自分をありのままに表現できる空間を作りたい
取材・文 | 取材・文 | つやちゃん | 2026年2月
撮影 | 山口こすも
――音楽に関する最初の記憶は何でしょう?
「幼少期はJ-POPがすごく好きで、特に中田ヤスタカさんがプロデュースしている曲をめっちゃ聴いていて。きゃりーぱみゅぱみゅ、Perfume、CAPSULEの曲、あと中田さんのソロもたくさん聴いていました。振り返ると、当時からダンス・ミュージックが好きだったんだと思います。母親から聞いた話だと、3歳くらいで言葉も全然理解していないのに、きゃりーぱみゅぱみゅの歌を大熱唱して踊っていたらしくて(笑)。小児科の先生にも驚かれたみたいです。中田さん関連以外でも、水曜日のカンパネラ、浜崎あゆみも好きで聴いていました」
――そこから、もっと本格的なダンス・ミュージックを聴き始めたのは、何歳くらい?
「小2だから、7歳のときですね。DÉ DÉ MOUSEさんを知って、そこから興味が広がっていった感じです。当時、SNSを母親と一緒に使っていて、そこで知りました。今も私のInstagramを遡ると5歳くらいからの写真が載っています」
――小2で聴いて、DÉ DÉ MOUSEのどこに反応したんでしょう?
「小さい頃から踊るのが好きだったので、とにかく踊れてハッピーだなって」
――この音楽、踊れるぞ!と。
「そう、踊れるぞ!って(笑)」
――それが小2で、そのあとは……?
「最初はポップなダンス・ミュージックが好きだったんですけど、小4くらいにベルリンのアンダーグラウンド・カルチャーの音楽をいろいろ聴きはじめました。自分でもDJのミックス動画、マッシュアップっぽいものをInstagramに少しずつ上げていっていたんですよ。そうしたら、ベルリンでレーベル“Yegorka”を運営しているDJのWHY BEがそれを観てくれて。彼のレーベルの音源を聴いて、ノンビートの曲とかエレクトロニカっぽい曲とかをたくさん知りました。そこで音楽の幅が一気に広がった感覚があって。WHY BEの存在はかなり大きかったです」
――そのあたりから、DJにも没頭していった?
「そう。最初はジューク / フットワークのようなBPM速めの曲をワープしたり、もう少し遅めで108BPMくらいなんだけど、トライバルっぽい感じのものだったり、いろいろ流していましたね」
――クラブに行く経験は、いつ頃から?
「クラブっていうより、コーヒー屋さんとかオープンな場所でやっているパーティに通い始めた感じです。一番最初は、長野の山奥の温泉街(山ノ内町 渋温泉)で毎年開催されている“音泉温楽”っていうフェスに行って。そこでDÉ DÉ MOUSEさんともお会いできたんです」
――おお。
「DÉ DÉ MOUSEさんの出番が遅めで、私だけずっと起きていて。他の小学生はみんな寝落ちしているのに(笑)。そうしたら主催の鶴田(宏和)さんが、“なんでこんな時間に起きているの?”って話しかけてくれて。私がDÉ DÉ MOUSEさんを観たいからって言ったら、転換のときにマイクでその話をしてくれたんです。そこから“その子、どこにいるの?”っていう話になって、ステージに呼ばれて写真撮って。終演後に少し話すこともできました」
――今振り返ると、すごく大切な一夜だったんですね。
「そうなんです。それで、いわゆるクラブに初めて行ったのは小5くらいだった気がします。コロナ渦にデイ・イベントが増えて、気になっていたパーティも昼帯開催になったりして。未成年でも親同伴なら入れる、みたいな形式も増えましたよね」
――野外イベントやライヴハウスとはまた違ったクラブ特有の雰囲気があるじゃないですか。当時は、どのへんに惹かれました?
「コミュニティができるところ。そうなると、“我が家”みたいに感じるんですよね。小さい頃からいろいろな箱に行ったことで、それぞれ雰囲気が全然違うことも知った。DJをやっていくと、箱ごとにグルーヴみたいなものがあるんだなって感じられて」
――お気に入りの箱は?
「地元だとmonetとかSHAFTが好きです。オーナーさんもすごく優しくて、いつでも遊びに来てって言ってくれる感じで」
――仙台のクラブ・カルチャーは、どういう感じなんでしょう?
「仙台にいたときは、オール・ジャンルのイベントにばかり出ていましたね。年齢層は幅広いです。たとえば“K/A/T/O/ MASSACRE 500回記念パーティ in 仙台”のときは、KΣITOくん(TYO GQOM)が出て。村田くん(村田 学 | KURUUCREW)は80年代のアニソンしか流さないし、そこから私がフットワークに持っていったりアンビエントになったりアコースティックになったり……それでまたフットワークで終わる、みたいな。村田くんのパーティはいつもすごくて、仙台でそれやるの怖すぎるでしょ、みたいな人しか呼ばない(笑)。SOLMANIAの大野(雅彦)さんとか、めちゃくちゃコアなところを呼ぶ。あとWaikiki ChampionsのKamatahhhくんが主催している“AOBA NU NOISE”っていうイベントにもよく出演していたんですけど、そこもカオスで、30分間ずっとサックス・ソロの人がいたり、そこからDJになって、みたいな。わけわかんないのに、なぜかグルーヴが成り立っている。そして地域あるあるかもしれないけど、だいたいどこのコミュニティ同士も繋がっていますね」
――ちなみに、小中学校ではどういった子だったんですか?友達と音楽の話はしていた?
「あまりしなかったです。絵を描いたり、友達の家でナンジャモンジャのゲームをやったりして、平和に過ごしていました。でも、学校の子がDJを観に来てくれたりはしていましたね」
――そうなんだ!
「周りも、がんばってね!っていう感じだったから活動しやすかったです」
――今は東京に拠点を移されたとのことですが、都内ではどのあたりの箱に行きますか?
「都内だと幡ヶ谷のForestlimit。上京前からよく遊びに行っていました。あとは移転しちゃったけど渋谷の頭BARも好きでした」
――どちらも、アンダーグラウンド・ミュージックを知ることができるユニークな箱。
「そうなんですよ。私が初めてForestでDJしたのは、バーテンダーとして立っている友達のsuwaWanderと村田くんとの共同主催イベントで。没くん(没 aka NGS | Dos Monos)がいたり、Tarah Kikuchi with Strange Bedfellowsがいたり、ジャンルが本当にバラバラで。Forestのイベントって謎だなって思います。私が初めて遊びに行ったのも、小松成彰さん主催の“Deep Forest”で、その日も没くんと、私が一緒にユニットをやっている北村 蕗とか、サイケをやっているHënkįちゃん、deadfish eyesちゃん……やっぱりめちゃくちゃバラバラで。サイケのあとにアコースティックになるタイムテーブルも含めて、やばかった記憶がある!」
――では、Forest以外も含めて、ここ数年で一番印象的だった自分のDJプレイは?
「すぐ思い浮かぶのは、“WAIFU Airport Autonomous Rave Special”でDJをさせていただいたとき(2025年9月)。会場が成田空港滑走路脇の木の根ペンションっていう、成田闘争とかいろいろなことが起きた歴史的文脈のある場所で。残念ながら差別や排外主義が広まってしまっている今の世の中で、私のようなクィアや、成田闘争で戦ってきた人たちが集まって踊り狂っている空間だったんです。現地の人にも“あなたのDJいいね”ってベタ褒めしてもらったりして。年齢層もすごく幅広いし、そのロケーションだからこそ成り立つパーティっていうのが確かにあるんだなって強く感じました。自分がオーガナイズをする上でも、すごく参考になりましたね」
――たとえば同じ箱、同じ場所でも、オーガナイザーによってイベントの空気ってすごく変わるじゃないですか。WAIFUの素敵なところってどこにあると思いますか?
「オーガナイザーのもりたみどりちゃんとMaiko Asamiさんが、若い世代をピックアップしていきたいっていう思いが強いんですよね。ポップアップにも力を入れているし、そういった姿勢がWAIFUの空気を生んでると思う」
――あと、素敵なパーティって、DJをしていて普段の自分では出ない力が引き出される、みたいなことも言いますよね。
「あるかもしれない。WAIFUってお客さんの層が幅広くて、見たことのない踊りをしている人もいるんですよ(笑)。そういうのも影響していると思う」
――ご自身でも、パーティ「融点(yuu.ten)」をオーガナイズされていますけど、最初の主催はどういった形だったんですか?
「中学のときに、予算ゼロ円でやりました(笑)(*1)。チケット代を必死に集めて、地元のワインバーで北村 蕗を呼んで開催したんですよ。なんだかんだ50人くらい集まってくれたし、担任の先生も遊びに来てくれて(笑)。私が仙台を離れるタイミングでもあったので、地元が近い蕗との二人会にしたという背景もあります」
*1: 「2024年7月21日に宮城・仙台 Shop&Wine Bar ファシュタ -Första-で開催された「融点 vol.1」。
――へぇ!heykazmaさんは、オーガナイズするときにどういったことを意識していますか?
「WAIFUから影響を受けている部分もあるんですけど、クラブに遊びに行ったときにやたらセクシャリティを聞いてくる人がいて。私は、セクシャリティとクラブに行って音楽を聴くことって、そんなに関係ないじゃんって思うんです。誰も傷つかなければ、自分を表現しまくっていい場所だと思っているから。そういうのってナンセンスじゃない?って思い始めて。だから、あらゆるハラスメントには反対だし、自分をありのままに表現できる空間をちゃんと作っていきたいと思っていつもやっていますね」
――具体的には、運営でどんなことに気をつけていますか?
「たとえばお手洗いを全部ジェンダーレスにしたり。あと、人と話してもいいし、話さなくてもいい、みたいな距離感を守れるように作っています。スペースが広いと分散できると思うし。音楽だけじゃなくて、いろいろな体験もできる場にしたいので、ヴィヴィアン佐藤さんに“オーラ似顔絵”をお願いしたりもしました」
――居心地って、本当にパーティによって全然違いますよね。
「違いますよね。オーガナイザーがめちゃくちゃ話しかけてくるタイプの場もあると思うし、それもそれでいいとは思う。でも私は、クラブは音楽を発見する場所だと思うから、適度な距離感で接していきたいと思っています」
――DJをやって、満足のいく日 / いかない日ってありますか?
「自分のマインドを解放しきれていない日はありますね。現場に来る前にいろいろ重なっちゃって、精神的にうまくいかない日とか。そういうのが重なると今日うまくいかないかもって思って、実際うまくいかなかったり。うまくいった日はだいたい手応えがはっきりありますね。そういう場合はフロアで“ほんと良かったー!”って話しかけられることも多くて、ありがたいです」
――技術面で、DJプレイを積み重ねてきたことでできるようになったことは?
「小さい頃から、エフェクトの使い方がうまいねって言われることが多かったです。クラッシャーとかフランジャーとか。最近だと、コントローラーだとハイ / ミッド / ローが分かれていないことも多いけど、CDJ + ミキサーだと分けられるから、ヴォーカルにいろいろエフェクトをかけられたりして発見があります。一番よく使うエフェクトはスパイラルなど、歪ませる系です」
――DJとしての自分の個性を挙げるとしたら何ですか?
「エフェクトもそうだし、いろんなアンダーグラウンド・シーンから積極的にディグっていくところかもしれないです。DJ同士で“このレーベルのこれがすごい”みたいな情報共有はよくしますね。でもデータの交換は絶対しません」
――最近ディグったもので“これはヤバかった”っていうおすすめを知りたいです。Bandcampで購入者3人しかいない作品でも良いので(笑)。
「deadfish eyesちゃんに教えてもらったんですけど、“シャインのこと / Shine-NO-KOTO”(中田 粥 + Water a.k.a マリヲ)っていう、めちゃくちゃノイズの曲があって。ラップとノイズが合体していてヤバいです。めっちゃ食らいました」
――EP『15』の話もぜひ伺いたいんですけど、ノイズ要素もしっかり入っていますよね。「Acid Noise」とかまさに。
「そうです、あれはMASONNAやMark Fellあたりからの影響です。あと、カワムラユキさんのVENUS FLY TRAPP名義のアルバム『Egology』(2003)がエクスペリメンタル多めで影響を受けていたり。そういった流れもあります。でも、ノンビートの曲って完成形が見えないままサウンド・コラージュのような感覚で作るので、一番時間がかかりました。配置をどうするかすごく迷って。隙間がないとただ効果音が鳴っているだけみたいになっちゃうので、工夫が必要で、思っていたより3倍くらい時間がかかりましたね」
――そもそも、EP『15』は、いつ頃から構想を練り始めたんですか?
「“15”と“Cat Power”は、もともとBandcampでデモっぽい感じで配信していて、それが2024年の5月くらいだったかな。そこから足し算、引き算をして今回のかたちに持っていった、というのがひとつの流れ。その他の曲もだいたい同時進行なんですけど、上京して、クラブにひたすら遊びに行って2ヶ月くらい経った頃から制作を本格的にスタートしました。既存の2曲はほぼできていたので、リエディットみたいな感覚でわりとスムーズでしたね」
――ぎりぎり15歳でリリースしたEPになるんですよね?
「そうです、2月10日で16歳になるんですけど、その前までに15歳の思い出を詰め込んだEPを作りたい、っていうのがコンセプトにあって。だから、15歳の自分が聴いたいろいろなジャンルの音楽を入れました」
――元からあった2曲以外、“Pre Pariiiiiiiiiiiiiiin”と“Pariiiiiiiiiiiiiiin”、あと“Acid Noise”はどういうプロセスで?
「“Pariiiiiiiiiiiiiiin”は、栃木の益子に遊びに行ったときの体験がきっかけです。シシヤマザキちゃんっていう益子在住のアーティストと仲が良いんですけど、その繋がりで偶然立ち寄ったアトリエの駐車場に、割れた陶器の破片が砂利みたいにめちゃくちゃあって。その音をiPhoneのヴォイスメモで録って、素材として持っておいたんですよ。それをチョップして、ビートのサンプルを足して、きれいに並べたらああなった。友達の声も少し混ぜています。あと、長野の松本でDJをしたときに、“りんご音楽祭”(長野・松本)を主催しているSleeperさんが蕎麦屋に連れて行ってくれて、そこでかき揚げを食べている音が素敵すぎて(笑)。その音も収録しています」
――へぇ!日常のあらゆる音をサンプリングしているんですね。
「いい感じかもって思ったら、すぐiPhoneを出して録っちゃいます。日常が全部素材ですね。あと“Cat Power”はナンシーっていう名前の飼い猫の声が入っています」
――日常の音を録って素材にしようという発想は、どうやって始まったんですか?
「Nami Satoさんという仙台出身のアンビエント・アーティストがいて、地元も一緒で仲がいいんですけど。彼女が『Our Map Here』っていう宮城の町の名前が並んでいる作品集を出していて、各地で録音した音源を曲に落としているんです。それがすごく良くて、影響を受けたのがはじまり」
――最近録ったもので、これは良かったという音は?
「自転車を漕いでいる音が良かった(笑)。ピッチを変えたら意外とおもしろくて」
――益子焼の音、かき揚げの音、飼い猫の声……heykazmaさんの生活がそのままEPになっている感じがしますね。15歳の今の日常をパッケージした。
「本当、そんな感じですよね。日常の一部を切り取ったみたいな。そういう意味では、日記っぽい」
――heykazmaさんは、DTMもされていますよね。ビートをいちから組むことも?
「しますね。“Pariiiiiiiiiiiiiiin”はサンプルをチョップして、自分で足したりもしています。ソフトの音源を加工して使ったり、Elektronの“Model:Cycles”の音を入れたりもしました。DTMは2023年くらいから始めて、最初は独学で、いまは専門学校に通って習っているんですよ」
――使っているDAWはAbletonですか?
「今はAbletonも触っていますけど、今作は全部Logicなんです。Macを買うときに、Appleのアプリがセットでお得に買えて、Logicが入っていたのでその流れでずっと使っていた。でも、最近はAbletonがいいなって思っています。食品まつりさん(食品まつり a.k.a FOODMAN)のサウンドがすごく好きで、彼がAbletonのヘヴィユーザーなのでその影響もあります。ユニットを一緒にやっている北村 蕗も、いつの間にかLogicからAbletonに移っていましたね」
――食品まつりさん以外で、制作中に影響を受けた存在は?
「“Pariiiiiiiiiiiiiiin”は、Mick Harris(SCORN)の別名義、Fretの曲の影響が大きいです。“15”は、PICNIC WOMENとか、関西のジュークのアーティストから影響を受けていますね」
――カワムラユキさんにプロデュースをお願いした理由は?
「“音泉温楽”で知りあって、それ以来仲が良くて。自分が上京したときにランチして、そのときから一緒に作品を作りたいなと思っていました。信頼できる存在だし、私は勝手に“東京の母”ポジションだと思っているので(笑)。音楽家としてもDJとしてもすごくリスペクトしていて、一緒にやりたいと思いました。それで、私のわがままもだいぶ聞いてもらって」
――まだ15歳(記事公開時は16歳)ですけど、たとえば数年後はどんなアーティストになっていたいと思いますか?
「音楽に限らず、自分を表現することはずっとやっていきたいです。あと、そこだから成り立つフェスやイベント、その場所だからこそできるパーティを、大きい規模でやっていきたい。野外とかも良いですね」
――なるほど、オーガナイザー視点の未来展望ですね。
「何年か後に見返して、当時こんなこと考えていたんだって答え合わせしたいな。でも、上京してからDJの現場も増えたしリミックス提供も増えて、常に変化している感覚があって。だから正直、どうなっているかは予想もつかないです」
――どうなっていくのか、ワクワクしますね。最近、世の中的にも出口の見えない暗い話が多い中で、今日は希望をもらった気がします。
「そう言ってもらえるのは嬉しい。選挙もあってね、暗くなりがちだし……。少しでも元気になる人が増えたらいいなと思います。本当に、誰も傷つかない世の中になってほしい」
――そうですよね。
「うん、平和になってほしいです。本当に」
■ 2026年2月2日(月)発売
heykazma
『15』
U/M/A/A Inc.
https://lnk.to/heykazma_15
[収録曲]
01. 15
02. Pre Pariiiiiiiiiiiiiiin
03. Pariiiiiiiiiiiiiiin
04. Cat Power
05. Acid Noise











