Interview | 黒岡まさひろ + 松村拓海


78歳の僕が現代に戻ってきた設定

 ある日、黒岡くんから「インタビューをしてほしい」というメールが届いた。いつも“言いたいこと、やりたいこと”はたくさんある人だと知っていたが、そのメールには“自分の思いを伝える”というより“話したい”気持ちがあった。それは、黒岡まさひろというミュージシャンの変化でもあると感じた。実際、昨年(2023年)、東京・阿佐ヶ谷 Rojiで観たトリオ編成、黒岡まさひろocean wingのライヴで、彼の音楽の向かう矛先が少し変わってきていたことを、ぼくもなんとなく気がついていたのだ。

 インタビューは、まずは2015年のホライズン山下宅配便の活動休止以降の音楽活動を振り返った。そして、その中で起きた音楽活動への心境の変化から発展したトリオ、カルテットでの活動へ。昨年11月には、松村拓海(fl)と内田 翼(steelpan)と組んだ黒岡トリオ名義でのアルバム『きらめき』、松村、厚海義朗(b)、宮坂遼大郎(conga)による黒岡カルテット名義のアルバム『ほっちお』を配信で同時リリース(両作は、現在CDエディションとしても発売中)。今年に入ってからは黒岡カルテットに内田を加えた黒岡クインテットも始動させている。インタビューでは、トリオ / カルテット / クインテットすべてに参加している松村にも加わってもらった。トリオとカルテット、ふたつの作品には黒岡の一貫性と近年の変化、その両方がよく表れている。そして、このインタビュー自体が、インディ・ミュージシャンとして自分のやりたいこと、やるべきことを試行錯誤しながら今も貫いている者の証言として普遍的な意味を持つ、とても興味深い内容になったと思う。


取材・文 | 松永良平 | 2023年12月
黒岡まさひろ, 松村拓海, 松永良平
左から松村拓海、黒岡まさひろ、聞き手の松永良平

――ホライズン山下宅配便の休止(2015年12月に発表)って、やっぱりすごくショックだったんです。変な言いかたですけど、ホライズンみたいなバンドって何年か活動しない時期があってもずっと続いていくものだと思っていたから。
K 「うんうん。そうですね。僕も続けたいと思っていました。活動を休止するかどうか決めきれないまま、それまで貯めてきたホライズン基金を使ってメンバー全員でインドに行きました。夜にはバーやホテルの部屋で話をして、結局成田で活動休止を決めました」

――その後はしばらくソロ活動に。
K 「自分でやるしかないなと思ったんです。まずは自分用にけっこういいガット・ギターを御茶ノ水に買いに行って始めることにしました。最初はホライズンの残り香みたいな感じで、ソロでもバンドの曲をやったり、はたまたそのときのテンションで即興の曲を歌ったりしていました。同時に黒岡オーケストラが始まって、シンクロ(片岡シン + 黒岡)や、名古屋のバンド・紙コップスとの新しい注文(紙コップス + 黒岡)とかいろいろやってはいましたね。それで、そのうちコロナ禍になりました。ライヴが全部なくなったこともあり、素直にリスナーに戻って、自分が好きだった音楽や新しい音楽をもう一度聴き始めました」

――みんなそういう感じになりましたよね。コロナ禍が、落ち着いて考える時間をくれた。
K 「まあ、コロナを利用して自分を再発見した時期でした。そしたら、古美術というフォーク・ユニットのオファーが来まして」

――古美術とは、2020年に公開された映画『音楽』に登場するフォーク・サークルの人たち、ですよね。ホライズンの伴瀬朝彦くんが音楽担当だった流れで、黒岡くんが起用され、期せずして、古美術の歌声は元ホライズンのふたりによるデュオとなりました。
K 「映画用にいくつか録音をしたんですが、その古美術が実体化したライヴを2022年に武蔵小金井のホール(9月23日 東京・小金井 宮地楽器ホール)でやることになりました。そのときはふたりで演奏したんですが、岩井澤さんが古美術が映画とは別のストーリーで動き出すのはおもしろいと発案してくれて、コロナもちょっと落ち着いてきたタイミングでツアーもやろうという話になり。武蔵小金井では伴瀬とのアコースティック・デュオでやったんですが、ツアーは伴瀬バンド + 僕という編成でやりました。新生・古美術ということで(笑)」

――どういう流れで黒岡くんが古美術をやることになったんですか?
K 「古美術のレパートリーで“君の横顔”という曲があるんですが、岩井澤さんからそれを作ってくれませんかというオファーがあったんです。最初に僕に来たのか伴瀬に来たのかちょっと思い出せないんですが。急に大抜擢されたような気持ちでした。しかもツアーに出ることになり、そのために結局、古美術としてのオリジナル・アルバムも作りましたからね」

――なかなかない話ですよ。
K 「その古美術のツアーが、自分としてはけっこう大きな体験だったんです。ホライズンではいろんなライヴハウスに出させてもらいましたが、ソロ活動ではもっと小さなカフェとかライヴ・スペースでやることが多くなって。音響や照明もガチガチに作ってやるというライヴは久しぶりだったんですね。自分でもがんばったし、ライヴという空間をみんなで作る作業を見ていて、ホライズンの頃とは一周回ったおもしろさを感じたんです。伴瀬がしっかり未来を見据えて予定を組んだり、やりとりして問題を解決してゆくさまにも影響を受けました。こんなにしっかりやるからこそちゃんとしたものができるんだと。ホライズン時代は僕がそういう役目をやっていたんですけど、もっと若気の至りでワチャ〜としていた(笑)。とにかく古美術のツアーでは、伴瀬のストイックさ、綿密さに学ぶところが多く、自分も何かやるんだったら本気で取り組まないとダメだと強く感じたんです」

――企画物のように見られてもいたあのツアーが、そんなに大きな学びの場だったとは。
K 「移動の車のなかでも反省点や修正点をけっこう詰めていくんです。アニメから出てきたバンドだけど、それをお客さんにどう音楽としてリアルに伝えていくかとか、寝ずにいろいろ考えて話し合って。その結果、一所懸命やったらこうやって人に響くんだとあらためて感じたんです。だから、次に自分がやるソロは本気でやろうと思ったんです」

――なるほど。
K 「そのときに次に行くにあたって自分で決めた設定がありまして。今、僕は45歳なんですけど、このままだと78歳くらいになって死ぬ間際に“ああ……あの古美術のあと、もっと本気出して音楽をやっていたら、絶対もっとおもしろい人生だったはず”と思うんじゃないかと思って。だから78歳の僕が“すいません、2023年初めの自分に戻してください!”と神様にお願いして現代に戻ってきた。そういう設定なんですよ(笑)」

黒岡まさひろ, 松村拓海

――まわりくどい(笑)。だけど、未来の自分が後悔しないように、という気持ちはわかります。
K 「自分がやりたいと思ったことは一所懸命やっていこうと思って。この人と組みたいとか、対バンしたらおもしろそうだとか、それを死ぬ気でやった2023年でした(と言いながら、2023年のスケジュールを広げる)」

――たくさんやってますね。ユニット名もどんどん変わってる。
K 「最初はスティールパンの内田(翼)くんと一緒にやりたいと思い、ふたりで黒岡まさひろ & full tarbo motorsとしてライヴしました(1月28日 埼玉・北浦和 居酒屋ちどり)。新曲も5、6曲作りました。その日のライヴがめちゃくちゃ盛り上がったんですよ。これはいけるなと思ったので、僕が信頼しているフルートの松村(拓海)さんも呼んで、トリオでon the swordという名義になりました。“剣の上で死ぬ気でやろう”という気持ちも込めて」

――あれ?このメンバーのまま、黒岡まさひろocean wingに名前変わりますよね?
K 「はい。七針(東京・八丁堀)でさかゆめというバンドと対バンしたとき(3月17日)は、黒岡まさひろimpetusという名前になりました。これは“前に進む”という意味だったかな。ただ、このときは全然お客さんが来なかった(笑)。それで、次のライヴ(4月8日)がRoji(東京・阿佐ケ谷)だったんですけど、そのときはocean wingになりました」

――海(拓海)と翼……。それが、僕が観たライヴですね。スティールパンが入ってるのにこんなにトロピカルじゃないサウンドは珍しいと思ったし、それを黒岡くんに伝えたらえらい喜んでくれました(笑)。でも、あの時点では、このサウンドが黒岡くんがずっとやりたいことなのか、通過点なのか、よくわかってなかったです。内田さんはもうすぐ渡欧していなくなるともMCしていたし。
K 「そうなんですよ。内田くんが4月後半にドイツに行くことは、僕がバンドに誘った時点で決まっていたんです。だから、残り少ない時間だけどocean wingでツアーもしたかったので、郡山と仙台に行きました。そのあと(4月24日)視聴室(東京・神保町)で池間(由布子)さんと2マンをやって内田くんは去り、やがて、もともと一緒にやりたいと思っていた厚海義朗(cero)を誘ったんです。義朗くんとはずっと昔からやりたかったんですけど、自分が彼を呼べるレベルになるまでは軽はずみに誘うのはやめようとも思っていて。今は死ぬ気でやっているから、このタイミングだと思ってウッドベースでお願いしました。松村さんと義朗くんの新編成トリオ・double oceanでは6月と7月に2回ライヴしましたね」

――海(拓海)と海(厚海)なので、double ocean。
K 「ただ、あんまり義朗くんがメインになると、内田くんがヨーロッパから帰ってきたときに居場所がなくなるので、彼とはまた違ったタイプのメンバーの補充を考えてもいました。試聴室でライヴした日、池間さんや内田くんの推薦で、宮坂(遼大郎)くんが浮上したんです。ちょうどその日のライヴを宮坂くんが見にきてくれていたんですね。あの日は、合間にコントを挟んだりいろんなことをしていて、それが宮坂くんはすごくおもしろかったみたいで、“ぜひ一緒にやらせてください”という話になったんです。とはいえ内田くん、松村さん、義朗くんとはかなり昔から知り合っていたし、この3人とやるのはなんとなく想像がついたんですが、実は宮坂くんが何をやる人なのか誘った時点では僕はよくわかっていなかったんです。ただ“おもしろい人だから”と紹介されただけだったので。だから1回じっくり話をしようと思って、彼の家まで行って、お互いの人生を幼少期から語り合ったんです」

黒岡まさひろ, 松村拓海

――家庭訪問みたい。
K 「どんな人生で、どんな音楽が好きで、みたいな話をどんどんしていたら、昼の1時からスタートしたのに夜の1時になっちゃったんですよ!持っていったギターも出さずにノンストップで12時間しゃべりっぱなし。だから、宮坂くんも僕の個人史はもう全部知ってると思います。それがあって、義朗くんの代わりにコンガで入ってもらうことになったんです。黒岡まさひろflungaという名義になります。フルート(松村)とコンガ(宮坂)の合体で。コンガも人間もすごく魅力的なんですよ」

――興奮すると脱ぎますしね。
K 「折坂(悠太)くんのライヴを見ていたら、奥のほうで裸で太鼓を叩いてるメンバーがいるなと思っていたんですけど、“それがお前かい!”と(笑)。でも、演奏は本当に素晴らしいです。宮坂くんとも8月と9月に2回やって、こうなったら義朗くんも入れて4人でライヴするしかないでしょ、となって今に至るという感じです」

――そこで、今回リリースされた「黒岡まさひろトリオ」と「黒岡まさひろカルテット」の成り立ちがようやく見えてきました。トリオは内田さん、松村さんとのocean wing。カルテットは、松村さん、厚海さん、宮坂さんとのdouble ocean + flunga。2023年の黒岡まさひろの活動をまとめたものということですね。
K 「そうなんです。トリオは内田くんが日本を離れる前の4月に録りました。カルテットは9月くらいに録りました」

――そういう背景は知らなかったんですけど、2枚の違いがあっておもしろかったですよ。
K 「両アルバムとも生のものをそのまま詰め込むコンセプトだったんです。瞬間をバチッと収めたかった。同じ曲をやっててもメンバーが違うと全然違う感じになりましたね」

――「初日の出」って両方に入ってますけど、これがかなり象徴的な存在の曲になってます。同じ曲だけど、アルバムに置かれてる位置も曲の長さも、なんなら世界観もかなり違う。
K 「“初日の出”は何回かやっていくうちに、お客さんに“よかったです”って言ってもらうことが多くなったんです。わかりやすい言葉で、僕が1月1日に経験したばかりのできごとを見たまま曲にしただけなんですけどね。この曲をトリオでやっていた頃は笑いのほうに逃げる感じもまだちょっとあったんです。でもカルテットになったら本気の球だけをぶん投げていかなきゃいけないという気持ちも出てきて、だんだん曲への接しかたにも心がこもっていったという感じですかね」

――カルテット版の「初日の出」はアルバムのエンディングだし、すごく感動的ですもんね。「こだまに乗って」も2ヴァージョンあります。
K 「トリオのほうがより個人的というか、僕が感じた世界を色付けしてくれているような感じ。カルテットでは、黒岡の世界観を私小説として歌うのではなく、こういうことってあるよねと誰かの日常を歌っている感じ。もうちょっと普遍的というか。同じ曲なんですけどね。自分でも“あ、こんなことあるんだ”っていう感じです。ちょっとずつ変わっていったと思います。やっぱり自分の曲に対するストーリーの作りかたがちょっと変わってきている、というのはあるんでしょうね。あとは、録音の仕方やミックスについても、ホライズンの頃は伴瀬もいたし、自分が作った曲ばかりではなかった。今回は自分で主体的に決断して作業して、いろいろ真剣に試したという感じでした」

――いっぱい新曲も書いてますしね。
K 「トリオの“波と言ったら波なんだ”だけはちょっと古いかな。コロナ禍のとき、しょうにゅうどうの河合(愼五)さんとやりとりして作った曲です。アレンジはそのときとは全然変わっちゃいましたけど。昔の曲がダメというより、今思っていることをダイレクトに乗せて歌いたい気持ちがすごくあるんです。今の自分にとってリアリティがないと歌にならないので。カルテットをやるときも、メンバーには全部新しい曲にすると伝えました。自分の中の締切に追われながら曲を作って、練習に間に合わせて、バンドと合わせてみたら曲が変わっていく。なんだか僕が作った曲が何か別の生き物になっていく、というのをとても楽しみました。義朗くんや宮坂くんとトリオでやったときは、メンバーに合わせて曲を書いていました。それを言ったら、人がいたから新曲ができたという面もありますね」

――そういう意味では、トリオにもカルテットにも継続して参加する松村さんの存在感も大きいですね。
K 「松村さんのフルートが僕は本当に好きなんです。松村さんの演奏には、ひとりで空間を作れる力を感じる。だから、声をかけたときは“譜面は渡さないので、曲を聴いて思いついたことは全部やってください”と言いました。僕は練習や本番では自分のことで精一杯だったりするんですけど、あとで録音を聴いて“松村さんや義朗くんはこんなことやってくれていたんだ”と発見することが多い。いつまで経ってもフレッシュだし、僕にとってはドキドキするタイプのミュージシャンですね」

――内田さんも宮坂さんもそうだし、黒岡くんが声をかける人は、みんなそういうタイプじゃないですか。黒岡くんを気持ちよくさせて歌ってもらい、音楽をよくしたいという気持ちをみんなからも感じます。
K 「力の結集みたいな感じはしますね。松村さんと最初のライヴを終えて打ち合わせしたとき、“僕はジャズがやりたい。僕が考えるジャズとは、自分がいちばんいいと思う音を出す音楽。そういう意味で松村さんもそのとき思いついたいちばんいいフレーズを吹いてほしい”と、長話をしました。松村さんは“ジャズね”って相槌して入ってきてくれました。あと、内田松村トリオで月に1回くらいずつやっていこうと話してるときに、内田くんから“4月からドイツに行くんです”と言われて、わ、どうしようと思ったんですけど、それがまた自分にとってはピンチをチャンスにするというか、新しく編成を考えてやってみようと思うきっかけになったんです。だから、義朗くんや宮坂くんともやるようになった。おもしろいなと思うことは全部やれたらいい。ふと気が付くと“すごい人とやってるな”と思うんですけどね。自分がすごくホットな状況じゃないとみんなを誘うのは失礼だと思ってるし、なによりも自分がいちばんおもしろがってないと誘えないメンバーだと思っています」

――(ここで松村拓海が参加)松村さんは、もともと黒岡まさひろオーケストラに参加したのが最初ですから、2019年くらいが出会い?
M 「最初はメンバーが足りないからヘルプで呼ばれていったんです。(黒岡と)家が近かったので、その流れで定期的に参加するようになりました」
K 「2022年にライヴハウスで松村さんがフルートを吹いている姿を見て、あらためて“この人は最高だ!”と思ったんですよ。それで“また何かやるときは絶対呼ぶから”とLINEした気がする」

黒岡まさひろ, 松村拓海

――松村さんから見て、黒岡くんが今やってる音楽のおもしろさとは?
M 「とにかく自由ですね(笑)。心意気とかイメージの面での指示は細かいんですよ。“僕はこういう感じでこの曲を作ってるから、こういうイメージで”みたいな。でもそれだけ伝えたら“あとはヨロシク!”みたいな感じで、演奏はすごく自由にさせてくれます。みんなすごく真面目に演奏してるのに、録音を聴くとふざけてるようにしか聴こえない。すごいですよね」
K 「僕は曲を作った経緯やイメージをちゃんと説明するんです。“色で言うと、夜明け前の、ちょっとだけ青が入ってきたときの黒色みたいな感じでやって”みたいな。すごく抽象的に言うので、それをどう解釈するかはメンバーに委ねます。よっぽど違ったら“ちょっと(空が)暗すぎるから、1回鉄道が走ったくらいにしてみようか”と付け足しますけど、あとはもう自由にしてもらいます」
M 「できるだけ音楽用語は使わない。みんな(用語は)わかるメンバーなんですけど、そういうのは全然介してない」
K 「音楽用語になると限定されちゃうんですよ。イメージのほうがおもしろい。“動物園にいるんだけど本当は人を襲いたいと思ってる虎が、野生の世界に出た瞬間の音”みたいな。その音に向かっていくアティチュードが好きなんです」

――松村さんから見たトリオとカルテットの違いはどうですか?
M 「カルテットのほうが、よりグルーヴが前に出て力強い感じがしますね。ベースと打楽器がいるし。僕もよりアグレッシヴな演奏をしてる気がします。トリオのほうは、より柔らかな表現もできる」
K 「トリオのほうが個人的な要素を出してるんです。カルテットは祭みたい」

――さっきもしていた話なんですが、「初日の出」はトリオとカルテットでは全然違いますよね。
M 「メンバーも違うし、楽器というよりは人柄の違いですかね。トリオのほうが聴いた感じは優しいんですけど、実はいちばんおかしな性格なのは内田くんな気もする(笑)。けっこう演劇的なプレイをするし、変な発想をするんですよ」
K 「みんな音楽的な引き出しは多いんですけど、そのなかから曲に対してベストの状態のものを出すから楽しい。自分も、初めて出会う曲をやってるくらいの気持ちで常に歌いたいなと思ってます」

――好きな曲や、演奏していて印象に残る特別な曲は?
M 「普段から口ずさんでいるのは“こだまに乗って“ですね。“ポテポテポテロング”って鼻歌してます。あまり家に帰ってまで誰かの曲を口ずさむことはないので珍しいですね。(黒岡の)他の曲もそうなんですが、歌っててもそんなにメロディアスな感じはしないのに、ずっと耳に残る。そこがおもしろいと思います」
K 「僕は常に次のことを考えているんです。どうやったらドキドキするかなと。“いいアレンジを思いついたから、早くメンバー集めてやりたい!”みたいな。おもしろいと思う瞬間をずっと探してる感じなんです。あとは、録音したテイクについては、みんなのフレーズのここがいいなと思いながら聴いてる感じですね。曲としては、“たまたま隣で”(カルテット)だけは、さっきも言った78歳の自分が、今45歳の自分の隣で監視してるような曲なので、ちょっと歌うとき怖くなるというか、“最高の気持ちでやれてるかな”ともうひとりの自分が問いかけている気分になるので、気持ちが本当にセットされないと歌うのが難しいからセットリストから外したりします(笑)」
M 「怖いんだ(笑)」
K 「まあ、いつかきっと歌うとは思いますが。常に自分がベストと思うことをやりなさいと自分で指令しているので、今後も惰性でやることがないように準備していきたいと思ってます」

――黒岡くんと一緒にやっていくのは、やっぱり特別?
M 「おもしろいですよ。すぐ気が変わるし、すぐ飽きるし(笑)。再現性がないんですよ。僕はジャズとかインプロとか再現性がない音楽を普段もやってるので、そうやって変わるのが楽しい。(黒岡の音楽は)サグラダファミリアみたいにずっと未完成なんですよ」

黒岡まさひろ Official Site | https://kurookamasahiro.tumblr.com/
松村拓海 Official Site | https://www.takumi-info.net/

黒岡トリオ『きらめき』■ 2023年11月25日(土)発売
黒岡トリオ
『きらめき』

https://masahirokurooka.bandcamp.com/album/-
CD KROK-02 | 2024年1月1日(月・祝)発売

[収録曲]
01. こだまに乗って
02. 初日の出
03. 一番うしろになったら
04. 世界に散らばったもの俺のルールで
05. 春の舞い上がり
06. 波と言ったら波なんだ
07. 始まる瞬間
08. ついつい近寄る
09. 重大発表

黒岡カルテット『ほっちお』■ 2023年11月25日(土)発売
黒岡カルテット
『ほっちお』

https://masahirokurooka.bandcamp.com/album/–2
CD KROK-03 | 2024年1月1日(月・祝)発売

[収録曲]
01. アンダースローの角度から
02. 急雨
03. 昨日の夜
04. すきま
05. ぼんやり街
06. OKにした街
07. こだまに乗って
08. たまたま隣で
09. ズンバラヤンバン
10. ここに立ってる
11. 初日の出