新鮮なものを作ること、自分たちにとって刺激的なことをやるのは大きな挑戦
そんな追い風の中、『The Girl Is Crying In Her Latte』(2023)以来約2年ぶりとなる26作目のオリジナル・フル・アルバム『MAD!』が、5月23日(金)に世界同時発売される運びとなった。公式チャンネルで公開された「Do Things My Own Way」「Drowned In A Sea Of Tears」のMVでは相変わらず遊び心溢れる映像で楽しませてくれるが、サウンドもまた「今のスパークスが一番かっこいい!」と言わせてしまう現役感が健在だ。6月に予定されている待望のジャパン・ツアーを首を長くして待っている人のために、最新インタビューをお届けしよう。
取材・文 | 小暮秀夫 | 2025年2月
通訳 | 内山もにか
資料提供・協力 | 阿部幸一郎
Photo ©Munachi Osegbu
※ 発売日前日の5月22日(木)に『MAD!』をいち早く体感できる爆音リスニング・パーティが東京・タワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYAにて開催されます。6月には同店の30周年記念を兼ねたサイン会も実施。詳しくは記事末をご覧ください。
――映画『スパークス・ブラザーズ』では、おふたりが規則正しい生活をしながらアルバム作りをしている姿が映し出されていました。今回もそのようにして作られたのでしょうか?
Russell 「そうだね。僕たちが新しいアルバムを作ろうと決めたとき、そういう風に構造化されるんだ。僕の家にスタジオがあって、ほとんど毎日Ronが来て、何時から何時までっていう感じで作業する。規律正しくしないと、何も起こらないからね。レコーディングや曲作りはとても楽しいから、そういうルーティンを持つことが僕たちにとって最も生産的な仕事方法だと感じているんだ」
Ron 「仕事みたいなものだけど、楽しい仕事だよ。何かを成し遂げるには、そういう風に取り組まないといけないんだ。そうでなければ、何もしないほうがずっと楽だよ」
――新作の『MAD!』もSPARKSならではのアイディアが曲ごとに散りばめられていますが、アルバムを作るときはコンセプトやキーワードが先に出てくるのですか?
Russell 「いや、キーワードとかコンセプトを最初に考えるのではなくて、音楽を作り始めて少しずつそのかたちが見えてくるっていう感じだね。アルバム作りっていうのは特定のフォーマットがあるわけではないから、終わりがわからないということでもある。ここで終わらせなくても、もう1曲良い曲ができるんじゃないかっていう段階もあったりするけど、ある時点でひとつのまとまりができて、ここで終わりにしようって決めるんだ。それで、それまでの規則正しいルーティンが終わる」
――規則正しいルーティンが終わったあとは、どういう生活が待っているのですか?
Ron 「ああ、それはそれはめちゃくちゃだよ(笑)」
Russell 「アルバムを作り終えたときって、なんだか寂しさというか、今までたくさんエネルギーを使って作ったものが終わってしまったっていう、ちょっとした虚無感が生まれる。神様、さて次はどうしようか?っていう。でも今回はツアーも始まるしね」
Ron 「今は幸運にも映画ミュージカルのプロジェクト(註: ジョン・ウー監督との映画プロジェクト!)に取り組んでいるんだ。だから長期間活動が止まるようなことはない」
――アルバムに先駆けて発表された「Do Things My Own Way」は、まさにSPARKSが今までやってきたことであり、マニフェストでもあると感じました。
Ron 「まさにその通り。この言葉っていうのは、ある意味僕らのマニフェストなんだ。僕たちは常に心の奥底で自分たちなりのやりかたで音楽をやろうとしてきた。そして幸運なことに、それを実践することで、少なくとも一定の層にはアピールすることができた。本当に幸運だったよ。僕たちにとって重要なのは、高いクオリティを維持して、自分たちがやっていることのエッジを失わないこと。活動歴が長いバンドはどんどん丸みが出てきて、自分の過去を振り返ったりすることが多くなりがちだ。でも、僕たちはそういう方向には行かないようにしているんだ」
Russell 「SPARKSのファンは、僕たちのこのマニフェストをすごく喜んでくれていると思う。自分たちのやりかたでやってほしいと思っているだろうし、僕たちも新しいアルバムに驚いてもらいたい。だからファンもそのマニフェストを高く評価してくれると思うね」
――SPARKSはスタイルを作っては壊し、常に新しいことにチャレンジしてきました。今回の『MAD!』ではどのようなことにチャレンジしようとしたのでしょうか?
Russell 「僕たちが26枚のアルバムをリリースしてきた中で、何か新鮮なものを作るというのは大きな挑戦だと思う。そして、僕たちにとって刺激的なことをやるというのも大きな挑戦だ」
――SPARKSのサウンドには曲毎に全く違うスタイルになるだけでなく、1曲の中でもスタイルが目まぐるしく変化していきますよね。パンク / ニューウェイヴが持っていた「過去を切り捨てていく」という方法に親しんできた自分には、過去の様々なものを未来のものとして再構築していくその音楽性が衝撃的でした。このような音楽性はどのようにして培われたのでしょうか?
Ron 「僕たちは本当にできる限り多くのことを吸収しようとしている。ふたりだけの世界に閉じこもっていると思われがちだけど、実際は常にいろいろなものを聴いているんだ。AMラジオを聴いて育った僕らは、それが音楽教育だった。だから技術的な面では、これまで耳にしてきた音楽的 / 音響的な要素をSPARKSのコンセプトに沿ったかたちで取り入れることで、音楽の魅力を広げていこうとしているんだ」
Russell 「ちなみに今まで吸収してきたものは、良い意味でどうしても歪んでしまうという傾向がある。ロサンゼルスにいた若いときの僕らはイギリスのカルチャーが大好きで、ブリティッシュ・インヴェイジョンを聴いて自分たちのサウンドはそういうものだと思っていたんだ。バンドを始めた頃は、THE WHOや初期のTHE KINKSのようなサウンドを作っていると思い込んでいたけど、結局は歪みが生じることによって全然違うものが生まれた。初期でさえ、僕らが目指していたものに忠実だったわけではないよ」
――そういう独自の歪みを作品としていく上で、初期は個性的なプロデューサーとの出会いも大きかったのではないかと推測しています。実際はどうだったのでしょうか?
Russell 「僕たちは本当に最高のプロデューサーたちから学んだと思っている。Todd Rundgrenは、私たちのやりかたを本当に理解してくれて、アルバム制作を許してくれた最初の人だった。それからMuff Winwoodとの『Kimono My House』『Propaganda』(1974)、そしてTony Viscontiとの共演。彼は素晴らしいプロデューサーであり、ミュージシャンであり、エンジニアでもあった。そしてGiorgio Moroderは、よりエレクトロニックなバックグラウンドを持っていた。彼らはみんな、それぞれ素晴らしいプロデューサーだった。でも、彼らのやっていることを吸収していくうちに、いつか自分たちのスタジオを持って、自分たちだけでやれるんじゃないかって思うようになったんだ。そして時間が経つにつれてテクノロジーが比較的安価になり、自分たちの手で最終的には本格的な商業スタジオに匹敵するサウンドを実現できるようになった。今では自分たちでセルフ・プロデュースできるという自信が付いたし、本当にやりたいことは自分たちだけで何でもできるようになったと実感しているよ」
Ron 「優れたプロデューサーの最も重要な役割のひとつは、一緒に仕事をしているアーティストに曲が良いか悪いかを伝えることなんだ。彼らの言うことをいつも気に入るとは限らないけど、過去の経験やその人の気持ちを汲んで、受け入れることもある。だから今は、自分たちが作っている曲が質の高いものかどうかについて、少なくとも客観的に見られるようになったと感じているよ。以前はすべてが自分のお気に入りだったのにね(笑)」
――個人的にはGiorgio Moroderと制作したアルバム『No. 1 In Heaven』(1979)が大好きなので、Giorgioのミュンヘン・ディスコ・サウンドとSPARKSがどのように融合していったのか、当時の話をお伺いしたいのですが。
Ron 「そうだな、あの頃はバンドとしてのアプローチはもう限界だと思っていて、別のやりかたを模索していたんだ。そんなときにラジオでDonna Summerの“I Feel Love”を聴いた。力強いヴォーカルと冷たいエレクトロニックなサウンドの組み合わせが僕たちの心を掴んだ。それで彼にアプローチして、そういう風にやってみないかって考えたんだ。ちょうど彼もバンドをプロデュースしたいと思っていたから、僕たちは幸運だったし、本当にエキサイティングな経験だった。純粋にエレクトロニクスで制作するという経験は初めてだったからね」
Russell 「Giorgio Moroderにとっても、僕たちのようなバンドをプロデュースするのは初めてだったから、3人ともどんな作品になるのか全くわからないままスタジオに入ったんだ。素晴らしいものが作れると思っていても、どんなサウンドになるのか全くわからないというのは、いつもワクワクするものだよ」
――あなたがたは日本の映画などの日本文化に造詣が深いことでも知られていますが、どのようなきっかけで興味を持つようになったのでしょうか?
Ron 「日本文化と言えるかどうかはわからないけど、幼い頃は怪獣映画を観て、すごく印象的だった。そして大学に進学すると、アメリカ映画だけではなく世界中の映画を幅広く観るようになった。どちらかというとアート・フィルムみたいなのをね。フランスのヌーヴェルヴァーグ、イタリア映画、そして小津安二郎とか黒澤 明など日本の監督もある意味では芸術的な要素が強かったと思う。それがすべての始まりだった。それに当時のロサンゼルスには日系のコミュニティがあったから、日本の映画ばかり上映するような映画館もあったんだよ。今はもう存在しないんだけど。そこでは、例えば『座頭市』や寅さん(『男はつらいよ』)だったり、そういう商業映画が上映されていた。芸術的だとは必ずしも言えないものの、僕たちにとっては本当に刺激的なものばかりだったね。そこから興味がずっと続いている感じだよ」
――今回の国内盤のCDにはボーナス・トラックとして小山田圭吾(Cornelius)による「Do Things My Own Way」のリミックス・トラックが追加収録されていますね。このリミックスが実現した経緯は?また、他に交流のある日本人アーティストはいますか?
Russell 「実は、エドガー・ライトを通してCorneliusと知り合ったんだ。エドガー・ライトは彼の友人なんだよ。それで、リミックスをやらないかと打診したんだ。交流があるのは、80年代に知り合ったSALON MUSIC。吉田 仁はプロデューサーとして活躍しているよね。彼らとは今も連絡を取り合っているよ」
――最後に個人的な質問なんですけど、僕はロンさんの口ひげに憧れていてチャレンジするのですが、いつもうまくいかなくて挫折して剃ってしまうんです。ロンさんみたいにかっこよく生やすコツを教えていただけないでしょうか?
Ron 「コツはあるんだけど、シークレットにしておくことにしよう(笑)。グッドラック(笑)!」
■ SPARKS
『MAD!』爆音リスニング・パーティ & タワーレコード渋谷店30周年記念サイン会
| 『MAD!』爆音リスニング・パーティ
2025年5月22日(木)
東京 渋谷 タワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYA
20:00-
入場無料
[先行販売特典]
サイン会参加券 / ポストカード (3種)
※ 下記、5/22(木)開店時からタワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYAで先行販売される対象商品を購入いただいたお客様に「特典引換券」を差し上げます。「特典引換券」は5/22(木)20:00から引換開始です。
※ 「特典引換券」から「先行販売特典」へ引き換えをさせていただきます。
※ お問い合わせ: タワーレコード渋谷店 03-3496-3661
| タワーレコード渋谷店30周年記念サイン会
2025年6月3日(火)
東京 渋谷 タワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYA
集合 19:45 / 開演 20:00
※ 150名限定 | ※ 要サイン会参加券
[出演]
SPARKS
[参加方法]
5/22(木)開店時からタワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYAで先行販売される対象商品をご購入されたお客様に、6/3(火)に開催されますサイン会の「サイン会参加券」と「特典引換券」をご購入枚数分をお渡し致します。
※ 「特典引換券」はイベント会場にて5/22(木)20:00から引換開始です。
※ 「サイン会参加券」は、イベント当日のみ使用可能です。
※ 「サイン会参加券」の数には限りがございますので、なくなり次第受付終了とさせていただきます。
※ サイン会は集合時刻を過ぎてお越しになった場合は最後尾からのご入場となる可能性がございますので、お時間厳守でお願いいたします。
※ コールや声を発する応援行為は禁止とさせていただきます。
※ 会場内での会話等はお控えいただきますようお願いいたします。
※ 「サイン会参加券」はいかなる場合も再発行は出来かねます。
※ 「サイン会参加券」をお持ちの方は、お1人様1回サイン会にご参加いただけます。お買い上げ商品等、サインをする物を必ずご持参ください。サイン時にスタッフが事前に確認させていただきます。お持ちの私物が不適切と判断した場合はお断りさせていただく場合がございます。
※ ご購入後のキャンセル・返金は一切お受けできませんのでご了承ください。また、商品ご購入後に発覚いたしました不良品は良品交換とさせていただきます。
※ 混雑が予想される場合、事前の告知なくご購入待機列の形成・ご購入整理券の発行をさせていただく場合がございますので予めご了承ください。
[対象商品]
| SPARKS『MAD!』(TRANS850CDJ)
| SPARKS『MAD!』解説 / 歌詞 / 対訳付 / 帯付 / カラー盤: ライト・ブルー / 特殊パッケージ(TRANS850XXJ)
| SPARKS『MAD!』Import CD(TRANS850CD)
| SPARKS『MAD!』Import Cassette Tape(TRANS850T)
| SPARKS『MAD!』Import LP(TRANS850X)
| SPARKS『MAD!』Import LP / Color: Light Blue(TRANS850XX)
[注意事項]
※ 本イベントはオープンスペースでの開催となります。他のお客様へご配慮いただき、スタッフの指示に従ってご移動・ご整列にご協力の程よろしくお願いいたします。
※ 手荷物や貴重品はお客様ご自身で管理してください。ベビーカー・キャリーケースなどの大きいお荷物もお預かりいたしかねます。当施設にはコインロッカーやクロークなどはございません。事前に近隣のコインロッカーなどに預けていただき、ご参加をお願いいたします。
※ 会場内への飲食物の持ち込みはご遠慮ください。
※ 会場内はカメラ、ビデオカメラ、カメラ付携帯電話等でのアーティスト及びイベント会場の撮影、録音録画のすべての行為は一切禁止とさせていただきます。
※ 会場周辺での徹夜などの近隣住民また他のお客様に怪我をさせてしまう可能性のある危険な行為は禁止させていただきます。
※ イベント当日は係員の指示に必ず従ってください。係員の指示に従っていただけない場合、イベントへのご参加をお断りすることが店舗のご迷惑となる行為は禁止させていただきます。
※ 他のお客様のご迷惑となる行為、また係員の指示に従わずに生じた事故に関しましては、弊店・主催者は一切責任を負いかねます。
※ 諸事情によりイベントの内容に変更が出る場合や、イベント自体が中止になる場合がございます。
※ お問い合わせ: タワーレコード渋谷店 03-3496-3661
■ 2025年5月23日(金)発売
SPARKS
『MAD!』
CD TRANS850CDJ 3,000円 + 税
Vinyl TRANS850XXJ 7,300円 + 税
[収録曲]
01. Do Things My Own Way
02. JanSport Backpack
03. Hit Me, Baby
04. Running Up A Tab At The Hotel For The Fab
05. My Devotion
06. Don't Dog It
07. In Daylight
08. I-405 Rules
09. A Long Red Light
10. Drowned In A Sea Of Tears
11. A Little Bit Of Light Banter
12. Lord Have Mercy
13. Do Things My Own Way (Cornelius Remix) *
* Bonus Track For Japan
| 2025年6月8日(日)
京都 東山 ロームシアター京都 サウスホール
開場 17:00 / 開演 18:00
指定席 9,800円(税込)
e+ | ローソン | ぴあ | 楽天
※ 未就学児(6歳未満)のご入場はお断りいたします。
企画・制作・招聘: クリエイティブマンプロダクション
※ お問い合わせ: キョードーインフォメーション 0570-200-888
| 2025年6月10日(火)
大阪 浪速 Zepp Namba (OSAKA)
開場 18:00 / 開演 19:00
指定席 9,800円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ | 楽天
※ 未就学児(6歳未満)のご入場はお断りいたします。
企画・制作・招聘: クリエイティブマンプロダクション
※ お問い合わせ: キョードーインフォメーション 0570-200-888
| 2025年6月12日(木)-13日(金)
東京 六本木 EX THEATER ROPPONGI
開場 18:00 / 開演 19:00
スタンディング 9,800円 / 指定席 12,000円(税込 / 別途ドリンク代)
e+ | ローソン | ぴあ | 楽天
※ 未就学児(6歳未満)のご入場はお断りいたします。
※ ハンディキャップエリアご利用希望の方はこちらより申請をお願いします(チケットご購入後、早めの申請にご協力をお願いします)。
企画・制作・招聘: クリエイティブマンプロダクション
※ お問い合わせ: クリエイティブマン 03-3499-6669 (月水金 12:00-16:00)