Interview | DYGL


許せるものが増えた

 秋山信樹(g, vo)、嘉本康平(dr)、加地洋太朗 (b)、下中洋介(g)から成るDYGL。メンバーたちがまだ大学在学中だった2012年に結成。UKロックの空気感を放つ洗練されたインディ・ロック・サウンドでめきめきと頭角を現し、今ではアメリカやイギリスに長期滞在しながらレコーディングするという、日本のインディ・シーンではそれまであまりなかった世界を見据えた斬新な動きで、目を離すことができない存在に。待望の3rdアルバム『A Daze In A Haze』のリリースを控えた彼らに、パンデミック最中の制作や生活、変化について話を聞いた。

 ……個人的な話になりますが、私が台湾に1年間住んでいたときのルームメイトが、台北ベースのシューゲイズ・バンドMANIC SHEEPのベーシストだった張芳瑜(Joy Chang)でした。DYGLがツアーで台北にやってきた際に、もともとDYGLと日本で出会って友人だったJoyがメンバーたちを紹介してくれて、皆で知り合いのスタジオに遊びに行ったり、「Fucking Place」という店名のバーに行ったりと、楽しい時間を過ごしたのを覚えています。それから約4年が経ち、このインタビューの現場で久々にDYGLのみんなと集まることができました。そして気づけば、1万字に及ぶロング・インタビューに。DYGLの等身大の“今”を、ぜひ感じてほしいと思います。


取材・文・撮影 | 小嶋真理 Mari Kojima (gallomo co., ltd.) | 2021年6月

DYGL | Photo ©小嶋真理

――新作『A Daze In A Haze』聴かせていただきました。私の印象では4人がマチュアになった気がしました。成熟したというか。1stアルバム『Say Goodbye to Memory Den』と、2ndアルバム『Songs of Innocence & Experience』は初期衝動的なものを求めている気がしたのですが、今作ではメンバー各々の経験が増えて、それを存分に引き出したっていう感じがしました。あと、思ったのはUK寄りというより、USサウンドがふんだんに感じられたような……。
秋山 「わりと言われます!」

――PAVEMENTぽかったり、WEEZERっぽかったり。それにプレスリリースでは、Soccer MommyやClairoの影響があったと書いてあったので。さらにUSサウンドを感じられるようになった経緯的は?
秋山 「そもそもポストパンク・リヴァイヴァル的なサウンドは、個人的には音楽が好きになる出発点みたいなところがあって、実際その影響は1stの『Say Goodbye to Memory Den』も、2ndの『Songs of Innocence & Experience』には色濃く出ていましたね。アルバムを作っていく上で、シンプルにギター2本、ベース、ドラムっていう4人でバンドをやるんだったら、こういうかたちでやりたいっていう理想像が自分の中では特に強かった。でも、せっかく4人のミュージシャンとして集まってるんだし、ひとりの人間の青写真を描くだけじゃなく、もうちょっと違うアプローチをしようってなったのが、2ndの『Songs of Innocence & Experience』。それまでとは違うバランスで曲作りやアレンジを進めてみようと試行錯誤しながら、ジェットコースターに乗っているような気持ちで出来上がったんです。そこからさらに2年を経て、次どうする?っていう。今回のアルバム『A Daze In A Haze』は、いざ作り始めるまで何も決まっていなくて、再び手探りからのスタートでした。それで、しばらく続いていた自粛期間も少し落ち着いてきた夏頃、なんだかんだこれほど音のことで信頼しあえるメンバーは他にいないし、やりたいことがまだ見えていないとはいえせっかくだからもう一度音を作りながらコミュニケーションをとってみようと。それでもう一度もう一度アルバムを作ってみようって話になりました。今までは自分の中で最初に青写真を描いて、こういうアルバムを作りたいなっていうのがあったんだけど、1回そういう習慣を全部忘れて、出てきたアイディア・ベースで進めて、それを生かしながら他のメンバーから出てきたいいアイディアも組み合わせて、何が生まれるか見てみようと。そういう自由度の高さ、風通しの良さは今まで以上に意識してやったかな。だからその部分を最初に拾ってもらえるのは嬉しいです」

――各々のアイディアをサンプリングで組み合わせる感じでしょうか。今回は各々デモを録って進めたんでしょうか?いつもそういうプロセス?
秋山 「特にルールはなくて。作れる人が作ろうとは言いながら、これまでで一番、それぞれのアイディアがバランスよく入ってきたような気がします。曲とかフレーズとか」

――作ってきたのものの感じで、それぞれのメンバーを一言で表すと、どんな感じでした?
秋山 「大喜利みたいな?」

――そうそう(笑)。
秋山 「むずっ!一言かぁ~。実際それぞれに色があるんですよ、絶対に。それがおもしろさでもあるし、それぞれが持ってくるデモがあったからこそ生まれた曲があった。それぞれのことを考えるのはおもしろいけど一言は難しい!」

――ですよね(笑)。粘りますけど、例えば加地くんは?
秋山 「加地くんの曲は、一言で言うと、加地くんなんですよ」
一同 「(爆笑)」
嘉本 「いやーでも超わかる」
秋山 「すごいことですよね、それって。この人はこうっていうステレオタイプであまり括りたくないので、一言は難しいですね。人は変わることもあるし、それぞれにとって意外性のあるアイディアが生まれるのがおもしろいこともあるし、みんな多面的な要素を持ってる。だから一言にするともったいないですね。でも、加地くんは加地くんっていう(笑)」
加地 「俺以外に、なれないんだぁ」

――いいことですよね、とても。コロナ渦のレコーディングで、いつもと勝手が違って大変だったことってありますか?
秋山 「制作中にはそんなに感じなかったかもしれない」
加地 「実際集まって作業するっていうのも決められた人数だったし、そこを制限するっていうことは特になかったし」
秋山 「スタジオも普通にやっていて。もともとHMCっていうレコーディング・スタジオの池田(洋)さんっていうエンジニアのかたと共同制作みたいなかたちでご一緒したんですけど、ちょうどその建物が取り壊しになったりして、間接的にコロナの影響を受けたと感じることはありました。取り壊しの前後のタイミングでレコーディングだったんで、最初の何回かはそこでレコーディングできて、そのあとは新しいスタジオを探して作業しなきゃいけないっていう状況だったり」

――最初にごちゃっとしちゃったかもしれないけど、フィジカル的には問題なく制作できたんですね。メンタル的には、どうでした?精神的にコロナの影響を受けたりしましたか?
下中 「俺はそんなになかったですかね。もともと外に出て何かしたいっていうタイプじゃないから、人に会う回数が減っただけでそんなに生活は変わらなかった気がします。もしかしたら無意識に落ち込んだり塞ぎ込むとかあったかもしれないですけど。ただ制作のときに音源のやりとりをデータでやる機会が増えてくると、けっこう自分に集中できたりして、それはむしろ良いほうに作用したんじゃないかなっていうのはありましたね。自分の家にいる時間も確保できたし、より自分と向き合って制作に取り組めた感じはありました」

――ライヴもそんなにできなかったと思うんだけど、逆にこの状況だと何か新しいことができる可能性があるんじゃないかと思ったりしましたか?ライヴをしなくても、別の方法でアプローチできるとか。
秋山 「いろんな可能性については考えましたね。でもまずは、制作に集中したかった。そもそも音楽をやる上で、曲を書くのが一番ワクワクするんですよね。音楽にはプロモーションをしたり、音楽を演奏したり、いろいろな側面がありますが、音楽を作る興奮には何も変えられない。いい曲があるから演奏したりそれを広めたりっていうことになるわけだし、この時期物作りに集中できたのは自分的には悪いことではなかったと思います。ただもう少しできたな、という焦りのようなものもありますね。考え出すと悶々とするのはこの時期に限ったことじゃなかったかもしれないけど、ぼんやりと過ぎていく時間が怖くなることもある。だから目に見えるかたちで今回アルバムが作れたのは改めてよかったです。あとは今は海外に行けないってはっきり思えたことで、逆に焦りなく日本に滞在していられた。そのおかげで、日本や自分自身のルーツを見直すいい機会をもらえた気がします。日本にいてやりたいこと、自分のルーツを見直すこと。日本にいることで改めてやれることがあるだろうって前から薄々思っていたけど、海外でやるべきことが自分の中で勝っていたので、頭の片隅に置きっぱなしだった。日本と東京と沖縄、自分の中で重要なアイデンティティとなっている場所と自分の関係を見直したり、その土地への理解を深めることはずっとやりたかったので、そのために与えられた時間かなって思えた。会いたかったけどしばらく会えなかった人とも改めて会えたり、連絡を取れたりして。皆のやってることも改めて知れたし、日本で起きてること、東京、沖縄で起きてることも前よりも深く見られるようになったし。コロナで大変なことはたしかにたくさんあるんですけど、その上でできたこと、変われたこともいろいろあって、個人的なレベルではポジティヴな面はたしかにあると思ってますね」

――学びの時間があったんですね。日本について向き合うときに、日本の音楽シーンについても調べたりしました?
秋山 「はい、聴いたりしましたね。今日本でこのアーティストが人気があるとか、星野 源がなぜ売れたのか、という記事が目に入ってきたりとか。そういうのも興味が湧いてきて。日本だとどういう音楽が聴かれていて、どういう聴かれかたをしていて、メジャーではどういう動きがあって、インディではどうだとか、これまではそれほど気に留めていなかったことも、なんとなく関心を惹かれたりして」

DYGL | Photo ©小嶋真理

――そういうリサーチは、今回のアルバムに影響したりしました?
秋山 「実際、そうした日本のメジャーな音楽や広告っぽい文化からの影響はほとんどない気がします」

――ですよねー。なんかわかってて聞いちゃった(笑)。
秋山 「ジャブ打って、みたいな(笑)。もしかして、って(笑)」

――そう、でも響かなかったねぇ(笑)。さっきから私、コロナの質問ばかりなんですが、いろんな変化が起きたのはたしかだと思うんです。みなさんも、自分と向き合ったり、制作にさらに力を入れるとかあったと思うんだけど、新しいマインドセット的なものって生まれました?今まではこうだったけど、これからはこうしよう、みたいな。ちょっとしたリスタート・スイッチみたいなのってありました?
下中 「コロナの影響によって、意見がすごく割れるようになったじゃないですか。飲食店の人の考えかたとか、ライヴハウスの人の考えかたとか、政治家の言っていることとか、他の職業の人とか。それぞれ否定し合うとちょっと違うな、っていう。それぞれの考えかたがある。自分はもっと世の中に共通したモラルがあると思っていたんですよ。共通した常識みたいなのが。それが改めて、ほんとにないっていうか、ある程度はあるけど、こんなにもそれぞれ違う考えかたなんだなって思って、その中で自分の常識が壊れて。そうなったときに、やっぱ自分と向き合って、自分の立場において自分がどう思っているかをがんばって出さなきゃいけないんだなって。そういうことはよく考えるようにはなりました。自分がどう思っているか、あの人たちはこう思っている、でも、そこに正義を求めないというか。皆の意見が異なるところでどうやって共存していくとか、議論のしかたとか、すごく考えましたね」

――たしかに、極端な意見の違いや二極化が進みましたね。自らの意見と、他人の意見の半ばのグレーゾーンを見る、という必然性みたいなのも感じますよね。
下中 「そうですね、その間をどう埋めていくかっていうのがわかったら、すごく楽だな、っていう。でもそこが掴めないから、ずっと考えるんだなっていうのを、考えてました」
加地 「広告とかSNSってそういうのと相性いいのかなって思う。極端っていうか」
下中 「仲間を見つけやすいから」
秋山 「見る人は自分と同じ意見だけ集中して見えちゃう感じになる。偏ってしまって。余計に中間が存在しづらくなるっていうか。インパクトのあるものほど“いいね”が伸びるから、みんなインパクトのあるものをアップしようとして、バランスが崩れちゃうのかな。普通のことを言っても“いいね”がつかないから、過激なほうへ流れようとするのかもしれないね」

――怖いですよね。偏りが。こんな話の後で恐縮ですが、メンバー同士の関係性に興味があって。今までの作品を通して、お互いこう変わったなー、とか、このメンバーはこう変わった、みたいな変化ってあります?
秋山 「変化ですか(笑)。2012年から一緒だからもう少しで10年。変化はしただろうな~、みんな」
下中 「でも、お互いの変化ってずっと一緒にいるとわからないじゃないですか。だから、変わったように思う時もあるけど、そんなに変わってないのかな、とか」
秋山 「自分にもみんなに対しても思うけど、許せるものが増えたなって思う。それぞれが。みんな共通してそこに行き着くような気がする」
嘉本 「さっき下中が言ったみたいに、ほんとにわかんないのはあると思う。ずっといるから」

――技術的には進化は感じます?頭の中で思う通りに、音楽が奏でることができる、みたいな。
秋山 「なんか、悟ってますね(笑)。DYGLの中の、気持ちいい音みたいなのは、バンドを始めたばかりの頃にスタジオ入ったときの感じとかもよく覚えているけど、やっぱ今のほうがやりやすいっていうのはありますね。今のほうが、それぞれの音にすごいなと思うことも増えてるから、たぶん前よりも引き出しが増えたり演奏のクオリティも上がっているんだろうし、DYGLとしてのスタイルも以前より見つかってきてるんじゃないかな。みんな、どうですか」
加地 「うまくなったかっていう単純なところなら、どうなんだろう」
嘉本 「どうなんだろうね、人によるけど。多少は」
加地 「行き着きたいところまで達成するまでの時間は、早くなったんじゃないかなって思うときもあるかな。自分自身に対しては。狙った音に対して。みんながどう思っているかはわからないけど。その都度いろんなアプローチをするから、バンド全体で総合的に言うと時間がかかっている場面もあるかもしれないけど」
下中 「音作りは多様になった気がするね。昔よりも」

――各々、理想ってあったりします?理想像、Kurt Cobainみたいになりたい、とか。ベタな例えすぎましたね。けど、ちょっとアイドルへの質問っぽいことをしてみたくて(笑)。
秋山 「俺は高校の時はJulian Casablancasがヒーローだったけど、今は当時みたいな熱量で誰かに憧れることはあまりなくなったかも。Billie EillishとJustin Bieberは存在が好きですね。ただ表現者としてはあるときからボウイが無敵だなって思うようになって。音楽家としてはボウイより好きな人はいっぱいいるけど、ボウイみたいに自分の表現したいと思ったことを、いろんなかたちで出せるっていうのはやっぱりすごいなって」

――え、ちょっと待って。David Bowieか、日本のBOØWYか、どっち……?
下中 「布袋のほう(笑)」

――ええ!ほんと?Davidのほうでしょ?
秋山 「はい、そうです(笑)。でも大学時代、DYGLのスタジオでなぜか布袋の名前はよく出てたね(笑)。でも僕はあまり聴いたことがなくて、あとから『キル・ビル』の音楽の人だってわかった」

――確かに理想像って難しいですよね。そういう像を持たない人も多いですし。みなさんどうでしょうか。
加地 「好きなミュージシャンがいても、その人みたいになりたいっていう見かたをしたことがなくて。あくまで自分とは違う人間であるっていう風に思っちゃう」
下中 「漠然とした、これはかっこいいみたいのはあるんですけど、その人みたいになろうっていうのはなくて、なんとなく自分はこの人の立ち位置があってそうな気がするっていうのはある。インタビュー読んで、James Ihaが言っていたことはすごい共感できるな、とか。あとはPIXIES聴いてて、Joey Santiagoのプレイとか曲のレイヤーの作りかたとかに共感して、俺も似たようなことができるかもしれない、とか、今やってることと近いかもしれないと思ったりとか。SONIC YOUTHとか、PAVEMENTがちょっとチューニング変えて新しい感じでやろうとしてるところとか、すごくいいなって思ったり。自分が先にありきで気づく、みたいな。これがやりたかったんだ、っていうことはあります」
嘉本 「いや~、ない。昔はあったかもしれないけどなぁっていう。今なりたいって言ったら、サッカー選手みたいになりたい」
一同 「(爆笑)」
嘉本 「1日だけサッカー選手になったら、めちゃくちゃ気持ちいいと思います。そしたら、ずっと走り回ってると思う(笑)。で、夕方とかになったら寂しくなってくると思う。1日でサッカー選手生命終わるから」
秋山 「なんなのその設定。情緒よ(笑)」
嘉本 「1日だけだから」
秋山 「ちなみに、なれるとしたらどの選手?明日から」
嘉本 「明日もしなれるとしたら?メッシかな~」
一同 「(爆笑)」
嘉本 「やっぱ、世界一の体を手に入れる」
下中 「小回りきく」
秋山 「やばいな、こんな感じか~。みたいな。実際その次の日から、影響出そうだね。感覚を覚えてたら」
嘉本 「え?自分が?」
秋山 「そう、1日なれるじゃん、メッシに。その後記憶が残っていてOKな設定だったら、もう次の日体動かなくても、あんな感じだったな~、みたいな」
嘉本 「いや~、なるほどね。辛くなりそうじゃん(笑)。あんな自由にボール動かせたのに、って」
秋山 「ちょっと残酷だね(笑)。逆にそれですごい音楽頑張っちゃったりして。やっぱりこっちしかないって」

――その曲作ってくださいね。1日メッシだった曲(笑)。
秋山 「曲名“メッシ”で、エクスペリメンタルなやつ。ここめっちゃドリブルしてる~ってパートがあるっていう(笑)」
嘉本 「自分の肉体に戻る寂しいパートもある」

DYGL | Photo ©小嶋真理

――いい妄想だなぁ~(笑)。はい、次の質問です。制作のときに、アイディアが枯渇してしまったような、行き詰まった気持ちになることはありますか?そうなった時の対処法は?
秋山 「そうだなあ、アイディアが枯渇したようなことは今まで感じたことはないですけど、やりたい方向がわからなくなることはけっこうあって、そうなったときの解決法は難しいな。すぐ諦めますね。たぶんその日は。YouTube見よ、みたいな(笑)。 普通に」

――心機一転(笑)。次の日に持ち越し?
秋山 「そう。全然関係ないもの見て。それでその直後にやる気が出てきたらまたやったりするし、でもまじで無理ってなったら1週間くらい何もしなかったり」

――気持ちの入れ替えが上手ですね。制作してると沼にはまっちゃって抜け出せない人もいると思うから。
秋山 「あと、全然関係ない曲を書くとか。DYGLとは関係ないプロジェクトとか、なんもなかったら別の設定で曲を書いたりする。やんなきゃいけないってなった瞬間、無理になっちゃうから。性格的に。バイト続かないタイプだったんで。これやるの好きだけど、やらなきゃいけないってなった瞬間に無理だったりして。だから、やらなくてもいい状態まで放置してからやる、みたいな。今一番楽しいことをどんどんしていって、忘れた頃にまた戻ってきて、それでまたボルテージがきつくなる前にまた次の事をやるっていう。やりたいことをいっぱい増やしていって、常に何かをやりたい状態にしとくっていう」

――それはすごく良いアドヴァイスになりそう。
下中 「行き詰まった時用に、Brian Enoが作ったカード、ありますよね。タロットカードみたいなやつで。いろんなアイディアが書いてあって、1枚めくると、退屈なことをしろとか、今と全く真逆なことをしろとか、アイディアがなくなったときに引いてヒントをくれるカード」

――えー、知らなかった!欲しい!今からAmazonで買っていいですか。
嘉本 「けっこう高いよね、あのカード」

――ええ!高いの!持ってます?
下中 「持ってないけど、知り合いが持ってる」

――私も買います。『A Daze In A Haze』制作期間中に、観たり聴いたりして影響を受けたものってあります?
秋山 「けっこういろいろあると思う」
嘉本 「たくさんあるな。思い出せないかも。一番印象に残ってるのは……」
加地 「うーん、体調崩したなーっていう……。それしか思い出せない(笑)」
秋山 「あれだよ、恵比寿のバーでさ、みんなでFOUNTAINS OF WAYNE聴いたのがでかいんじゃないかな。あれはみんな、視界がパーンって開けたみたいな顔をしてた(笑)」

――酔っ払ってたんですか(笑)?
加地 「違います(笑)。最近、低音を出す音楽が多くて、いろんな所に行っても低音を感じるのがめちゃくちゃいいみたいな感じだったんですけど、知り合いが恵比寿にある音のいいバーに連れていってくれて。低音があまり出ない手作りのスピーカーがあって、低音で聴かせないタイプの音楽をかけてくれてたりして、それでFOUNTAINS OF WAYNEを聴いて。まぁちょっと、一昔前の音楽をちゃんと音楽的に聴けたっていうのがきっかけだったかもしれないですね」
秋山 「あの日はでかかった気がする」

DYGL | Photo ©小嶋真理

――いい日ですね。ところで、80年代、70年代の音楽は聴いたりします?
秋山 「全然年代関係なくいろんなものを聴いてると思います。もちろん全部ってわけじゃないけど、どの年代にも好きな音楽がありますね」

――90年代はもちろん、最近の音楽も聴いてますよね、Soccer Mommyとか、Clairoとか、Mura Masaとか。なんて言うのかな、こういうジャンルは。インディ……ベッドルーム……。
秋山 「もうベッドルーム出ちゃってますよね。スタジオで、もうベッドルームじゃないけどベッドルーム的な。最近だと“Dirty Hit”っぽいっていうニュアンスで捉えられるような感覚もあったり」

――すごいわかります。beabadoobeeとかも。あのですね、今、考えてたんですけど、台湾でみんなに会えてよかったな~っと思って。
一同 「(爆笑)」
秋山 「突然の振り返り。楽しかったですね~、まさかのこのかたちで再会」

――中正紀念堂に夜中にみんなで行ったのが楽しかったです。
秋山 「あれ、そんな名前でしたっけ!また台湾行きたい」

――今、台湾からライヴのお誘いとかないですか?このご時世ですし、難しいかな。
下中 「あったんですけどね。 普通にツアーするというのが」
加地 「オンラインのフェスとかもあったね」
秋山 「でも、2週間隔離がキツいなっていう。それにある時期から台湾でまたコロナが広まり始めたっていうのもあって、なんやかんやもうちょっと様子見なきゃなっていう話になって」

――そうですよね。いろいろな兼ね合いが。そういえばみなさん、一昨年は全世界53都市をツアーで周ったっていう。
下中 「1年間で70都市くらい回りました」

――クレイジーですね。どこが一番楽しかったです?今はまだ、旅ができる状態じゃあまりないから、良い旅ヴァイブスだけでもお届けしたくて。
下中 「一昨年のツアーは、どこ行ったんだっけ……(笑)。中国に行ったけど香港でのライヴがキャンセルになって……アメリカも行ったっけ?ドイツ行ったのは2019年だっけ?タイのフェスは楽しかった」
加地 「タイではフェスも出たね、3階に分かれたクラブみたいなとこの一角でライヴやって、それ以外は全部クラブ・ミュージック、みたいな」
下中 「あまり覚えてないなぁ、楽しかったから、覚えてない(笑)」

――楽しくて覚えてない(笑)。人とのふれあいや、出会いとかは?
下中 「あ、印象的だったことあります。ポートランドでライヴしたとき、会場がバーだったんですよ。ライヴの後にバー・カウンターに座ってた完全にアシッドをやってるおじさんに呼ばれて、“ライヴ良かったよ”みたいな。あぁ、ありがとうって言ったら、そのおじさんがいきなりアメスピの箱をちぎってそこに何か書いてるんですよ。そしたら、“お前、ロックンロールって何かわかるか?”って聞かれて、え?う~んみたいに濁してたら、“Rock n’ Roll is a State of Mind”って書いたアメスピの切れ端をポンって渡されて、それをいまだに僕は持ってる、っていう」

――すごくいい話(笑)!
下中 「この出来事がすっごい印象に残ってて。優しかったし、本場の人が“本場のこと”してて、それのひとかけらをもらった、みたいな感じで。熱かったです」

――そして、今もまだ持っている。
下中 「でもこないだカモちゃんに捨てられそうになったんです(笑)。エフェクター・ボードにずっと入れといたんだけど」

――海外ツアーの現場ならではのお話ですね(笑)。
秋山 「加地くん、ないの?どっかのバーでタバコの箱ちぎったのもらったとか(笑)」
加地 「いや~、ないなぁ。どっかにDYGLステッカー貼った覚えしかない」
秋山 「それ、4年前(笑)。記憶が遡りすぎて。今度は」
加地 「バンドとツアー周るのが好きで、4年前のツアーは、ミツメと中国をまわったんですけど、それがすごい楽しくて。で、2年前は、THE MYSTERY LIGHTSってバンドとヨーロッパをツアーで回って。いろんなところに一緒に行ってると、微妙に連帯感が出てきて、彼らが僕らより先に演奏してると、がんばれ!みたいな感じがだんだん強くなってくるんですよ。で、このアンセムまたやるんだ、みたいな。楽しかった場所っていうのは特にないんですけど、これは記憶に残ってるかな」

DYGL | Photo ©小嶋真理

――チームワークがどんどん育まれていく感じですかね。
加地 「そうですね。超仲良し!みたいな間柄じゃなかったんですけど」

――あいのり、みたいな。あいのりDYGLツアー……。
秋山 「あいのりではないですねぇ(笑)」
下中 「あ、ちょっとツアーのポスター見ていいですか」

――どうぞ。わぁ、まわった全都市がTシャツの背中に書いてあるんですね!MEGADETHのツアーTシャツみたいな(笑)。
秋山 「例えが(笑)」
嘉本 「でもほんと近いノリだったよね」

――日本の地方都市とか、例えば盛岡とか松江とか、ライヴしたことあります?47都道府県ツアー的な。
秋山 「いろいろな町に行かせてもらいましたね。盛岡もいきました。47都道府県ツアーやりたいですね」

――道の駅巡りとか兼ねてほしい。
加地 「やりましょう(笑)。でもほんとに、バンドでのツアーは楽しいです」

――そういえば、台湾のバンド、MANIC SHEEPとはどうやって出会ったの?
加地 「シューゲイズ・バンドNIIGHTSの来日イベント(* 1)で共演して。でも俺はまだメンバーじゃなくて、DYGLのビデオを撮りに行って、そのときにMANIC SHEEPも楽屋に一緒にいて、喋ったりしたりしてるところを撮ったんだけど、そこで仲良くなったんじゃないかな」
秋山 「あの日撮ってくれてたの、加地くんだったんだっけね。今話してて、伝説の曲思い出しちゃった」
* 1 2014年4月3日東京・新宿 MARZで開催された「NIGHTS JAPAN TOUR 2014」。出演はNIGHTS、MANIC SHEEP、 DYGL。

――伝説の曲?なんですか、その香ばしい話。
秋山 「伝説の、超初期曲。ほぼ同じ時期にできた“Let’s Get Into Your Car”っていう最初のEPの曲とかと録ったんですけど、その忘れられた伝説の曲が、今思い出されました(笑)。あともうひとつ“Waves”って曲があって、その2曲は今のところまだ闇に葬られたままっていう」

――なんで世に出さないんですか、それは?
秋山 「忘れてたんかなぁ」
下中 「アレンジもあまりまとまってなくて、ライヴでやるのは許せるけど、音源化することは許されないくらいのクオリティだったような」
秋山 「今聴くとめちゃいいんだけどね」
下中 「いいんだけどね」

――それはもう、フィジカル出すときにボーナス・トラックとして入れるとかしてほしいですね。
下中 「なんとかしたい気持ちはあるんですけどね」

――またいろいろと過去曲を掘り起こすのもいいですね。
秋山 「“Nashville”っていう2ndアルバムの曲は改めて掘り起こした感じで入れた曲でしたね。今録らないと機会を逃しそう、みたいな」

――なるほど。過去曲のディグはぜひ今後もやっていただきたいです!最後に、最近衝撃を受けた出来事って、あります(笑)?
秋山 「急に斜め上の(笑)」
下中 「絶対あるんだよなぁ、なんだっけ……」
秋山 「衝撃を受けたのは、冬場だったら30日くらい賞味期限が切れても、卵は食べられる」
一同 「(爆笑)」
※ ちゃんと調べてから実践を!

DYGL Official Site | http://dayglotheband.com/

DYGL『A Daze In A Haze』限定盤DYGL『A Daze In A Haze』通常盤■ 2021年7月7日(水)発売
DYGL
『A Daze In A Haze』

CD限定盤 5,000円 + 税
CD通常盤 2,500円 + 税


https://dygl.lnk.to/HalfofMeWE

[収録曲]
01. 7624
02. Banger
03. Half of Me
04. Did We Forget How to Dream in the Daytime?
05. Sink
06. Bushes
07. Wanderlust
08. The Rhythm of the World
09. Stereo Song
10. Alone in the Room
11. The Search
12. Ode to Insomnia

DYGL
A Daze In A Haze Tour

| 2021年10月1日(金)静岡 浜松 窓枠
| 2021年10月2日(土)京都 磔磔
| 2021年10月3日(日)兵庫 神戸 VARIT.
| 2021年10月5日(火)愛媛 松山 SALONKITTY
| 2021年10月6日(水)香川 高松 DIME
| 2021年10月7日(木)熊本 熊本 NAVARO
| 2021年10月9日(土)福岡 BEATSTATION
| 2021年10月10日(日)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
| 2021年10月11日(月)広島 CLUB QUATTRO
| 2021年10月17日(日)長野 松本 ALECX
| 2021年10月19日(火)石川 金沢 GOLD CREEK
| 2021年10月20日(水)新潟 GOLDEN PIGS -RED STAGE
| 2021年10月22日(金)福島 郡山 HIPSHOT
| 2021年10月23日(土)岩手 盛岡 the five morioka
| 2021年10月25日(月)宮城 仙台 Rensa
| 2021年10月30日(土)北海道 札幌 SPiCE
| 2021年11月2日(火)大阪 BIGCAT
| 2021年11月4日(木)愛知 名古屋 CLUB QUATTRO
| 2021年11月5日(金)東京 新木場 USEN STUDIO COAST

[チケット]
一般発売 2021年7月31日(土)-