Interview | MUDHONEY | Mark Arm


それでも希望は抱いている

 MUDHONEYが、5年ぶりのニュー・アルバム『Plastic Eternity』を完成させた。ずっとマイペースに活動を続けてきた彼らだが、パンデミックの余波や、ベーシスト・Guy Maddisonの帰郷といった事情により、結成35年目にして11作目となる今作のレコーディングは、少しばかり慌ただしいものになったという。それでもベテランの余裕は、緊急事態のテンションを勢いに繋げつつ、雑な仕上がりになってしまうような失敗を犯してはいない。作曲クレジットにも名を連ねているJohnny Sangsterの好プロデュースも得て、コンガで盛り上げる先行シングル「Almost Everything」から、中期PINK FLOYD風のソフト・サイケな「One or Two」まで、楽曲のバラエティ感やアレンジの妙も含め会心の出来栄えだ。

 当世のあれやこれやに憤り、うんざりしながらも、とぼけた調子で「ファシストはトイレに流しちまえ」と叫び、家畜用イベルメクチンを飲んじゃった人を嘲笑う一方、Tom Hermanに対するリスペクトや、かわいいポメラニアンへの愛が素直に歌われたりもしていて、とにかく楽しい。シアトル・グランジの始祖とも呼べるバンドが、今もなおこうして元気な音楽を届けてくれたことに、心から感謝したい。


取材・文 | 鈴木喜之 | 2023年3月
通訳・翻訳 | 竹澤彩子
Photo ©Emily Rieman

――最新アルバムの完成、そして結成35周年おめでとうございます。前作『Digital Garbage』(2018, Sub Pop)から、またしても5年ぶりの新作となりました。20周年、25周年、30周年と、アニヴァーサリーにオリジナル・アルバムを出すのがすっかり定着しましたね。
 「ああ、どうにも世間は0だの5だの、区切りがいい数字が好きらしいね(苦笑)。それで10年毎、5年毎に、俺たちにもスポットライトが巡ってくるっていうわけ」

――今回の作品は、Guy Maddisonがオーストラリアに戻ることになり、急遽〆切に追われながらのレコーディングになったと聞いています。そのあたりの事情や制作背景について教えてもらえますか? GuyはMUDHONEYを脱退してしまうわけではないのですよね?
 「いやいや、まだバリバリ現役でバンドにいるよ。この後にはオーストラリア・ツアーも控えてるんだ」

――帰りに日本に立ち寄ることはできないんですか?
 「今回は残念ながら、時間も限られてるんで(笑)。ちょうど去年の10月にもヨーロッパに行ったんだけど、ツアーに入る前に5日間かけてリハーサルしたんだよ。それと同じ作戦をオーストラリアでもやることにしたんだ。そんな感じで、今後どういう体制でやっていくかについては、ボチボチうまい方法を見つけていくことになると思う」

――パンデミックの余波もあって、レコーディング前に十分なリハーサルのための時間を確保できず、しっかり仕上がった状態の曲がないままでのアルバム制作になったそうですね。そうした状況が、今作にどう反映したと思いますか?
 「コロナの頃は、とりあえず全員2回目のワクチンを打ち終わるまで会わないようにしてたんだ。というのも、Guyはパンデミックの最中、シアトルにあるHarborview Medical Centerっていうトラウマ治療の分野ではかなり権威のある病院で看護師として働いていて、もう20年近くの勤務歴になるから役職も高くなったのか、コロナ渦で患者をどの病棟に配置するとか、必要な防護服の確保とか、そのへんのコーディネイトも任されていたんだよ。実際のところ詳しい事情までは知らないんだけど、とりあえず他のメンバーはコロナが落ち着くまでGuyと会うのを恐れていて(笑)。まあ、幸いGuyも病院で働いていたうちは感染しなかったんだけど、その後ツアー先でメンバー全員コロナに感染するという見事なオチがついた(笑)。その時点までには全員ワクチンを打っていたこともあって、病院には行かずに回復する程度で済んだけどね」

――それは幸いでした。で、レコーディング・プロセスについてはどうでしたか?
 「とにかく駆け足でやったっていう感じ。Guyの引っ越しが2021年10月だったから、9月にレコーディングする目標でスケジュールを組んで。コロナ後に初めて全員で集まったのが2021年6月半ば頃、実質レコーディングまでに3ヵ月しか猶予がない状態で、なるべくたくさんリハの場を設けるようにはしたものの、とりあえずリハーサル・ルームで出来た音源は片っ端から次の本番録りに向けた段階に移行するスピード感で作業してた。実際、自分たちもどうやってその音を出したのかまるで把握しきれていないし、どうやって扱ったらいいものかもわからないままレコーディングに突入したっていう。だから今回のアルバム収録曲の大半は、スタジオに入ってからアレンジされてるんだ。以前までは、スタジオ代に無駄な金をかけたくないから(笑)、完璧にリハーサルして曲を仕上げてスタジオに入っていたんだけど、そうはできなかったから、このかたちで決行するしかなかった。正直、“なんだよ、もっとゆっくり楽しませてくれよ”っていう気持ちはあったな(笑)」

――1曲目「Souvenir of My Trip」から、シンセサイザーの音が効果的に使われています。本作では他にも随所でシンセが聞こえてきますが、時間的に制限があった中で、こうしたアレンジをどのように考え出し、加えていったのでしょう?
 「何年か前にツアーでノースキャロライナのアッシュヴィルに呼んでもらう機会があったんだけど、そこがMoogの本拠地で、工場見学をさせてもらう機会に恵まれてね。ついでにアーティスト価格でシンセサイザーを譲ってもらえることになったから、Guyが自分用だ、友達用だって爆買いしたんだ(笑)。Guyは、その友達とBEAUTY HUNTERSっていうシンセサイザー中心のプロジェクトまで始めたんだよ。シンセ2人と映像担当1人っていう構成で。そのプロジェクトを通じて、アナログ・シンセの扱いがめちゃくちゃうまくなったんだ。“おい、あれやってくれよ、できるだろ?”っていう感じで振ると、“ああ、あれね”っていう調子でかたちにしてくれるわけ。『Digital Garbage』の頃もやってたけど、今回はそれをさらに突き詰めてるし、出来も最高だと思う。もともとシンセの音は、通常の楽器としても、ノイズ的なおかしなサウンドを演出するための役割としても大好きだから。それこそPERE UBUやHAWKWINDがやってたみたいにね」

――「Move Under」は、突発的なジャムから作り上げられた曲だそうですね。
 「そうそう、だいたいメンバーが自分の家で仕上げてきたリフを基に全員で作業し始めるスタイルなんだけど、ときどきメンバーのうち誰か1人がその上にヘンなものを乗っけてくる。“おまえ、そうじゃなくてこうだろ?”とかマウントしてくるノリでは決してなくて、本当に何も考えずにチョロっと弾いたものに対し、他の奴が“今のそれ何だ?”ってザワザワし始める感じで、この曲もまさに、そういう流れの中から出来上がった曲なんだ」

――本作でもプロデューサーを担当したJohnny Sangsterとは長い付き合いになりますが、特に今回のレコーディングでは、どんな役目を果たしてくれましたか?
 「偉大なプロデューサー、エンジニアであり、昔から大好きだし、ウマが合うんだ。関わった音すべてに自分の手垢を残さないと気が済まないような面倒臭いタイプのプロデューサーじゃないしね。Dan Petersが、Johnnyのやっている数多くのバンドのうちのひとつTRIPWIRESでドラムを叩いてるという縁もある。何か新しいことを試そうっていうときに、“これ一体どうすんだ?”ってなってると、Johnnyが“こうしたらいいじゃん”ってアドヴァイスをくれて、ことごとく正解、どころか予想以上にバッチリ。追加パートにしろ、キー・チェンジにしろ、シンプルなのに“わー、なるほど納得!”っていう感じなんだ。今回Danが書いた何曲かのサビでは、かなりアドヴァイスしてくれたみたいだし、“Cry Me an Atomospheric River”のスローダウンするパートなんかも、Johnnyを交えた全員で考えついたアイディアでね。うちはクレジットを全員で4等分にするポリシーでやってきているんだけど、より正確な配分を反映するために、今回はJohnnyの名前も入れることにしたよ」

――前作では、アナログ録音にこだわって、コンピューター類は使用しなかったと言ってましたが、今回はどうでした?
 「たしかに前作はアナログにこだわって、Pro Toolsの類には一切頼らなかったから、Johnnyが編集の段階でアナログ・テープの現物を切り貼りするのを、全員でヒヤヒヤしながら見守ってるという、どんだけオールドスクールな作りかたをしてるんだよ?っていう感じだった(笑)。今回は、Guyのオーストラリア移住の件もあって、どれくらいの時間が必要なのかもわからなかったから、とりあえず最初の素材だけ2"のアナログ・テープに録音して、その後Pro Toolsを使って作業する流れになったんだ。そのほうが、仮に現場では時間がなくても後からちょいちょいいじれるし、そっちのやりかたが現代ではむしろ普通だよね(笑)。その2"のアナログ・テープもレンタル品を使ったから、今頃とっくに上書きされてるだろうね(笑)」

――さて、前作でも、メディアに踊らされる愚かな人々や、トランプ支持者や原理主義者など保守的な連中へ厳しい言葉を浴びせていましたけれども、相変わらず世界の不条理は続いていて、今作でも「Here Comes the Flood」や「Flush the Fascists」をはじめ、曲のネタには困らないという感じですね。
 「どれも、怒りというよりフラストレーションが原動力になってるんだけど、同時にそいつを笑い飛ばしてやろうっていうわけ。今作の曲で歌われている歌詞が日本語に翻訳されたとき、実際にどういう印象を持たれるかはわかんないけどさ。それでも希望は抱いてる。その希望は、自分が小さな声のひとつになることから生まれているんだ。小さな声がやがてひとつの大きな声になって世間の関心を引くようになり、そこから他者への思いやりが生まれて、お互いに、そして世界に対して、もうちょっと思いやりを持って接してやろうっていう気持ちに繋がっていく……それが俺にとっては希望なんだ……ハハハハハ。たぶん自分はシニカルであるのと同時に、楽観主義者でもあるんだと思う(笑)。シニシズムや単なる怒りに希望の芽を潰されてたまるかっての!ただ怒りにまかせて“ダメだ、こんなんじゃどうしようもない、どうせロクなことになんかならない”と思ったところで、自分自身の魂を痛めつけるだけだからね」

MUDHONEY | Photo ©Emily Rieman
L to R | Steve Turner, Guy Maddison, Mark Arm, Dan Peters | Photo ©Emily Rieman

――例えば、「Cry Me an Atmospheric River」は気候変動についての歌ですが、そういう問題を扱いながら、名曲「Cry Me a River」に引っ掛けたダジャレみたいにしているところが、MUDHONEYらしいと思いました。やはり、真剣なメッセージほどユーモアも伴っていた方がいい、という信念のようなものがあるのでしょうか?
 「まさに”Cry me a River”的だろ(笑)。そもそも天気の視点から語らせてるっていう時点で相当トチ狂ってるしな(笑)」

――一方、「Tom Herman's Hermits」は、PERE UBUのギタリストだったTom Hermanについて、リスペクトを込めて歌ってますが、これも60年代のブリティッシュ・バンドの名前“HERMAN'S HERMITS”とごっちゃにしたタイトルになっていますね。なぜ今この人物のことを歌にしようと思ったのでしょう?あなたがPERE UBU好きなのは知ってましたが、Tomのどういうところが特にすごいと感じていますか?
 「Tom Herman在籍時代の初期PERE UBUのギターが、とにかく好きだ。まさに唯一無二のオリジナルなスタイルで、めちゃくちゃクールだよ。 あの曲は、たしかGuyが持ってきた曲だと思うけど、レコーディングの最中に仮タイトルを付けるじゃない?それでなんとなくPERE UBUっぽかったから、仮タイトルを“Tom Herman's Hermits”にしたわけ。それから歌詞を書く段階になって、ふと思いたってTom HermanをGoogle検索したら、アメフト・コーチの名前がダーッと出てきて、なかなかギタリストのTom Hermanに辿り着かないんだよ。ちなみに、Tomの演奏は90年代にシアトルで一度だけ観たきりなんだ。アルバム『Ray Gun Suitcase』(1995)のときのツアーだったんだけど、その頃のギタリストだったJim Jonesが健康上の理由からツアーに参加できなくなって、それで最後の最後になってTomが駆り出されたんだって。だから、たぶん時間がなかったんだろうな、昔Tomが在籍していた頃の曲を中心にプレイしていて、『The Modern Dance』と『Dub Housing』と初期の名曲のヒットパレード状態で、まさに圧巻のステージだった。しかも、Tomが弾いていたのがFlying Vで、インパクトありすぎ。Michael SchenkerのUFOかよ?みたいな(笑)。しかもそれをスティール・ギター用のフィンガー・ピックで弾いてるんだから、謎すぎるだろ(笑)。まるでJohn FaheyがFlying Vを弾いてるような違和感満載だし、めちゃくちゃクールかつオリジナルで、今に至るまで忘れられないショウのひとつなんだ」

――「Severed Dreams in the Sleeper Cell」は、ずっと寝ていたい人の気持ちを歌っているようですが、こういう現実逃避的な人間に対し、皮肉っているのか、それとも同情的な視点で歌っているのか、どちらの気持ちが強いですか?
 「あの歌詞は何通りにも解釈できると思う。それこそリスナー次第。ただ、この曲に関してひとつだけ言えるとしたら、夢を見るのをやめてしまった人間について……それは夜寝るときに見る夢とも解釈できるし、未来に対して希望を抱くのをやめてしまったと解釈することもできる。そこは聴く人次第だけど、この曲では、ある人間が夢を取り戻そうと立ち上がっているとも考えられるだろ。あるいは、夢に向かうことによって現実と向き合うのを回避しようとしているのかもしれないけど……実際のところどうなのかは、俺にもわからない。あの曲が何を伝えようとしてるのかは、俺自身にとっても、君やリスナーと同じようにボンヤリとした印象でしかないんだ」

――以前も「Endless Yesterday」のような歌がありましたが、ご自身にも現実逃避的な面はあると思いますか?
 「そりゃまあ、テレビを観てるしね(笑)。映画も観れば、音楽も聴いてるし、そういうのすべて現実逃避だろ?日常生活の中のストレスとか、イライラさせるような要因を少しでも忘れさせてくれるための手段なんだから」

――「Almost Everything」の歌詞は、不思議な達観ぶりを感じさせるというか、アルバムの他の曲とは少し異質な感触があります。こういう歌詞は、どんな心情から生まれてきたのでしょうか?
 「あの曲はグッド・フィーリングで恐ろしくサイケデリックっていう(笑)、それ自体がメッセージだよ。実際、あの曲にメッセージなんてものがあるのかどうか」

――そして、アルバムのラストを飾る「Little Dogs」は、ポメラニアンのRussellに対する、素直な愛の心情を歌った曲になっていて、ほっこりさせてもらいました。
 「ふふふ(デレデレ顔でスマートフォンを取り出して犬の写真を見せる)」

――かわいいですね!よくロック・ソングに出てくる“犬”は、THE STOOGESとか典型ですが、いかがわしかったり、罵り言葉のニュアンスだったりすることも多いです。この曲では、そういった因習を逆手に取ってやろうとしたところもあるんでしょうか?
 「いやあ、あの曲は言葉遊びなんかじゃなくて、本気で犬と遊んでるだけ(笑)!」

――(笑)。前述したようなレコーディング状況から、歌詞についても、かなり急ぎで書かねばならなかったのでは?と想像するのですが、実際にはどうだったのでしょう。そのことが本作の歌詞全般に影響したと思いますか?
 「うん。ただまあ、最初のセッションの後に書き上げておいたものもあるし、だいぶ前に仕上がってた歌詞もあるからね。曲を録音して、その後に歌詞を付けたのは“Severed Dreams in the Sleeper Cell”、”Little Dogs”、“One or Two”とかがそうだけど、その他の歌詞については事前になんとなく用意してたよ」

――アルバム・タイトル『Plastic Eternity』は、12曲目「Plasticity」から取られたものですね。この曲は非常にシンプルな歌詞で、言葉遊び的な要素も強いですが、これを全体のタイトルに選んだ理由は?
 「『Digital Garbage』や『Vanishing Point』(2013, Sub Pop)あたりから、あるいは『Under a Billion Suns』(2006, Sub Pop)や『Since We've Become Translucent』(2002, Sub Pop)の頃から、クールなアートワークに結び付きやすいタイトルにしようっていうことを意識するようになったんだ。それで今回の『Plastic Eternity』も、その点で良いんじゃないかって、ずっと頭の中に保留してたんだよ。そしたらGuyも、このタイトルがいいな、と思っていたらしくて。それでSteve TurnerとDanに話してみたら、一言“お、いいじゃんか!”ってアッサリ決定したという(笑)」

――結果的に、アルバムを代表するメッセージ的な意味合いも読み取れる気がします。
 「まあ、一番あからさまな解釈で言うなら、俺たち人類はプラスチックの中に永遠に埋もれていく運命にあるっていうこと(笑)。プラスチックのほうは、勝手にどこかに消えてはくれないからね(笑)。すべてを覆い尽くして人類が滅びた後にも地球上に居座り続けるだろう(笑)。いやマジで、このままの状態でいったら未来はそうなる。俺たち人類が滅びた後で宇宙人が地球に降り立ったとき、プラスチックのゴミの山を見て、これだけたくさん溜め込んだっていうことは、よっぽど人類にとって貴重なものだったに違いない、って解釈するかもな(笑)」

――(笑)。さて、最初にも話していた通り、この後はオーストラリアでたくさんライヴをやることが決定していますね。これもGuyの帰郷に関連してのことだと思いますが。
 「ああ、今のところの予定としては4月と5月にオーストラリアを回って、10月と11月にアメリカをツアーする予定だよ」

――夏の間の予定はどうなっているのでしょう?単発でフェスとかに出たりする計画などは?
 「いいや、夏は妻とコスタリカ旅行に行くつもり。フェスって、どうも満足度が低いからさ」

――そうなんですね。
 「フェスまで追っかけてくれる超ハードコアなファンも集まるような、超マニアックなフェスとかなら違うのかもしれないけどさ。何千何万人単位の規模のやつになると、俺たちのステージは、ダンス・テントに向かう途中の導線と化すノリになってくるだろ(苦笑)。別に俺たちがやっているような音楽が好きで、その場に来ているわけじゃないからね。まあ、いろんな人々の前で演奏できる良い機会なのかもしれないけど。実際、以前フランスでやったときなんか、DJテントとDJテントの間の移動中に俺たちのステージ前を通り過ぎてく人の波ができたもんな(笑)。まあ、そもそもフェスっていうのは、そういう場だと思ってるけどね。最近のフェスは、イベントというか大勢で集まってパーティする場になっていて、もはやロック・フェスではなくなってるよね。いや、それはそういうものとして、あっていいんだよ。普通にライヴをやるより、フェスのほうがはるかにギャラの支払いもよかったりするし。とはいえ、楽しさや充実感で言ったら全然比べものにならない。俺は観客の熱気や汗を感じたいんだ。フェスのステージよりも、小さなハコをまわるほうが断然好みだよ」

――なるほど。では、最近のお気に入りのレコードを教えてください。若手のバンドで新しく好きになったバンドとかはいますか?
 「実は、この手の質問が来ると予想してリストを用意してた。毎回インタヴューが終わってから“あれ言うの忘れたー!”ってなるからさ。まず、ニューヨーク出身のSKULL PRACTITIONERSっていうバンド。最近In The Red Recordsから『Negative Stars』っていう新作を出したばかりなんだけど、これがマジで最高だ。あと、フランスのSLIFTっていうバンドもいいね」

――あ、知ってます。おもしろいですよね。
 「うん。SLIFTは、最新作が出たのが、たしか2020年か2021年だったんじゃないかな?あとフィラデルフィア出身で、キーボードとサックスの2ピース、WRITHING SQUARES。こいつらは、基本ドラム・マシーンなんだけど、新作では初めて生のドラムを使っていて、それがTHE STOOGES『Fun House』のB面ミーツKING CRIMSONっていう感じなんだ。アルバムのタイトルは『Chart For The Solution』(2021, Trouble In Mind)だよ。あと、シアトルにもめちゃくちゃいいバンドがいる!90年代からずっと活動してきて、最近ようやく1stアルバムまで漕ぎつけた奴らなんだ。残念なことに、こないだギタリストがスペインに移住しちゃったから、今後どうなるのかわからないんだけどね。ちなみにバンド名はTHE DROVEで、記念すべき1stアルバムのタイトルは『Every Day I'm Sinking』(2022)だ。これがマジでキテるガレージ・ロックで、フロントマンのカリスマぶりもすごいんだ」

――ありがとうございます、チェックします!ところで、今も大相撲は観てますか?
 「ケーブルTVを解約しちゃってからは、ずっと観られていないんだ。それでも、ちょいちょいNHKが電波に入ってくることがあって、チラ見はしてる。ただ、録画できないから、ここ何年かの取組結果は追えてない。そういえば、1月に友達が近所のバーで“SUMOナイト”っていうイベントをやってくれて、そこで初場所を見たよ。もう知らない力士ばっかりになっていて、自分の好きな関取はほとんどすでに引退しているみたいだったな。とはいえ、今でも観ると興奮するし盛り上がる」

――自分たちの国技についてこんなことを言うのも変かもしれませんが、あれって他の国の人が観てもおもしろいんでしょうか。
 「伝統としきたりが多いから、それがかえっていいんだ。繰り返しの動作が続き、トーナメント全体を通して観ていると、同じ光景が延々とリピートされ、ずっと眺めているうちにある種の瞑想状態に入っていく感覚になる。放送でも、編集で一部のプレイを早送りでスッ飛ばして視聴者の関心を惹きつけるなんていう演出が入り込む余地がないし、完全にその世界に入り込んで観るスポーツっていうのかな。なにしろ観ていて美しいスポーツだと思うよ」

MUDHONEY Official Site | https://mudhoney.org/

MUDHONEY 'Plastic Eternity'■ 2023年4月7日(金)発売
MUDHONEY
『Plastic Eternity』

国内盤 CD OTCD-6863 2,500円 + 税

[収録曲]
01. Souvenir of My Trip
02. Almost Everything
03. Cascades of Crap
04. Flush the Fascists
05. Move Under
06. Severed Dreams in the Sleeper Cell
07. Here Comes the Flood
08. Human Stock Capital
09. Tom Herman’s Hermits
10. One or Two
11. Cry Me an Atmospheric River
12. Plasticity
13. Little Dogs