柴崎祐二が単著『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』を刊行 装画は水沢そら


 A & Rとしての経歴を持ち、『ミュージック・ゴーズ・オン』(単著 | 2021, ミュージック・マガジン)、『シティポップとは何か』(編著 | 2022、河出書房新社)などの話題書で知られる音楽ディレクター / 評論家・柴崎祐二が、単著『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』(イースト・プレス | 2,600円 + 税)を上梓。8月16日(水)より販売が開始されています。

 同書で柴崎は、ポップ・ミュージックにおける再解釈 / 再定義の流動的 / 大局的な変遷を「ブルース」「フォークとカントリー」「ロックンロールとオールディーズ」「レアグルーヴとヒップホップ」「ソフトロックとラウンジミュージック」「和モノとシティポップ」「ニューエイジとアンビエント」「アフリカ音楽」のチャプターでヒストリカルに記述。これまでにない音楽史読本となっています。カヴァー・アートは赤川次郎、町田 康らの装画やスイーツ・ブランド「ネコシェフ」のヴィジュアルなども手掛けるイラストレーター・水沢そら。装丁は新井大輔が担当しています。

柴崎祐二『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』

柴崎祐二『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』■ 2023年8月16日(水)発売
柴崎祐二 著
『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす 「再文脈化」の音楽受容史』

イースト・プレス | 四六判 ソフトカバー | オールカラー | 416頁 | 2,600円 + 税
ISBN 9784781622286

https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781622286

フォーク、ロックンロール、レアグルーヴ、渋谷系、ニューエイジ、アフロビート、ドラムンベース、ポップパンク……
新しいムーブメントは過去の音楽のリバイバルとともに生まれる。
あらゆる時代の音楽にアクセス可能となったデジタルストリーミング時代におくる画期的なクロニクル。

[装画]
水沢そら

[装丁]
新井大輔

目次
| はじめに
| 第1章 ブルース: 「真正なる黒人音楽」を求めて

ロックの「源泉」としてのブルース | トラッドジャズリバイバル | トラッドジャズブームの社会的性質 | トラッドジャズから派生した「スキッフル」 | イギリスにブルースを広めたアレクシス・コーナー | ブルースの過去と現在をつないだジョン・メイオール | エリック・クラプトンの革新性 | 「ブルースロックギタリスト」という新しいヒーロー | 「本物」のブルースマンの来英 | 『キング・オブ・ザ・ブルース・シンガーズ』 | 若者を魅了する「ここではないどこか」の音楽 | 消費社会、個人主義社会とブルース | なぜクラプトンは差別発言をしたのか | イギリスのムーブメントに共振したアメリカのバント達 | ポール・バターフィールド・ブルース・バンドの衝撃 | 名ギタリストにして名プロデューサー、ジョニー・ウィンター | マニアなバンド、キャンド・ヒート | 拡散するブルースロック | 70年代、パブロックなどによって復活するブルース | ニューヒーローの登場とブルース名音源のCD化 | 「本物志向」と「公共性」によって受け継がれるブルース
| 第2章 フォークとカントリー: ルーツを呼び覚まし、コミュニティをつなぐ音楽
フォークリバイバルのはじまり | 「フォーク」という概念の成立 | フォークと左翼運動 | フォークをもりあげた政治の季節 | フォークリバイバル沸騰 | ボブ・ディランの登場 | 民衆的文化へのシンパシーと自らの出自の矛盾 | ボブ・ディランの「擬装」 | 「アコースティック」なものの称揚 | 白人エリート層によるブルースの発見 | 黒人文化の「純粋性」に託されたもの | 1965年、なぜボブ・ディランはブーイングをうけたのか | カントリーとロックの融合 | カントリーロックを最初に完成させたアルバム | 1968年のルーツミュージック回帰 | ルーツ回帰の心性をとく「自己の再帰性プロジェクト」 | 「よそ者」ゆえにもとめたルーツミュージック――ザ・バンド | 憧れの風景をかなでる――クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル | パンク由来の情動を吐き出すオルタナカントリー | 様々なルーツミュージックを包括する「アメリカーナ」 | 「アメリカンゴシック」を象徴するジョニー・キャッシュ | 異形の進化系、フリーフォーク | 「アシッドフォーク」の再評価 | ジョン・フェイヒーのアメリカンプリミティブギター | ルーツ志向の新世代ロック / フォークの充実 | コミュニティをつくる音楽
| 第3章 ロックンロールとオールディーズ: 繰り返される「若さ」のサウンド
「1962年の夏、あなたはどこにいましたか?」 | エルヴィス・プレスリーの復活 | ビートルズのロックンロール回帰 | ロックンロールリバイバルコンサートの隆盛 | 懐古主義的なセットリストを嫌ったリック・ネルソン | 異端のドゥーワッププロジェクト、ルーベン・アンド・ザ・ジェッツ | シャ・ナ・ナと「夢のフィフティーズ」 | 「古き良き1950年代」という発明 | イギリスのロックンロール受容 | シンプルなサウンドと鮮烈な衣装をまとうグラムロック | 「裏方」が仕掛けたグラムロック | 素朴なキャンプと意図的なキャンプ | ロックンロール回帰とパンクロックへの予感 | 『ナゲッツ』の衝撃 | 「泡沫」バンドの発見 | 『ペブルズ』と『バック・フロム・ザ・グレイヴ』 | パンクロックが内蔵する「過去」 | ロックンロールは再び呼び出される
| 第4章 レアグルーヴとヒップホップ: リスナーによる音楽革命
DJ文化と「過去の読み替え」 | 現代のクラブカルチャーの祖先としてのモッズ | 新しい音楽とファッションに沸くダンスフロア | くりかえすモッズムーヴメント | ノーザンソウルの熱狂 | より踊れる、よりレアな7インチレコードを | 「踊れるジャズ」の発見 | ジャズファンクからハードバップ、ファンキージャズへ | 「これはアシッドジャズだ!」 | クロスオーバーしていく、アシッドジャズ | 歴史主義的、教条主義的なジャズ観をくつがえす | 「忘れられたレコード」で踊る | 「ディグ」の深化 | レアグルーヴ的実践の拡散 | あらゆる音源のレアグルーヴ化 | ポップミュージック受容の転換点 | イギリスへの移民によるブラックミュージック再定義? | ヒップホップの誕生とブレイクビーツ | 作り手への冒涜? | 2次創作としてのブレイクビーツ | バンバータはなぜ、クラフトワークを引用したのか? | 「プラネット・ロック」とアフロフューチャリズム | サンプリングの浸透と音響の前景化 | 古くて新しい伝統「シグニファイング」 | DJカルチャーが映すもの
| 第5章 ソフトロックとラウンジミュージック: 渋谷系の時代と引用と編集の論理
1980年代から1990年代の日本の社会状況と音楽シーン | メインカルチャーへのアンチテーゼとしての「渋谷系」 | リスナー文化としての渋谷系と、「世界同時渋谷化」 | 「ソフトロック」の原義を探る | 日本におけるソフトロック受容 | 活況を呈すソフトロックのリイシューCD | ソフトロック受容の世代差 | 「アンチロック」としてのソフトロック | 渋谷系の美意識を先取りしていたソフトロック | 「フリーソウル」という発明 | エキゾチカ、ムードミュージックを取り入れるアーティスト | 海外からの吹きつけるラウンジの温風 | 宇宙時代の独身ふわふわ音楽? | モンドミュージック | HCFDMと傍流ジャンルのリバイバル | 都市のコミュニケーション | 「アンチ商業主義」へのカウンター? | 渋谷系文化に見る匿名性と差異志向の並立 | データベース消費としての2次創作? | 渋谷系の(非)社会性? | 渋谷系の先駆性と、社会への再対峙
| 第6章 和モノとシティポップ: 「踊れる歌謡曲」の発掘と新しいノスタルジア
「和モノ」というコンセプト | 大滝詠一の「ゴー!ゴー!ナイアガラ」 | 近田春夫の「オールナイトニッポン」 | 「タモリ倶楽部」における「廃盤アワー」 | 幻の名盤解放同盟 | 歌謡曲の再評価はなぜ起こったのか | グループサウンズの再発見 | ネオGSとガレージパンクリバイバル | 発掘される「カルトGS」 | 和モノDJの興隆 | ヒップホップの和モノサンプリング | 肉体的な「感情の歌」としての歌謡曲 | 和モノの歌い手 | 筒美京平再評価 | 和モノフリーソウルとしてのシティミュージック再評価 | はっぴいえんどをサンプリング | 70年代フォーク / フォークロックへのあこがれ | 喫茶ロックと和製ソフトロック | 各ジャンルを巻き込んで展開する和モノ再評価とアーカイブ化 | シティポップブームとは何なのか | シティポップが成立した背景 | シティポップのサウンドの特徴 | とらえにくいシティポップ | シティポップリバイバルの前史 | ヨットロックを「失われたクール」として再評価 | 先駆的DJ達のシティポップ解釈 | クラブミュージック経由のシティポップの実践 | ネオシティポップ | ヴェイパーウェイヴ――インターネットアンダーグラウンドとの結合 | SNS時代以降のコンバージェンスカルチャー | ノスタルジアは「逃避的」か | 二つのノスタルジア | 現代のリバイバル現象の根底にあるもの
| 第7章 ニューエイジとアンビエント: ウェルビーイングとストリーミング時代のリバイバル
ニューエイジミュージックとはなにか | 低く評価されてきた音楽 | ニューエイジ復権前史 | ジャーマンロック再評価 | コズミックリバイバル | 新たな「バレアリック」解釈 | ニューエイジとアンビエントとの違い | ヒプナゴジックポップ | ヒプナゴジックポップからヴェイパーウェイヴへ | レコードマニアとmp3ブログ | レコード再発の活況 | モダンニューエイジの勃興 | カリフォルニアという磁場 | 現代ニューエイジの多層的な発展 | 「アンビエントの民主化」としての現代ニューエイジブーム | もうひとつの「発見」、日本の環境音楽とニューエイジ | 環境音楽から「Kankyō Ongaku」へ | リイシューとYouTubeによって加速される環境音楽人気 | ニューエイジリバイバルの社会的背景 | 「カルチュラル・ラグ」が招来したニューエイジブーム? | マインドフルネスの流行 | ディープリスニングとマインドフルネス | 復権するサウンドスケープの思想 | プレイリスト文化の興隆とBGM消費 | ムードプレイリスト人気に潜む問題点 | ニューエイジと高度資本主義社会の親和性 | ニューエイジとカリフォルニアイデオロギー | ハッピークラシーとオリエンタリズム | ニューエイジ / アンビエントリバイバルのゆくえ
| 第8章 アフリカ音楽: 「過去」と「記憶」を蘇らせるグローカルな実践
グローバリゼーション時代のローカル=「グローカル」な音楽 | 「ワールドミュージック」とはなにか | アフリカ音楽に見るグローカル性 | アフリカンポップス「発見」前史 | アフリカ音楽への注目から始まった「ワールドミュージック」 | ロック / ポップスの中で再解釈されるアフリカ | 『グレイスランド』への評価と批判 | インディーロックに参照されるアフリカ | デーモン・アルバーンらのアフリカ音楽への接近 | エチオピア音楽の「発見」 | ヒップ化するエチオジャズ | アフロビートの復権 | アフロビートの脱神話化 | アメリカの現代ジャズシーンとアフロビート | イギリスにおけるアフリカ音楽文化 | アフロビーツとはなにか | 米英におけるアフロビーツ | 「ワールドミュージック2.0」とはなにか | 草の根的なグローカラリゼーションとしてのアフロビーツ | ディコロナイゼーション | 「プレワールドミュージック2.0」としてのリイシュー作品 | アフロビーツに見る文化的往還 | 相対化される「過去の復権」の形式 | 再び主題化するアイデンティティの探求 | 日本のグローカルミュージックを想像する
| 終章 拡散するリバイバル
リバイバルの現在形 | 「BLM」以降のブラックミュージック再発見 | 『ホワッツ・ゴーイン・オン』と映画『サマー・オブ・ソウル』 | 「#Me Too」以降のフェミニズムが光を当てる過去の音楽 | 不遇の先駆者ボビー・ジェントリー | 語り直されるフィメールパンクとフィメールラップ | 所与的アイデンティティから構築的アイデンティティへ | グラムロックの復権 | 多元的自己によって引用される過去 | ポップパンクのリバイバル | ドラムンベースのモダン化 | オンラインメディアによる情報の断片化と「過去」のタグ化 | 多元的アイデンティティの可能性 | 継続するアナログレコードブーム | カセットテープとCDの復権 | デジタルストリーミング全盛時代における「文脈」の上昇 | 過去が新しくなるとき
| おわりに
| 主要参考文献
| 人名索引

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柴崎祐二 Twitter | https://twitter.com/shibasakiyuji