Interview | SoundSupply_Service | Choi Jongbin + Paola Laf


韓国には優れたミュージシャンがたくさんいることを伝えたい

 2021年の設立以来、韓国の先鋭的なエレクトロニック・ミュージックを洗練されたヴィジュアルでアーカイヴァルに紹介し、本国はもとよりグローバルに注目を浴びるレーベル「SoundSupply_Service」。Mount XLRによるaespaのリミックスワークや、Wona(ウォナ)と食品まつり a.k.a foodmanのコラボレーションなどにより、そのポピュラリティは日本でも徐々に拡大しつつあります。

 昨年末に設立4周年を迎えた同レーベルから、Mount XLRが間もなく来日。このタイミングで、トラックメイカー / プロデューサー・cjb95としても知られるファウンダーのひとりChoi Jongbinさん(チェ・ジョンビン | 以下 J)と、A&Rを務めるPaola Lafさん(パオラ・ラフ | 以下 P)に、レーベルの動機や理念などについてお話を伺いました。


取材 | 南波一海 | 2026年3月
通訳 | 山本大地
Main Visual: SoundSupply_Service 4th Anniversary logo | Designed by kamikaki

序文 | 久保田千史


――韓国におけるエクスペリメンタル寄りの電子音楽シーンはどのくらいの規模なのでしょうか?

J 「規模感を表現するのが難しいですが、本当に少数の愛好家と、 実際にこういう音楽を作っている人たちがそのままライヴ現場にいる、そのくらいの大きさだと思います」

――そういう中でレーベルを立ち上げた経緯を教えてください。
J 「高校生の頃からずっと音楽をやっているんですけど、周りにも同じような音楽をやっている友達がたくさんいました。ただ私たちの世代は、作った音楽をSoundCloudで共有し、コミュニケーションもそこで取るような状況でした。韓国には、私と仲間たちのようなプロデューサーが音源をリリースするプラットフォームやレーベルが本当に少数で、しかも、それすらもマニアックなリスナーにしか届いていなかったんです。そこで、私がレーベルを立ち上げることで、レーベル単位の作品が出てくるところであれば、より多くの人が音源やCDやLPを買ってもらえる環境になるかもしれないと考えて、始めました」

――Jongbinさんのcjb95名義の楽曲は非常に先進的なヒップホップだと思います。仲間の音楽家も同じように優れた才能を持っている人が多くいるのでしょうか?
J 「私の初めてのリリースは21歳のときで、そこで本当に音楽を始めたという実感がありました。当時から私の周りにいた友達というのが、Balming Tigerのメンバー・Leesuho(イ・スホ)で、私と一緒にシングルを出したのがKim Doeon(キム・ドオン)です。Kim DoeonはSoundSupply_Serviceからリリースしています。そして、一番多く一緒に作業をしたのはエクスペリメンタル・ヒップホップをやっているEasymindとKim Ximya(キム・シムヤ)です。この仲間たちとたくさんの音楽制作をしましたし、音楽に関する会話を常にしながら作業してきたので、そういうトラックを作るのが自然な環境だったのだと思います」

――Kim Doeonさんについてお聞きしたいのですが、Jongbinさんが出会った頃からニューエイジのようなアブストラクトな音楽をやっていたのでしょうか?
J 「私が初めて出会ったのが15、6歳の頃だったのですが、彼はその頃からサンプリング的な音楽を探求していたんです。私たちの友人の中で最もアブストラクトで、最も実験的な音楽を作っている人でした」

――PaolaさんはNTSで働いていたと聞きましたが、どのような経緯で「SoundSupply_Service」に参加することになったのでしょう。
P 「合流する前から、イタリアのRadio RaheemやパレスチナのRadio AlharaでSoundSupply_Serviceの音楽を紹介したくて、プレイしたりしていたんです。私は2022年までNTSにいて、23年にWonaのリミックス・プロジェクトでSoundSupply_Serviceのミュージシャンと初めて仕事をして、Wonaを海外のミュージシャンと繋げたり、PRするのを手伝ったりしていました。合流したのは、その後の24年からです」

Wona "Ashes and arms" Party at Cakeshop | Mount XLR, Paola Laf, cjb95, Wona, Yerim Han, ccr
Wona "Ashes and arms" Party at Cakeshop | Mount XLR, Paola Laf, cjb95, Wona, Yerim Han, ccr

――SoundSupply_Serviceの音楽は海外でより広く聴かれるだけの魅力があると感じましたか?
P 「SoundSupply_Serviceの音楽は海外でも魅力が伝わると思いました。欧米での韓国音楽の人気は本当に高まりましたが、それでもK-POP以外の音楽は知られていなかったんです。ただ、その理由が言語だけだとは思いません。すでに韓国語で歌われるK‑POPは世界中で愛されていますし、ヨーロッパのように多言語が共存する環境では、リスナーは他言語の音楽を聴くことにも慣れています。さらに、エレクトロニック・ミュージックはインストゥルメンタルの形態が多いジャンルでもあります。西欧では韓国アーティストのライヴを直接聴く機会や、ラジオなどのプラットフォームで紹介される機会が比較的少なく、まだ十分に知られていない部分が大きいと感じたので、韓国には本当に優れたミュージシャンがたくさんいることを伝えたいという思いが強くありました」

――日本もそうですが、アジアのミュージシャンにとって海外にリーチするのはまだ高い壁があると思っていて。日本では今でこそ多様な韓国のインディ音楽がたくさん入ってくるようになりましたが、欧米諸国でも少しずつそういう環境になっていくといいですよね。
P 「そうなることを願っています。事実、日本のエレクトロニック・ミュージックはヨーロッパで人気が高いですよね。YMOなんかはもちろん知られていますし。日本はエレクトロニック・ミュージックのフェスも多いので、そこでヨーロッパやアメリカのDJも日本で頻繁に行って公演し、そこから繋がりができています。韓国のこういった音楽もそうできるような環境を今作っているところです」

――Jongbinさんはレーベル立ち上げ当初から海外を視野に入れていたのでしょうか?
J 「設立当初は、海外市場を目指して音楽を作ったり、そのためにアーティストを集めなければならないという考えはなかったです。Kim Doeonのアルバム『Damage』を作ったときに、これがうまくいって東京でライヴできたらいいね、という話をしたくらいでした。その後Mount XLR、Wonaと一緒に仕事をし始めて、彼らの音楽がNTSでプレイされるようになったあたりから海外の市場についてより興味を持つようになりました。NTSでプログラムをやりたいね、というような話ができるようになったし、Paolaのおかげで実現できましたが、最初から海外進出しなければならないという漠然とした目標はなかったですね」

SoundSupply_Service 4th Anniversary at Seendosi with Apow Studio | Kim Doeon, Leesuho
SoundSupply_Service 4th Anniversary at Seendosi with Apow Studio | Kim Doeon, Leesuho

――来日公演も控えているMount XLRさんについてもお聞かせください。彼の音楽と出会ったとき、新鮮な驚きや発見があったのではないでしょうか?
J 「Mount XLRは自分と同い歳だし、同時代の音楽家で、もともと彼もSoundCloudのコミュニティにいました。ただ、私はヒップヒップに近いところにいたこともあって、お互いに知ってはいたけど、実際に会ったり連絡を取ったりする関係ではありませんでした。SoundSupply_Serviceのオフィスはソウルのヤンジェ(양재)にあるんですけど、ある時、Kim Doeonが“ヤンジェに遊びに来た”と突然連絡をくれたんです。なぜヤンジェにいるのか聞いたら、Mount XLRの……当時はまだ本名のKwangjae(グァンジェ)を名乗っていましたが……彼のスタジオもヤンジェにあって、Kim Doeonはそこに来ていたんです。そこが私たちのオフィスからタクシーで10分ほどの距離だということやSoundSupply_Serviceのことを伝えたら興味を持ってくれたというので、すぐにMount XLRにDMしてみたんです。それで、オフィスの1階のカフェでエレクトロニック・ミュージックについての話をたくさんして、次の日には彼のスタジオに行きました。そこで聴いた音楽が本当に魅力的で、彼がミュージシャンとして具体的な活動をしていないことをすごく残念に思ったし、このアーティストは有名になれると思ったので、一緒にやり始めたんです」

――その後は実力を発揮し、Hudson Mohawkeやaespaのリミックスなども手掛けていきました。
J 「近くで見ていてすごく気分が良かったです(笑)。2年前にHudson Mohawkeが韓国でライヴをしたのですが、もうHudsonはどんなファンとも一緒に写真を撮ってあげられるような状況ではなかったんです。でも、Mount XLRのおかげでHudsonと一緒に写真を撮ることができました(笑)」


――SoundCloudでの出会いが多いようですが、クラブとかライヴの行われるヴェニューで新たな人と出会うということはそれほどないでしょうか。
J 「レーベルとしての活動を通して新たに親しくなった人たちはオフラインでもいましたが、SoundSupply_Serviceからリリースをしているミュージシャンと知り合ったのはほぼすべてインターネットでしたね。Paolaはどう?」
P 「私はクラブに頻繁に行きますし、最初にできたほとんどの韓国の友人はクラブで出会った人たちです。SoundSupply_Serviceのミュージシャンや同僚も、Kim Doeonのライヴを観にSeendosi(シンドシ)というヴェニューに行ったのがきっかけで知り合いました。ソウルのクラブ・シーンは大きくはないのですが、本当にアクティヴで、毎週イベントがあって様々なクラブを回っていますし、海外アーティストも来韓しているので、私は大好きです」

――レーベルのリリースを通して聴くとシーンの多様さを感じますが、カラーやジャンルは絞らずにリリースをしていくという意図はありますか?
J 「最初はある程度ジャンルを縛ってリリースしたいという考えがあったんです。例えば、最初にScorched Evrth(現Scorch)をリリースしたとき、こういうエレクトロニック・ミュージックを世の中に出したかったんだ、という気持ちがありました。ただ、韓国には良いミュージシャンが多いのですが、私たちがリリースするような、いわゆるプロデューサーが作る音楽で良いものを作れるミュージシャンはたくさんいるとは思わなかったんです。だから、私の考える大事なポイントさえわかってくれるミュージシャンであれば、ジャンルの縛りはなく、良いものをリリースしたいと思っています」

――ポイントですか。
J 「韓国でリリースされてきたエレクトロニック・ミュージックについて惜しいなと思っていた部分は、いつもサンプリングの概念が抜けているんですよね。私はサンプリングがもたらす自由があると思っています。自分が聴く欧米や日本のエレクトロニック・ミュージックはサンプリングに対するアイディアや考えに関心があるのに、韓国ではそれが少し足りていない。SoundSupply_Serviceを始めてからの5年間で、ミュージシャンともそれについての話はたくさんしてきました」

――ちなみに韓国におけるフィジカル作品の売れ行きはいかがでしょうか。
J 「韓国では4、5年くらい前にLPブームがありました。これは世界的にもそうだったと思います。その時期は韓国でも趣味としてLPを買い集めて家で聴く人も増えていたのですが、2年くらい前から状況は変わったと思っています。日本やヨーロッパではその文化が定着していると思いますが、韓国ではマニアの人たちにだけ消費されるようなものになってしまっていて、今はあまり売れなくなってきていると思います」

――SoundSupply_Serviceはプロダクトとしても素敵なので、ぜひフィジカルでのリリースを続けてほしいなと思います。
J 「ありがとうございます」

SoundSupply_Service Archive Book
SoundSupply_Service Archive Book

――プロダクトの扱いかたが「YEAR0001」や「PC Music」に似ているなと思ったのですが、そのあたりのレーベルは意識しているのでしょうか?
P 「特に意識したわけではなくて、アーカイヴされやすいようにという意味で数字をそういうふうに振っています。ただ、PC Musicはすごくファンです。Jongbinはそうでもなさそうですけど(笑)」
J 「そんなことないよ(笑)。でも、Paolaの言う通りですね。SoundSupply_Serviceは韓国の良質な電子音楽をアーカイヴしていく活動をしたいと思って始めたレーベルなんです」

SoundSupply_Service Official Site | https://www.soundsupplyservice.kr/

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2026年4月3日(金)
東京 渋谷 Spotify O-EAST 3F

23:30-
一般 前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
U23 前売 2,000円 / 当日 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)
Resident Advisor | ZAIKO

[出演]
deadfish eyes / DJ DJ機器 / FELINE / Mount XLR (Live Set) / 食品まつり a.k.a FOODMAN (Live Set)

企画: Balsin
協力: SoundSupply_Service