Interview | MC KHAZZ


ずれてるけど、こっちのほうがいい

 MC KHAZZはRCSLUMに所属するラッパー。東海エリアでも屈指のB-BOYと言える彼のライヴでは、パンクスが暴れているという話を聞く。バーで「I'm Your Puppet」の上でスピットしまくっている姿は自分も目撃している。4月に「今度アルバムじゃないけどアルバムが出るんで聴いてください」と電話があった。5月に東京でライヴがあってそのまま滞在するというので、ライヴの翌々日に話を聞かせてもらった。お酒を飲まないで話をすることがほとんどないので、それだけに普段はニュアンスで話していることも細かく聞けたと思う。

取材・文・撮影 | Lil Mercy ( J.COLUMBUS | PAYBACK BOYS | WDsounds | Riverside Reading Club) | 2025年2月


――先日の不眠遊戯ライオン(東京・渋谷)でのライヴかっこよかったです。

 「ありがとうございます。めちゃめちゃ楽しかったです」

――最近、ヒップホップのクラブだけではなく、様々なところでライヴをやる機会が増えてると思います。
 「最近はハードコア、パンクの現場でもライヴさせてもらったりしています。今里さんに紹介してもらった大阪のTHE WEST AGROSのお2人や、タカアキくんやDoveくん、仲良くさせてもらってます。刺激になりますね。ヒップホップ界隈は友達を除いてあんま遊んでないですね(笑)」

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――とはいえ、今作にも参加しているラッパーのAUGUSTはもろヒップホップじゃないですか?
 「彼とはもう10代くらいからの付き合いで、三河地方の奴なんですけど。アルバムにも入っているDEEP KAVARと2人でSKY HIGH STEELOっていうグループをやっていて、三河ではわりとレジェンド的な。もう2人ではやってないんですけど」

――DEEP KAVAR、自分はあまり知らなかったんですが、"E"qualとグループをやっているんですね。
 「そうですね、DOPE BOYS。DEEP KAVARはあまり活動できていないんですけど。AUGUSTは今でもバンバンいろんなところでライヴをやってますね。3~4年くらい前から820MUZIKっていう名前でビートも作ってるんですよ。かっこよくてアルバムにも収録させてもらったんですけど。2021年の夏のシングル連続リリース企画のやつも2曲ビートを使わせてもらってます」

――820MUZIKはAUGUSTなんですね。今回の作品のことメインに聞きたいんですけど、今の段階で送ってくれた楽曲のデータ以外に情報をもらってなくてですね。『THE FLAXH DRIVE DIARY 16-21』っていうタイトル通り2016年から2021年に録っていた曲なんですか?
 「はい。出すタイミング失った系。NOT NEW ALBUMですね(笑)。とにかくレコーディングを今でもすごいやっていて、まとまらなかったっていうのもあるんですけど。とにかく録るばっかでアウトプットのタイミングを逃しちゃって」

――もっと録った曲はストックされていて、その中から選んで作ったっていうことですか?
 「はい。特定の人間の悪口を言っている曲とかはなるべく省いて(笑)。そういうのはアルバムに入れたくなくて、この曲数にまとまった感じですかね」

――なんとなく統一感があるように感じました。レコーディングはどのようにしてますか?
 「ほとんどstudio NEST(鷹の目が運営するスタジオ)なんですよね。1曲はRyo Kobayakawa(D.R.C.)のところだったりするっすかね。ミックス、マスタリングを今回も鷹の目にやってもらったんですけど、マスタリングの打ち合わせのときに2000年代初頭のUSヒップホップのアルバムCDの音の出しかたで、っていうところで合致しました」

――アルバムはインストゥルメンタルの「RHINITIS (prod. 820MUZIK)」から始まります。
 「トラックはもらっていて、インストを1、2曲は入れたいじゃないですか。820MUZIKからもらっていたこの曲、これはイントロっぽいと思って単純に」

――イントロを入れたいからビートを頼んだり探したりしたのではなくて、手元に集めていたビートから選んだということですよね?
 「そうですね。もともともらっていたものを選びました」

――あとから出てくるJOHN Pのスキットもそういうこと?
 「はい。そいつの家に遊びに行って、聴かせてもらって“これはもう、インストで使いたいな”っていうトラックでした。これはインストとしてどこかで使いたいからくれって言って(笑)」

MC KHAZZ | Photo ©Lil Mercy

――16年から21年の間にこのスキットとイントロも含めて手元に楽曲はそろってたんですね。
 「はい。ありました」

――イントロの後、NEI(D.R.C.)のフックが印象的な「HALF POINT」に入ります。これは?
 「もともとこの曲はNEIのフックだけが入ったやつを聴かされて、ある日Ryo Kobayakawaのスタジオに遊びに行ったら、KHAZZ君これどうすか?みたいな。俺もこれに参加したいと思ってバースを入れたんですけど、パラデータがもうないとか言っていて。細かい調整はできないけど、そのままこれ買うって言って(笑)」

――次の曲もトラックはRyo Kobayakawaですよね。この2曲は近い時期になってくるんですか?曲の感じとしてはだいぶ幅がありますよね。
 「これめちゃくちゃ前のビートらしいんですよ。録ったのは2019年?」

――AUGUSTとは、まだ出ていない曲を作ってそうですね。
 「やってますね。AUGUSTは激渋ですよね。僕とAUGUSTとCOVAN(D.R.C.)でユニットやんない?っていう話もあったんですが、言うだけで流れちゃってます(笑)」

――ここに書いておいたら何か動くかもしれないですし。COVANは南区でAUGUSTは三河。KHAZZの地元の弥富はどのあたりになるの?
 「僕の住んでいるところは三重県寄りで、愛知県の一番西側になります」

――AUGUSTは東側ですよね。どこで出会ったの?
 「クラブで、ライヴ出演で一緒になってからしゃべるようになって」

――ヒップホップのアーティストはクラブで出会った人が多いですか?
 「そうですね。クラブ、あとはATOSONEの店で知り合った人間とか。“METHOD MOTEL”ですね」

――「METHOD MOTEL」って一番最初から出てましたっけ?
 「出てないです。TYRANTが出てたやつ(2010)は僕は出てないですかね?HIRAGENがソロになって、YUKSTA-ILLがソロになって、その動きをしているくらいから僕も合流させてもらって」

――HIRAGENのリリース・パーティ(2010)くらいからですか?
 「たぶん名古屋のそれは出てましたね。ハラクダリもそれくらいのタイミングで知り合ったのかな?
あ、そのとき、あそこ行きましたよね、世界の山ちゃん。山ちゃんに宮崎のISP君とかも来ててマーシーくんや、トノさん(TONOSAPIENS | CIAZOO)も合流しましたよね」

――METHOD MOTELから、OWLBEATSや九州のアーティストと接続していったんですか?
 「そうですね。RCSLUMに入れてもらって、鹿児島の人たちとも仲良くなれた」

――MC KHAZZ、MIKUMARIとかハラクダリ、YOTA SQUADのメンバーはフットワークも軽くメンバーの誰かが呼ばれたら一緒に動いてますよね。
 「僕なんかは独身なんで、そりゃあ軽いですけど、みっくん(MIKUMARI)は結婚して子供いるのに遊びまくってますもんね」

MC KHAZZ | Photo ©Lil Mercy

――4月は神戸でもMC KHAZZ & MIKUMARIでATOSONEのときに出て来たし。一昨日もMIKUMARIは東京一緒に来てましたもんね。
 「遊ぶことに貪欲でいきたいですよね(笑)」

――そうやってどこかに行ってレコーディングすることってありますか?
 「いや、経験はありますが、あんまないっすね。散々遊んで帰るのが多いです(笑)」

――まあ、そうですよね(笑)。アルバムの話に戻ります、DEEP KAVARはさっき活動してないと言っていたけど、どういうタイミングで作ったの?
 「DEEP KAVARがビートを作り出したと聞いて、それならラップ一緒に、と。Roc Marcianoらへんばっかり聴いていて、ビートとかもやっぱり影響されて作ってるっぽいです。AUGUSTとの曲より古いと思うんすよね。僕はAUGUST、DEEP KAVARと3人でやりたかったんですけど、今その2人があまり遊んでいないみたいで、まあいいや、と思って。それも関係して曲順も決めました(笑)」

――(この原稿を書いているとき、ちょうどRoc Marciano『Pimpstrumentals』を聴いていました笑)次がDJ HIGHSCHOOLとの「UPTOWN BOUNCIE」。
 「これは『I'M YA BOY』(2018 | DJ HIGHSCHOOLとMC KHAZZの共作EP)を出してすぐだったっすかね。録ったのは2018年か2019年です。EPが終わってすぐくらいに録ったやつですかね?『I'M YA BOY』のライヴを豊橋でやらせてもらったときに、ホテルでDJ HIGHSCHOOLから最近作ったストックを何曲か聴かせてもらって、その中で僕が一番うわっ!てなったビートだったと記憶してます」

――リリックもおもしろくて2025年の夏のアンセムにって思ったけど、2019年録音ですね(笑)。夏とかクリスマスとかそういうタイミングで作品作ってるじゃないですか。今年は正月にシングル『THE FLAMIN' HOT BARS』も出してますよね。そういうタイミングは意識して作っているっていうことでいいんですよね?

 「そうですね。その時、最近なんかクリスマスの曲(SoundCloudで公開している“Of The Bells”)もそうなんですけど、季節的なタイミングっていいなあって。単純に(笑)。夏は夏休みシーズンで浮かれてくるじゃないですか、クリスマスもクリスマスで浮かれるじゃないですか。人が浮かれるタイミング、こっちもやりたいなって」

――「浮かれて生きたい」ってラップの中でも言ってるもんね。生活のことも歌う中、浮かれてたいっていうことも歌うところ、すごくいいなあと思うんですけど。
 「まあ、遊ばんと元気足りひんですからね(笑)」

――日々、遊んでますか?
 「なんとか……(笑)。でも、減ったっすね。今、僕んちからみっくんちがすごく近いんで、夜は僕がみっくんちに遊びに行って飯食わせてもらって、お酒飲んだり、みっくんちから近いすごい良い串カツ屋さんがあって、そこで夜な夜なやってたりとかが多いっすかね。それか、仕事終わってそうちゃん(ATOSONE)の店COMMONにちょこっと寄って、サクッとビール飲んで、とかですね」

――「COMMON」には新たな人たちも集まってますよね。
 「全然知らない人と会うきっかけになってるっす。若い人が集まってきてるから、すごいなと思って。あそこがなかったら話すきっかけがないっていう人と会えてますね。ATOSも楽しそうにやってますよ」

――今年の夏はどんな夏になりそうですか?
 「今年の夏はライヴ・ツアーとかしたいっすね。誘ってもらえるかなって思ってますね。でも、今制作しているそのアルバムがあって、それはもうちゃんとしたかたちでニュー・アルバムとして出すつもりです。ヴァイブス的にはそっちで弾けられたらいいかなっていうか。まだ1曲2曲しか進んでないんですけどね。夏っていいっすよね」

――自分は暑いの好きじゃないんですけど、夏っていいなって思います。次のスキットはさっき言っていたJOHN Pですが、どんなアーティストですか?
 「もともとDRAMASICKとかあのあたりに属していた奴なんですけど、昔から家でビートを作ってたっぽいですね」

――DJ HIGHSCHOOLのトラックのあとにかなり相性の良いトラックだと思いました。
 「ですよね。UPTOWNっぽいなって。けっこう幅広くビート作れるっていう。でももうビートは作っていないと思います」

――これはいつくらい?
 「これは……?日付とか書いとけばよかったすね」

――でもビートだけだとレックと比べてファイル名に日付入れたりしないから、わからないですかね。
 「そうですね。でも、データで情報見ればわかりそうですよね」

――このあたりからまた雰囲気が変わってくるように感じてます。
 「自分としては並べた感じはデート感を意識した感じですかね(笑)」

――全体の流れがですか?
 「いや、“Uptown Bounce”からのこのギャル・チューンとまではいかないですけど……(笑)。この“R.S. MOONWALKER”はですね、これ、実を言うとRyo Kobayakawaにラッパー入れたコンピレーション・アルバムを作るんですよって言われて渡されたビートで、けっこう即録って、結局そのアルバムの話は頓挫しちゃいまして。じゃあ俺もらうよって、そういう流れですね」

――“R.S.”はriversideの略ですか?
 「そうです。そのときはあいつ川沿いに住んでいて、スタジオもそこにあって。もう引っ越しちゃったんですけど」

――コンピレーション作るのは難しいと思います。だからRCのコンピとか作る勢いもすごく感じたし、すごいことだったと最近改めて思ってます。哀愁を感じた次にRamzaのタフなビートというか、この曲ってラップが始まるまでの冒頭が少し長いじゃないですか。このアルバム全体を通してラップの乗ってない余白があることで、時間帯や場面が切り替わってるように感じました。
 「イメージとしてはこの“NIGHT CLUBBIN'”から、じゃあ深夜帯に入りましょうか、っていう」

――わかりやすくていいですよね。この曲なんだろう?って曲名を見たら「NIGHT CLUBBIN'」で、ですよね、って思った(笑)。
 「このビートって昔、PAYBACK BOYSのライヴアクトでこれ使ってやらせてもらったと思うんですよね(*)。そのときとリリックは違うんですよ。ビート自体は2017年より前?めっちゃ前ですね。ビートをもらってレコーディングするまでがけっこう空いちゃったんですよね。 わかりやすくShyneですね(笑)」
* : 12017年に東京・代官山 UNITで開催された「CLUB CRAC」のPAYBACK BOYSのライヴに遊びに来たMC KHAZZが冒頭で1曲ライヴを披露した。

――そして次にはYOTA SQUADも出てくるじゃないですか。
 「少し攻撃的な2人の。これ2019年くらいだったと思うんですけど。とりあえず僕の1st『SNOWDOWN』(2017)でやった“YOTADITION”っていう曲のパート2をやろうっていう流れで。それでハラクダリが加わった感じなんですよね。この曲は」

――YOTA SQUADもかなり録ってますよね。YOTAのレコーディングはどんな感じですか?
 「けっこう早いです。もうテイク重ねなくなりましたね。ほぼ1テイクで終わるときもあります。どんどん変わってきちゃうじゃないですか。粗いけど、その粗さをもう一回できるかって言えば無理じゃないですか。だから、“ずれてるけど、こっちのほうがいい”って絶対あると思うんで。どうしても“粗いのがかっこいい”って思っちゃうんですよ。ビートによりけりっていうのもあるんですけど、“置きにいった感じのほうが淡々としていていいんじゃない?”っていうのもあると思うんです。やっぱラッパーの1stアルバムってかっこいいですもんね。感情任せ系ラップが好きなんで」

――ソロでレコーディングするときって、録音の判断はMC KHAZZとエンジニアだけでやってますか?
 「そうですね。僕はエンジニアさんにこうしてくれ、ああしてくれっていうのは言っていて、でもイメージしていたのと全然違って、どフラットに戻してもらうっていうのは多いですね(笑)。とにかく鷹の目のところがやりやすすぎて(笑)、最近は違うところでレコーディングしたりもするんですけど、やっぱり鷹の目すごいな、みたいな。違うところでレコーディングするのは勉強になりますね」

――客演も全部studio NEST?
 「ほぼそうですね」

――次のhyunis1000、Contakeitとの「Ski Mask」は?
 「これはトラックメイカーの家で。ne4r beatsのところで録って、ミックス、マスタリングは鷹の目先生ですね」

――名古屋市長選挙に出ていた人ですよね?
 「そうです。最近は遊んでないですが、ビートやばいんすよね」

――「YOTADITION PT.2」と対照的で、ドリルビートにクールさも感じるようなラップじゃないですか。これは時間的にはどういう時間をイメージしてますか?
 「単純に曲調で並べたんだとは思うんですけど、“YOTADITION PT.2”もそうなんですけど、この“SKIMASK”っていう曲のhyunとか珍しくラップが攻撃的というか、そういうところですかね。Contakeitも挑発的なリリックなので、そのくだりはそのくだりで、っていう感じで並べた感じですね。2人とも若いですよね。ne4rも名古屋の奴なんですけど、知り合ったのは神戸なんですよ。“ビート何曲か送っていいですか?”ってなって、送ってもらって。フレッシュな感じで、これも2021年かな。こういうビートで若い人たちをい入れることによってやりやすくなるというか。そっちのほうが、若い人たちにも広がるだろうっていうのもあるし、単純にやりやすい。曲のイメージとして」

――今作は、客演もいろんな人が入ってるから聴きやすさは感じます。
 「次もne4rですね。これも同じくらいの時期。これはビートメイカーのゴリ押しで“これでやってみてください”って言われたやつで。タイトル“D.M.EX.”はDickeis、Money、Experienceの略ですね (笑)」

――ここくらいからまたゾーンが変わるというか。
 「“DOUBLE BARREL”、このK.LEEとやってる曲が一番古いんですよね」

――Back in the daysじゃないですけど、スケートをやっていた頃の話も出てくるじゃないですか。でも、K.LEEはBack in the daysはしてないですよね。
 「これは完全にテーマを決めず、“Ramzaのビートでラップでやり合いしましょう”みたいな。トラックのラップ映え的な感じの。やり合いしませんか?みたいな感じで。タイトルとかもK.LEEがあとから付けた感じなんですよね。K.LEEもこういうビートではやらないから新鮮だったって。僕はリリック早かったと思うんですけど、K.LEEは“時間がかかった”って言ってましたね」

MC KHAZZ | Photo ©Lil Mercy

――次のRyo Kobayakawaの「KAIEN」。この曲は新しいんですか?この曲を聴いて、次のアルバムが出るのかなって感じたんですけど。
 「比較的新しめだったですかね。いつかの年明け正月に録ったやつだと思うんですよ」

――新たな始まりって感じるのは正月に録ったていうところも大きいんですかね。
 「これが今のところ前評判高いですかね。気持ち良いBPMですよね」

――ここで一旦良い感じの流れがあって、最後にINFAMY FAMが登場。これは?
 「けっこう前ですね。これは『SNOWDOWN』を出した年だと思うんですよ。このビートはOWLBEATSがHIRAGENの曲のリミックスで使っていた曲で、HIRAGENのやつはSoundCloudとかにあるのかな」

――これは狙って入れてますよね。
 「『SNOWDOWN』もそうでしたし、どうしてもINFAMY FAMはい入れたいなっていう。OWLBEATSにも絡んでもらってますし、全体にも言えることなですけど、人とやっている曲を優先的にアウトプットしないと、って思って。自分ひとりでやっている曲より、その優先もあるっすね」

――今回まとめた作品としてリリースしようと思ったきっかけは?
 「もうかなり前から、さすがに出さないと、って思って。友達からもまだ?って言ってもらえるし、“これ、出ないの?”って。言われてるうちに出さないとだめだ、って。ちょっとまとめてみて。ミックスが上がった時点で、COMMONで聴いて、そうちゃんからOKもらって、動き出した感じなんですけど。嬉しいですよね、“まだ出ないの?”って友達とかに言ってもらえるの。でもアルバムを作ろうって思ってレコーディングをしなくなったんですよね。スタジオ遊びで、ノリで、やろうやろうって言って溜まっていって」

――それはすごく健全ですよね。それをかたちにするのってラッパーだけじゃなくて、周りの仕事でもあるって自分は思うときもあります。こういうかたちで出すといいですね。
 「ジャケットは無機質というか、簡素な感じになると思います」

――そこは希望を言いながら作ってるんですか?
 「はい。一応。合致したときに、これでいこうみたいな。がらっとATOSがイメージを変えて、バッチリこれでいこうってのもありますしね。今回もATOSがやってくれるんですけど」

――RCのそこは強いですよね。まとまった作品としてはDJ HIGHSCHOOLとの『I'M YA BOY』以来初になるんですよね?
 「そうですね」

――WDsounds / ADORNOからリリースしたのもシングル2曲ですもんね。それもけっこう前だもんね。
 「DJ Fresh!」

――いろんな人たちと今までもやってきてますけど、アルバムはどんなものができていきそうですか?
 「新しいやつは、なんかもっと渋めかな?でもまだなんとも言えないですね」

――今作も聴き終わった後に、新しいアルバム出るんだって思うんですよね。アメリカでもあるじゃないですか?アルバムじゃないやつ。MOBB DEEPの『Free Agents』(2003)とかもそういうやつだと思うんですけど。
 「あー、そうですよね。DJ Whoo Kidと、2枚組で出てたやつ」

――そのあとけっこうすぐにアルバム(『Amerikaz Nightmare』2004)が出てると思うんですけど。ミックステープのあとにアルバムっていう感じというか、期待を持ってしまうというか。今作はこの時期のベスト盤ですよね。普段はどういう時にリリック書いてます?
 「もう、ビート聴いて書いてます。車だったりとか。ビート聴いて歌いながらやってます。車で書くことが多いですね」

――車で書く時ってどういう風に書いてます?
 「歌いながらリリック打ってます。書き出し、乗せかたとかが決まってくると僕早いんですよ」

――車でテキスト打つの危なくない?停めてる?
 「だからあれ買ったほうがいいかと思って。ICレコーダーですか」

――あ、携帯で音流してるのか?CDで音流してれば携帯で音録れますよ(笑)。基本携帯で書くことが多いです?
 「そうですね。携帯になりましたね」

――まあ、車でノート広げて書いてたら大変だけどね。
 「字とかい嫌なるくらい下手なんで、自分で書いて何が書いてあるか読めない」

――その問題もありますよね(笑)。書いてできたらすぐにスタジオに入る?
 「リリックが上がっていない状態でもスタジオの予約入れさせてもらったり、詰めていく感じですかね。スタジオの都合で週末とかは入れなくて、エンジニアの鷹の目も家族がいるし、イベントとかで動かないといけないのが週末とかになってくるんで、僕はど平日、月曜日とかが多いですかね。仕事のあと、いっぺん家に帰って夜9時から始まります。スタジオでダラダラしてると怒られるんで。スタジオで遊んでたいんですけど(笑)。変わってきましたね。でも僕らは相変わらず飲むっすね。YOTA SQUADでレコーディングする = プチ宴会みたいな」

――前は自分の中でもありました。みんなでレコーディングする = 宴会みたいな。音楽作りながら遊べるじゃんみたいな(笑)。でもほんと、制作する気持ちがなくなったらやめたほうがいいかなっていうのはある(笑)。何か聴いて作りたいと思ったら作ったりするけど、その気持ちがなくなったら、無理やりは音楽作れなくない?
 「そうですね。最近もう、ありもんとかでもとにかく録りたくなったら録っちゃいます(笑)」

――そういう気持ちがなかったら作れないと思うんですよね。前のGLの時、「I'm Your Puppet」の曲の上でスピットしてたじゃないですか。ああいうのって情熱を感じる。
 「レコードいただきましたよね」

――あのレコードの上でダブ録って送ってほしいと思って送ったんだよね。そしたらそれかけるから。
 「それやりましょう」

――楽しんでやってるよね。
 「そうですね(笑)」

――ラッパーらしいラッパーだと思うんですよ。ラップしてるときすげーかっこいい。スピットしてる。
 「ありがとうございます」

――今回の作品ではいろいろなフローを試しているように感じたんですよ。だからこの期間、この作品を経て次はどういったものを提案してくれるのかなって楽しみな作品だと思いました。
 「けっこう歌は挑戦するんですけどね。でもあとあと聴き直すと嫌になりますね。やっぱやめようみたいな。結局やっぱり聴き直したとき、しらふで聴いてあらら……やってんなー……みたいな(笑)」

――この作品に入っている楽曲はレコーディングしてきた作品の中でも、これは世に出せるってやつですもんね。
 「はい」

――それでも、いろんなことやっているんだなっていうのを感じられる作品だと思います。
 「あざっす。嬉しいです」

――次はアルバムですね。最後に普段よく聴いてる音楽を教えてください。
 「最近はブロンクスの若い人たちのとか、ダラスの若い人たちだったりとか。OTSっていうダラスのギャングがあるんですけど、ダラスだとそこに所属しているLil 6が一番好きでよく聴いてます。あとKanye Westとか最近よく聴いてますね。なんか、あの赤いやつあるじゃないですか(『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』2010)。あれとか聴いてますね。あと、車に乗っているとき、アプリでHOT 97聴けるんですよ。HOT 97聴きますね。相変わらずDrakeばっかりかかってますね。なんかラジオも聴くようになりました。エフエム愛知、ZIP-FMとか」

――ラジオでふと音楽流れるとき良かったりしますよね。
 「そうなんですよね」

――かかるタイミングがいいだけで、それだけで良い1日になったりするじゃないですか。
 「この前正月明けに出した『THE FLAMIN' HOT BARS』っていうシングルが、名古屋のZIP-FMってラジオ局があるんですけど、そこでかかったらしくて、そのときたまたま親父が車で聴いていたらしく、電話かかってきました。“なんかお前のことプチ特集みたいなのやってるけど”って。え、知らないって言ったら“すごいなお前”って。親父には教えてくれてありがとうって言って。喜んでくれたんで、僕も嬉しかったです。夕方6時とかだったと思うんですけど。けっこう嬉しい出来事でした。そのとき初めて親父に“MC KHAZZ”って呼ばれました(笑)」

MC KHAZZ 'THE FLAXH DRIVE DIARY 16-21'■ 2025年8月8日(金)発売
MC KHAZZ
『THE FLAXH DRIVE DIARY 16-21』

RCSLUM RECORDINGS
CD RCSRC30 税込2,500円

[収録曲]
01. RHINITIS prod. 820MUZIK
02. HALF POINT feat. NEI prod. Ryo Kobayakawa
03. INTRO feat. AUGUST prod. Ryo Kobayakawa
04. U BETTA KNOW feat. DEEP KAVAR prod. DK
05. UP TOWN BOUNCIE prod. DJ HIGHSCHOOL
06. SANCHAN prod. JOHN P
07. R.S. MOONWALKER prod. Ryo Kobayakawa
08. NIGHTCLUBIN' prod. Ramza
09. YOTADITION PT.2 feat. MIKUMARI & ハラクダリ prod. Ryo Kobayakawa
10. SKI MASK feat. Contakeit & hyunis1000 prod. ne4r beats
11. D.M.EX. prod. ne4r beats
12. DOUBLE BARREL feat. K.LEE prod. Ramza
13. KAIEN prod. Ryo Kobayakawa
14. SHOT CALLER feat. MIKUMARI & ATOSONE prod. OWLBEATS