Column「アグネスの5次元パーラー」


文・撮影 | アグネスパーラー

| 第13回: フルーツビネガー

 これから夏本番、という7月末に流行りの感染症に罹りました。ありがたいことに、今は後遺症もなくすっかり元気に過ごしています。渦中にいるときは今まで経験したことがないことがいろいろ起きて、なかでも一番の衝撃は2週間ほど味覚がなくなったことでした。なくなって初めて知る大事さ。
 
 “味覚”、それはいったい何なのか。味覚がなくなったことについて聞かれることがよくあるけど、全くうまく説明できません。話したところで謎を深めるばかりで、なんだか申し訳ない。こればかりは経験してみないと一生わからないだろうと思います。でもちょっとだけ、想像してみてください。味覚がなくなるということは味がわからない、味がわからないということはおいしいという感覚もわからない、つまり何を食べてもおいしくない、おいしくないので食事がつまらない、つまらないから食べたいと思わない、人生の楽しみが激減する。食べることが楽しくないなんて、想像するだけで世界が一気に灰色になりませんか?私たちは何のために生きているんだろう。人生の目的は人それぞれだと思うけど、おいしいご飯を好きな人たちと楽しくいただく、この項目だけは幸せに生きるためにも大切だし、大切であってほしい。そして改めて感じた五感の素晴らしさと、聴覚や視覚など五感が不自由な人がどんな世界で生きているのか、わからないなりに考える大切さを実感した夏になりました。五感があるから外の世界を感じることができる、なんともありがたい能力。考えてみたら、楽しいことってほぼ五感フル稼働かもしれない。

 私はというと、おかげさまで完全に味覚がなくなってから2週間ほどで徐々に感覚が戻ってきて、今ではすっかり正常。食欲もばっちりです。考えれば考えるほど味覚って不思議。自分が感じている味と自分以外の人が感じている味、それこそ一生分かり合えない未知の世界。“おいしい”は共通用語として成り立っていて、でも千差万別の“おいしい”がある。人は皆、自分の好きな味を求めてこれからも生きていくのでしょう。そして自分のおいしいを誰かとできればたくさん分かち合いたい。そのためには健康でないとね。

 健康のために1日大さじ1杯のお酢を、とよく聞くけど、毎食お酢料理を食べるのも難しいので、そんなときはフルーツビネガーをどうぞ。イチジク、プラム、マンゴー、ベリー系など、果肉が柔らかいもの、もしくは果汁が多いフルーツがぴったり。お風呂上がりに飲んでストレッチでもすればまさに健康そのものですね。

[材料]
| フルーツ(いちじく, プラム, ベリー系, マンゴー など) 300g前後
| 氷砂糖もしくは蜂蜜 フルーツと同量
| お酢(穀物酢, りんご酢, ワインビネガー など) フルーツの半量

[手順]
01 | フルーツを適当な大きさにカットする。イチジクなら4等分、プラム2等分、小さいベリー系はそのままでよい。
02 | 清潔な瓶にフルーツ、氷砂糖(蜂蜜)と重ねて入れていき、最後に上からお酢をまわしながらかけて蓋をする。
03 | 冷暗所で1週間ほど置く。時々瓶を回して氷砂糖(蜂蜜)が溶けやすいようにする。気温が高い時期はカビが生えないように気をつける。
04 | 1週間ほどで氷砂糖(蜂蜜)が溶けきったら味見をして好きな味になった頃にフルーツを取り出す。フルーツは好みで食べることができる。
05 | グラスにシロップを注ぎ、冷やしたお水やソーダ水で好みの濃さにしていただく。氷は好みで入れる。

※ 薄めで小さなグラスに1日1杯程度がおすすめ

アグネスパーラー agnesparlour

アグネスの5次元パーラー | illustration: あお木かな
illustration あお木かな
2010年よりオリジナルのシロップなどを使ってドリンクをメインにしたケータリングの活動を開始。ライヴ、展示、パーティ、蚤の市、商店街のお祭りなどに出店。執筆活動として鳥取のベーグル店「森の生活者」発行のジン『森と生活者』に寄稿中。

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