Interview | 鈴木裕之


全部ぶっ壊す魔法みたいな

 雑誌 / 書籍の挿画のみならず、DEATHRO、neco眠る、小沢健二、坂本美雨らや「DMB PRODUCTION」「CUP AND CONE」などとのコラボレーションでも知られ、昨年は「NEEDLEWORK EVERYDAY」とのコラボレート・ラグが好評を博したイラストレーター・鈴木裕之が、近年恒例イベントとなっている東京・三鷹のセルフ・プリンティング・スタジオ「CORNER PRINTING SELF 三鷹店」でのシルクスクリーン・ワークショップ + ポップアップを今年も「みたかわいわいプリント祭り 2024」のタイトルで3月8日(金)から10日(日)にかけて開催。ファミリー層からの支持も厚い同イベントや、児童書、女性誌でのイラストレーションに象徴される親しみやすいフィールドを手掛けつつ、出自であるレイト90s~00s大阪ならではのスカム / ハードコア・パンクのカルチャーに根差したアンダーグラウンドのスピリットも継承するレンジの広い活動スタイルは、どのように築かれてきたのか。本稿では、鈴木のバンド時代より親交が深く、アパレルやエキシビションなどでも度々協働しているKemmy 3000(DMB PRODUCTION | DREADEYE)がその秘密に迫ります。

取材 | Kemmy 3000 (DMB PRODUCTION | DREADEYE) | 2024年2月

序文 | 久保田千史


――最初に会ったのは、大阪のBRIDGE(大阪・新世界 | 2007年閉店)?鈴木さんのバンドがANGEL O.D.を呼んだときとかですかね?

 「もう10年以上前になっちゃうので、記憶が曖昧やねんけども、たしか元スーパーボールの人がやっていたバンドと自分のバンドの共同企画で、BRIDGEのときかな?手描きのステッカーもらった気がする(笑)。A.O.Dはそのとき出てなくて、BEARSでやったバンドの初自主企画のときにLOW VISIONと一緒に声かけさせてもらったはず。それかエジレコ(EGYPT RECORDS)のN村くん(中村流木 | HARD CORE DUDE, FOLKBUS CRAFT FACTORY, 宮武BONES)企画の“UWAN”のときかな?それにはA.O.Dも自分のバンドも出てました!あの頃、東京 / 大阪関係なく、みんなが一気に繋がっていく時代でしたね」

――あ!STRUGGLE FOR PRIDEが出たときかな。ツアーに一緒に行って、手書きのSFPブート・ステッカーを作って物販で売っていたとき(笑)。BRIDGEもすごいところで、最初から関わっているって言ってましたけど、何人かで作り上げた感じなんですか?何かおもしろいストーリーあったら教えてください。
 「そうそう、それですね!! BRIDGEはディストピア感漂うフェスティバルゲートという商業施設の中にあって、非常階段でおっさんとおばはんがFUCKしてたり、非常にカオスな空間でしたね(笑)。内橋和久さん(アルタードステイツ)が中心となって立ち上げられた場所なんですが、その昔、難波ROCKETS(2016年閉店)でイベントを友達何人かで企画していて、内橋さんに出演してもらった回があって、それからの繋がりで“今度新世界でライヴハウス作るから手伝いに来い”と声かけてもらい、壁を塗ったりドリルで壁に穴あけたりなんやかんややった思い出があります。柿落としの“Festival Beyond Innocence”というイベントでは、お弁当食べさせてもらって全日スタッフとして働きました。MASONNAとか観られて嬉しかった(笑)。あの場所、もともと食堂かなんかやったみたいです」

"○△□×" @大阪・新世界 BRIDGE, 05.22.2005
"○△□×" @大阪・新世界 BRIDGE, 05.22.2005

――鈴木さんのバンド・QUAINTYはどんなメンバーだったんですか?どんなスタイルのバンドを目指してた?
 「自称フリンジファストコア(笑)。当初は、GAIからTHE SWANKYSになるまでのノイジーやけどポップみたいなやつの速い版みたいなのをやりたかった気がします。その頃はRAPED TEENAGERSとかJESUS AND THE GOSPEL FUCKERSなんかを好んで聴いておりました。学生のときにダビングで回ってきた『精神解放ノ為ノ音楽』のCONCRETE OCTOPUSが衝撃で、ああいうのやりたいな、とずっと思ってました。QUAINTYのメンバーは今DJをやっているMIGHTY MARS、後期のthe futuresでベース弾いてたマッキー、今もCOMPLETED EXPOSITIONでドラム叩いてるシンちゃん(吉田晋也 aka 雀吉)という面子でした」

XENAPHONE
QUAINTY以前のバンド・XENAPHONEでのライヴ・パフォーマンス。

――ドリームチーム!その頃から、絵は描いていたんですか?いつから描き始めましたか?
 「絵は子供の頃からずっと描いているんですが、絵具を使ってちゃんと描く感じでなく落書きのまま、ずっと成長せず今に至っている感じです(笑)。その頃はイラストレーションというよりコラージュとかなんだかよくわからない絵を描いてました。作品というかフライヤーが中心でした。いろんなものに影響受けまくりでスタイルみたいなものは全然なかったです」

――最初の頃は点描で怖い絵を描いていた記憶があるんですが、その頃はどんな絵の影響を受けていましたか?yossieさんの影響は強いのかな?と思いましたけど。
 「yossieさんはずっと憧れなんですが、やっぱPushead、Raymond Pettibon、Gee Vaucherからはめちゃくちゃ影響を受けました!あと植草甚一からのマックス・エルンスト、大竹伸朗作品、山塚アイのイラストも衝撃でした。でも点描のルーツは水木しげるです。漫画の影響はデカいです。水木しげると杉浦 茂、2大しげるリスペクト!!」

鈴木裕之

――鈴木さんの絵には、昔からの日本のイラストレーションの匂いを感じます。伊勢丹のイベント(2017, 東京・新宿伊勢丹 TOKYO解放区「東京の母 ~Many thanks to you!~」)のときにもUKアナーコパンク・DIRTのTシャツを着ていてさすがと思ったんですが、パンク / ハードコアの影響は強いですか?アートワークだけでなく考えかたなんかからも影響を受けていますか?
 「日本のイラストレーション、特に真鍋 博、デザイナー?イラストレーター?期の横尾忠則、湯村輝彦の画集や本はずっと聖書みたいなもんです。それから蛭子能収は日本のPettibonだと思っています(笑)。DIRTとかは単純に女性ヴォーカルが好きというのもあるのですが(笑)、Crass Records周辺のバンドはめっちゃ好きですね。ZOUNDSとかFLUX OF PINK INDIANSとか特に。CRASSはアートワークも含めてですが、やっぱサウンドもキテレツな感じで最高ですね。大好きなMoondogとかWHITEHOUSEやSPKなんかにも通じるイルでシックな感じがしますね。知らんけど。パンク / ハードコアに関して、自分がそうかというと、全然不良でもなく、パンクでもハードコアでもないし、ただのオタクですが、ずっと憧れている感じですかね。パンクっていうか、はぐれ者とか浮かばれない奴がいきなり別ベクトルから意味不明のエネルギーで世の中にカウンター喰らわすみたいな、そういうのが好きですね。全部ぶっ壊す魔法みたいな(笑)」

――そこから絵のスタイルが今の毒カワイイ感じになったのは、何かきっかけがあったんですか?neco眠るのジャケットの印象が強いんですが。
 「点描とか怖い絵(笑)に関しては、自分が描かんくてもいいかなと……無理して怖い感じを描くより、昔からずっと描いている気の抜けた屁のような落書きみたいなのが合っている気がして、今に至る感じです。細かけりゃ良いみたいな世界になってくると、良いのか悪いのかわからんくなるし……でもスタイルはまたそんときおもしろいと思ったものにコロコロ変わっていくかもですね。常に絵をいい感じにしたいとは思っています。そんな中、neco眠るのアートワークで知ってもらったというのは大きいです。ターニングポイント的な」

鈴木裕之

――それから、様々な雑誌や本でもイラストを見かけるようになりました。そのほかにも、坂本美雨さんや小沢健二さんのグッズにイラストを提供するようになったり、女性誌で連載を持ったり、活躍の場所を広げていったように見えるんですが、きっかけとなることはありましたか?ほかにもこんな人と仕事をした、とかあれば教えてください!
 「会社を辞めて、イラストでやっていくと決めてからは流れのままにやってきている感じで、後から振り返るとすごくいろいろな仕事をしていてめちゃくちゃやなと……(笑)。節操ないというか。野良ストレーターです。きっかけはやっぱり、さっきも話題に出たneco眠るのイラストを担当してから全部始まったっていう感じです。最近、児童書とか学習ドリルとかの絵も描いてるんですが、子供がいるのでリアルタイムでおもしろいです」

――絵本とか塗り絵とか、うちもそろそろ見せてみようと思います(笑)。イベントなどでブースを出して似顔絵を描くのを始めたのはいつ頃からですか?
 「最初は個展とかを開催したときに手持ち無沙汰なんで似顔絵やり始めたんですが、最近ではいろいろなイベントにも声かけてもらっています。でも本来自分は真剣に似顔絵を描くような奴ではないので、何やってんやろ?って思うときがあります。あまり普通の似顔絵を求めてこないで欲しいです(笑)。自分が真顔でフェスとかで似顔絵描いてるんも、それ含めてスカム・アートみたいな(笑)。コンセプチュアル!!」

鈴木裕之

――CORNER PRINTINGでの似顔絵イベントは、もう何回目ですか?恒例行事になって、毎年楽しみにしてくれるお客さんも増えていると思います。最初は中野にあったギャラリーでの展示からでしたっけ? 最初、相談してくれましたよね(笑)。
 「2016年くらいにCORNER PRINTINGでクッションを作らせてもらったときに声をかけていただいて、当時は中野でなくて高円寺にあったkgっていうスペースでポップアップ & 展示みたいなの(2017, “INSANE動物園”)を開催してもらったんが最初なので、そう考えるともうかなり呼んでいただいてますね(笑)。感謝しかないです……。CORNER PRINTINGは、近しい匂いはするけど、どんなトコか、どんな人がやっているのか全くわからなかったので、Kemmyくん繋がってるかしら?と相談致しました。懐かしい(笑)。三鷹にCORNER PRINTING SELFができてから今の似顔絵 + シルクスクリーン・ワークショップ + ポップアップが定着しました」

――毎年とても楽しみにしています。一度家族の似顔絵も描いてもらいましたね。年を経る毎にイベントに来るお客様の層も変わってきたのかな?と思うんですが、実感ありますか?
 「客層はイベントによりますが、三鷹は毎年来てくれるファミリーなんかもいて、ありがたいですね。自然とファミリー層が多いような……子供の成長の記念にと言って毎年描かせていただいているファミリーもいます。もともと、今のテイストでやっていると尖った奴は来ないんですが(笑)、フォーマットを決めちゃうより、いろいろ趣旨を変えて似顔絵をやったりもしたいですね。最終的に、自分が爺ィになったら法外な値段で健康食とか布団のセミナーみたいに年寄り相手に全国回って似顔絵を描いているかもです(笑)。そのときはKemmyくんに運転手をお願いします(笑)」

鈴木裕之

――今回のイベントへの意気込み(笑)をお願いします!
 「自分も毎年楽しみにしてるんですが、その場で似顔絵とかイラストをアイテム化できるイベントはなかなかないと思うので、ぜひぜひ来てほしいですね。毎回素敵なイベント限定でグッズも作ってもらっているので、それもゲットしに来て下さいー!ALL AGEよろしくお願い致します!」

鈴木裕之 Instagram | https://www.instagram.com/suzuuqui/

みたかわいわいプリント祭り 2024CORNER PRINTING presents
みたかわいわいプリント祭り 2024

2024年3月8日(金)-10日(日)
東京 三鷹 CORNER PRINTING SELF 三鷹店

〒181-0012 東京都三鷹市上連雀4-1-3 グレイス三鷹 101
12:00-19:00
入場無料

ワークショップ料金
ボディ代 (Tシャツ700円-) + お好きなイラスト1プリント2,000円 (税込)
※ 似顔絵プリントの場合1プリント2,500円 (税込)

似顔絵屋料金
1人 2,000円 | 2人 3,000円 | ファミリー 4,000円 (税込)
※原画をお渡し致します。
※似顔絵をプリントする場合は似顔絵料金 + ボディ代 + イラスト1プリント2,500円となります。

大阪の老(ロウ)パンク似顔絵おじさんが帰ってくる!
大阪を拠点に活躍するイラストレーターの「鈴木 裕之」さんが、CORNER PRINTING SELF 三鷹店にてPOP UP イベントを開催します。

会期は3月8日(金)、9日(土)、3月10日(日)の3日間。

毎年恒例の似顔絵はもちろん、鈴木さん描き下ろしのイラストを使用した様々なグッズの販売、さらに、ここでしか手に入らないデザインを自分でプリントできる、シルクスクリーンワークショップも開催します。
描いてもらった似顔絵をその場でTシャツにプリントできるのも、CORNER PRINTING SELFでのイベントならでは。

さらに、今回は特別に鈴木さんデザインによる、NEEDLEWORK EVERYDAY制作のラグの特別受注販売もあり!
このイベントのための描き下ろしのオリジナルデザインになりますので、この機会にぜひご覧ください!

オリジナルグッズの制作はもちろんCORNER PRINTING謹製のものです。
いろんな種類のグッズが楽しめますので、お楽しみに!