文 | SHV (KLONNS)
写真 | KLONNS
台湾編 1
どうも、KLONNSでシンガーを務めるSHVです。昨年からAVEで連載させていただいているアジア・ツアー紀行もいよいよ終盤。2025年2月に敢行したバンド史上2度目となる台湾ツアーについて報告させていただきます!
今回は初めて自分たちから現地のプロモーターにお願いして組んでもらった海外ツアー。前回鏡 KAGAMIと共に行った2023年の台湾ツアーがあまりに楽しく、思い出深かったので、1st LPのリリース・ツアーの一環としてどうしてももう一度行きたいと思い、コンタクトを取った次第です。前回と同じく台北のパンク・コレクティヴ「Suck Glue Boys」の中心人物であるWilly氏(Willy Chen 陳韋綸)に連絡した結果、快く引き受けていただけて実現しました。前回行かなかった都市に行きたいという要望を伝えたところ、初日は台南、2日目は台北の計2日間のショート・ツアーに決定!
観光 + 1797071の台北公演もあったので、ツアー初日の2月22日(土)より早く20日(木)に現地入りしたのですが、完全に遊んでいただけなので、その日の出来事は割愛(笑)。写真のみでお楽しみください。ただ、ひとつだけ言わせてください。南機場夜市で食べた“本物”のルーローハン、あまりに深すぎました……。
ちなみにフライトは初めて台湾のエバー航空をチョイスしました。スクートとかタイガーエアよりは少し高いですが、快適かつ機内食もおいしくて、大変おすすめです。預け荷物も23kgまで無料なので、物販や機材運搬がある場合はかなり助かります。













それでは時間を少し早送りして、メンバーが全員集合した21日(土)の夜からレポートを開始します!
夜10時頃、遅れて日本を出発していたOkamotoとMiuraから無事台北入りしたとの連絡。2人はWillyが空港でピックアップしてくれることに。全員集合したら軽くスタジオに入ることになっていたため、彼らの到着までREVOLVERで待機することにしました。REVOLVERは台北のパンク / ハードコア、ノイズなどアンダーグラウンドな音楽シーンでは定番のヴェニューで、ずっと行ってみたかった場所。この日の深夜、前回の台湾ツアーでも我々をアテンドしてくれたLoftpouが主催するイベントに1797071が出演するので、もともとスタジオ後に遊びに行く予定だったのですが、スタジオの時間までやることもないので、サウンドチェックを見学させてもらうことにしました。
REVOLVERに到着すると、エントランス付近に異様な人だかりが。デカめのイベントでもやっていたのかな?と思ったら、1階がエントランスで立ち飲みもできる仕様のクラフトビール・バーになっており、よく考えてみたらこの日は華金。ほぼイベントとは関係ない飲み客でした(笑)。台湾の定番ビール『金牌』はもちろん、いろいろなクラフト・ビールをタップで飲める最高な空間でした。奥の階段を上がるとライヴ・スペースがあり、キャパ100人くらいの広さながら横幅が広く、ステージも50cmくらいのちょうどいい高さで、ハードコア向きの造りだな、という印象。いつかプレイしてみたい……!

あっという間に時間が来たので、Zieと2人で電車に乗ってスタジオ「類比裝置音樂工作室」へ。台北の隣の新北市に位置し、REVOLVERから20分かからないくらいの距離。池袋から和光市へ行くような感覚ですかね.。閑静な住宅街にあるアパートの地下室がスタジオになっており、夜遅かったせいもあってかなり見つけづらかったです。Chen(Chen Yi 陳逸 | TOXIC BALD, OOZEE | TWIN PEAKS Records)の友達が運営している場所らしく、明らかにストーンドしたかたがたとめちゃくちゃ元気な犬が出迎えてくれました(笑)。いわゆる日本の練習スタジオのような感じではなく、学校の部室のような雰囲気で、パンクやロックが好きな若者の溜まり場という感じがして居心地がよかったです。Chenといろいろ話しているうちに、OkamotoとMiuraが到着。一刻も早くREVOLVERに戻りたかった我々は15分くらいで練習を済ませ、Willyに運転してもらって再び台北市内へ戻りました。

REVOLVERに到着すると、ちょうどLoftpouと台湾人アーティスト・Kaiweiによるデュオが演奏中でギリギリ間に合った!と歓喜するも、間もなく終了……。SVBKVLTとかから出ていそうなインダストリアル度高いエクスペリメンタル・ミュージックで好みな感じだったのでもっと観たかった……。1797071のライヴはいつもよりアグレッシヴなパフォーマンスで観客の心を掴んでいたと思います。うまいビールを飲みつつ過ごしていると、あっという間にトリのBetelnut Kangarooの出番に。その彼のパフォーマンスがツアー中ベスト級に素晴らしかった……。我々のツアーとは関係ありませんが(笑)。TWIN PEAKS Recordsからリリースもしているアーティストで、ダンジョン・シンセとして紹介されていましたが、RPG感よりもむしろオリエンタルでプログの風味が残っているタイプのニューエイジ・アンビエントとしても楽しめるんじゃないでしょうか。ちなみに彼はDOPE PURPLEというサイケ・バンドのメンバーでもあり、どこかで聞いた名前だなと思ったら、いつだかROTTENLAVA II宅でレコードを聴かせてもらったバンドでした。このタイミングで巡り合えるとは……!


深夜3時過ぎにイベント終了。この時間帯に終わるイベントって日本ではほぼないと思うのですが、台湾ではわりとあるんでしょうか?軽く談笑してホテルへ帰宿。リサーチにリサーチを重ねてREVOLVER徒歩圏内の宿にして大正解でした。即就寝!

朝10時前に起床。やや寝不足でしたが、ホテルが11時チェックアウトだったのでだいぶ助かりました。ちなみに朝食付きと聞いていたのですが、朝食券という名の近所の全家(ファミリーマート)で使える300円分くらいのチケットで少し落胆……。
Willyと、そのパートナーであり、ツアー・ポスターやシャツのデザインを担当してくれた最高のデザイナー・Mudan(Mudan Yang 楊牡丹)がタクシーでピックアップしてくれて台北駅へ。今回の台北→台南への移動は特急電車。「高鐵」と呼ばれる台湾版新幹線だと1時間半くらいで着くらしいのですが、我々が乗った特急では4時間ほどかかりました。車内は少し古めの日本の新幹線を思い出させる感じですが、各席に足台が付いていてけっこう快適。台北→台南間の距離は約300kmほどで東京→名古屋よりも近く、あとで調べたら運賃は1人3,000円程度。電車だけでなくタクシーなどの移動手段も日本と比べてかなり格安です。ちなみに台北駅の駅弁が名物らしいのですが、売店が見つからず。仕方なく改札内の全家で適当に買った麻辣混ぜそば的なものを食べたのですが、コンビニ弁当としてはあり得ないくらい辛くて無事胃が死亡……。先が思いやられます。

16時頃台南駅に到着。台北は思ったより肌寒かったのですが、台南は暖かな陽気に包まれており、初夏の雰囲気。台北と比べてより南国なムードで、どこか沖縄を想起させる街並みでした。とか言いつつ沖縄は中学生以来一度も行っていないので、おぼろげな記憶ですが……(笑)。


宿のチェックインを済ませ、本日のヴェニューである「TCRC」へ。台南の定番ヴェニューで、ライヴができるバーといった雰囲気。ただしバー・カウンターはなく、お客さんはエントランス付近にある冷蔵庫からドリンクを取って購入するスタイルでした。CDショップとしての側面もあるようで、台湾のバンド / アーティストを中心にたくさんのCDが陳列されていました。キャパは100入るか入らないかくらいで、東京の会場で例えるなら渋谷 Ruby Roomが近いかもしれません。L-SCHEMAのドラマー・新道さん(新道文宜 | CROCODELIA 幻迷魚鱷, The Creepy Tones)曰く、TCRCはかなりレジェンダリーな場所だそうですが、最近は台南でのロックやパンクのイベントはめっきり減ってしまっていて、月に数えるほどしかイベントがないのだそうです。この日の対バンも、台北のバンドと高雄のバンドだったので、台南自体には現状あまりパンク / ハードコアのシーンがないのかもしれません。


サウンドチェック後、夕食を食べようという流れになったのですが、筆者は麻辣まぜそばによって胃をズタズタにされていたため、宿でスタート時間まで休むことに……。諸事情でほぼ眠れていない状態で渡航したこともあり、この時点でかなり身体へのダメージがきつかったのですが、少し寝てなんとか回復。ちなみに他のみんなは激うま麺料理を食べたらしい……。羨ましい……。
会場に戻るとトッパーの時点でかなりのお客さんが。しかも、半分以上は東南アジア系のかたがたで、自分は一体今どこにいるんだという感覚に。それもそのはず、1バンド目のSOUTHERN RIOTは台湾・高雄市を拠点とするインドネシア人によるメタルパンク・バンド。台湾には昔からたくさんのインドネシア移民がいるそうで、その中でもパンク・コミュニティが形成されているようです。そういえば前回のツアーでの台中公演のときも、インドネシアから観に来たという、PAIN OF TRUTHのシャツを着たハードコア・キッズがいたので、けっこう気軽に行き来しているのかもしれません。
2バンド目は台北のL-SCHEMA。前回のツアーはもちろん、彼らの東京公演でも先日の香港のフェスでも共演しているので、もはやお馴染みですね。大阪クラスト直系の轟音Dビート・ノイズ・クラッシャー・サウンドをかましていました。
転換時間にせっかくなので近隣を散歩してみると、大量の提灯がぶら下がった通りを発見!どうやらたまたまランタン・フェスティヴァルの開催期間だったらしく、期せずして個人的に興味があった台湾のランタン文化を垣間見ることができて感激しました。そのまま奥に進むと「普濟殿」という、台湾で最も古い王爺廟(中華圏における民間信仰の祭祀施設)のひとつがありました。その美しい造形もさることながら、民族楽器のストリート演奏なども行われていて、見どころ満載でした。散歩して大正解……。





会場に戻ると、3バンド目のBLADEの演奏が始まっていました。“Kaohsiung City Hardcore”を標榜する若手ハードコア・バンドで、去年くらいからSNSで繋がっていたので、共演できて嬉しかったです。ベースはDEFEAT THE GIANTのBobでした。そのDEFEAT THE GIANTらとともに「DIRTI」というコレクティヴを形成しており、KRUELTYやOTUSとも共演済み。これからの活躍に期待です。ちなみにギター・アンプは彼らのMesa Boogieを使わせてもらいました。この場を借りて改めて感謝!

そして我々KLONNSの出番。正直体調は最悪でしたが、気合でぶちかましました。かなりいい反応をもらえたと思います。地方都市としてはけっこう客入りも良かったのではないでしょうか。中にはフィリピンからわざわざ観に来てくれたかたがたもいて嬉しかったです。いつかマニラでもプレイしたいですね。終演後に台中市在住のインドネシア人の女性から、『INDIE PULSE』というファンジンの取材ということで、まさかのその場でショート・インタビューを収録されたのですが、全然言葉が出てこず(笑)。すいませんでした……。他にも前回の台中公演に来てくれたジャック・スパロウみたいな見た目のお兄さん、ウサギ耳付けたゴスロリ女性と極限までパンプアップした男性のカップル(?)など、お客さんの濃さが異常で見どころ満載でした。やはりどの国も南部が深いのかもしれない……。


台湾パンク・シーンにおいては終演後にお客さんも含めてレストランへ移動して打ち上げ、という流れが定番なのですが、この日も例に漏れずその流れに。今回は台湾式の焼き鳥屋にイン。ちなみに台南の料理は台北とはかなり味付けが違って、砂糖多めの甘い味が基本らしいです。しかし、焼き鳥は塩味で頼んだので、特に甘味は感じず(笑)。台北のみなさんは台南のほうが圧倒的に飯がうまいと言っていましたが、個人的には甲乙付け難いという感じ。余談ですが、打ち上げの席で得た情報によると、台湾最東部の都市・台東には台湾原住民のかたがやっているバンドやそのシーンがあるそうで、かなり興味をそそられました。BLADEのメンバーも「次は高雄でもやろう!」と言ってくれたので、ここまで来たら台湾の主要都市全制覇したいですね。あと、ビンロウ(台湾名物の嚙みたばこ)を齧ってからビールを飲むと甘く感じるという、どうでもよすぎる豆知識も得ました。う~ん、深いですね……。


夜も更けてきたので帰宿してシャワー浴びて就寝!といきたいところでしたが、ここで悪意と罠が待ち受ける……。もはやツアーの恒例行事ですが、シャワーのお湯が出ない問題発生!洗面台は普通にお湯が出るのになぜかシャワーだけ出ない、というか水滴が落ちる程度の水圧……。いや、水圧という言葉が使えるレベルの土俵にすら上がっていません……。ちなみに冷水は普通の水圧で出ました。なんでだよ(笑)。どうしても冷水を浴びたくなかったので、苦肉の策で30分くらいかけて洗面台からコップでお湯をすくって浴びました。桶が欲しかった……。
ひとまず初日はなんとか無事終了!翌日は早くも台北で最終日ということで、後編に続きます。
■ 2024年4月26日(金)発売
KLONNS
『Heaven』
LUNGS-270 | BHR039
https://ironlungrecords.bandcamp.com/album/heaven-lungs-270
[収録曲]
01. Plug-In prod. by Shine of Ugly Jewel
02. Heathen
03. Creep
04. Beherit feat. Arisa Katsu, Bl00dR4y, Golpe Mortal, Lil-D, O.Tatakau, SAGO & 1797071
05. Realm feat. セーラーかんな子
06. Another
07. Nemesis
08. Drown
09. Hill
10. Replica feat. O.Tatakau & 富烈
11. Heaven feat. Golpe Mortal
12. Un-Plug prod. by Shine of Ugly Jewel