僕たちが生きるシステムそのものが生み出す悪夢
取材・文 | SHV (KLONNS, 珠鬼 TAMAKI | NEW REALM FEST) | 2025年11月
――まずはDOLDREYがどのように結成されたのかについて。メンバーのうち数名は以前、ZODDでプレイしていたと思うけど、ZODDが解散してからDOLDREYが始まったの?
「うん。Dan(Danish Emran)、Aidil(Iskandar)、そして僕はZODDのメンバーだった。DOLDREYはZODDが停滞していたから始めたわけではなくて、2017年にZODDと並行してAidilと僕でスタートさせたんだ。MAMMOTH GRINDERみたいな、もっとメタル寄りのパンクをやりたいと思ったのがきっかけ。そこからRaf(Ralph Safari)とDanを誘って、バンドがかたちになったんだ。2018年にはデモをリリースしたんだけど、ZODDがLa Vida Es Un MusからデビューLP(『Operationally Ready Dead』)を出したのと同じ年なんだよね」
――メンバー全員が様々なバンドやプロジェクトに関わっているよね。メンバーそれぞれについて紹介してもらえるかな?
「僕たちはこれまで、ジャンルの異なる様々なバンドに参加してきたし、現在も新しいプロジェクトを進めているよ。過去のバンドを挙げると、UNSUB、STILETTO、HOLLOW THREAT、BLOOD PACT、URAL、ABOLITION A.Dなどがあるね。Aidilはヴォーカルを担当していて、最近はギターを弾く新しいハードコア・バンドFACE2FACEにも参加している。Rafはギターを担当していて、マレー語で歌うパワーポップ・バンドMARMALIAでも活動しているよ。Danはベースを弾いているんだけど、現在はDJとしても活動していて、アンダーグラウンドのエレクトロニック・ミュージック・イベントを主催するHYPERFOCUSというコレクティヴを主宰している。ドラム担当のFarhanはブラック / デスメタル要素を取り入れたパンク・バンドCRYPTID SPAWNのメンバーでもある。このバンドは来年、Iron Lung RecordsからデビューMLPをリリースする予定だね」
――それと、今回の来日ツアーから新メンバーが加入するって聞いたんだけど、そのかたについては?
「Fadzly は今回のツアーで参加するサポート・ギタリスト。彼はPLAGUE BEARER(最近新しいLPをリリースしたスラッシュメタル / ハードコア・バンド)でプレイしている。僕は以前、僕の昔のバンドABOLITION A.Dでも彼と一緒に活動していた。今年の台湾ツアーではRafiが参加できなかったから、Fadzlyにサポートとして入ってもらったんだ。だったら今回は日本でツイン・ギターでもいいじゃんっていう感じかな(笑)」
――DOLDREYの音楽からはクラストパンクとデスメタル、さらにHOAXなどに代表される2010年代のハードコアパンクなど、様々な要素や影響を感じる。自身の音楽を自身で定義するとしたらどう表現する?また、作曲はどうやってるの?
「僕たちは、デスメタルとハードコア・パンクを強く融合させたサウンドだと考えているんだ。大きな影響源としては、ENTOMBED、DISCHARGE、SLAYERなどが挙げられるかな。曲作りの前に“どんな方向性でいくか”をあらかじめ話し合って、RafやAidilが持ってきたリフを基に、最終的にはスタジオで全員で作り上げているよ」
――目下最新作の『Only Death Is Eternal』(2024, Iron Lung Records | Pulverised Records)は最初のEPと比較すると、よりメタリックな音像に仕上がっているって感じた。活動を続けていく中で作曲のメソッドに変化があったりした?
「その通りだと思うよ。前作『Celestial Deconstruction』(2022, Iron Lung Records | Pulverised Records)とはちょっと違うものに挑戦したかったんだ。もっとプログレッシヴな要素を入れたり、曲を長くしたり、新しい部分を引き出したかったんだよね」
――歌詞はどんなことをテーマに歌っているの?基本的にAidilが書いているのかな?
「DOLDREYの歌詞は、日常に潜む苦悩そのものを体現している。僕たちが生きる“このシステム”そのものが生み出す悪夢だよ。上層階級だけが利益を得るようにできた悪循環の中で、僕たちは奉仕するよう仕向けられている……そんな世界の姿を描いているんだ。このシステムは、これ以上ないほど病的だし、プロパガンダという衣をまとった“悪”そのものだよ」
――ところで、バンド名は『ベルセルク』(三浦建太郎 | 白泉社)から取ったの?
「うん、バンド名は『ベルセルク』から取っているよ。ずっとファンだったんだ。アートワークにしても音楽にしても、『ベルセルク』の持つ雰囲気に寄せたいと思っているし、大きな影響を受けているんだ」
――「Endless Torment」(『Celestial Deconstruction』収録曲)のMVもまさに『ベルセルク』とかクトゥルフ神話といったダーク・ファンタジーな内容で最高だったね。フルCGの作品だけど、誰が作ったの?
「MVのアニメーションはCAVE SEXの Wan Gに依頼したんだ。彼はこういったスタイルの映像を多く手掛けているから、完全に信頼して任せることができた。仕上がりは本当に最高!コンセプトも『ベルセルク』に寄せていて、キャラクターが迷宮のような場所を走り続け、その中で“終わりなき苦痛”を体験し続ける……そんなイメージかな」
――普段活動しているシンガポールのパンク・シーンについても知りたいな。
「シンガポールのパンク・シーンは、ハードコアやメタルと比べると規模は小さいんだ。Studio 416っていうスタジオがあって、パンクスはそこで練習や録音を行っているよ。SIAL、LIFELOCK、そしてDOLDREYもそこで録音したんだ。僕たちは他のシーンと繋がるため、ハードコアやメタルのイベントにも積極的に出演しているよ」
――Studio 416は僕もシンガポールに行ったときに訪れたけど、DIY感溢れる素敵な場所だと思った。あそこはパンクスたちが共同で運営している感じ?あと、YouTubeにアップされている416でのライヴ・セッション・シリーズ「Static City」が好きでよく観てた。実はDOLDREYやSIALを知ったきっかけはこのチャンネルだったんだよね。
「うん、416はパンク・バンドのコレクティヴなんだ。練習や録音をしているメンバーはおそらく30人ほどいると思う。以前はGLUE、HARAM、ENZYME、HONG!などのライヴも開催していたんだけど、ビルの警備から苦情が入ってライヴ運営はストップせざるを得なかったんだよね。でも、2026年にStatic Cityが復活するっていう噂を聞いているよ!」
――インドネシアや他の東南アジアの国でプレイする機会も多いと思うけど、どのようにして彼らと出会い、交流を深めていったの?
「DOLDREYの初ライヴは、2018年にMASAKREが東南アジアをツアーしたときだった。音楽性が近かったこともあって、友情が生まれたんだ。コロナでしばらくツアーはできなかったけど、連絡は取り続けていて、2022年にはMASAKREと一緒にインドネシア・ツアーを敢行したんだ。今の時代はSNSのおかげで、共通の興味があればすぐに繋がれるし、そこから関係が広がっていくと思っているよ」
――今回でバンドとして2回目の日本ツアーだけど、特にやりたいことはある?
「昔からの友達や新しい友達と会って、一緒に過ごしたいね。おいしいものを食べたり、景色の良い場所に行ったりしたいな」
――最後に、今後の活動の展望があれば教えて!
「来年、おそらく新しいレコードに向けて曲を書き始める予定。だからしばらくはツアーやライヴより、そっちに集中すると思うな。でも、2026年に何が起こるか楽しみにしているよ!」
■ DOLDREY Japan Tour 2025
| 2025年12月12日(金)
"NEW REALM FEST PRE-SHOW"
東京 新大久保 EARTHDOM
開場 19:00 / 開演 19:30
当日 3,000円(税込 / 別途ドリンク代)
U25 or with NEW REALM FEST ticket 1,500円(税込 / 別途ドリンク代)
[出演]
COFFINS / 童子 and the Exorcists / DOLDREY / ZENOCIDE
| 2025年12月13日(土)
"NEW REALM FEST 2025"
東京 渋谷 Spotify O-nest
開場 12:00 / 開演 12:30
前売 5,000円 / 当日 6,000円(税込 / 別途ドリンク代600円)
https://newrealmfest-jphc.stores.jp/items/68b111cb3fed3c53461a667f
[Live]
BIB / THE BREATH / Bruo / DESTINY BOND / DIKTATOR / DOLDREY / G*U*N*N / HONG! / House Of The Blood Choir / 鏡 KAGAMI / KLONNS / MASSPRESS / MurakuMo / MYSTIQUE / nervous light of sunday / SANOA / SEUDO YOUTH / SHUT YOUR MOUTH / THE SPIT / UNDERSCREEN / ZETTON
[Food]
豚富
[Flyer]
Kaya Nanba
| 2025年12月13日(日)
"NEW REALM FEST AFTER SHOW"
埼玉 戸田公園 CORNER BOOKS (CORNER PRINTING SELF 戸田公園店 2F)
開場 13:00 / 開演 13:30
当日 3,000円(税込 / 別途ドリンク代)
U25 or with NEW REALM FEST ticket 1,500円(税込 / 別途ドリンク代)
[出演]
DOLDREY / ENCROACHED / SOCIAL EXCLUSION / 珠鬼 TAMAKI / TERMINATION

