Review | 『ODD CONNECTION』 | AVE

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04/01/2021
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　CORNER PRINTINGにカセットテープの部署があることは知っていたけど、まさかレーベルとして始動するとは思いもよらなかった。自分の好きなビートメイカーやラッパーなんかがちょくちょくODD TAPE DUPLICATIONでカセット作っているのを見て気になってはいたんだけど、これを知ったとき、ヘッズとしてはかなりアツい展開になってきたな、と勝手にぶちアガった。そもそもストリーミングやらなんやら便利になった現代で、カセットテープのレーベルを始動するっていうだけでも尖っていて、かなりかっこいい事実。

　日本、韓国、台湾、ベラルーシ、ロシア、カナダなど世界各国から選りすぐりのビートメイカー26名によるこのコンピレーションは、小さなテープの中に26のセンスと直感と誇りが詰まっていて、質量以上に重さを感じた。A面は特に1曲目から府に落ちたところがあったんだけど、暖かさというか、優しさというか、この音はカセットテープが一番合うんじゃないかということ。あと4曲目あたりで“南秋田カントリークラブ”ってネタで入ってて、咄嗟にmatatabiさんの顔が浮かんだ。ロンTでちょうどいいくらいの夜風の中を、銭湯の帰りに散歩しているイメージが浮かんで、優しいBPMのキックとハイハットが日頃の疲れた感情を包み込んでくれた。いつもみたいに部屋でフランジパニのお香を焚いて、緑色のソファにもたれて聴いていて、もうずっとこの音の中にいたいと本心で思った。

　まずメンツを見る限り、何も説明は要らないというか、個人的に聴いていた人たちが多くて、彼らのライヴの空気感がまるごと詰め込まれている感じ。ILL-SUGIさんやatiさん、matatabiさんは、何度かREPやソロで中野 heavysick ZEROでのライヴをご一緒したこともあって、そのときのことなどもいろいろ思い出して、初めて聴いたテープなのに懐かしい気持ちで聴き入ってしまった。他のメンバーの作品も前からずっと聴いてたから、ポカリスエットみたいにスーッと体に馴染んでいくのは早かった。

　B面はというと、これはやられたな、という感じで、A面とは大きく異なる様相を呈する。地下の宇宙で星が輝きまくっている感じ。ルールなんてない無重力空間で、それぞれの色の光を受け取っているうちに、完全に脳が覚めた。攻めに攻めでドープ。A面が“暖”ならB面は“破”っていう感じ。例えになっているかわからないけど。あとA面は関東でB面は関西なのかな？個人的にはKzyboostさんの「Ready 2 High」っていう曲がドストライク。トークボックスのイメージが強かったので、そのギャップもグサリときました。海外勢ではベラルーシ・Awlnightさんの「health drink」という曲がかなりグッときて、ワンループの美しさとグルーヴにやられます。

　ラップやビートって、作る人からしたら、その人の分身くらいのものだと思うんですけど、世界中から26人も集まって、それぞれ全く別のルーツを辿ってきた26個の人生の写し絵がひとつにまとまっているって、かなりすごいことだと感じます。スタイルウォーズとはまさにこのこと。それぞれがどんな機材で、どんな部屋で、どんな環境で作っているのかも知りたくなりました。まだまだ自分は勉強不足で、知らない世界があると思ったのと同時に、だからこそ、この出会いが楽しいって思います。

　間違いなく、カセットテープの良さを存分に味わえる作品だと思います。音好きの貴方は必ず聴いてください。

■ 2021年2月19日（金）発売
『ODD CONNECTION』
ODD-001 1,800円 + 税
https://oddtapduplication.bandcamp.com/album/odd-connection