私たちはAIじゃないって伝わるといいな
なおHiiT FACTORYは、アルバムを携えて東阪の単独ツアー「Anomaly Tour」を開催。4月18日(土)大阪・北堀江 ヒルズパン工場、5月9日(土)東京・渋谷 WOMBの2公演が決定しています。
取材 | 南波一海 | 2026年2月
序文 | 久保田千史
――HiiT FACTORYから楽曲制作のオファーがあったとき、m.c.A・Tさんはどう受け止められましたか?
A・T 「90年代をテーマとしてやられているということで、そこは自分が疾走してきた時代なので、きっと作りやすいのかなとは思いました。 そこから(HiiT FACTORYの)曲をたくさん聴きました。かっこいいと思いましたよ。ただ、自分の曲はあまりかっこいいタイプのものではないと自分では思っていて。歌詞にテーマがあって、それを聴く人になりかわって曲の主人公が代弁してくれる、みたいな曲に自分の個性があると思っているので、逆に言うと少し心配ではありました。これは良い曲だと自分では思っていても、みんなとは歳が離れすぎているのでわかってくれるかなと」
――メンバーのみなさんは新曲を手がけるのがm.c.A・Tさんと聞いて、どう感じたのでしょう。
Y 「これまでも当時から活躍されているアーティストさんに楽曲制作をお願いして、プロデュースしていただいてきたんですけど、次はm.c.A・Tさんと聞いて、またこんなにすごいかたに楽曲制作をお願いできるんだという嬉しさがありました。いつもファンの人から、次はどんな新曲が来るんだろうねと期待されるんですよね。私の場合はDJなので、90年代のいろんな楽曲も流すんです。それを見てくださったかたが、次はこういうテイストが合うんじゃないかって言ってくださる中に、実はA・Tさんの名前も挙がっていて」
――そうなんですね!相変わらず勘が鋭いと言いますか。
Y 「つい最近、avex楽曲オンリーのDJイベントがあったんですけど、そのときにお客さんから“Bomb A Head!”みたいな曲があるといいね、と言われてしまって、まだ言えないけどもう決まっているんだけどなって思っていました(笑)。DJをやっているファンのかたは考察をするのが楽しいと言っていて。そのかたは、なぜか“Funky Gutsman!”のあとにHiiT FACTORYを流していたんです」
A・T 「へー!ファンの人に当てられるんですね(笑)」
Y 「よく当てられるんです(笑)」
――Airuさん、Reyunaさんはいかがでしょう。
A 「同じ北海道出身ということでm.c.A・Tさんの存在はもちろん知っていたし、親がカセットテープを持っていたので聴いてはいたんですけど、私はこういうジャンルの曲にあまり触れてこなかったので、デモが届いたときは“これ、私できるの?”と思いました。A・Tさんの仮歌が良すぎて、これをそのままアルバムに収録したほうがいいんじゃないかという感じで。毎日どうしようどうしようって思いながらあまり寝られなくて(笑)、歌録りでスタジオに来るのも怖かったです」
――自分の声がハマるかどうかが想像できなかった。
A 「今までで一番イメージが湧かなかったです。ひやひやドキドキしながら歌いました」
A・T 「レコーディングは最初ドキドキするよね。 僕もしましたよ」
R 「私はラッパーなので、むしろヒップポップとかファンクっぽいのは聴き馴染みがありました。きっとAiruは不安だろうなというのもわかっていたから、今回の作品でも私が引っ張ろうという気持ちがありました。HiiT FACTORYとしても前々作がニュー・ジャック・スウィングで、こういうブラック・ミュージックの系統にも踏み入れ始めたところでさらにこの楽曲で深掘りできるのが個人的にはすごく嬉しかったです」
――楽曲制作はいつものようにメンバーには作曲者の名が明かされないままデモが届くという流れだったのでしょうか?
Y 「驚いたのがそこなんです。今回はA・Tさんのほうから、楽曲を作る前に私たちと会って、どんな人なのかという人となりを知ってから楽曲制作に入りますという流れだったんです。新年明けてすぐ、制作していただく前にご挨拶する時間がありました。緊張しました……」
A 「全員カチコチ(笑)。私たちからしたら“本物だ……”状態でした」
Y 「でも、実際に私たちを知ってもらったあとでどんな曲ができるんだろうっていうワクワクが大きかったです」
A・T 「いや、あと1、2回会ってご飯とか飲んだりとかできたらしたらもっと良かったと思うんです。1回目に会ったときはみなさんお上品でおとなしかったので。だからガッツのあるような、“Bomb A Head!”みたいなのは浮かばなかったですね(笑)」
――m.c.A・T さんとしては、メンバーを見た上で曲を書くというのは大切にされているところなんですね。
A・T 「そうですね。じゃないとたぶん、ありがちな曲になるんじゃないかなと思って。誰にでも良い曲って本当はあまりないと僕は思っているんです。今でこそ少なくなってきましたけど、昔はそこを見ないで提供すると“今回はこの子には合わないけど、後輩に歌わせたい”ということもあったりして。それは僕としては本望ではないというか、その子のために作ってないんだけどな、という思いがあったりもしたので、できる限りお会いするようにしてますね」
――そして実際に会ってみたら、おとなしいタイプの人たちだったわけですね。
A・T 「もともと例として挙げられていたのが“ごきげんだぜっ!”とか、いろいろあったんですけど、全くそういうタイプじゃなかったんですね。だから、女の子らしい曲を作りたいと思っちゃったんです。それに、自分の作った過去の曲みたいなのをやろうとするとだいたい、大失敗するんですよ(笑)。それに結局、僕が作ればオファーされたものと遠からずな感じにはなるだろうは思ったので、なるべく自分のイメージで作ってみました」
――これまでHiiT FACTORYの取材は何度も行なってきたのですが、そのパターンは初めてかもしれないです。基本的には過去の曲のリファレンスがあって、あえてそれをそのままやるというパターンが多かったので、メンバーの人となりを見てから曲を書くというアプローチが新鮮に思えます。
A・T 「例えばDA PUMPの“We can’t stop the music”みたいなのが欲しいとか言われても、それっぽいのにしかならないですし、自分の過去をなぞるようですごく嫌なんですよ。だったらそれをカヴァーしてほしい(笑)。ゼロから作るのが一番楽しいんですよね」
――フレッシュな気持ちでやれるもののほうが、当然やりがいもあるということですよね。実際に会ってみて女の子らしい曲を作りたいと思ったとのことですが、どのように進めていったのでしょうか?
A・T 「リファレンスをいただいた中から、BPMは“ごきげんだぜっ!”と一緒にしようとか、あとはグルーヴはニュー・ジャックで、というのが決まっていたので、まずリズムを作って。そこからですよね。やっぱり、せっかくタッグを組むので、ありがちなものにはしたくないというのはありました。今回は“90年代テイスト”というお題があったので、まぁ僕が作れば全部90年代になるなとは思いつつ、けっこういろいろ工夫はしています」
――メンバーのみなさんは歌詞を読んでみて、あのとき話したことが反映されたと感じる部分はありましたか?
Y 「お会いしたときに、Airuが北海道に帰省した話をしたんですよね」
A・T 「熊の話とかね(笑)」
Y 「友達と北海道でここを回ったみたいな話をしていたから、この“She doesn't mind ~彼女は問題ない~”は友達視点の歌詞なのかなと思って」
A 「私の帰省話が歌詞に(笑)」
A・T 「本人たちよりも友達の話をよくされていたので、そこはやっぱりちょっと影響されたのかもしれないですね。主人公は語り手なんですよね。友達がすごくかっこよく問題を解決したのを外から見ている人の歌なので」
――彼女はこうした、という視点の歌詞ですよね。
A・T 「そうそう。そっちのほうが歌いやすいのかなと思ったんです。強い女の役とかをやるとなかなか大変だもんね」
A 「はい、自分がそっちのタイプではないので。妄想するのは好きなんですけど。曲自体は一度聴いただけで頭に残るメロディだなって思ったのと、歌詞は実際に自分の親友が最近、同じ状況に遭ったんですよ。一致しすぎていて」
A・T 「それは驚きですね」
A 「だから、心を読まれているのかなって思っちゃって(笑)。ちょうど親友から電話とかで話を聞いていたタイミングだったので、その子のことを思って歌おうという気持ちになりました」
R 「私は、曲をいただいたときにまず、自分のパートを見るじゃないですか。ストーリーテリング的なラップの形式が初めてだったので、シーンを想像しながらやったんですけど、生まれて初めて言う単語が多くて。“超美人の性格悪女”とか“ぞっこんだってんで”とか“ビンタ一閃!”とか。それを音に乗せて喋るのがおもしろかったです」
A・T 「そうですよね(笑)。言葉遣いはかなり意識しましたよ。最近、一聴すると英語かなと思うような日本語にするのが好きなんですよね。Bメロのラップの最後はひと節で歌うような感じなんですけど、1回で聴き取れなくてもいいから気になるようにさせたかったんです。あとは韻をガツガツ踏むのではなくて、そこにもちょっとある、みたいな感じにしましたね」
――そしてまさに先ほどレコーディングを終えたわけですが、Airuさんの手応えとしてはいかがでしたか?
A 「ブースに入るのがめっちゃ怖いなと思いながら今日ここに来たんですけど、少し早く着いたら、同じタイミングでA・Tさんもいらしたので、ちょっとだけお話しさせていただいことでリラックスして楽しく歌えました。聴くかたにどう思ってもらえるかなと今からドキドキです」
Y 「伸び伸び歌ってたよね。以前、顔合わせをしたときに、どういうふうに楽曲を作ったとしても結局はヴォーカルの個性がないと良い歌にはならないという話を伺ったりしていたので、レコーディング当日はどうなるんだろうって思っていたんですけど、AiruはAiruで、この2年くらいで歌いかたが定着してきて、それがうまく音に乗っているなと近くで聴いていて思いました。なので私も完成が楽しみです」
R 「私は年相応の若さとかギャルっぽさみたいなのを新鮮なかたちで伝えられるんじゃないかなって思っています。私たちが90年代にいたら、きっとこういう感じで喋ったり歌ったりもしていただろうし、20代前半らしさみたいなのを明るく出せたんじゃないかなって思います。みなさんに届くのが楽しみですね」
――レコーディングをしてみてのm.c.A・Tさんの感想をお聞かせください。
A・T 「まず、すごい練習してきてくれたのがわかったのが嬉しかったですね。それこそ90年代に新人のかたもたくさんやらせてもらったんですけど、けっこう大変だったんですよ(笑)。歌えないとか、弾いてあげても音程を取れないとか、歌ってあげても違うメロを歌うとか、そういうかたもいらっしゃるんですけれども、みんなはちゃんと曲を把握してきてくれているのがすごいなと。曲ができたときに、これはHiiT FACTORYの曲なんだと。Airuさんだけがんばるとか、そういうことじゃないんだと。3人の曲だから全員で歌えるところも作ったし、お客さんも歌ってくれるような、みんなが参加できるような気持ちで作ったので、その点では非常に良かったと思います。このスタジオに来てから、じゃあこういうのもやってみれますか、という提案もできたんですよね。それはある程度の力がないとできないことなんですけど、途中からはこれはできるだろうとわかったので」
――かなりグループに寄り添ったプロデュースをされているんですね。
A・T 「もちろん。そのために最初にお会いしてやっているわけなので。とてもスムーズにいったと思います」
Y 「完成した曲を聴いたら“うわ、またこいつら!”っていう感じになってもらえたら本望ですよね(笑)。 少し前に、私たちのPVと音楽が、AIで作ったものと勘違いされるということがあって。違います!もう何年もやってます!という気持ちになったんですけど(笑)」
――今まさにその問いが浮かび上がっているんじゃないですか?HiiT FACTORYの音楽はある意味、AI的なものと近いのではないかと。それをあえて人力でやるからすごいんですけど。
Y 「私生活がAIの学習みたいになってるかもしれないです(笑)。先日はReyunaとふたりでマハラジャに行ったり」
R 「ミニシアターに『トレインスポッティング』を観に行ったりね」
Y 「普通にかっこいいし、興味があるから行ってるだけなんですけどね」
R 「でも、パフォーマンスに関しては今のものから引用したりもしているので、表現の部分ではHiiT FACTORYらしさみたいなものを追求してます。音が90年代なぶん、そこはより意識するようになってます。私たちはAIじゃないって伝わるといいな(笑)」
――m.c.A・Tさんから見て、HiiT FACTORYの魅力はどんなところにあると思いますか?
A・T 「実は古いものをググっているとか探しているっていう感じはそんなにしないですよね。どちらかというとジャンルを探しているのと同じ感覚じゃないですか?自分だったらファンクとか、ブラック・ミュージックに基づいたダンス・ミュージックがすごく好きなんですけど、そういうジャンル分けと同じなんじゃないかなという感じがします。彼女たちがやっていることが変に偏っているとも思わないし、全然違和感ないですよ。 先ほど言われたように、ダンスのステップが古臭いとかでもないし、今の踊りもやってらっしゃるわけで。決して奇を衒っているわけじゃないので、そこのバランスはとても良いと思います」
――こうして取材するたびに、制作に関わる誰もが素直に楽しんでいるのがいいなと思ってます。メンバーのみなさんもすごく熱心で真面目ですし。
A・T 「僕が勉強不足だったんですけど、みなさん落ち着いてらっしゃるから、女性にこんなこと聞くのはな……なんていうことを思いつつ、おいくつか聞いたら、驚くべき若さで。本当にびっくりしちゃいました。みなさんは昔の浮き足立っていた若者とは全然違うんですよね」
Y 「大人のみなさんが対等に接してくださるので、私たちも早く追いつかないといけないという気持ちでHiiT FACTORYの活動をしているからかもしれません(笑)。だから大人に見られるのは嬉しいです」
R 「今回のラップの話で言うと、若者のギャルっぽく書くのがちょっと難しかったという話もいただいたりして」
A・T 「そうそう。普段はこういうふうに歌ってほしいというのをかなり憑依してデモテープを作るんですけど、今回はあまり時間がなかったのと、自分も体調が芳しくなかったのもあって、あまりうまくできなかったんです。でも僕の拙いデモをReyunaさんに汲み取っていただいたので、ありがたかったですね。ギャルっぽく発音をしてくれたり」
Y 「Reyunaが過去イチ元気な曲です(笑)。Airuも“ドラマ的ショック!”のところがちゃんと若者っぽいですし」
A 「逆に今までは何歳に見られてたんだろう(笑)」
A・T 「自分なりに3人が“見える”ような曲を作りたかったというのがありました」
――最後に、メンバーさんからm.c.A・Tさんに聞いてみたいことはありますか?
R 「ちょうど今日、DA PUMPさんの“Loose Life (not so bad)”を聴いていて。ちょうど私たちは大学卒業くらいの世代なのでクロスするなと思ったし、“She doesn't mind ~彼女は問題ない~”とも近いところがあるな思いました」
A・T 「そうですよね。“Loose Life (not so bad)”は隠れファンが多い曲で、あれも友達のことを歌っているんですよね。そこを見出してもらえるのは嬉しいです。今回は、アルバムのイントロのあとに2曲目に収録されると聞いて、やった!と思いました。アルバムの2曲目に売りたい曲を入れるというのが僕のやりかただったので。自分のアルバムもDA PUMPのアルバムもそうやって作ってきました。そんなところにもHiiT FACTORYと共通点があるのが嬉しいですね」
HiiT FACTORY Official Site | https://www.hiitfactory.global/
Airu Instagram | https://www.instagram.com/hiit_airu/
Reyuna Instagram | https://www.instagram.com/hiit_reyuna/
Yuzuka Instagram | https://www.instagram.com/hiit_yuzuka/
■ HiiT FACTORY solo show
"Anomaly Tour"
| 2026年4月18日(土)
大阪 北堀江 ヒルズパン工場
開場 18:00 / 開演 18:30
4,800円(税込 / 別途ドリンク代)
https://hiit-factory.stores.jp/items/6996809ac67993481c002da3
| 2026年5月9日(土)
東京 渋谷 WOMB
開場 17:00 / 開演 18:00
4,800円(税込 / 別途ドリンク代)
https://hiit-factory.stores.jp/items/69968213444dc8499a01c41d
■ 2026年4月15日(水)発売
HiiT FACTORY
『Manufactures 1995-2002』
RCHS-3528
https://lnk.to/hiitfactory_manufactures1995-2002
[収録曲]
01. Introduction
作詞・作曲 Reyuna
02. She doesn't mind ~彼女は問題ない~
作詞・作曲 m.c A・T
03. ミスティックダイアリー
作詞 Yuzuka, Reyuna | 作曲 Shinnosuke
04. Don't you want me?
作詞 ミラッキ | 作曲 石坂翔太
05. Move your body next to me
作詞 Reyuna | 作曲 東新レゾナント
06. Twilight
作詞 Reyuna | 作曲 東新レゾナント
07. Effluve
作詞 Yuzuka, Reyuna, PellyColo | 作曲 PellyColo
08. Aero state
作詞 Reyuna | 作曲 東新レゾナント
09. Hack up
作詞 YUKI, Reyuna | 作曲 音武者
10. New Emotion(Dub)
作詞 Reyuna | 作曲 東新レゾナント
11. Fifth Element (Euro Dance Mix)
作詞・作曲 PellyColo
℗©2026 YOSHIMOTO MUSIC CO.,LTD