Interview | EASTERN.P + SPRA


『Where to go』発売記念対談

フッド・ミュージックとは何か。

フッドとはあなたも知っての通り、近所や地元を意味するスラング。つまりは“ここ”や“そこ”のことだ。

ここで暮らし、日々感じたことをリリックにする。
ここに作ったスタジオで、レックブースに立ち、スピットする。ミックスもここ。マスタリングだってここだ。

ここにはステージもあるし、ライブもできる。そして勿論、望めばあなたの住む街へだって行くことができる。なぜなら私にとってのこことは、あなたにとってのそこと同じものだから。

行くべき場所とはどこか。向かうべきところとは何か。

ここであって、ここでない場所。ここでもあり、そこでもあるところ。

音楽は移動する。人のように。車のように。
“ここ”から“そこ”へ。フッドからフッド。グッドニアーからグットニアーへ。

この街で作られた音楽が、あなたの街でも鳴っているだなんて、なんだか素敵なことじゃあないか。

取材・文 | AIWABEATZ | 2024年7月
撮影 | DJ SUERTE

Artwork ©D.D.D.
Artwork ©D.D.D.

――ニュー・アルバム『Where to go』リリースおめでとうございます。まずは簡単な自己紹介からお願いします。
E 「EASTERN.Pです。この度GOOD NEAR RECORDSからアルバムをリリースすることになりました。茨城県南を拠点に都内各地でもライヴ活動しているラッパーです。1983 IP。
いろんなジャンルの音楽を聴いて自分のスタイルに取り込んでます。いろんな街に行くのも好き」

――まとまった作品としては、2015年の1stアルバム『Maverick』、2019年のEP『Secret Maneuver』に続いて3作目になるよね。これまではIPからのセルフ・リリースだったと思うんだけど、今回GOOD NEARからリリースすることになった経緯を教えてください。
E 「SPRAの『Entrance F.R.E.E』に参加したことかな。“Cruising”の制作が大きいと思います。その時期の前後くらいからOctBaSSでのライヴもけっこうやらせてもらっていて。AIWABEATZの『Like No Other』にも参加した後だったから、自分の作品も出したいな、って思っていたらSPRAが誘ってくれましたね」

――「Cruising」ができたのは大きかったよね。シュンくん(SPRA)の2ndアルバム『Entrance F.R.E.E』収録曲なんだけど、ラップはエポンがしていて。これまで作ってきた楽曲とは曲調がちょっと違うし、BPMもこれまでのに比べるとぐんと遅いんだけど、すごくハマったよね。エポンも手応えを感じた?
E 「感じましたね。トラックをもらってから少し時間がかかったんですが、ある日スルッとリリックができました。それまで作ってきた曲とは毛色が違って、歌いかたも少し変わったかなって思います。気に入って聴いてくれている人もいるので、とても嬉しい」

――いろいろなDJが現場でかけてくれているよね。名古屋に遊びに行ったときに、ふらっと立ち寄ったパーティでもかかっていて感激しました。あの曲は今回新しいアルバムを作る上でもひとつの基準になったんじゃない?
E 「まじで嬉しいです!DJにかけてもらえるのはラッパー冥利につきます。ALJくんが名古屋でかけてくれている動画が岩さん(AIWABEATZ)から送られてきたよね。“Cruising”は周りの評価が変わるきっかけになったし、アルバムの指標にもなりました」

――「歌いかたも少し変わったかな」とのことだけど、具体的にどう変わったの?
E 「前はけっこう言葉を詰め込んでいたけど、トラックに乗るのを意識したのと、少し歌うようにフロウするのを意識しました」

――なるほどね。これまでも街や仲間、そして自身の内面等を題材にラップしてきたと思うんだけど、「Cruising」以降その描写がより鮮明になった気がして。つくばや荒川沖での生活がよりダイレクトに伝わってくるようになったと自分は思っています。この変化ってエポン自身も感じている?
E 「“Cruising”以降ライヴに呼ばれることが増えて、今まで行ったことのなかった場所に行くことによって自分の生活してる場所への新たな気付きが増えたのかも。前から俯瞰で見ているところがあったけど、またちょっと見かたや目の付けどころが変わったというか。それと各地の現場でヤバいDJやライヴを観てきているから影響も受けているし、ライヴとその分の練習もしてきたから技術的にも進歩してるんじゃないかな」

――ライヴの経験値が増えて、そこからのフィードバックが大きかったっていうことだね。実際今回のアルバム収録曲はライヴで何度も歌ってからレコーディングしたものや、レコーディングし直したものが多いよね。また、昔からの曲でも、トラックをその都度変えて今でもセットリストに入れているものもあるよね。ライヴを大事にしている姿勢が伺えます。
E 「ライヴを大事にしているって言われたの初めてかも(笑)。でも実際楽しいし、盛り上げるためにいろいろ試行錯誤しています」

Artwork ©D.D.D.
Artwork ©D.D.D.

――それと、シュンくんのビートからインスパイアされる部分も大きいのかなと思います。今回も全体のプロデュースはもちろん、収録トラックの半分以上がSPRAによるものだよね。エポンから見て2人の相性はどう?
E 「SPRAのビートとの相性は良いですね。現場やスタジオワークを含め、今回のアルバムを制作するにあたってかなり彼と向き合いました」

――録音もGOOD NEAR / OctBaSSのスタジオだもんね。制作中、シュンくんから言われたことで印象に残ってるものってある?
E 「アルバムの録音はFREEHAND STUDIO(of GOOD NEAR RECORDS )で行いました。レコーディング中、良いテイクが録れたら褒めてくれたり、逆にそうじゃないときはこうすればもっと良くなるとアドヴァイスをくれたり、納得いくまで付き合ってくれました。お互いシビアに向き合って曲を作ったので、スタジオに1回入ると1曲仕上がるペースでしたね。だから制作中は印象的な会話っていうより、曲を仕上げるためのやりとりのほうが多かったかも」

――なるほど。そうやって1曲ずつ仕上げていく中で、特に気を遣ったポイントってある?
E 「現状できる全てを詰め込もうと思っていました。トラック、人選も厳選したし、ラップ・スキルやリリックも自分の限界まで向き合ってみて。ヒップホップとしてもダンス・ミュージックとしても成立するようなフッド・ミュージックをお互い作りたかったんじゃないかな」

――フッド・ミュージックとしての側面はこれまで以上に感じられるし、「ダンスミュージックとしても成立する」というのは新しい視点だよね。いわゆるヒップホップのパーティ以外の現場でもライヴしたり、遊びに行ったりしているのがよくわかります。さて、ここからは今作のプロデューサーであるSPRAことシュンくんも交えて話を聞いていきたいと思います。シュンくんは自身の3rdアルバム『オン・ザ・ドーロ』と並行しての制作になったと思うんだけど、作ってみて共通点とか、逆にここは違ったなと感じたところとかはありますか?
S 「『オン・ザ・ドーロ』の制作中にできたビートの中から、自分にしてはテイスト的にカッコ良すぎるものや、ヒップホップっぽい物をほとんどエポンさんに振ったような感じです。また、『オン・ザ・ドーロ』に関しては、ベストに楽しむシチュエーションとして、車とか生活の端々でのリスニング環境を意識して作りましたが、『Where to go』はエポンさんと回ったクラブやダンス・フロアでの現場体験を意識しました。だからよりクラブ・サウンドっぽい作りになったと感じています。ミックスに関してはヴォーカルとオケのバランス感とか。音作りはバキバキのダンス・チューンというより、ウチら地方のゆるさみたいなテイストは忘れずに」

――エポンからも「ヒップホップとしてもダンスミュージックとしても成立するようなフッドミュージックをお互い作りたかった」という話があったので、シュンくんの話を聞くとその視点がより明確になります。2人の現場体験が反映されているのも納得です。『オン・ザ・ドーロ』制作中にできたビートでエポンに合うものを今回のアルバムに振ったということだけど、シュンくんから見てエポンのラップの魅力ってどういうところでしょう?
S 「そうですね、フロウはテク具合のちょうど良さと、メロも掴める感じが耳触り良くて、何を言っているか聞き取りやすいし、口ずさみやすいですよね。それとリリックにも共感できる点が多いし、表現の仕方も好きです。あとは、いろいろな音楽を聴いている人なので、ラップのアプローチが良い意味でオルタナティヴというか、変化球を込めて返してくれるんで、そこもビートメイカーとしてはおもしろく感じます。だから、こっちがさらに変化球を込めて返しても受け取ってくれて、一緒に音楽を作りやすいですね」

EASTERN.P

――それは良い関係性だね。こう来たからこう返すっていうやり取りがアルバムを聴いていると伝わってきます。また、オルタナティヴな立ち位置というのは2人に共通してある感覚に思えます。逆にエポンから見てビートメイカー・SPRAの魅力ってなんでしょう?
E 「フロアでの鳴りの良さかな。あとオルタナティヴなんだけど、トラップじゃないサウスっぽさを感じるところが今の自分的にしっくりきます。もう自分のサウンドを確立してきている気がします」

――鳴りの良さは、OctBaSSを運営しながら、作品のレコーディングやミキシング、さらにはマスタリングまでもこなすシュンくんならではの強みだよね。音響を日々研究している人の鳴りだと自分も感じています。
S 「音質についてお褒めいただきありがとうございます!ミキシングや音響処理に関してそんなに難しいことをできるタイプじゃないんですが、昨今のヒップホップのバランス感や質感とは違うイメージで表現しました。少しゆとりある鳴りがするんじゃないかな。まだまだ音響は奥が深いんで、精進します」

――今作はシュンくんが全体のプロデュースをしつつトラックの大半も担当していますが、何曲かは自分を含めたSPRA以外のビートメイカーも参加しています。昨今流行りの1人のラッパーと1人のビートメイカーによるタッグ作品の形態を採る選択肢もあったと思うんだけど、このかたちになったのはどうしてでしょう?
E 「いろんなサウンドを詰めた作品にしたかったので、好きなビートを集めてみた結果こうなりました。人選として間違いないと思ってますし、今後が楽しみな人たちでもあります」
S 「ラップ作品をビートメイカーとタッグで作るような制作は、僕は基本的に世界観がまとまるという点で肯定的ではありますが、もっと違う視点から作品を作ることにトライしたいと思いました。一時期のSnoop DoggにとってのDr. Dreみたいな関係と言うんですかね。アルバムのクレジットで言うエグゼクティヴ・プロデューサー?ちょっとあんな感じに憧れて(笑)。だから、今作の人選や方向性に関してはエポンさんの作品なので、本人の人脈と感性を重視しつつ、僕は少し主張激しめな裏方というか、全体的なまとめ役みたいなポジションで参加することにしました。楽しかったです」

――SnoopとDreの関係、理想的だよね。エポンのこれまでの軌跡や現在の活動を象徴するようなメンバーで、自分も参加できて嬉しいし、タータン(S3XY SAD I | preparationset)が参加しているのもグッときます。アルバム収録曲についてひとつずつ聞いていきたいんですが、その前にビートメイカーとして参加したTATA the MONDAYさんについて教えてください。エポンとシュンくんがツアー中に出会ったかただそうで。
S 「TATA the MONDAYは鹿児島のラッパー・泰尊の紹介で出会った若いビートメイカーです。彼の家族共々仲良くしてもらってます。最小限の機材であそこまで世界を広げられる天才ですね。日々進化を遂げていて、会って音楽を聞かせてもらう度にぶっ飛ばされます」

――泰尊くんからの紹介だったんですね。往年のエレクトロニカ / IDM的な要素も持ちつつ、今っぽい瑞々しさも感じられてどんなかたなんだろう?と思っていました。彼が参加することでより広がりが生まれている気がします。さて、ここからはアルバムの曲順に沿って1曲1曲聞いていきたいんですが、まずは1曲目の「Where to go」から。ビートは自分が担当しました。ヴォーカルのミキシングが独特ですよね。
E 「この曲のリリックは、BUSHMINDさんとSPRAに初めて神戸へ連れていってもらったときにめちゃめちゃ刺激を受けて、帰ってきてすぐ数時間で書き上げました。録音したときもSPRAとまあまあ飲み散らかして遊んだ後に、一応レコーディングしようってなって、一発録りで録りました。アルバムで一番最初にできた曲です」
S 「そうでしたね。ラップ録れるの?ていうくらい散らかっていて、一発で録り切ったからおお!ってなりました。この曲のヴォーカル処理に関しては、エポンさんのラップは淡々とフロウしていくんですが、メッセージ性が強かっただけに、逆にそれを引っ込めたくなってこのフィルター処理になりました。アイワさんのビートにこのラップが乗ったのを聴いた印象で、声を大にっていうよりは心の中の沸々とした声っていう感じがしたんで、心の中の叫びって感じのヴォーカル処理にしました。エポンさんはこういったアプローチを喜んでくれるから助かります」

――わかりやすい解説ありがとう。ちなみにこの曲のタイトルはアルバムのタイトルにもなっているけど、どういう意味を込めたの?
E 「コロナ禍の時期から制作が始まって、社会的にも自分の身にも大きな変化が色々あって。そんな中、ライヴでいろんな街に行く機会が増え、このままどこに向かうのかな?って思うことが多くなりました。アルバムを作っていく過程でもどこに向かう?っていうときはあるし、今回の作品は“辿りつく場所を導き出す”っていうコンセプトにしようと思って、タイトルにしました」

――確実にこのアルバムがエポンを今と違うところ、行くべき場所へと運んでくれることと思います。続いて先行シングルとしてリリースされた2曲目「Southern Wind」。ビートはシュンくんですね。
S 「これは今まで共作した“Cruising”、“ジュータイ”の延長線にできた僕らのオリジナル・サウンドっていう感じですね。ビートもかなり気に入っています」
E 「“Cruising”で得た感覚がビートにもリリックにも活かされた曲です。ライヴでも評判良いし、この曲以降スタイルが変わったと言われることが増えました」

――「Cruising」とBPMも近くて、DJとしては繋げてかけたくなる曲だね。続いて3曲目「Seeds for the future」。こちらはAIWASTONEでトラックを担当しました。先にリミックスのほうを自分のアルバム『Like No Other 3』に入れてリリースさせてもらっていたけど、オリジナルはこちらになりますね。
E 「今活動していることは未来へ種を蒔くことな気がしていて、街のアスファルトに種を蒔いて育っていく様子をイメージしてリリックを書きました。そんな構想を想起させてくれたAIWASTONEのドリルを消化したオリエンタルなビートに、フリーキーかつタイトにラップを乗せてみました」
S 「このトラックかっこいいですよね。サウンドもレンジが広くてさすがだと思いました。疾走感があって踊れるドリル・ビートの上に乗るエポンさんのキレキレのフロウ3バース。ラップ魅せまくりなんですが、実はダンス・トラックに落とし込みたいなぁって思ったんで、これについてもあまりヴォーカルがトラックの前を行きすぎないように整えました」

――ありがとうございます。赤石くん(IRONSTONE)も嬉しいはず。続いて「By far」。これはシュンくんの客演曲ですね。トラックは先程話に上がったTATA the MONDAY。実験的というかかなり攻めた曲だよね。
E 「トラックやばいすよね。TATA the MONDAYにスタジオで聴かせてもらって衝撃を受けました。フィーチャリングはSPRAのみにしようと思っていたので、流れ的にもこの曲だなと。壮大なスケールを曲から感じたので、みんなで行ったツアーを思い出しながら遥か先の最上級に向かって進んでいく様をリリックで表現しました」
S 「トラックを聴いた上で、エポンさんの曲のヴィジョンに合わせてバースを書きました。クロスライン、チェインスモークみたいなイメージ。あえて自分のビートではなく、タオのビートにフィーチャリングとして参加できたことは嬉しく思います」

――自分はBOARDS OF CANADAやAUTECHREを思い起こしました。続いて5曲目「Live my dream」、これはS3XY SAD Iのビートですね。タータンからはエポンの影響でボンサグにハマっていたときがあって、彼らの代表曲「Dayz of Our Lives」をサンプリングして作ったと伺っています。少しポエトリー・リーディング的なラップだね。
E 「うれしい影響ですね。自分が使うしかないでしょと(笑)。ボンサグのサンプリングということでビートをあらかじめ聴かせてもらっていて、レコーディングする前に書き溜めてたリリックをスピットしたら気に入ってくれたのでそのまま曲にしました。アルバムで1曲こういうのがあってもいいかなと」
S 「良いですよね。これは一発録りでエポンさんが歌い上げてビックリしました。トラップ刻みにノー・フックでラップし切る感じに新しさ感じました」

――さて、これで前半の5曲が終わり、残り5曲となるわけですが、前半は曲毎にビートメイカーが違うのに対し、後半は全てSPRAのビートとなっています。このあたりは意図的ですか?それとも偶然?
E 「偶然ですね。好きなビートを選んでひたすら作り続けたら曲が集まって、曲順のバランスを取っていったらこの並びに。SPRAも良いビートをくれたので、たくさん作れました」
S 「作っているうちにこの順番になっていましたね」

――見せかたとしておもしろいと思いました。LPやカセットみたいに折り返し地点がある感じで。
E 「たしかに折り返し地点っぽい(笑)。ここから世界観が深くなっていくので」

――というわけでここからは後半戦、SPRAビーツが続いていきます。6曲目「Once in a blue moon」はどういう曲でしょう?正にブルームーンを飲みながら聴きたくなるような、ジャジーなムードのある曲だね。
S 「この曲のビートは僕が15年くらい前に作ったのを引っ張り出してきたものです。エポンさんと古いPCからビートを探していて、久しぶりに聴いたら良かったんで採用になりました」
E 「昔のビートのストックを聴かせてもらってて、15年前とは思えない雰囲気あるカッコいいビートがあって。そのタイトルが“blue moon”でした。Once in a blue moonという言葉に、“めったにない”とか“ごく稀に”という意味があるみたいで、今の状況もめったにないし、諸々絡めてリリックを構築してみました」

――ビートのタイトルから着想を得て書かれた曲だったんだね。15年前のものとは驚きです。さて次の7曲目「Ridin’ high」は一転、4つ打ちの曲。エポンはこういうイーヴン・キックのトラックでラップするのは初めてだよね?
E 「初めてですね。アルバムの中で4つ打ちも1曲やろうと思っていました。もともとこのビートではなくて、別のビートに差し替えて今の楽曲になったんです」

S 「そうですね。最初は違うビートにエポンさんがこのリリックを乗せてきてくれたんですが、けっこうそれがシリアスな雰囲気のビートだったんで、もう少し軽く聴かせたくて。とは言いつつ正統派でもつまらないし、何個かビートを作り替えて個性的なダンス・トラックに落とせました」

――2人には車や運転にちなんだ曲がけっこうあるよね。この曲もそう?
E 「“Ridin’ high”というタイトルからすると車っぽいですが、どちらかというとパーティを最高潮に持っていく、みたいなイメージで作りました」

――あーそうか。運転のことを歌っているのかなと思ったんだけど、パーティの昂揚感をイメージしていたんだね。
E 「運転してるっぽさ出ちゃってるかもですが(笑)。ビートに乗せていくのを最優先したので、リズム感と語感に意識がいってました。リリック的に深いというか、言いたいこと言ってハメていった感じです」

――アルバムの幅広さに一役買っていると思います。現場での遊び方が如実に出た曲だよね。続いて8曲目「Laura Nyro」にいきましょう。これはずばりサンプルネタから取ったタイトルだよね。
E 「はい、サンプル元から取りました。素敵な名前だなーってなって、1曲こういうタイトルがあってもいいかなと。あとで調べたら孤高の人みたいな感じだったので、そこも良かった。制作に関しては特に何も決めずスタジオでSPRAが作り始めて、ビートができてきたら自分も溜めてたリリックを乗せてみて。良い感じだったので修正してかたちにしました。フックはメロディから思いついて歌いました」

――自分も「Up on the Roof」の7″はスクリューしてかけます。ネタは言わずもがなの名曲ですが、遅くするとこうなるんだという驚きがありますよね。直接Laura Nyroには触れずに、“Laura Nyro”ってタイトルにしている感じも新鮮だった。続いて9曲目の「New day New way」。アウトロを抜かすとこれが最後の曲になります。ジューク / フットワークから着想を得たであろうビートで、おお!となりました。
S 「“New day New way”は正に2010年代くらいのジュークとかベース・ミュージックのサウンドを意識しました。こういうリズムが倍になったり半分になったりする展開とかちょっとやってみたくて。参考にしたビートメイカーはFalconsっていうLAのDJとか。あとStrayっていうビートメイカーの当時のサウンドを意識しました。10年前にやりたかったことがやっとできた感じでかなり好感触な曲です」

――TATA the MONDAYとの「By far」同様、エポンのラップ・パート以外のインスト部分もじっくり聴かせる構成になっていて、こういう曲がラッパーのソロ・アルバムに前半後半1曲ずつ入っていることにおもしろさを感じました。参考にしたミュージシャンや曲も挙げてくれてありがとう。
S 「そのあたりは僕とエポンさんの音楽的感覚がいい具合に噛み合ってのことだと思います」
E 「僕ら的には“Come 2 Pass”のパート2みたいな感じです。ジューク / フットワークの打ちかたっぽいけどちょっとズラしていたり、上物もダンス・ミュージック寄りなのでライヴで新基軸になるかなと。時間かかっちゃったけどリリックも納得いくものになりました」

――「Come 2 Pass」はSEKIS & DIKEの2人と自分で作ったレゲエ・ジュークのトラックに、エポンとシュンくんがラップしてくれた曲だよね。そう言ってもらえると嬉しいです。さて、いよいよ最後の10曲目。タイトルもまんま「Outro」ですね。トラック自体はエポンから早い段階で聴かせてもらっていたので、これもラップが入るのかなと思っていたんだけど、インストで締めくくる構成になりました。
E 「最初は曲として使う予定でしたが、アウトロとして使うことにしました。憂いのあるサウスっぽいビートで個人的に好きな曲。アルバムの最後としてハマったので感慨深いです」

――アートワークについても聞かせてください。エポンや自分とも旧知の仲であるD.D.D.によるものですね。
S 「エポンさんを通じて知り合い、今回初めてやり取りをしました。それから彼の作品をいろいろ見てきましたが、今回アルバムの内容を聴いた上でこの表現に落としてくれたことがとても素晴らしいと思いました。作品の顔になってくれたと思います」
E 「D.D.D.には前々から今作のアートワークをお願いしていて、何度もライヴに足を運んでもらい、ある程度まとまった状態の作品も早めに聴いてもらって研ぎ澄ませてもらいました。こちらのペースに合わせてもらうかたちだったんですが、完璧なアートワークを仕上げてくれたので感無量です。本当にいい作品になりました」

――D.D.D.サイドにもコメントを求めたところ「とにかく作品を聴いてジャケを手に取ってほしい」とのことでした。今回のインタビューに合わせて、『Where to go』の新作ヴィジュアルも作ってくれましたよ。
S 「おおお素晴らしい!!!!」
E 「あつい!素晴らしいです!」

Artwork ©D.D.D.
Artwork ©D.D.D.

――最後に、こういう人に聴いてもらいたいとか、こういうシチュエーションで聴いてほしいとか、2人からありますか?メッセージもあればそれも一緒に。
E 「地元の友達はもちろんですが、今までライヴを観に来てくれた各地のかたにも聴いてほしいです。DJにかけてもらえるのが一番嬉しいですが、ドライブにも合うと思います」
S 「年齢性別問わず、いろうろな人に聴いてほしいですね。それと、そこからEASTERN.P & SPRAでのライヴセットもかなりかたちになってきてるんで、ぜひ出演するパーティや天久保にも遊びに来てほしいです」
E 「最後に、この作品に関わってくれた人たちありがとうございます!自分名義ですが、1人ではこのかたちにならなかった。参加してくれた人たちのものでもあります。全て注いだし、キャリアの中で一番の完成度だと思うので、聴いてほしいです」

EASTERN.P Twitter | https://x.com/icepick_boi
SPRA Twitter | https://x.com/spra_87
Club OctBaSS Official Site| https://www.octbass.info/
GOOD NEAR RECORDS Official Site| https://octbass.thebase.in/

EASTERN.P 'Where to go'■ 2024年7月24日(水)発売
EASTERN.P
『Where to go』

CD 2,200円 + 税
https://linkco.re/ZUS8xB3g

[収録曲]
01. Where to go Beats by AIWABEATZ
02. Southern Wind Beats by SPRA
03. Seeds for the future Beats by AIWASTONE
04. By far feat. SPRA Beats by TATA the MONDAY
05. Live my dream Beats by S3XY SAD I
06. Once in a blue moon Beats by SPRA
07. Ridin’ High Beats by SPRA
08. Laura Nyro Beats by SPRA
09. New day New way Beats by SPRA
10. Outro Beats by SPRA

EASTERN.P "Where to go" Release PartyEASTERN.P "Where to go" Release Party

2024年8月11日(日)
茨城 つくば Club OctBaSS + Bar DISCOS

17:00-24:00
当日 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)
U25 2,000円(税込 / 別途ドリンク代)

Rerease Live
EASTERN.P & SPRA

Live
CHIYORI + YAMAAN / SWEETIE / TATA the MONDAY / 東金B¥PASS

DJ
AIWABEATZ / IRONSTONE / KRAIT / LIBERTY / SPRA

Bar DISCOS
BLUEBELL / NAGA / S3XY SAD I / SOSTONE / SUERTE

Food
DJANGO / ​鯨食堂