Interview | SOLDIER


寄り添えるミュージック、この場所にいるソウル

取材・文 | COTTON DOPE (WDsounds) | 2021年5月

 SOLDIERのアルバムは人々大変なことに直面したときにリリースされ、その作品は聴く人に強く響き、それぞれの心を支えてくれる。以前話を聞いたときに、「歌詞を常に書き留めてるよりは言いたいことが生まれた時に一気に書いている」と言ってたのが強く印象に残っている。書き上げるだけでくじけそうになる様々な困難に直面する2021年にリリースされた『Immortal Feeling』はどういった思いから言葉と音楽が生まれてきたのだろうか。

 「1stアルバム『邁進』をリリースしたのも2011年で、東日本大震災があった年でした。今回は昨年からのコロナ禍によって世界中が混乱している状況で、自分自身もそうですが、みんな先の見えない動乱のなかで不安や迷い、生活の変化など、様々な選択を迫られている状況だと思います。そんな逆境をも跳ね除け、前向きに進んで行くためのバイブルが、自分にとっては音楽やストリート・カルチャー。今まで様々な音楽やストリート・カルチャーに力や勇気、希望をもらって生きてきたので、その力を自分自身のフィルターを通した言葉として書き綴って表現して、作品を聴いてくれた人の力や勇気、希望となってもらえたらと言う思いで言葉を生み出していきました」

SOLDIER

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 ストレートに言葉をぶつける。強度が高いほど、それは自らにも返ってくる。それすら跳ね返すような言葉の強さがここにはある。

 「リリックを書いているときは常に必死ですね。人間は逆境に立たされたときにものすごい力を発揮する能力を持っていると思います。だからリリックは無心でひたすら書いていて、気付いたら夜が明けて朝になっているみたいな感じです。尊敬している空手家の先生で、今はもう亡くなられている黒崎健時先生というかたが、『必死の力・必死の心』という著書で自分の心境にすごく近いことをおっしゃられています。機会があれば核心を追求する次世代の方々にはぜひ読んでいただききたいです」

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 「平成から令和への移り変わり」「コロナ禍」「政治への大きな不信」「東京オリンピック」。政府に脅かされる日々の生活において、自分たちに必要なものとはなんだろうか?SOLDIERはこう答える。

 「今となってみれば平成はとても良い時代だったと感じます。でも平成から、強いて言えば昭和(戦後)から、日本は日本だけの考えで政策や物事を決めてい進んでるわけではなく、アメリカの属国のような感じになってますよね。勿論戦争に負けたわけだから仕方のないこととはいえ、本来は国民のための国であるべきなんですが……。近年のグローバル化や超資本主義社会で、国としてのバランスが崩れておかしな方向に進んでいると思います。情報が溢れ、錯綜している中で、何が嘘で何が本当か、何処へ進むべきか?難しい判断を求められる時代だと思います。そんな中、これからを担う子供たちや若い人たちが生きる上で、親や周りの大人、学校の先生の教え、マスメディアの表現は、その後の人生の生きる道筋を決めるための思考に大きな比重を占めると思うんです。だから、考えかたのひとつの選択肢として“学校や親、周りの大人達やマスメディアが教えてくれないこと”を本音で歌いたいし、今後も歌っていきたいと思っています。そういうことを思ったり、気付くきっかけを作ってくれたのが、自分にとっては音楽やストリート・カルチャーだったので、今後も炎を絶やさず伝えていきたいと思っています」

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 人と街がストリート・カルチャーを作り、ストリート・カルチャーがまた人と街を作っていく。今までの作品でもトラックを作っているSOLDIERだが、今回も“COELACANTH”という名義でアルバムの各所から音を流している。ラップとトラック、言葉と音楽、SOLDIERにとってはどのようにそれは在るのだろう?

 「トラックに関しては、単純にこのトラックに言葉を乗せたいと思う曲を直感で選ぶ感じです。自身で制作したトラックも、あまり深く考えないで直感で作業しています。日本語のラップや日本語のディージェイ・スタイルで世界に、というと少し難しいですが、トラックなら可能性が広がるし、今後は国内国外問わず熱い魂を持った様々なアーティストのプロデュースもやりたいので、トラックメイクは自分自身が音楽と末長く付き合って行くために必然の選択肢だったのかもしれません。今回のアルバムに関しては、まず骨組みを自身のプロデュース作品で固めて、そこに足りない要素を補うかたちで2人のプロデューサーに参加してもらって構成していきました。FLASH PISTON君はツボを押さえた強烈な和物ネタの曲とかパンチの効いたトラックをバンバン送ってくれるので、彼とのコラボはいつも楽しみです。符和君も繊細で斬新、アーバンなテイストのトラックを提案してくれるので、自分自身も新しい世界観を模索した上で表現して、今までの自分の作品にはないテイストや質感に仕上がっていくのが毎回楽しみです。2人ともタイプは全く違いますが、音楽に賭ける情熱はすさまじいものがあります。そんな2人のプロデューサーに力を貰って、今回の作品が完成しました」

 自身の住む街・千葉から路を通じて、“同志”という熱量が音源からも伝わるアーティストが参加している。曲を聴いていると、彼らそれぞれとの関係性や思いが伝わってくる。

 「参加してくれたアーティストは、音楽以前に人として尊敬できる人を選んで声を掛けさせてもらいました。KM$はそんなに古くからお互いを知っているわけではないんですが、ここ何年かで仲良くしていて、何より彼の音楽に対する純粋で真っ直ぐな姿勢に感銘を受けて曲を依頼しました。その姿勢が今回一緒に作った曲“Rise Up”でもしっかり表現されていると思います。岡山勢のOWL君やハナ君(HANABIS)は、イベントに呼ばれて岡山に行ったときに知り合ったんですが、一緒に曲をやるきっかけになったのは彼等のライヴを見て感動したからです。世代も近いし、何よりすごく良いライヴをしていて、独創性が強くて真似できる人もいないと思うし、一緒に曲を作ったら良いのができると確信したので依頼しました。E.G.G.MAN氏は20年近く付き合いのある先輩で、言うまでもなく自分の地元(千葉)を代表するアーティストなので、このタイミングで一緒に曲を作れて光栄です。人としても尊敬していますし、いつも自分の活動を暖かく見守ってくれています。DANIEL a.k.a. 464undergroundは地元が隣で、昔からよく知っている間柄です。元々レゲエのサウンドをやっていたんですが、いつの日からかラッパーになっていてビックリしました。昔から彼の様々な音楽活動を見てきて、今がんばっているし、後押ししたいというう気持ちもあって、曲をやろうって誘いました」

 High Life Records、HANABIS、OWL、FLASH PISTONといった岡山のアーティストと歌う岡山の話。先日リリースした符和との作品からも伝わるが、SOLDIERは旅を続けているように感じる。

 「まさにその通りだと思います。まだ旅の最中なんです。当てのない旅路。音楽的にもまだまだいろいろ模索中です。その旅の道中でいろいろな出会いや、特別な場所、気持ちの変化だったり、起伏もありますが、時代と共に変化していく情景を楽しみながら書き記していく感じで、これから先いつまで旅を続けられるかわかりませんが、マイペースで歩んで行きたいと思ってます。年内にHigh Life Recordsから7″レコードで楽曲をリリースする予定です。符和君とも、今回のアルバムや昨年の6月にリリースしたジョイント作品の12″レコード『輪廻転生』とは違ったテイストで楽曲の制作を予定しています。あと、コロナ禍でイベントやライヴの開催が難しい状況が続く中、映像編集を手探りで始めました。今回リリースしたアルバム『Immortal Feeling』から公開したMV“カルマの法則”“Life Is Water”は自らディレクションしたものです。今後もいろいろなビートやMVをMad Fisher RecordingsのYouTubeチャンネルにアップしていきますので、そちらもチェックよろしくお願いします。早くコロナが収束して、今回のアルバムに参加してくれた面々や全国の熱い同士と共に現場でライヴがやりたいですね。この記事を読んでくれているみんなの地元のイベントにも出演する機会があると思うので、そのときはぜひ会場に遊びにきて下さい」

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SOLDIER Official Site | http://raggamuffinsoldier.com/

SOLDIER 'Immortal Feeling'■ 2021年5月12日(水)発売
SOLDIER
『Immortal Feeling』

CD MDFR-003 2,500円 + 税

[収録曲]
01. Immortal Feeling (Intro)
02. Serious
03. 不動心
04. 再構築
05. Rise Up feat. KM$
06. カルマの法則
07. Lo-Fi Dream (Instrumental)
08. 一億総活躍社会
09. 騰魂 feat. OWL, HANABIS
10. Just Chliin (Interlude)
11. Local City feat. DANIEL a.k.a. 464underground
12. 再会 feat. E.G.G.MAN (Album Vresion)
13. Akachochin (Interlude)
14. 平成の終わり
15. Life Is Water (Instrumental)