MIRA新伝統がニュー・シングル『Symchthonia』をリリース


 昨年6月に独「Subtext」よりEP『Noumenal Eggs』を発表し、Sharar Lazimaが出演したタイトル・トラックのMVも話題となったMIRA新伝統(Honami Higuchi + Raphaël Leray)が、ニュー・シングル『Symchthonia』をリリース。4月7日よりBandcampほかでの配信が開始されています。

 ダナ・ハラウェイが著書『Staying with the Trouble: Making Kin in the Chthulucene』(2016, Duke University Press)の第8章「The Camille Stories: Children of Compost」で提示し、MIRA新伝統もDiscordサーバーの名称として使用している造語“symchthonia”を冠した同作は、チャントを思わせるヴォイスとエクスポネンシャル・リズムがメカニカルかつフォーキーな印象を残す楽曲。カヴァー・フォトの金属プレートには、米行動学者ジョン・B.カルフーンが1960年代に実施した“ネズミ実験”に伴う図式が刻印されています。

 “Symchtchonia”(シンンクトニア)は、古代ギリシャ語のσυμ- シン(共に)とχθών- クトニア(大地・土)から派生した言葉です。哲学者のドナ・J・ハラウェイによる造語で「地上のものが一緒になること」を意味します。
 またポストアントロポセンに関する芸術的実践、想像力、理論的言説の交差に興味を持つ人々の集いの場として作ったDiscordサーバーの名前でもある。
 Subtext Recordingsから昨年リリースされたEP「Noumenal Eggs」は、資本主義やエントロピックのカタストロフィーの概念をめぐる音と映像の理論フィクションを探求しました。その後の「Symchthonia」は独立したシングルリリースであり、Donna J. Harawayが「Camille Stories」で述べた、未来の地球上の生命体による共生コミュニティに対する無条件の壮大さと狂喜の賛歌です。「Camille Stories」でDonna J. Harawayが描いた、あらゆる性別や民族の人間のグループが、絶滅に直面している種と直接的、共生的、人工的に強化された共依存関係を築くことによって、来るべき世界を生き残るというものです。
 この短い賛美歌は、恍惚とした逃避行や奢ったディストピアではなく、私たちの現実に根ざしたものにしたかったので、作曲は都市のフィールドレコーディングと合成サウンドデザインの間でバランスをとっています。指数関数的なリズム、吠えるような声、牧歌的なインストゥルメンタルが、溢れかえる下水道の中で戦い、やがて大空に花を咲かせます。
 「Symchtchonia」のカバー画像にある錆びたプレートは、2023年2月に開催されたアートフェア「EastEast_Tokyo」で発表したパフォーマンス/インスタレーションから由来したもので、金属製のプレートには、John B.Calhounによる図式が刻まれており、混沌と絶滅に至ったネズミのユートピア実験“Universe 25”から差し引いた社会構造におけるニーズ、条件、適応の緊張と因果関係を示している。“Universe 25”は、集団主義や平等主義のアプローチに対する反動的な議論として使われることがあまりにも多い。しかし、ここでは、錆びたプレートに植物が刺さっており、ネズミの社会を根絶やしにしたのは、豊富な資源や直接アクセスではなく、生態系の予測不可能性やその多様性から人為的に強制的に隔離されたことかもしれないと示唆している。

――MIRA新伝統

MIRA新伝統 'Symchthonia'■ 2023年年4月7日(金)発売
MIRA新伝統
『Symchthonia』

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