪は切らないんです、と言って中に入るのか。とにかく違和感を消したいがなんと言って入るのがいいのか全くわからない。しかし考えてるうちにいろいろと面倒になって、行ってみることにした。客として髪も切ればいい。

Photo ©玉田伸太郎

 覚悟を決めて扉を開けると、店主のかたが「もしかして自転車の人?」と声をかけてくれたので、「はい!そうです!」と答えた。「待ってたよ。コーヒーを飲んでいって」と奥に通された。「今朝、弟から連絡をもらったんだよ」。午後になっても現れないからもう来ないのかと思っていたらしいので、より歓迎された印象だった。

 コーヒーをいただきながら旅の話をしていると、店主の奥さんと父親が帰ってきた。「どこからきた?」「どこまで行く?」「今日はどこに泊まる?」「うちはすぐそこにある」などと話していると、「この先、上り坂がきっと大変だから軽トラックでそこだけ送っていくよ」という話になって、流れるように自転車を車に乗せていた。「まあ、坂が終わる数百メートルだからね。」と言ったが、とたんに坂が終わったので、結局目的地の「新冠温泉レ・コードの湯」まで14kmも乗せてもらった。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

 車でスルーしたことはあまり気にならなかったが、車の速さにショックを受けた。別れ際、お金を払う状況ではなかった。再び、大洗で買ったお土産をたくさん渡した。車が見えなくなるまで全力で手を振っていた。

Photo ©玉田伸太郎

| 17:00
 先ほど店主から「風呂から見る夕日がすごくきれいだから、ぜひ見てほしい」と言われたこともあり、まだ野営地を見つけていないが、風呂に入った。風呂は高台にあるので海岸線と海がみえる。この日は曇っていたので残念ながら夕日は見られなかった。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

| 22:00
 のんびりしていたら閉店まで過ごした。当然外は真っ暗で、野営地場所がみつからなかった。人通りがありそうだが平らな場所を見つけたので、テントを設置。食事は済ませていたので、今日はさっさと寝る。

 先ほど送ってもらった車の中で「本当に送っていい?こだわりないよね?」と確認してくれたのを思い出す。どうして自転車で旅しているのかふと考えてしまった。テントが人に見つからないように明日は6時頃に出る予定。

Photo ©玉田伸太郎Photo ©玉田伸太郎

北海道編 4へつづく……

Photo ©玉田伸太郎玉田伸太郎
Instagram | Official Site

Videographer。1983年生まれ。2009年、多摩美術大学院 絵画専攻版画研究領域修了。2011年、東京・高円寺 ASOKOに参加。2014年、本格的な映像制作を始める。VJ、MV、CM、ドキュメンタリーなど幅広く活動中。