文・撮影 | アグネスパーラー
| 第11回: クラフトコーラ
今まで誰にも話したことがなかったけど、私の先祖は海賊だったそうです。その話を聞いたのはおじいちゃんが亡くなった後、おばあちゃんがぼそっと話しただけなので、どこまで信憑性があるのかわからないけど、気になりすぎて調べてみたら文献にも同じ名字が残っているので、きっとそうなんだろうな、と私は信じています。
海賊と聞くと一瞬びっくりするけど、かつて瀬戸内海にいた海賊は流通や貿易において一役買っていたそうです。想像しようにもイメージが全くつかめないけど、遠く血が繋がった人の暮らしが海の上にあったなんて、かなりロマンがあると思いませんか。
晩年のおじいちゃんは、糖尿病で食事に関して厳しく言われていたにも関わらず、冷蔵庫の野菜室の奥のほうにいつもコーラを隠していて、見つかる度におばあちゃんに怒られるという、海賊の末裔にしてはちょっぴり情けなく、でも孫から見るとすごくかわいい、そんな人でした。お酒が強かったのも海賊の血なのかも。
私にはもうひとりおじいちゃんがいて、こちらはコーラ以上にすごい隠しごとをしていました。それはファミリーコンピュータ。しかも36年間も、ゲームは麻雀ただひとつ。テレビを買い替えたら繋がらなくなったらしく、困ってお父さんに相談しようとソファーの下から出してきたそうです。これには家族みんな騒然となり、隠し続けた執念と、なぜ隠したかったのかという謎と、胸のざわめきがコーラとは比べ物にならないくらい、少しホラーに近いような。こっちの先祖が何者だったか気になる。
子供の頃、お姉ちゃんやお兄ちゃんが欲しかった私は、両親に隠し子か生き別れの兄弟がいないのか、しつこく聞いていた時期がありました。さすがにいなそうだな、と感じてからは聞かなくなったけど、ときどきふと両親にも隠しごとや子どもには話していないことってあるかもしれないな、と思うことがあります。わざと隠していたり、わざわざ人に言わないだけだったり、本当にその人のことを知り尽くすなんてことは、一生できないかもしれないですよね。
今回はコーラが大好きだったおじいちゃんに飲ませてあげたかった、手作りのコーラです。もっと前から知っていたら、おじいちゃんもそこまでおばあちゃんに怒られることはなかったかもな。海賊のずっと後におじいちゃんが生まれて、お母さんが生まれて、私がいる。会えない遠い先祖のことを考えてみる。みんなの先祖はなんですか。
[材料]
| シナモン(ホール) 2本
| クローブ(ホール) 3g(約30粒)
| カルダモン(ホール) 2g(約10粒)
| バニラビーンズ 1/2本(なければバニラエッセンス数滴)
| レモン 1個(無農薬か防カビ剤不使用のもの)
| グラニュー糖 200g
| 水 300cc
[手順]
01 | シナモンは2つくらいに割っておく。カルダモンは殻ごとつぶす。レモンは皮をよく洗い薄切りにする。バニラビーンズはさやをナイフで開いてタネをしごいておく。
02 | 材料をすべて鍋に入れて中火にかける。砂糖が溶けたら弱火にして10分ほど煮る。バニラエッセンスの場合は火を止める直前に入れる。
※ ここでできあがったシロップは透明に近い色になる。もし濃い色にしたい場合はこの後にキャラメルを作る。
※ キャラメル
[材料]
| 砂糖 大さじ3
| 水 大さじ1
| 熱湯 大さじ1
[手順]
01 | 砂糖と水を鍋に入れ、弱火にかけて濃いめの茶色になるまで煮る。ときどき鍋を揺すって焦がさないように気をつける。
02 | 好みの色になったら火を止めて熱湯を注ぐ。このときキャラメルが飛ぶので注意。
できあがったキャラメルをシロップに混ぜる。互いに冷えていると溶けないので、どちらも熱いうちに混ぜる。
03 | できあがったシロップは清潔な瓶に入れて一晩以上寝かす。そうすることでスパイスがより馴染む。寝かしたら材料を濾して清潔な保存容器に入れる。
04 | 好みの分量のシロップを炭酸で割る。
※ キャラメルを作らずに濃い色のシロップにしたい場合は、材料の砂糖を三温糖やきび砂糖にするか、黒糖を少し入れることで濃い色になる。
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