Interview | SKM


我々は一体何者なのでしょう

 岡山を拠点に長きに亘って活動するラップ・デュオSKMが、単独EP『The Days』(2021)やLOWTIDE BOYSとのコラボレート作品『Blanket EP』(2021)、Lil.Young.J''Я''®をフィーチャーしたシングル『Admatic』(2022)を挟み、アルバム・サイズとしては『The First』(2014)以来実に9年ぶりとなる作品『Space Killer Mark』を「One Family Recordings」からリリース。本稿では、同作に客演したYVK1 TAMANO(玉野勇希 | UNCIVILIZED GIRLS MEMORY, ZENOCIDE)がSKMにインタビュー。メンバー・BAG(以下 B) + YZ(以下 Y)にエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたAIWABEATZ(以下 A)が加わり、『Space Killer Mark』完成までの道程を結成当初にまで遡って回答しています。

取材 | 玉野勇希 (UNCIVILIZED GIRLS MEMORY), ZENOCIDE | 2023年8月

文 | AVE | CORNER PRINTING


とにかく茶割りが似合うメンバーだ。
コンビニでカンイチしようよ。でも一杯じゃ済まないだろう。
あれ、ここ茶割り置いてなかったっけ? あっちのコンビニ行こうよ。ほら、あったあった。
成田家の鳥酢で一杯やって。変わらぬフッドの味だ。なんてね。その後はやっぱりコンビニで茶割り。
ラッパーは酔っ払ったらフリースタイルするなんてウソだ。
泥のように街を徘徊。路地裏奥まで見回り。
フレディ・ギブスの新譜聴いた?ヤバいよね!
ねえADMATICって曲作ろうよ。アド街ック天国の?そう、アドマティック。どういう意味?わからん。んー調べても出てこないなあ。ってかそんな単語ないっぽい。
そう言えばADIMATIC復刻されたよね!アディダスの? そうアディダスの。ってかそのK-SWISSシブいね、なんてモデル?わからん。
あー頭痛い。昨日も飲んだんだった。マッチでも飲みなよ。二日酔いにはビタミンウォーターかマッチでしょ。ビタミンスーマッチ。
ねえ。なに。俺たちもう終わっちゃったのかなあ?バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ。
そう、再生ボタンを押せばまた何度でも始めることができる。変わり映えしない日常だっていいじゃないか。俺たちにはラップがある。
ワッツグー?調子はどうだい?
準備はできた、やるしかねえなあ。

――AIWABEATZ

――では今回SKMの2人の来歴的なところから聞いていきたいんだけど、2人はSKM以前は音楽経験ってあったの?
B 「自分は経験としてはないです。中学生の頃、兄がバンドをやっていたのでギターやベースを遊びでやったくらいです!」
Y 「自分は中学生のときに文化祭バンド的なのはやってましたが(笑)、SKMの前身ラップ・グループがあって、それが高校生のときです。そこからスタートだと思います!」

――YZの文化祭バンドはパート何で、どんな曲やったの?
Y 「完全に黒歴史なのですが、パートがギター・ヴォーカルでハイスタとかモンパチです」

――時代的な(笑)。あるある系の。
Y 「まさしくその通りです(笑)」

――SKMの前身グループには、すでにYZとBAGは2人ともいるの?
B 「僕ら2人に加えてもう1人ラッパーがいて、3MCでした!」
A 「3MCだったんだ?!」
B 「そうなんですよ!一応その頃から名前はSKMで」

――ちなみに2人とも、もともとはバンドを聴いたり楽器をやってたりしていたみたいだけど、どうしてラップのほうに転向したの?
Y 「同時期にヒップホップを聴き出してからですね!高校生でDJを始める人もいたりして、我々は機材が特に必要ないラップから、といったところで」
B 「自分は映画『狂気の桜』(2002, 薗田賢次監督)を観て、キングギドラがカッコよくて。日本人のラップを聴いたの初めてで!思い返すときっかけはそれかもしれません」

――たしかに当時は「AIR JAM」的なのとヒップホップを同時に聴いている人がわりと多かった。かく言う僕もそうだったし。SKM名義では最初からオリジナルを作ってたの?
Y 「リリックは自分たちで書いてラップしていました!」
B 「ビートは有物で、ラップを乗せられそうなのを持ち寄って!」
Y 「最初は何もわからな過ぎてDJ KRUSHさんのインストで書きましたね。それからCOMPANY FLOWだったり、アブストラクト中心で」
A 「2人もKRUSHやCO-FLOWが好きだったんだね~」

――そこはAIWABEATZと趣味が共通するところで。2人とも高校の頃はその辺のアンダーグラウンド・ヒップホップにハマっていた?
B 「KRUSHさんめっちゃハマってましたね!『Code4109』(2000)ずっと聴いてました!今聴いてもやっぱりカッコいいです!」

――SKM名義での初ライヴはどこでやったの?共演なども覚えていれば。
B 「高校の卒業式の後に、地元の総合体育館の一室を借りて初めてやりました。当時DJをやっていた同級生とか後輩も交えて、完全なDIYパーティでした」
Y 「ブラックライトなども自分たちで持ち寄りましたね」
B 「懐かしい!デカい布を買ってきて、スプレーでパーティ名描いたりして!」

――今のSKMはハードコア・シーンとの密な関わりが特異な点のひとつだと思うけど、それは結成当時、または以前から?
Y 「やはり地元が岡山県北の小さな田舎街で、そこはごちゃ混ぜ感ありましたね。 バグの兄もバンドマンで!」

――バグの兄はスキンズで怖かったって聞いたことがあります(笑)。
B 「ありましたね!兄のライヴとか観に行ってました。全く怖くはないです(笑)」

――Nobu(ZENOCIDE)とかもSKM以前からの交友?
Y 「そうですね!ノブは学年が2個下ですけど、実家もすぐ近くで保育園から中学まで一緒でした。ノブはバンド・シーンを駆け抜けていたので、彼が10432さん(One Family Recordings)にも引き合わせてくれました!」

――なるほど、それでノブはバンドに、YZたちはラップに。別の道に進んでも交友関係は切れず。わりと当初からバンドとの共演もあったの?
B 「地元でバンドとDJとMCのライヴみたいな自主企画をやってましたね!それこそ兄のバンドにも出てもらったりして」

―― あまりラップはラップ、バンドはバンドみたいな感覚じゃなかった?
Y 「我々の年代かも知れませんが、あまり区別して考えてませんでしたね」

――その結果、僕やAIWABEATZとも繋がって、このアルバムや今日のインタビューが成立しています、という。ラップとバンドというとNYHC / ビートダウン・ハードコアとラッパーのコラボや繋がりって比較的見聞きするけど、SKMの地元周辺、特に津山市ではDEATH DUST EXTRACTORやSKIZOPHRENIA!などのUK / スカンディナヴィア・スタイルのハードコアが強いイメージがあって。そういったライヴにも行っていた?
B 「地元で言うと自分たちは津山市の隣の真庭市というところなんですが、遊びに行ってました」
Y 「そうですね!今はなくなってしまった津山K2(2020年一時閉店)ですね! K2はZENOCIDEもライヴに来ましたね!」

――K2で一緒にライヴやったね。あれも相当カオスなイベントだった。ILL FLAMINGO時代の紅桜氏とかもいて。
B 「その回ありましたね!RUMIさん、SKYFISHさんとかも出ていて!」

――ナラちゃん(LAST)の家に泊めてもらって。良い思い出ですね。そのときに僕も初めて10432くんとかと話したと思う。SKMとしては『The First』(2014)に続いてOne Family Recordingsからのリリースになるけど、レーベルについて少し聞かせてください。オーナーの10432くんはMY OWN CHANGEでヴォーカルをやっていたり、それこそ岡山のハードコア・シーン出身だけど、どういった経緯で本作のディールが決まったの?
Y 「同郷で、一緒に遊んだり音楽活動をしていて、自然な成り行きでしたね!おもしろいことをやっている仲間で、それを他の人にも知ってもらえたら、っていう感じで。プラットフォームになってくれて感謝です」
B 「10432さんは地元シーンを牽引する先輩で、2014年の『The First』のときも親身になって力を貸してくれたので、信頼してお願いしました」

SKM

――10432くんは「0867」というショップを運営したり、地元に拘った活動をしているから、SKMのリリースはすごく自然なものに感じられます。今回のアルバムの話に移りたいんだけど、フィジカルで言うと『The First』から今回のアルバム『Space Killer Mark』まで、かなりリリースの期間が空いたけど、何か理由があったの?
A 「わっ『The First』は9年前か(笑)!」
Y 「あっという間ですね(笑)。本当にマイペースにやっているので、特に意識しなさすぎたりというのもありますが!」

――Dr.Dreなみのリリース・スパンで(笑)。
B 「そうですね(笑)。 もったいぶっているわけじゃないんですけど(笑)。でも2014年のEPの後にシングルを配信したり、アイワさんともフィジカルでシングル『Daydream』をリリースしたり!」

――あ、そうか。間に『Daydream』(2017)を出したりはしてた。これもOne Family Recordingsからでしたね。
A 「“Daydream”は、歌い直してはいるけど、ほぼ同じリリックで、“AIWASTONE Remix”というかたちで今回のアルバムにも入れているよ!」

――今回のアルバムの前の2021年に、EPの2ヶ月連続リリースがあったけど、その時点でアルバムにまとめる構想があったんですか?
A 「その前にまずオレのアルバム『Like No Other 2』に参加してもらったんだよね。2020年の11月にリリースした。それが“Over Tha Day”という曲。その流れで今度はSKMの作品を作ろうよ、っていう話になって。いきなりフル・アルバムは大変だから、まずはEPを作ろうか、って」
B 「ありました!そもそもアルバムを作っていて、できた曲で先にEPにしよう、という。アイワさんとも相談しながら」

――この2枚のEPがあって、それに加えて曲を作り出していった感じ?それとも前後して他の曲も用意していた?
Y 「Lil.Young.J''Я''®が客演してくれている“Admatic”と“N.A.I”はEP以降ですね」
A 「CZAの2曲は、ビートは受け取っていたけど、たしかリリック書きあぐねていたんだよね」
B 「書きあぐねていましたね。そこにアイワさんがディレクション的なところ手伝ってくれて完成しました!」

――Bohemia Lynchが旧名義BLAQCZA名義でのリリースは珍しいよね。
B 「リュウタくん(Bohemia Lynch)と名義の話をしたら、“BLAQCZAで”って言ってくれましたね。昔の仲間にも義理硬い!」

――名義はリュウタの拘りがありそうだね。もちろんSKMと知り合った当時にメインで使っていた名前でっていうのもあると思うし、実際ビートの雰囲気もリュウタの近年のリリースと比較するとSKMのラップに合ったものを選んでくれていると思った。個人的にも久しぶりにリュウタと同じ作品に参加できたのは嬉しいです。ちなみにAIWABEATZはどういうディレクションを?
Y 「ビートをアイワさんにも聴いてもらって、“え!SKMに寄せてあるじゃん、早く書きなよ!”みたいな(笑)。“Die Hard”はバースの構成も提案していただきました!」
A 「『The Days』EPを、後に作るフル・アルバムへの収録前提で作ろうという話をしていたんだけど、その前にCZAから買い取ったビートがあるなら、それを先にかたちにしたほうがいいよ、って話していて。具体的には構成の話とかをしたのかな。2曲あるから、違う構成にしようよ、って」
B 「そうですね。構成のアドヴァイスをいただいて」
A 「ラップの録り直しは後からしたけど、CZAの曲が一旦完成してから『The Days』EPに取りかかったんだよね。そこでbillsoundbuonoのビートも初めて聴かせてもらって。SAKE DEEPという愛媛のクルーの存在も教えてもらった」

――ビートの提供はAIWABEATZ、BLAQCZAに加えて、billsoundbuonoとDiamond Jozがラインナップされています。2人の参加の経緯を聞かせてください。
Y 「billsoundbuonoは同い歳で、愛媛・松山のSAKE DEEPというクルーに所属しています。昔、岡山のClub No.Nineで共演したとき、ウチに泊めて仲良くなって。その後、コロナ禍でビートを作り始めたのを知って!」
B 「彼の地元愛媛のパーティに遊びに行ったり、岡山でのパーティで一緒になったりして繋がっていて、同い歳というのもあって誘いました」

――SAKE DEEPだけにビールも作って。ビートも作って。
B 「みんな酒大好きで(笑)」
A 「岡山での『The Days』EPのリリパで、DJ Duckbill(billsoundbuono)やBEER GERONIMO、それからラッパーのSiVAとも共演したんだけど、アナログやセラートでガンガンにスクラッチや2枚使いするDJプレイと、タイトなラップをするクルーで。また一緒にパーティしたいな。billsoundbuonoは音源のミキシングもすごく拘ってて、一連の作品のマスタリングを担当していただいたエンジニアのSHOTOくんもこの人のミキシングはすごく良いって言ってたな。耳が良いんだろうね」
B 「Diamond Jozはハードコア・バンドilskaのドラマーかつ作曲もしながら、個人でビートも作っていて。自分たちの企画するパーティに来てくれたり、ZENOCIDE企画に呼んでもらったときも車で一緒に行ったりして仲良くなって参加してもらいました。“このビートでSKMにラップしてほしいんですよ”って送ってくれたりするんですけど、ほんとカッコよくて!」
A 「Jozの台頭も大きいよね!SKMは岡山のハードコア・シーンとの繋がりも深いっていう話がさっきも出たけど、ilskaは今の岡山を代表するバンドのひとつだよね。Jozがドリル・ビートを作り始めたのって、もしかしたら赤石くん(IRONSTONE)の影響もあるのかな?と思うんだけど、コロナ禍でバンドマンが(1人でもできる)ドリル・ビートを作り始めたり、ドリルのDJを始めたりしたのって、何か共振する部分があるんだろうね。ドリル、特にUKドリルとパンク / ハードコアって」

――たしかに。でも個人的には2010年代のトラップとかやドリルのローファイかつヘヴィでアグレッシヴなノリは、まるでハードコアと同じ感覚で聴いていたので、スラッジ / パワーヴァイオレンス・スタイルのilskaのドラマーが作るビートとして聴いて自然と腑に落ちます。ilskaとSKMと言えば、共にDarkside OYCという組織に所属していると思うんだけど、どう言う組織なんですか? 個人的には2013、14年くらいに“DSO”と書かれたステッカーをもらったのが知ったきっかけだったと思います。
Y 「Darkside OYCはその頃に我々が名乗って暗躍していましたが、それ以降にDESERVE TO DIE、ilska、ZETTON、Stainedなどの勢いのある若手ハードコア・バンド連中もDarkside OYCを名乗って巨大組織に仕上がりまして」
B 「そうそう!そもそもrecord shop DIGDIGの小野さんがDarkside OYCって言っていて、自分たちと友達何人かで頭文字だけもらって“DSO”で何かやろうっていう話でステッカーを大量に作ったんですよね。でも、それぞれ忙しくて、僕らはその後あまり活動はせず……。この間、ステッカーは小野さんに贈呈しました(笑)」

――それ以降で言うと、SLAVE SYSTEM DECONTROL、ZETTON、DESERVE TO DIE、ilskaの4バンドで2018年に『Darkside OYC – Our Studio Takes Compilation 2018』をリリースしていますね。また、DIGDIGの小野くんも岡山のハードコア、ヒップホップ・シーンを横断するフィクサーだよね。今回2曲客演で参加してるラッパー、Lil.Young.J''Я''® もハードコア文脈の人物なの?
Y 「そうですね!TILL EWINGでギター弾いてました」

――ex-TILL EWINGなんだ。想像してた以上に岡山のハードコア・シーンの中心にいた人なんだね。
Y 「2年くらい前にパーティでリルヤンに会ったとき、「ラップしてみようと思ってリリック書いてる」って教えてくれて、」いいじゃん!やろう!」とか話していたら、めちゃテクニシャンで(笑)」

――それはTILL EWING脱退後に?
B 「TILL EWINGに在籍していたのは10年とか前ですかね。その頃から親交はあって。バンドマンの仕切りで回っているバイトがあって、そこで一緒になって話すようになりました。新曲ができる度に聴かせてくれるんですけど、ラップから歌物まで本当に多彩です!」
A 「今、彼の サンクラで3曲聴けるけど、初めて曲を作って発表したのが2022年の4月になってるね。ドリルやフォンク、プラグっぽい曲までやってる。ちなみにLil.Young.J''Я''® とDiamond JozでA$KTAXっていうコレクティヴを組んでいて、他にも何人かいるみたい。SKMにも加入してもらったって本人たちから聞いてるよ!今SKMのバックDJは基本Jozなんだよね?」
Y 「岡山においてスタンスで共鳴する部分もあり、“Admatic”制作期からよく家で遊ぶようになりました。ここ近年でより仲良くなった感じです!リルヤン、Joz はA$KTAXを組んで活動していて、 JozはSKMのバックDJもやってもらっています!多忙な男ですよ(笑)」
A 「ちなみにリルヤンとJozで8月末~9月頭リリース予定のEP(『BMFDQN』)を作っていて、オレも1曲参加予定です。9月のSKMの東京ツアーには2人も帯同してくれるみたい!Wリリパだね!」

――Coming soonというか、この記事が公開された頃にはすでにリリースされていそうですね。A$KTAX名義でのリリースも期待したい。少し前後してしまうけど、本作におけるAIWABEATZのポジションはエグゼクティヴ・プロデューサーとのことで、とにかくすごそうではありますが、具体的にどんな役割を担ったのか聞かせてください。
A 「主にケツ叩きです(笑)!」
B 「ケツが腫れ上がる程叩いてくれましたね(笑)。構成とか諸々曲のアドヴァイスも!」
Y 「マジでアイワさんのケツの蹴り上げがなければ完成できませんでした(笑)!」
A 「CZAのビートもあるし、EXPTが絶対ヤバイアートワークを作ってくれるし、今ノリにノッている赤石くんも以前からSKMが好きで一緒にやりたいって言ってくれてたしね。さらには、Jozとリルヤン参加で新しい化学反応も生まれてるし、サノくんとシズカにリミックスをお願いしたら間違いないのが作れるじゃん!って励ました感じすね。SAKE DEEPとの繋がりも素晴らしいしね。アルバムを作って岡山、東京、愛媛も回れたら最高だよねっていう。それとユウキ(YVK1 TAMANO)とオーキちゃん(OH!KISS)とSKMとであのタイミングで曲を作れたのはオレもスゴく嬉しかったしね。ZENOCIDEとUCGMの動き、OH!KISSの活動はいつも励みになっているよ!」

――僕の精神が最悪な時期に時期に書いてたので、今聴くと自分でも引くくらい歌詞が暗すぎる(笑)。
A 「リリース当時よりも今のほうがDJでかける機会が多いんだけど、“Tzlami”は特に毎回反応あるよ!さっきかけてた“ツライ ツライ ツライ……”っていう曲なんですか?って(笑)」
B 「クラブとかでかかってたら反応してしまいますよね(笑)!ユウキくんとオーキさんとやった曲はアルバムの中ですごくいいスパイスになってると思います」

――恐縮ですが、こんな世の中なので共感は集める曲なのかもしれない……。「Tzlami」のビートはAIWABEATZ & S3XY SAD Iでクレジットされていて、S3XY SAD I(preparationset)と共作したということだけど、どういったかたちで制作したんだっけ?
A 「タータン(S3XY SAD I)には自分のアルバム(『Like No Other 2』)にも天野裕氏さんとの曲で参加していただいたんだけど、それが楽しくて『Blanket EP』(2021)を作る際にもお願いした。“Tzlami”はオール打ち込みで作ったんだけど、タータンはメロディも含めて退廃的で甘美なビートを作るのがとても得意なので、そこにUKドリルのリズムとフロリダ系の歪んだベースのエッセンスを取り入れて。それ以降も精力的にヤバイビートやリミックスをサンクラで発表しているので、preparationsetでのライヴや音源は常にヤバイんだけど、タータンのソロ活動もとても刺激になりますね!」

――なるほど、座組に関しても多少AIWABEATZのディレクションが入っているんだね。実際、当人たちだけでやっていると、毎週のライヴと曲作りだけでリソースを削られてしまって、アルバム・サイズのリリースをするのって案外体力が必要なので。その点外部でマネジメントしてくれる人がいるというのはリアルにありがたいところかもしれない。
Y 「制作において、的確なプロデュースをしてもらえたのは助かりましたね!うまくアウトプットさせてくれました!アイワさんと意思の疎通がガッツリ取れていたのもあるかもですが!」
A 「トータル・プロデュース的な視点で言えば全部自分のトラックである必要も全然ないので、より幅広い視点で考えられたし、自分もすごく勉強になったよ」

――赤石くんはまだ東京でSKMの名前が知られる前からtoosmellrecordsで『The First』やSKMのTシャツを扱っていたと思いますが、プライベートな付き合いがあったの?個人的には、当時toosmellのスタッフでもあったfalls、SHUT YOUR MOUTHのドラマー・infrontが会社の同僚で、突然会社にSKMのシャツ着て現れてかなり驚いた記憶があります。
A 「赤石くんはSKMとかHOODIES(R61 BOYS)、KyonCee APartmentとかの地方都市/郊外のイナタいローカルなラップがとにかく好きなんすよね」
Y 「ELMOが岡山にライヴに来たときに観に行って、まーくん(ELMO)や赤石くんと初対面しました!ライヴ後、ラフでイナタいあるあるみたいな会話をしながら缶イチして、っていう感じで最高でしたね!」
B 「『The First』を聴いてくれていて、後にビートを作り始めて送ってくれたりして、ぜひやりましょうみたいな感じでした!ビートはもちろんイケてるし、“N.A.I”では赤石くんのアドヴァイスでオートチューンかけましたね!初めて会ったときから今までずっと“魔感”感じてます!」

――赤石くんはilskaでギター弾いたりもしてましたね。人材が重複しつつ、ラップにハードコアにといろいろなかたちでアウトプットされているのがおもしろい。地方都市 / 郊外のローカル・ラップというキーワードが出たけど、SKMのリリックを改めて読むと岡山の方言というか、普段の話し言葉を恐らく意図的に入れているのがわかりましたが、これはどういう狙いで?
Y 「方言はもともとのラップのフローにおいて醸し出すものがあったのかもですが、意図的にリリックに盛り込む点はアイワさんとのアイディアから生まれたものです!やはりアイワさんの客観的な立ち位置からのアドヴァイスがハマりましたね!スラング感が出ます」
A 「“Over Tha Day”を作るときに2人と話したんだけど、方言や2人の周りのスラング、固有名詞なんかをバンバンに入れて、とにかくSKMの周りのヤツらが聴いてアガがるものを作ろうよっていう話をしたんだよね!オレとかEXPTたち東京のヤツらも岡山に遊びに行ったときにリリックの答え合わせをしてブチアガがれるし、って。ここがあの曲に出てきた○○○っていうところか~、とかね(笑)」

SKM

――AIWABEATZのディレクションによるものだったとは意外ではあったんだけど、より普段の話し言葉がそのまま音楽になっていて、所謂ローカルの雰囲気を演出するのにすごく効果的に作用していると感じて。「成田家」とか、ローカルの人しか知りようもない固有名詞が入っているのも印象的でした。
A 「あとは2人にグラフィティの曲を作ってほしかったから“Memories Of The Town”を書いてもらって。あれを聴いてサノくんもぶち上がってくれたんだよね。Forestlimit主催の野外パーティで一緒になって。その前から名前はよく聞いていたんだけど。ちなみに成田家最高でした!!」
Y 「もともと近場というか、自分たちの生活圏でのラップをするのがSKMのスタイルでもあったので、そこが“Over Tha Day”の制作によって、よりクリアに認識できるようになったというか、方向が明確になりましたね!また成田家行きましょう!」
B 「サノ、シズカも『The Days』EPリリース時に“Memories Of The Town”を聴いてくれて、“リミックスやるわ!”って言ってくれて!」

――「Memories Of The Town」のリミキサーとしてラインナップされているSHIZKAとKEITA SANOについて聞かせてください。
B 「シズカ、サノは岡山では数少ない同い歳の友達で、昔からパーティやライヴハウスでよく会ったりして仲が良くて。シズカは幡ヶ谷Forestlimitでアイワさんと一緒だったことがあるらしく、僕たちのリリースを気にしてくれていて、EP時の“Memories Of The Town”をきっかけに参加してくれることになりました。2人の活躍には昔からとても刺激をもらっていて、尊敬する2人です」
A 「サノくんともシズカとも、SKMとは全然別の流れでオレは知り合って。シズカとは実は2013年のSKM主催パーティで一緒にはなっていたんだけど、話したりするようになったのはその後で、Forestlimitや大阪のSTOMPで一緒になったとき。サノくんも源ちゃん(DJサモハンキンポー)とMAD LOVEをやっているから、知り合ったらすぐ仲良くなって。でも今回のアルバム『Space Killer Mark』にリミックスで2人に参加していただいたのって、SKMの旧友であるからなのはもちろんなんだけど、それ以上に今のSKMの音楽性に彼らのやってきた音楽とマッチする部分があると思ったからなんだよね。2人にリミックスしていただいた“Memories Of The Town”(オレはグライムを遅くしたヤツって呼んでるんだけど)は、UKのラップやベース・ミュージックを参考にして作った曲だし、赤石くんやJozのおかげで、ドリルやトラップのビートでも自然とやれてるしね。“N.A.I”ではオートチューンまで使ってる」
Y 「サノとシズカがアイワさんとも繋がって、今回のアルバムにリミックスで参加してくれたのは最高ですね!同じ歳の2人がどんどん活躍していくのを目の当たりにしています。我々も、もっと新しいことに挑戦していこうと思いましたね」

――すごく今更なんですが、本作のタイトルにもなっている“space killer mark”ってなんなんですか?
Y 「隙間産業からです」

――“Su Ki Ma”っていうこと?
Y 「SKMの頭文字からS = スペース(空間)、K = キラー、M = マーク(印)。我々はいつも隙間を狙ってるぜ、みたいな意味ですね。隙間空間」

――その言葉が先にあってEXPTのアートワークができた感じだ?それを聞くと、“space”で宇宙という意味とマーキング的な意味と、ダブルミーニングのアートワークになっているのがわかる。
B 「そもそも、それ自体EXPTが言い出して!」

――たしかに、本作以前にEXPTデザインの『Space Killer Mark』のTシャツがあった気がする。
B 「そうです!そのTシャツのときですね。そのままアルバムのタイトルに使って、ジャケもバッチリハマって最高です!EXPTもある意味、本作のプロデューサーのひとりですね」
Y 「我々、赤ペン先生と呼んでいます」
A 「実際EXPTの存在は大きいよね!本人も“オレはSKMの第3のメンバーだから”ってある時期から言っていて、ならオレは4人目のメンバーだな、と思って今に至るよ」

――“space killer mark = 隙間産業”って、SKMのラップ・グループとしての活動スタイルのことも表している言葉だよね。トレンドに寄せるわけでも距離があるわけでもなく、イナタさはあっても洒落ていて洗練されている部分もあって。
B 「だからジャケを見たときに感動しましたね!普段から遊んでいて、僕たちを理解してくれているEXPTにしかできないジャケだと思いました!」
Y 「アイワさんとEXPTは、我々と同視点になっていろんなアイディアやケツの蹴り上げでサポートしてくれて、マジでメンバー以上のメンバーというか!」

SKM

――メンバー以上のメンバーになっちゃったらBAGとYZは何なんだよ(笑)。
A 「はは。このユルさがSKMらしいというか(笑)。読みかたも“スケム”なのか“エスケーエム”なのか、いまだに謎だし……。まあとにかく、2人の人柄の良さにみんなが集まったというか。支えてやるか、みたいな。人徳ですね(笑)」

――最初ノブから“スケム”として紹介されたから、今でもスケムと呼んでいるけど、実際はどっちなの?
Y 「呼称については諸説あると言っているのですが、“スケム”と呼ぶのは主に岡山県北界隈の人たちで、昔からの友達ですね!」
B 「正確にはどっちとかもないんですけど(笑)。たしかに最初は“スケム”でしたね!ユウキくんと知り合ったときに一緒に仲良くなった友達と、地元の人はそう呼んでくれてます!昔からの仲間っていう感じでめちゃ嬉しいです(笑)」
Y 「普段“エスケーエム”と呼んでいる人も、そのときの気分で呼び分けてもらって全然!」
B 「全然呼び分けてもらって(笑)!」
Y 「Nasのナズ、ナス的な」
B 「なんでSKMなの?と聞かれることがあるんですけど、それも大した理由はなくて、アルファベットでS、K、Mが好きだから、くらいで付けて、そのまま“エスケーエム”もあれだから“スケム”にしよう!みたいな感じです!」
Y 「我々は一体何者なのでしょう……(笑)」

SKM

SKM 'Space Killer Mark'■ 2023年9月10日(日)発売
SKM
『Space Killer Mark』

One Family Recordings

[収録曲]
01. Intro
02. Memories Of The Town prod. AIWABEATZ
03. Stylez & Skillz prod. AIWABEATZ
04. My Ryde Or Die prod. BLAQ CZA
05. Die Hard prod. BLAQ CZA
06. Neighborhood prod. billsoundbuono
07. Spend prod. billsoundbuono
08. Over Tha Day remix feat. YVK1 TAMANO prod. AIWABEATZ
09. Ghost Town PT2 feat. OH!KISS & YVK1 TAMANO prod. AIWABEATZ
10. Tzlami feat. YVK1 TAMANO prod. AIWABEATZ & S3XY SAD I
11. N.A.I feat. Lil.Young.J''Я''® prod. IRONSTONE
12. Admatic feat. Lil.Young.J''Я''® prod. DIAMOND JOZ
13. Daydream (AIWASTONE Remix)
14. Spend (DIAMOND JOZ Remix)
15. Memories Of The Town (SHIZKA Remix)
16. Memories Of The Town (KEITA SANO Remix)

CD販売店
0867 | record shop DIG DIG

idealaideala
SKM "Space Killer Mark" & Lil.Young.J''Я''® "BMFDQN" W Release Bash

2023年9月14日(木)
東京 幡ヶ谷 Forestlimit
18:30-
1,500円(税込 / ドリンク代込)

Feat.
IRONSTONE / Lil.Young.J''Я''® / MUTA / SHOT-ARROW / SHOTO / SKM / ZTMZ

DJ
AIWABEATZ / AKIRAM EN

Food
チリコンカンヨーコ

FORMATIONFORMATION

2023年9月15日(金)
東京 吉祥寺 bar Cheeky
23:00-
1,000円(税込)

Guest Live
SKM feat. Lil.Young.J''Я''®

Guest DJ
AIWABEATZ

Regular
Abeee / IRONSTONE / OG Militant B / RHYDA / DJ snuc

ON THE CORNERON THE CORNER

2023年9月16日(土)
埼玉 戸田公園 CORNER BOOKS (CORNER PRINTING SELF 戸田公園店2F)
14:00-
入場無料

Live
九九時計 / EASTERN.P / HOODIES / Lil.Young.J''Я''® / SKM

Guest DJ
AIWABEATZ / DIAMOND JOZ / 科学クラブ (IRONSTONE + Mark Loafer) / LOVEJUICE / S3XY SAD I / YWK1

Food
MONGTHUG / YoCo壱番屋