Interview | Kanae Entani


世の中と逆行しているから楽しいのかも

 『1色からはじめる刺繍 花と動物の刺繍と布小物』(コスミック出版)以来5年ぶりの作品集『刺繍でABC』(文化出版局)を2月に刊行した刺繍アーティストのKanae Entani。ハンドメイドの刺繍を手がける一方、かねてから機械刺繍にも興味があったというEntaniが、CORNER PRINTINGの刺繍ディヴィジョン「COEN SHISHU | 公園刺繍」による刺繍ミシンでの制作過程を見学。工場見学後、実際に見た機械刺繍の感想や、刺繍との出会いとその魅力、刺繍アーティストとして活動するに至ったきっかけなどについてお話を伺いました。

 なお本稿の公開を記念して、Kanae Entaniが刺繍をするパンダをデザインした「GOOD STITCH」刺繍ワッペンと、同デザインの刺繍をあしらったドローストリングバッグ(グレー | ベージュ)をCORNER PRINTINGが制作。期間限定で販売します。


取材・文 | 仁田さやか | 2020年3月
撮影| 久保田千史
協力 | COEN SHISHU | 公園刺繍

Kanae Entani | Photo ©久保田千史

――ちょうど『刺繍でABC』が発売されたタイミングで私が連絡したときに、KanaeさんからCORNER PRINTINGの工場で刺繍の過程を見学したいっていうお話をいただいて。CORNER PRINTINGのサービスについてはご存知でしたか?
 「友達からCORNER PRINTINGのことを聞いて知っていて。“刺繍グッズ作れるよ”って聞いていたから、同じものをそれなりの数で作るイメージがあったんですけど、1個からでも作れるんですね。それならお母さん、お父さんが子供のためにひとつだけ作ることもできますね。1個あたりの値段が最初からわかるから頼みやすい」

――誕生日とか、記念日のプレゼントにひとつだけ何か作る、っていう利用の仕方もできます。
 「それもいいですね。私は普段、手刺繍で作品を作っていますが、機械刺繍にも興味があって。CORNER PRINTINGでも刺繍ができることを知って、どのように作られているのか見学してみたいなと思っていました」

――実際に見学してみてどうでしたか?
 「お願いしたデザイン、これが40分でできるってすごいなあと思いました。あらかじめ細かい表現は難しいと言われていて、やっぱり目がちょっとデザインしたものとは違う感じになっているけど、ほかはデザインした通りにできましたね」

COEN SHISHU | CORNER PRINTING | Photo ©久保田千史

――手刺繍は時間がかかるような、糸で埋めるようなデザインは機械だと短時間できれいにできてますね。
 「手に比べるとフラットに仕上がるから、ちょっと派手な色とか派手なデザイン、縫い潰すようなデザインのほうが見応えがあっていいなと思いました。あと、細い線よりも太い線のほうがうまくできる気がします。例えば顔の部分だけは手で刺繍するとか、そういう機械刺繍と手刺繍を混ぜて作るのもいいかも。やっぱり目鼻は1mmで変わっちゃうから、その調整をしながらできるのが手刺繍。でもユニオンジャックみたいに、縫い潰すデザインは機械でやると素晴らしいと思いました!リピートの柄は手刺繍だと時間がかかりすぎて難しいけど、機械だと取り入れやすいですね。機械のほうが均一に表現できるので、文字も向いていそうです。」

――Instagramに載っていたのがそういう感じでした。

 「刺繍のアカウントもあるんですね!フォローしようっと。あーこういうバッジも作ってみたい。このくらいはっきりした図案だと、すごくきれいにできますね」

 「ワッペンも作れるんだ。いいですね。ワッペン作ろうかな!」

――Kanaeさんの作品でワッペンってこれまでないですよね。ワッペンあったらいいなあ。
 「どういうデザインにしようかなあ。ペンギンとか、パンダとかもいいかも。楽しみです!」

――今着てる服もご自身で刺繍したものですか?
 「そうです。これは手刺繍で、こういう立体的なのは機械刺繍では難しいと思う。洗濯していくと、風合いが変わっていくんですよね。もっと最初はピシッとしてたんだけど。刺繍って、もともとは布を丈夫にするために施されていたものでもあるから結構長持ちするし。そういうところも、いいところかもしれません」

Kanae Entani | Photo ©久保田千史

――そういう、刺繍の歴史的なところは学校で学んだんですか?
 「歴史についてはほとんど独学です。19歳のときにイギリスの美術大学に入学したんだけど、とても自由で、好きなものを作って先生に見せたりクラスで発表したり、という感じで、黒板に向かって刺繍の歴史や技術を学ぶような感じではなかったです」

――そもそも海外の学校に行こうと思った理由は?
 「ずっと興味があって海外に住んでみたいと思っていて。当時の担任の先生が留学経験のある英語の先生で、“英語を勉強しに留学するより、英語を使って何かを勉強する方が楽しいし、英語も身になるよ”とアドバイスをもらって、大学に行こうかなと思って。外国に住むことの次に興味があったのが美術だったり洋服を作ることだったから、自然とテキスタイルに興味を持ちました。最初はニットを専攻していたんだけど、ニットは数学的というか、目を落としたら形が変わっちゃったり、油断ができなくて、あまり几帳面じゃない自分には向いてなかったんです。でも刺繍ってわりと自由で、絵を描くみたいに色を後から重ねたり、気が向いたときに家でも手に取ったりできる。そんな手軽さも魅力でした」

――もともとは編み物が好きだったんですか?
 「子供の頃からけっこうテディベア作ったり、編み物したりとか、そういうのは好きでした。誰かに習ったわけではなく、手芸本を読んだりして、見よう見まねで全部独学でした」

Kanae Entani『刺繍でABC』

――大学では刺繍の授業もあったんですか?
 「テキスタイルの勉強をしていたから、プリントと刺繍、織りとニットは一通り全部やっていて。2年生から自分でコースを選んで専攻しました。課題がいっぱい出るというよりは、行って、見せての繰り返し。3ヶ月に1回くらい全体で作品を発表しました。とことん好きなことに打ち込める感じが好きでした」

――留学前から英語は得意だったんですか?
 「1年間準備してから行ったから、喋れてると思っていたんだけど、やっぱり最初は全然ついていけなくて、トイレで泣いたりしていました(笑)。周りはみんなイギリス人で、大学には日本人もいたけど、自分のクラスにはいなくて。でも言葉だけじゃなくて、デザインとか絵とか、お互いの作品を観ることでコミュニケーションを取っていて。1年目は辛かったけど、2年目以降は大丈夫だった。若かったのもあるし、周りの友達もみんな優しかったから、環境に慣れたらだんだん喋れるようになっていきました」

――英語圏のなかでもイギリスを選んだ理由は?
 「英語圏に行きたかったのですが、寒いところは嫌だなと思っていました。ニューヨークは車がなくても平気そうだけど、冬はすごく寒いイメージがあって。イギリスは家族旅行で行ったことがあったから、なんとなく生活する想像がついたということもありました。でも、ずっとヨーロッパに行きたかったのかもしれないです。在学中は旅行に行くのが好きで、フランス、イタリア、ベルギーなど、どこでも近いし、お休みのたびにいろいろなところに行っていました。旅から刺繍のアイディアをもらうことが多くて。イギリスは、国外にすぐ出られるところも良かったです」

――旅からどうアイディアを思いつくんでしょう?
 「旅行中って携帯電話を見なくなって、目の前にあるものに気持ちをフォーカスできるので。美術館に行ったり、その土地の景色を見たり。あと人の家のお庭を見たりするのが好きです。人がいなくても、人の気配がするみたいな」

Kanae Entani『刺繍でABC』

――洗濯物とか。
 「そう。植木鉢とか。そういう、人の暮らしを垣間見ることができるようなものが好きで。やっぱり国によって全然違うなあと思います。例えば壁の色ひとつとっても、全部柄だったり、鮮やかな色だったり、歴史に残る建物は古いまま大事に残されていたり。古いものからインスピレーションを受けることも多くて。ヨーロッパって新しい建物をあまり建てないから、古いものを残しているところとか、見ていておもしろいです」

――本格的に手刺繍をやろうって思ったのはいつ?
 「学校を卒業してから、ロンドンで2年の就労ビザが取れたので、ファッションの仕事をしていました。Lizzie Finnっていうイラストレーター / アート・ディレクターの下でアシスタントをしながら、事務所に所属して定期的に展示会で販売する刺繍のサンプルを作っていました。今は刺繍糸と針で制作をすることが多いけど、その頃はカットワークとか、クチュールっぽい立体的なものとか。リボン刺繍なども試していました。ファッションのコレクションで使うサンプルだから、いわゆる刺繍というものよりももっと立体的で、透ける素材を使ったり、春夏はこの素材、秋冬はこの素材ってトレンドに合わせて決めて制作をしていました。これが洋服になったらこんな感じです、みたいな刺繍のサンプルをいっぱい作って、所属していた事務所の人がファッション関係の人が行く布の展示会に持っていってくれるのですが、誰に売れたかとかは教えてくれないので、誰が買ったかもわからなくてどうも手応えがなくて。ファッションデザイナーの方は、けっこうリサーチとかでいっぱい買うから、使われなかったかもしれないし、使われたかもしれないし、それもわからない。作品とは言っても自分に著作権はないし、やりがいが感じられなくて。特に自分の作品で生きていこうって気合を入れていたわけじゃないんだけど、このまま見えない誰かのためにデザインしていても、やりたいことじゃないなあ、と思って悩んでいました。当時はNikeのコレクション用のスポーツウェアに手刺繍を施すお仕事も経験して、そういう直接自分がデザイナーとして契約してオーダーを受けるほうがクライアントからの反応もわかるし、作品がどう使われたのかもわかるから、おもしろいなと思って」

――たしかに、何に使われているかがわからないと、原動力がない状態……。
 「テキスタイルは、そういうファッションの歯車になっちゃうことが多くて、それってあまりおもしろくないなと思っていました。それでビザが切れる2年が経つ頃、2011年の1月に自分は本当は何がしたいんだろうと考えながら日本に帰ってきて。そのときに東日本大震災があったから、仕事を探そうとしたんだけど、でも最初で最後でもいいから自分で何かやりたいと思って、そのときに初めて自分の作品の展示をさせてもらいました。自分で初めて勇気を出して好きなセレクトショップに行って、こういうの作ってるんです、展示させてもらえませんか?って訊いたら、“いいですよ”と言ってもらえました。その展示がきっかけで、“うちでもやってくれませんか”ってほかのお店やギャラリーからもお誘いをいただけるようになりました。何かすごいことを成し遂げようとか、大きな目標があって始めたわけじゃないけど、ご縁みたいな感じで今まで続いてきた経緯があります」

Kanae Entani | Photo ©久保田千史

――日本に戻ってきたときは何歳?
 「ちょうど帰ってきて28才になりました。今思えば、30手前にして、今後どうしようかなってちょっと焦っていました。今後ずっと日本にいたいのかどうかわからなかったけど、イギリス生活に行き詰まりを感じていて。それが転換期かな。ロンドンでは暇になることが不安でいろいろ引き受けすぎて、何がやりたいのかわからなくなっちゃったのもあるし、自分の作品を作る暇もあまりなかったし。でも自分の作品って、求められていないと作っている目的がわからなくなっちゃうので、そんなに作ってなかったけど。私は意外と求められていることをやっているほうが楽しいのかもしれないと思います。スペースがあって“ここで展示してください”とか、“こういうのを作りましょう”って、たいていお誘いをもらってやっていて。最初にセレクトショップで展示したときは、自分でやりたいってすごく思ってやらせてもらったけど、それ以外のこと自分から持ちかけたり、営業したりして始まったというよりはだいたい向こうからやってきた感じでした。今オーダーをいただくお仕事は、わたしのこのスタイルを知った上でお願いされることが多いので、好きじゃないことはやらなくていいから、それがすごく楽しいです。例えば、“今回全部黄色にしてください”みたいな制限のある注文はあまりなくて、“なんとなくこういうイメージですが、Kanaeさんの好きなように作ってください”と言われることが多い」

――学校でも、就職先でもあまり教わることはなく続けていたということは、ほぼ独学でここまでやってきたということ?
 「長くやっていると、そんなに教えてもらえなくてもできる部分は多いと思います。小説家が、文章をすごく勉強して小説家になるわけじゃないように。アイディアが増えればできることが増えるから、全部が素材の組み合わせとアイディアの組み合わせだと思います。その積み重ね。例えばプラスチックに刺繍したら全部違うものになるし、糸をひとつ毛糸にしたら全然違うものになるし、そういう広がりはずっとあるのかなと思う」

――色もそうだし、素材もそうだし、組み合わせで印象が変わるから、選ぶ時間も楽しいですよね。
 「私の刺繍のワークショップでは、図案をいくつか用意して、それぞれ好きな図案を選んで作ってもらっています。毎回いくつも図案を用意するのは大変なので、ひとつの図案でも良いのですが、向こうの美大では、“やりたい気持ちが先にあったほうがいい”ってすごく言われたし、技術を教えるよりも“自分が何を一番大事にしているかを考えろ”っていつも言われていたので、刺繍の技術も大事だけど、生徒さんのこれが作りたい!という気持ちがすごく大事だと思っています。美大の在学中は、“やりたいものが、作りたいものがあれば、その気持ちが一番大事”っていうことをすごく言われたし、先生は常にそこを見てくれた気がします。“あなたらしいね”みたいなことはすごい言ってくれたので、私も人に教える時はそういう部分を伝えられたらいいなと思っています」

Kanae Entani『刺繍でABC』

――同級生で今刺繍をやっている人はいますか?
 「刺繍自体やっている人があまりいなかったかもしれないです。今刺繍作家で知り合いの人も、最初から刺繍やっていた人はあまりいなくて、美大では絵を描いていた人だったり、バックグラウンドはさまざまです」

――確かに絵を描ける人は刺繍のデザインもできるでしょうし。
 「手刺繍のいいところは、刺繍が下手でも絵が描ければ味があるものになるし、逆に絵があまり書けなくても刺繍が上手だったらきれいな図案になるし、技術が五角形でパーフェクトじゃなくてもいいものができると思う。上手でも下手でも、その人の味があるものになるのが良いところだと思う」

――『刺繍でABC』のように図案があると助かるという人も多いと思います。
 「草花の図案は昔からあるものですが、色使いが現代的だと新しいものに見えるのかなと思います」

Kanae Entani『刺繍でABC』

――色によって変わってくる?
 「全然印象が違うと思います。他の刺繍作家さんに、Kanaeさんは緑の色、私が選ばない色を使うね、って言われて。その方はクラシックな作風で、渋めの葉っぱの色が多いみたいで。わたしは現実の草花にはないようなブルーがかった色を選んでいたりして」

――『刺繍でABC』の色使いもすてきで、かわいい刺繍がいっぱいです。
 「この本に出てくる刺繍自体はそんなに難しくないと思います。挑戦する人が難しいのは、刺繍よりも、ぬいぐるみなどの立体の作品に綿を入れるニュアンスの方なんじゃないかな、膨らませ方とか」

――水色や薄紫が印象的な「Ice」の刺繍は、これまでのKanaeさんの作品でもあまり見たことのないデザインと色味ですね。
 「こういう氷の塗りつぶしとかは機械刺繍でもかわいくできそうですね。この本は発売してから感想をくれる人が多くて。ときどきInstagramで、本の中の作品を作った人は、よかったら見せてくださいねとハッシュタグをつけて呼びかけていて(#kanaeentani #刺繍でABC)。作った人がタグをつけてくださるのを見るのが好きです。皆さんとても上手なんです」

Kanae Entani『刺繍でABC』

――ほんとだ。みんなすごく上手!
 「上手ですよね。皆さんが感想くれるのはすごくうれしいです。台湾の高雄で展示をやったきっかけもInstagramで。高雄の展示を企画してくれた人は、もともとわたしがアシスタントをしていたDonna Wilsonをフォローしていて、わたしが2年前にイギリスでDonnaの展示に参加したときに、わたしのこともフォローしてくれたみたいで、本の出版の告知をしたときに“おめでとうございます”って連絡が来たんです。それで“もしよかったらうちでも展示をしませんか”と言ってくれて。台湾の人はかわいいものが好きみたい。2日だけ在廊したんだけど“刺繍はしたことないけど、かわいいものが好きで”という人も多かったです」

――刺繍教室はこれからもやる予定ですか?
 「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期してるけど、また落ち着いたら再開したいと思っています。生徒さんになかなか会えない代わりに、今はInstagramのInsta Liveという機能で、だいたい日曜日の15時から、オンライン配信で刺繍レッスンをしています。Insta Liveだとリアルタイムで質問したりもできるし、遠方の方も参加できるのが、オンラインの良さかなと思っています。日々制作だけしていると、人と関わることがそんなにないから。“刺繍して楽しかった”って言われると私も楽しくて、すごくやりがいを感じます」

――やっぱり、ひとりひとり違う仕上がりになりますか?
 「うん、すごく性格が出ると思う。みんなそれぞれこういう感じで仕事してるんだろうな、っていうのがわかる。“先生、葉っぱの色どっちがいいですか?”とか確認したい人もいるし、黙々と集中みたいな人もいるし、おしゃべり好きな人もいるし」

――おしゃべりしてたら刺繍できないんじゃ?
 「うん、全然進まないね(笑)。でもゆっくりでも、誰よりも楽しそうな人もいるし。いろいろな人がいます」

――来年は刺繍作家としてスタートして10周年?
 「そうなんです。10年あっという間だったな。スタートした頃は色々不安で、仕事ってもっと辛いものかと思っていましたが、楽しいことのほうが続くのかもしれないです」

――やっぱり刺繍をしているときが一番楽しい?
 「そうですね。刺繍をやっているときも楽しいし、制作していて、出来上がったものを見るのも楽しいし。刺繍を通じて会う人はみんないい人だなと思います。手間をいとわない人だったり、手で作るのが好きな人は、穏やかな人が多いと思う」

Kanae Entani | Photo ©久保田千史

――心に余裕がないと刺繍はできない?
 「うん、急いではできないですね。急がなくていいっていうのも楽しいです。世の中急がないといけないことのほうが多いし、速さはすごく大事だし、生産性を求められているけど、刺繍は急いだらいいものができないと思います。急がなくていいのは、今の世の中と逆行しているから楽しいのかも。早く仕上げようとあまり思わないです。教室も、みんなゆっくりしに来るって感じかもしれません。がむしゃらに作るぞというよりかは、その豊かな時間を楽しめるというのが刺繍の楽しみ方なのかな」

――確かに『刺繍でABC』を眺めているだけでも、穏やかなというか、時間の流れがゆっくりな気がします。
 「そうかもしれません。昔からある技法っていうのがそうさせるのかな。自分が使っている道具とかも昔から変わってないんですよね」

――今後やりたいことは?
 「どうしてもやりたいことあってあまりなくて。誰かがやりましょうと言ってくれたことを全力でやるタイプかもしれません。映画に関わる作品を作ったり、小説の装丁もやってみたいです。ひとりではできないことがやってみたいかな。刺繍のアニメーションはいつかまたやりたいなって思っています」

――アニメーションを作るのはとても大変そう。
 「Eテレの仕事したときには、5分ごとぐらいに刺繍を進めたのを定位置でコマ撮りして。スタジオで15時間ぐらいずっと縫い続けて。それをちょっとずつ写真撮って、コマ撮りで繋げてムーヴィーにする感じで。5秒のアニメーションのために15時間くらい刺繍をしていました。そのときは作家として始めて3年目くらいだったから、今だったらもっと早くできるかな。悩むこともあるけれど、自分が枯渇しないように、楽しく制作を続けていきたいです。考え込んで仕事をするとすり減っちゃうから、ひらめきや、その時の作りたいと思った気持ちを大切にしたいです」

Kanae Entani Official site | http://www.kanaeentani.co.uk/
Kanae Entani Instagram | https://www.instagram.com/kanaeembroidery/

Kanae Entani『刺繍でABC』■ 2020年2月24日(月・祝)発売
Kanae Entani
刺繍でABC

文化出版局 | 税込1650円
ISBN 978-4-579-11695-9