Interview | IRON LUNG


人間は頭痛を治すために石で殴り合うくらいにしか進歩していない

 00s以降におけるUSパワーヴァイオレンスの象徴としてのみならず、当代きってのパンク・レーベル「Iron Lung Records」の運営によってポストパンクからデスメタルまで包括する“現行パンク”のアイコンともなっているIRON LUNG(Jensen Ward + Jon Kortland)が、実に12年ぶりとなるオリジナル・フル・アルバム『Adapting // Crawling』を今年4月にリリース。同作を携えて、3度目のジャパン・ツアーをオーストラリアのKISSLANDと共に開催します。これに先駆けて、ドラム・ヴォーカルのWardさんにメール・インタビュー。ツアー先のオーストラリアから詳細に答えてくださいました。

 なお、「Black Hole」招聘のツアーは7月24日(木)東京・新大久保 EARTHDOM、25日(金)愛知・名古屋 HUCK FINN、26日(土)大阪・心斎橋 ANIMA、27日(日)大阪・難波 BEARS、28日(月)東京・中野 MOONSTEP、29日(火)神奈川・西横浜 EL PUENTEの6公演。詳しくは記事末をご覧ください。


取材・文・翻訳 | 久保田千史 | 2025年7月

協力 | Kemmy 3000 (DREADEYE | DMB PRODUCTION) | Black Hole
Main Photo ©Christina Hamilton

――まずはニュー・アルバム『Adapting // Crawling』のリリースおめでとうございます!『Savagery』EP(2014)もたくさん曲が入っていましたが、そこから数えても11年ぶりのまとまった作品ですもんね。満を持してという感じがします。周囲のリアクションはいかがですか?
 「ありがとう。長い時間をかけて制作したアルバムだから、完璧になるまで誰にも聴かせたくなかったんだ。『White Glove Test』から『Adapting // Crawling』までの数年間に良くないことがたくさん起こって、制作はちょっと辛かったんだけど、結果的にはこれまでの中で最高のアルバムになったと思う。直接“好きじゃない”って言ってきた奴がいないのは良い傾向だな(笑)。このアルバムでやったことを僕らは誇りに思っているから、他人がどう思おうが関係ないけどね」

――Wardさんは近年、ドラムが叩けないほどお身体を壊されていた時期があったそうですが、ばっちり治りましたか?今は元気?
 「そうなんだ。前にキャビネットを組み立てる仕事をしていたんだけど、反復運動過多損傷で両手首の手術を受けたんだ。僕は何かを組み立てるとき過集中になる傾向があるから、休憩も食事も忘れて、仕事が終わるまで働いちゃうんだよね。すごく不健康な生きかただし、そのせいで余計ヒドいことになった。一時期はパンツのボタンを留めることも、靴紐を結ぶこともできなくなって、妻に頼まなきゃいけなくなったよ。養生している間は、友達のBにドラムを任せて僕は歌うだけっていうライヴをやっていて、自由で楽しかったけど、バンド本来の姿ではなかったから、少しの間だけだった。今は完全に回復して、思うようにドラムが叩けて幸せだよ」

IRON LUNG | Photo ©J. Donovan Malley
Photo ©J. Donovan Malley

――それはよかった!日本にいらっしゃるのも11年ぶりなので、前回のツアーのときに小学生だった人が大人になって観に来るかもしれないですよね。そんなわけで、IRON LUNGのことを改めて知るために、まずはお2人のことを聞かせてください。お2人とも、ご出身はネバダ・リノなんですよね?乱暴な質問のしかたになってしまいますが、リノはどんな街?好きなところ、嫌いなところを教えてください。
 「Jonも僕もリノで育ったよ。僕は高校を卒業してからリノを離れたけど、Jonはまだ住んでる。ほとんどの場合において、育つにはヒドい場所だったよ。唯一救いがあるとすれば、21歳以上の人のために作られた街だけに、子供たちのやることが“何もない”っていうことかな。僕らは自分たちだけの娯楽を作り、自分たちだけのアートを作り、自分たちだけの会場や店を作り、自分たちだけの家族を作り、自分たちだけの世界を作らなければならなかったから。僕はスケートボードを通じて絆の強い仲間を見つけたんだ。やる気と自由な発想を持った人たちが周りにいて、僕が夢見ていることを実現するために必要なすべてをサポートしてくれた。必要なものは全部自分たちで作ったんだよ。市はギャンブルと売春っていう合法的な悪徳行為から得られる金にしか興味がないからね。ヴァカンスでリノまで来て、カジノで金を溶かし、希望をなくして困っている人をたくさん見てきたよ。そのせいで薬物乱用、殺人、自殺がすごく多い。悲しいことだよね。砂漠を見るぶんにはとても美しいんだけど。行ってみたい?やめておいたほうがいい」

――そうなんですね……。以前、韓国のギャンブル合法エリアについてお話を聞いたことがあるのですが、そのかたも全く同じことをおっしゃっていました。恐ろしいし、悲しいです。では小休止に、ちょっと変な質問を……UFO観たことある?
 「ある」

――熱い……!子供の頃に印象的だったリノでの出来事は?
 「いろいろあるけど、すぐに思い浮かぶのは父親の葬式。父はヴァージニアシティで古い蒸気機関車の車掌をやっていて。昔は鉱山から銀の鉱石を運ぶための路線だったんだけど、後々リノから山を越えてカリフォルニアまで行くための旅客列車に改造されたんだ。それはともかく、僕らは父の葬儀を列車の中でやって、遺体を炉に入れて、彼が愛して止まなかった線路に灰が降り注ぐようにしたんだよね。すごく大変で、変な日だったよ」

――すごく素敵なお話に聞こえますけど、実際にやるとなると印象が違うでしょうね……。さて、リノと言えば7 SECONDSというイメージ!ベタなのかもしれないですけど……。キッズの頃はどんなライヴを観に行っていましたか?
 「ベースメントでやっているショウだね。デカい照明も、いい感じのPAシステムもなくて、フロアでプレイするような感じの。ただただクイック & ダーティで、めっちゃロウ。それだよ。そういうのが好きだね。袋の鼠だ!」

――私がお2人の存在を知ったとき、Wardさんは“REDRUMやVAE VICTISの人”、Kortlandさんは“GOBの人”、という認識だったのですが、お2人はいつ頃からお互いの存在を認識していたのでしょう。
 「Jonに初めて会ったのは、彼がZOINKS!の物販でレコードを売っていたとき。その時点では一緒にバンドをやることになるなんて思ってもいなかったよ。それから1時間後、僕らが暴動を起こしていると思ったみたいで警察が突入してきて、観客全員に催涙スプレーを浴びせたんだよね(笑)。それ以来ずっと友達だよ」

IRON LUNG | Photo ©Christina Hamilton
Photo ©Christina Hamilton

――えっ!めちゃくちゃ物騒ですね……。でもそんなことがあったら余計に仲良くなるかも(笑)。お互いどんな奴だと思っていますか?やっぱり音楽の好みとかは合うのでしょうか。
 「僕らはそれぞれいろんなことに興味があるんだけど、同じバンドや映画を好きになることは多いよ。僕らが好きなバンドのトップ5を挙げたら、SAVAGE REPUBLIC、CROSSED OUT、SWANS、RUDIMENTARY PENI、WIREっていう感じになる。長い間一緒にツアーをしているから、集合意識みたいになっちゃうこともあるしね。同じシナプスが発火しているみたいな。その状態に到達するとヤバいよ。僕らを止められないぜ。でも別々の街で暮らしていて、環境からの影響はそれぞれに受けているから、刺激も行動のきっかけも違うんだよね。そのおかげで、互いにおもしろいことを続けられるんだと思う」

――お2人の信頼関係が窺えますね。同時期から存在していたFALL SILENTやGEHENNAといったバンドとは交流がありましたか?リノの他のバンドとのおもしろいエピソードがあれば教えてください!
 「JonはFALL SILENTの2ndアルバム『Superstructure』(1999)を自分のレーベル・Satan's Pimpからリリースしていて、今でもLevi(Watson)たちと定期的に会っているみたい。僕はGEHENNAで何年もプレイしたことがあって、今もたまにやってるよ。僕らの絆は壊れないし、いつもみんなと話してる。家族だね。GEHENNAはおもしろい話があるよ。前にリノでショウをやったときに、Rhodes(Mickey Featherstone | GEHENNA, SANGRAAL)がブレイクエッジしたことにキレたストレートエッジ・ギャングと大乱闘になったんだ。僕らが何をするかなんてクソどうでもいいじゃん。自分のことは棚に上げやがって。とにかく、僕らも向こうも武装していたから、たくさんの人が病院送りになった。本当ヒドかったよ。暴力は時におもしろくもないものだけど、僕にとってはワイルドな体験だったな」

――こ、怖い……。病院送りはできれば遠慮したいっすね……。IRON LUNGを結成した経緯は?どんな音楽をやりたくて始めたのでしょうか。結成当初によく聴いていた、影響を受けた音楽があれば具体的に教えてください。
 「GOBが終わりかけの頃、Jonがいくつかのショウでドラムを叩いてほしいって誘ってくれたんだ。Brandon(Garibaldi | GOB, DEADBODIESEVERYWHERE)は何か事情があってギグに出られなくなっちゃったみたいで。そのとき、一緒にプレイするのがすごく楽しかったから、新しいバンドを始めることにしたんだよ。それがKRALIZECで、フランク・ハーバートの『デューン』にまつわるバンドだった。ベースレスでブラスト・ビートのバンドをやってみたかったんだよね。すごくいい感じだったよ。それでKRALIZECの練習をしているときに、僕らは古い医療器具に愛着があるっていうことに気付いて。IRON LUNGになろうって決めたのはそのときだね。1950年代にポリオ患者の治療を中心に使用された呼吸器にちなんで名付けたんだ。その頃はDAZZLING KILLMEN、DISCORDANCE AXIS、CABARET VOLTAIRE、ZENI GEVA、BAUHAUS、ベートーヴェン、UNSANE、THE 13TH FLOOR ELEVATORS、MAN IS THE BASTARD、GAUZE、MOBB DEEPとかをたくさん聴いてたよ。僕らはそれぞれいろんな音楽が好きだから、次にどんな音楽を聴くか誰も想像できないと思う」

IRON LUNG | Photo ©J. Donovan Malley
Photo ©J. Donovan Malley

――IRON LUNGの『Demonstrations In Pressure And Volume』(2001, 625 Thrashcore)がリリースされたあとも、Wardさんはどちらかというと“ARTIMUS PYLEの人”という印象だったのですが、初期のIRON LUNGはどういう活動ペースだったのでしょうか。ARTIMUS PYLEは2度も来日していますし、すごくアクティヴだったのではないかと思います。当時「とにかくドラムがやべえ」という感想を多く耳にしたのを覚えていますよ。
 「IRON LUNGを始めてからは、常にIRON LUNGが僕のメイン・バンドだよ。ARTIMUS PYLEは2、3年の間すごく活発だったんだけど、すぐにみんな別の州に引っ越すことになって、あまりやらなくなっちゃったんだ。でも、IRON LUNGより前にARTIMUS PYLEで日本に行ったから、日本のみんなが“ARTIMUS PYLEの人”って思うのはよくわかる。OUR HOUSE(東京・田町)でEPの録音もしたしね。レジェンドたちが使ったスタジオで録音できて、かなり興奮したよ」

――WardさんはCRUCIAL ATTACKでもプレイしていらっしゃいましたが、ストレートエッジなんですか?安直な質問で申し訳ないです……。
 「CRUCIAL ATTACKではベースをプレイしていたんだ。メンバー全員、やったことがない楽器に挑戦してみようっていうバンドだったから、クソみたいなサウンドだったけどね(笑)。僕はトラディショナルな意味でのストレートエッジだって自分から言ってはいないけど、ドラッグもアルコールも摂取したことはないよ。10代の頃に一度だけ噛みタバコを試したことがあるけど、すぐに吐き出しちゃった」

――IRON LUNGがデュオという形態になった理由は?1970年代に同じIRON LUNGという名前のガレージ・サイケ・バンドがいたみたいですけど、彼らもデュオだったらしいですね。全然関係ないとは思いますが……。いわゆるパワーヴァイオレンスの黄金期には、先ほど名前が挙がったDISCORDANCE AXISやMAN IS THE BASTARDのように“一般的なバンド編成”ではないバンドがいくつか存在しましたが、そういう影響もあったのでしょうか。
 「ミニマルなパンクを演奏する新しい方法を試してみたかったんだ。2人だけでどれだけデカい音を出せるのか確かめたくて。必要なものは?ギター、ドラム、ヴォーカル。簡単じゃん。DISCORDANCE AXISとMAN IS THE BASTARDから影響を受けたのは間違いないね。この2バンドは天才だよ。IRON LUNGっていう名前のバンドは他にもいくつかあったんだよね。サイケのやつはかなり良かった。90年代にはメタル・バンドもいたんだよ。そっちはイマイチだったな。そういうことは、IRON LUNGでライヴをやり始めてから知ったんだけどね。僕らはRUDIMENTARY PENIの曲名から名付けたから、同じ名前の他のバンドとは全然関係ないよ」

IRON LUNG | Photo ©Christina Hamilton
Photo ©Christina Hamilton

――現在だと、楽器はちょっと違いますけど、SISSY SPACEKはかなり近い形態ですよね。彼らのことはどう思う?個人的に、SISSY SPACEKはグラインド版のHALF JAPANESEみたいに受け止めているんですけど、IRON LUNGはパワーヴァイオレンス版のSUICIDEみたいに思っています!
 「SUICIDEはすごいバンドだよね!最高の賛辞だな。SISSY SPACEKはクールだし、僕らの友達でもあるんだ。彼らは長い時間をかけて変化を繰り返してきたけど、その成長ぶりを目撃できるのは素晴らしいことだよ。新しい段階に進む度に、考え抜かれているのがわかるしね。めちゃくちゃ尊敬してる。ほとんどのバンドって、年月と共に自分たちがどう成長してゆくかなんて考えてないじゃん?未来のヴィジョンがないっていうか。みんなヴィジョンは持ったほうがいいよ!」

――“鉄の肺”というグループ名は、急性灰白髄炎(ポリオ)の治療に用いられた機器に由来しているとのことですが、どういった意図からこの名前で活動するようになったのですか?昨年は“鉄の肺”の中で70年間もの時間を過ごしたかたの死去が報道されて、個人的にショックを受けました。IRON LUNGは歌詞も医療処置や機器をモチーフに歌っているものが多いですよね。例えばCARCASSは、アニマルライツのバックグラウンドを前提に医学用語をグロテスクに扱っています。IRON LUNGの場合はどうなのでしょう。必ず“死”のイメージがセットになっているぶん、より現実的で陰惨な気持ちになります。
 「さっき言ったようにRUDIMENTARY PENIの曲から着想を得た名前なんだけど、すぐにその機器についての曲を書き始めたよ。最も美しくて、冷酷なマシン。ポリオに罹患して呼吸筋が麻痺した人たちの生命を維持するためによく使われていたんだけど、すべてのウイルスがそうであるように、罹患を直接検査するにはワクチンを介在させないといけないんだよね。僕らはそういう、治療における異常な野蛮さを強調したかったんだ。人間は、頭痛を治すために石で殴り合ったり、足の折れた馬を“治療”するために射殺するくらいにしか進歩していないんじゃないかな。僕らは野生動物とほとんど変わらないと思う。ちなみにCARCASS大好きだよ!」

――めちゃくちゃ下世話なお話なんですけれども、RUDIMENTARY PENIのNick Blinkoさんがカヴァー・アートを描いた『Sexless // No Sex』(2007, Prank)がリリースされたくらいから、IRON LUNGの世間的なイメージがけっこう変わった印象があります。その印象が決定的になったのが、英「Supersonic Festival」への出演です。素晴らしいラインナップのフェスであることは間違いないですし、ぜんぜん悪意はなく、むしろ憧れはあるんですけど、ある種“ヒップな”感じのフェスではあると思うので(笑)、IRON LUNGはヒップスター・パワーヴァイオレンスかあ……って一瞬思っちゃったんですよね……。あくまで日本にいながら少ない情報をかき集めての感想なので、あしからずです。実際はどうだったのでしょう。風向きの変化を感じるようなタイミングってありましたか?
 「それはおもしろい視点だね。僕らは全然ヒップでもクールでもないってば。自分たちの音楽を、聴きたい人に聴かせたいだけ。その方程式の中でも、“人”の部分は僕らにとってそんなに重要じゃないしね。Supersonicは僕らにも異常事態だったんだよ。でも、新しい観客の前でプレイできたのは良かったな。みんな僕らの音楽にショックを受けているみたいだった。楽しかったよ」

――それを聞けてホッと致しました。お2人は「Iron Lung Records」の運営もしていらっしゃいますよね。今やパンクが好きな人であれば120%お世話になっているであろうトップ・レーベルです。どのような経緯で、どんな意図をもってスタートさせたのでしょうか。第1作となったLORDS OF LIGHTの7”をリリースしたときの思い出話を含めて教えてください!
 「僕らがリリースするものを熱心に聴いてくれる人がいるっていうのは、すごくラッキーなことだよね。何人かだけだけど、全部買ってくれている人もいるんだ。僕にとってはクレイジーなことだよ。頻繁にツアーするようになって、世界には注目されていない素晴らしいバンドがたくさんいることに気付かされたから、彼らに光を当てる手伝いがしたいと思ったんだ。LORDS OF LIGHTは間違いなくそのひとつだね。彼らと一緒にショウをやって、圧倒されたよ。独創的で、速くて変な感じ。きっとこれから注目されて、イケてるレーベルからレコードを出すだろうと思っていたんだけど、実際は何も起こらなかったんだよね。その頃、友達のTEEN CTHULHUが1stアルバム(『Simple Elegance』1999, Rock & Roleplay Records)をリリースしたんだけど、信じられないほどすごいアルバムなのに、誰も気にしていないみたいだった。それもあって、LORDS OF LIGHTのことを広めるために、45RPMのレコードを出すことに決めたんだ。僕らのレーベルは全部彼らのせい。彼らがすごいバンドじゃなかったら、僕らが行動を起こすほどの衝動に駆られなかったかもしれないからね。レコードはレビューが載ったりしたけど、誰も彼らの音楽を理解してはくれなかったみたい(笑)。注目させるという目標は達成したけど、みんな期待していたほどLORDS OF LIGHTに夢中になっている感じではなかったな。ライヴを観ないと、彼らの本当の魅力はわからないのかもね。LORDS OF LIGHTは今でも僕らのお気に入りのバンドのひとつだよ」

――熱い……!そして、ひとくちに“パンク”といっても、かなり多様なスタイルの作品をリリースしていらっしゃいますよね。デモがいっぱい送られてくるんじゃないですか?リリースする作品はどのように決定しているのでしょうか。お2人で意見が割れることもある?
 「デモは毎日送られてくるね。めっちゃ来る。ダメなデモもすげー来る(笑)。でも全部聴くようにしてるよ。何時間も何ヶ月もかけて作った音楽を送ってくれるんだから、せめて敬意を払って聴くくらいするのは当然だと思う。もし気に入ったものがあれば、リリースの話になるよ。基本的に、まずはライヴでバンドを観たいんだけど、たまにデモだけ聴いて知らないバンドのレコードをリリースすることもある。僕らの間で意見が分かれることもあるけど、そういう場合はリリースを見送るかな。2人の意見が一致していないとレコードは作らないよ。これは、うまくいかない可能性をフィルタリングする良い方法なんだ」

――なるほど。これはいかにも日本のインタビューという感じで恐縮なのですが……、DREADEYEやKLONNS、RASHŌMONといった日本のバンド、日本と関係の深いバンドもリリースされていますよね。それぞれどのような経緯でリリースに至ったのでしょうか。US本国での反応はどう?
 「恐縮することなんてないよ、僕らのレーベルに興味を持ってくれて感謝してるよ。日本にまつわるリリースは全部、友達との繋がりで実現したものなんだ。DREADEYEは前回僕らが日本に来たとき、思いやりを持って一緒にツアーをしてくれたから、簡単なことだった。彼らのことが大好きだし、バンドも最高だしね。RASHŌMONは、ドラマーのJohn(Seager)がAGHASTにいた頃、ツアー中にウィスコンシン州の小さな町で偶然出会ったんだ。AGHASTと僕らのショウはあり得ない組み合わせだったんだけど、同じものから影響を受けてきたのは明らかだったし、お互い故郷から遠く離れた身ということもあって、仲良くなったんだよね。RASHŌMONが始まってからJohnが音を送ってくれて、僕らは恋に落ちた。あとは知っての通り。KLONNSは、友達のタカシ(Black Hole)が東京で最高のバンドだって教えてくれたんだ。彼のお墨付きは僕らにとってすごく意味のあることだし、曲を聴いた瞬間にリリースしなきゃって思ったよ。KLONNSはシーンをひとつにして、いろいろなところから受けた影響を妥協のない音楽としてプレイしていると思う。まさに僕らが支持するアティテュードなんだよね。USの人たちは国外のバンドに気付くのが遅いんだけど、ばっちりプッシュすれば絶対に好きになってくれる。KLONNSは最近USに来たけど、みんな夢中だったよ。めっちゃ嬉しかったな」

――それは良いお話!興奮しますね。では、「Iron Lung Records」のリリース作品はきっとすべてお気に入りだと思うので、それ以外で最近好きでよく聴いているレコードを5枚教えて!
 「KISSLANDのEP(625 Thrashcore)、SIN TAXの7"(Miracle Cortex)、Crust Warから出たSCUMRAIDの7"、THE FINAL AGONYの新しいEP(Triple-B Records)、NECRON 9のLP(Unlawful Assembly)、あとCICADA(HOLOGRAM, PURE DISGUST etc.のメンバーによる最新バンド)のリリース全部」

――全然5枚に収まらなかったですね、さすがです!お2人は長いこと離れて暮らしていらっしゃるんですよね。寂しいですか?バンド活動もそうですけど、レーベルの運営も大変になってしまう気がするのですが……。
 「そうだね、バンドを始めてからほとんどの時間は離れて暮らしてるね。寂しいかって(笑)?いつも連絡を取り合っているし、よく会うから、寂しくないよ。特に今年に入ってからはライヴをたくさんやるようになったしね。レーベルの仕事は99%僕がやっているんだけど、そんなに大変じゃないよ。難しいのは、長い間家を離れるときだけ。今はオーストラリアにいるし、もうすぐ日本にも行くからね。離れている時間が長くなると、帰ったときにやらなきゃいけないことがたくさん出てくるじゃん。でも気にならないよ」

――お2人とも、普段はどんなお仕事をしていらっしゃるのですか?お仕事だけでいっぱいいっぱいになっちゃうときとかもあるのでしょうか……。
 「普段の仕事がIRON LUNGを定義するわけじゃないからさ、答えたところで読者が退屈するだけだと思うよ」

――す、すみません……。でもWardさんはINNUMERABLE FORMSも大人気でめちゃくちゃお忙しいのではないですか?私はいろんなことをいっぺんにはできない性分なので、たくさんのことをこなせる秘訣が知りたいです……。
 「INNUMERABLE FORMSはここ3年間、実はほとんど何もしていなかったんだ。やっとアルバムを作ったから、直近数ヶ月はちょっと忙しかったけどね。8月にリリース予定なんだけど、今から楽しみ。最高傑作になると思うよ。それぞれが得意なことをやる、っていうのが秘訣になるんじゃないかな。INNUMERABLE FORMSは個々が独自に練習していているから、バンド運営が簡単なんだ。みんなが集まれば、改めて何かを学び直す必要もなく、すぐに仕事に取り掛かれる。実際すごく楽なバンドだよ」

――そうなんですね……参考にします。アルバム楽しみです!これまでにIRON LUNGとして2度来日していらっしゃいますが、それぞれどんなことが印象に残っていますか?震災直後だった初来日も、DREADEYE / DMB PRODUCTIONSとの2度目のツアーも、私たちにとって特別な意味を持つ出来事でした。
 「1回目のときは本当に大変だった。地震が発生した時点ではインドネシアでツアー中だったから、日本に行っても大丈夫なのかどうか、できる限りニュースを確認してた。どのバンドもツアーをキャンセルしているみたいだったから、僕らもキャンセルすべきかどうかサトシさん(鈴木智士 | Gray Window Press)に聞いてみたら、そうするべきではないって言ってくれたから、信じることにしたんだ。彼の言う通りだったよ。ツアーは最高だった。こんなときに来てくれてありがとうって、みんなに言われたよ。マーチの売上のほとんどを救援活動のための義援金に充てた。そうするのが正しいことだと思ったんだ。ツアー中で一番印象に残っているのは、EARTHDOM(東京・新宿)のフロアで、最小限のPAシステムだけで演奏したこと。同じ目の高さでみんなに囲まれて、信じられないくらいのエネルギーだった。本当に感動したよ。2回目はDREADEYEと一緒に回ったんだけど、ツアー開始前に彼らのドラマーが行方不明になってしまうっていう波乱があったんだ。だから僕はDREADEYEの曲を全部覚えて、ツアー中はずっと両方のバンドでドラムを叩いた。最高だったよ。自分たちの音楽を台無しにはしないっていう信頼を僕に託してくれたのが本当に嬉しかった。マジカルな時間だったよ」

Photo ©Kemmy 3000
Photo ©Kemmy 3000

――今回は日本でどんなことをしてみたい?もし探しているレコードとかあれば、ここで言っておくといいかも(笑)。
 「最近、新しいヴィーガン・フードのお店がオープンしたっていう話をよく聞くから、全部行ってみたいな!MMAの試合も生で観てみたい。そうだね、レコードのショッピングはかなりの量になるんじゃないかな。探しているレコードはいくつかあるよ。GRIM『Message』12"、TRANQUILIZER『Tranquilizer』Flexi、CHICKEN BOWELS『Keep Our Fire Burning』7"、Nord『Nord』LP、CONFUSE『Stupid Life』12"、電動マリオネット『Dendö Marionette』Flexi、THE DESTROYUN『Cause Trouble』Flexi、VAPから出てたDISCHARGEの編集盤、JUDAS PRIEST『Unleashed In The East イン・ジ・イースト』LP、DISCLOSE『Tragedy』LP、THE EXECUTE『Blunt Sleazy』12"、GHOUL『Carry Out Fucking』7"、INZEST『Another Religion..... .....Another Violence』Flexi、SO WHAT『Injustice』Flexi、VASILISK『Whirling Dervishes』LPとかね。どれも見つかるかわからないけどね!」

――いくつかはたまに見かける気がしますよ。見つかるといいですね!読者のみなさん、ご報告よろしくです!お忙しい中たくさん答えてくださって、ありがとうございました!
 「こちらこそありがとう。少しの間だけでも日本の音楽シーンの一部になれることを楽しみにしてる。また呼んでくれて光栄だよ。ベストを尽くすぜ!」

Photo ©Kemmy 3000
Photo ©Kemmy 3000

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025| 2025年7月24日(木)
東京 新大久保 EARTHDOM

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 別途ドリンク代)
TIGET
予約
blackhole.kuroiana@gmail.com

[出演]
DREADEYE / IRON LUNG / KISSLAND / KLONNS / ONLY THE LAST SONG

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025| 2025年7月25日(金)
愛知 名古屋 HUCK FINN

開場 19:30 / 開演 20:00
前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 別途ドリンク代)
予約
blackhole.kuroiana@gmail.com | hkf@huckfinn.co.jp

[出演]
FACE CLASHER / IRON LUNG / KISSLAND / VIDEO GIRL

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025| 2025年7月26日(土)
"FUTURE WAVE FEST 2025"
大阪 心斎橋 ANIMA
開場 12:00 / 開演 12:30 / 終演 21:00
前売 5,400円 / 当日 6,400円(税込 / 別途ドリンク代)
U22 3,000円(要ID)
e+

[出演]
ANORAK! / BRAVE OUT / CYCOSIS / DOZEONE / EX-C / GAG / HUMAN GARBAGE / IRON LUNG / KISSLAND / KLONNS / NEGATIVE SUN / RUNNER / SUGAR / TERMINATION / TIVE / TRUE FIGHT / UNHOLY11

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025| 2025年7月27日(日)
大阪 難波 BEARS

開場 18:25 / 開演 19:00
前売 3,000円 / 当日 3,500円(税込 / 別途ドリンク代)
予約
blackhole.kuroiana@gmail.com | nambabears@gmail.com

[出演]
COMPLETED EXPOSITION / IRON LUNG / KISSLAND / OUTGROW MADNESS

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025| 2025年7月28日(月)
東京 中野 MOONSTEP

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 別途ドリンク代)
予約
blackhole.kuroiana@gmail.com | moonstep.nakano@gmail.com

[出演]
IRON LUNG / KISSLAND / leech / MASSPRESS / PATROLTIME

IRON LUNG + KISSLAND Japan Tour 2025| 2025年7月29日(火)
神奈川 西横浜 EL PUENTE

開場 18:30 / 開演 19:00
前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 別途ドリンク代)
予約
blackhole.kuroiana@gmail.com | barelpuente_yokohama@yahoo.co.jp

[出演]
FIGHT IT OUT / IRON LUNG / KISSLAND / 高倉健 / UMBRO

IRON LUNG 'Adapting // Crawling'■ 2025年4月18日(金)発売
IRON LUNG
『Adapting // Crawling』

LUNGS-300
https://ironlungrecords.bandcamp.com/album/adapting-crawling-lungs-300

[収録曲]
01. Adapting
02. Internal Monologue
03. Lifeless Life
04. Shift Work
05. Poisoned Sand
06. Everything Is A Void
07. A Veiled Eye
08. Perfect Ending
09. A Loving Act
10. Purgatory Dust
11. Virus
12. Purgatory Dust (Finale)
13. Acres Of Skin
14. Hospital Tile
15. Cog II
16. HeLa Cells
17. Failure
18. Survived By...