Column「Mosh Sommelier」


文・撮影 | Ngrauder + Lil Mercy (PAYBACK BOYS | PAYBACK BOOK)

| 第5回: SUBZERO

 「Mosh Sommelier」第5回はSUBZERO。私Lil Mercy(以下 M)が最も影響を受けたバンドであり、PAYBACK BOYSがまだポスト・ハードコアをやりたいという戯言を言っていたのをハードコア・パンクに向かわせてくれたのもまたSUBZEROでありました。ヴォーカル的にもものすごく影響を受けているので、「KILLS」やMONADで客演している「BAD MOMENTS GOOD DAY」なんかはわかりやすく影響が出ていますよね。そしてNgrauder(以下 M)と話していればSUBZEROの1993年デモの話が出ないことはないです。また、ゴシックとニューヨーク・ハードコアの関係性についての問いを投げかける存在でもあります。「Furious Records」招聘での日本ツアーというタイミングで、プロモーション記事かよと思うかたもいると思います。そういう面もあります。私たちは世代を超えてSUBZEROの話がしたいんです。

M 「懐かしいですよね。この『Happiness Without Peace』は当時VINYL(東京・西新宿 | レコード店)で買ったやつでCentury Media盤(1997)ですね。その前のToo Damn Hype Records盤(1996)はリリースされたときに買えなかったと思う。高校3年の頃かな。1997年には来日観ていると思うんですよね。レコード聴いて観に行ったと思うから」
N 「うろ覚えだな」
M 「これしか聴いたことがなくて。“Higher Power”のビデオもたしかもう出ていて、PUNK ROCK TVで流れていたことは知ってるけど、オンタイムでは観てない」

N 「俺はToo Damn Hype盤のほうが先だったな。インタビューとかで、“地元で一緒にプレイしているバンドは?”っていう項目絶対あるじゃん。MADBALLが挙がったり、25 TA LIFEが挙がったり。そのときに絶対に挙がるバンドがSUBZEROみたいな。それはすごく覚えていて、SUBZEROっていうNYHCでイケてるバンドがいるっぽいっていう感じだったけど。存在を知ったときにはこのアルバムも出ていないし。7"は出ていたんだけど、91年くらいなんだよね」
M 「7"は自分が知った時点では買えなかったし、普通にレア盤でしたね」
N 「でも、みんな“デモがやばい、デモがやばい”っていうのが一番だよね」
M 「これって一般的に流通したものじゃなくて、レーベルのプロモ盤って聞いたことある」
N 「この物自体はコーキくん(KICKBACK ZINE | ex-PROTECT)が自分で作ったやつで、アルバムの前に出た曲のディスコグラフィになってる」
M 「当時、OUT TA BOMBに“今度リリースするのがこれだ”っていうことでこのデモが届いたって聞いたんですよね。それでアルバムが出たら全然違うじゃないかっていう話になったっていう。インダストリアル味はないし。それもあって、Too Damn Hype盤は良くないって言われていたのかもしれないですよね」
N 「そうだね」
M 「そう思って、けっこうあとだけど、中古でCD買ってToo Damn Hype盤も持っていたんですよ。でも、聴いたら聴けたもんじゃないな感はありました(笑)」
N 「本当にあれ、“Too Damn Cheapだ”ってメンバー自身が言っているくらいだもんね。そこから1年も経っていないくらいでニュー・マスター盤みたいな感じでCentury Media盤が出て」
M 「最初はコンピで聴いて知るバンドってよくあるけど、SUBZEROはコンピレーションとかにも参加してないですよね?」
N 「そこなんだよね。コンピに入っていないから謎の存在みたいな。先輩とかがみんなSUBZEROやばいって言っていて。ジンなりなんなりで名前は知っていたけど。それでようやくToo Damn Hype盤を聴いて。でも、そのときはわからないじゃない。だからわからないなりに一生懸命聴いたんだけど。でも、先輩はみんな“SUBZEROはもっとすごいバンドなんだよ”みたいな。Century Media盤が出て多少はマシになったみたいな」
M 「自分は最初に聴いた時に普通にかっこいいって思いましたけどね。バランスがすごくいいアルバムでもあるじゃないですか。“America The Ungrateful”はパンクというか、Oiの感じもある。よく聴いてみると、もっとダークな暗さを内包した楽曲ですし」
N 「当時は情報があまりにもなさすぎて、入ってくる情報といえば“デモのほうがすごいよ”っていう先輩の情報ばっかで。それがひたすら入ってくる」
M 「そのデモを聴くためにライヴハウスに通って、それを持っている人たちと仲良くなりたいっていうのはあった。もちろん、それだけじゃないけど(笑)」
N 「ふとしたタイミングで、SUBZEROのデモ聴いたことある?みたいな。切り出してくれないかなって」
M 「ちょうどパソコンをみんなが持つようになって、CD-Rが焼けるっていうことが起こり出して」
N 「このCD-Rはそういうことが起こる前に作られたもので、コーキくんがデモテープを良い状態で残したいから、CD-Rを焼けるデッキを買って作ったって。それくらい情熱を持ってやっていて。ディスクドライヴに入れたら焼けるっていう話じゃないんだよ」
M 「CD-R黎明期」
N 「CD-Rが出たての頃」
M 「自分とNgrauderでこのデモを入手するまでに1年以上差があると思う」
N 「一緒に昔のLOFT(東京・新宿)とかでもらわなかった?」
M 「HEAVEN'S DOOR(東京・三軒茶屋)でもらっていると思いますよ」

N 「コーキくんに焼いてもらって。焼くとかじゃないよね。ダビングみたいな」
M 「え!CDにダビングできるんですか!? って。その前はおすすめの曲をセレクトしたカセットテープだったもんね。『KICKBACK SAMPLER』とか。SUBZEROに関しては自分はやっぱり、Century Media盤のアルバムなんですよね。誰かにVINYLに売ってるよって聞いて買いに行ったんだよね。面出ししているとか、カタログ通販とかじゃなくて。VINYLはNYHC / ニュースクールって書いてありました?ジャンル分け。その1箱か2箱くらいの箱の中にあって、買ったんですよね」
N 「逆に俺はToo Damn Hype盤のCDを買って、そのイメージしかなかったんだけど、そのあとにCentury Media盤が出て、どうやらミックス / マスターがやり直しされているらしいっていう情報を聞いて、意外と必死になって買ったね。disk unionの中古セールで買ったもんこれ。
M 「Century Mediaだと、MERAUDERとかはレコード屋で面出しされていたと思うんですよね。『Master Killer』はLike an Edison(東京・新宿)に全てのフォーマットがありましたよね。カセットテープ、レコード、CD、缶に入ったCDも。当時はCDが一番高くて、『Master Killer』はテープで買いましたね。再発するまでテープしか持っていなかったかも。SUBZEROの情報はUP STATE(東京・原宿)で聞いたのかもしれないし、ライヴハウスで仲良くなった友達から聞いたのかもしれない。みんな必死にハードコアのレコードを探していましたよね」
N 「Too Damn Hype盤は普通にあった気がしたけど」
M 「本当に?ずっと見たことなかったんだけどな」
N 「ただ、それで聴いて衝撃を受けるというよりは、あ、スタンダードなニューヨーク・ハードコアだなって思った。イメージとしてはやっぱりSICK OF IT ALLであったりBREAKDOWNであったりの後継者みたいな立ち位置で。キャッチーな曲もあるじゃん。“Fuck MTV... I Want My NYHC”とかさ」
M 「その曲なんて、それこそ“SICK OF IT ALLのショウを観に行くんだ、めっちゃ弾けて、ファッキン狂う予定”(編集部意訳)って歌詞にありますもんね。それも、その頃に自分たちが思っていたことと近かったと思うんですよ。そういうハイプなものを信じないでハードコアのショウに行って、そこにあるんだよみたいなことは。今でも繋がることなんだけど、自分にとっての社会のようなものがある。そういう意味でもこのアルバムに全てある感がある」
N 「またさっきの話に戻っちゃうんだけど、それでライヴハウスに行くと先輩に“SUBZEROはデモなんだよ”って言われるんだよ」
M 「その頃はあるじゃないですか、ハードコアはアルバムを出したら終わりみたいな信仰」
N 「7"までは許せるみたいなね」
M 「そして、Ngrauderより少し上の世代じゃないと、その音源は聴けていないんですよ。本当に少量しか入っていないわけだし」
N 「断絶って言いかたは良くないかもしれないけど、分かれている感じはあるよね」
M 「でも、それだけ好きで、やりとりもDMとかじゃないですよ。手紙だよ。だからそれだけ熱量があるよね」
N 「SUBZEROに関してはそれ以降の世代も思うんだよね。Stillborn Recordsから出たアルバムでも、SUBZEROの印象って本当に世代毎に違うじゃない?」

SUBZERO

M 「『The Suffering Of Man』(2004)はメタルとニューメタルの影響をすごく受けている印象があるんだよな」
N 「当時はHATEBREEDがめちゃくちゃ売れていて、そういう影響は間違いなくあるだろうね。Stillborn Recordsっていうのもすごく注目されて。SWORN ENEMYのときも話したけど」
N 「メタルの中でどれだけハードコアが食い込めるかみたいな。HATEBREEDがその成功例の最たるもので」
M 「その当時の“OZZFEST”の感じの動きってことですよね」
N 「そういうところで『Happiness Without Peace』を聴いていた人は『The Suffering Of Man』とか『Necropolis: City Of The Damned』(2003)を聴くと、SUBZEROメタリックになっちゃった、なんか違くない?みたいになるんだよね」
M 「自分は当時、『Necropolis』は好きだったの。アルバムもレコードで買ったし、かっこいいと思ったの。おそらく『The Suffering Of Man』はそこから派生する動きがないんだけど、『Necropolis』はそこから派生している流れがあると思う」
N 「俺的にはやっぱ『Happiness Without Peace』が王道のNYHCだと思ったんだけど、本当はそうじゃないんじゃないかなとも思っていて。デモを聴くと辻褄が全部合うなって。もともとこの人たちはヘヴィでダークで退廃的な感じがあるよね」
M 「この間“Boxed In”の歌詞が絶望的でやばいってLINEくれて読んだけど、死刑囚の書いた詩という体裁を採ってますもんね」
N 「閉じ込められているっていう」

M 「なんだろう、これって文学的な作品でもあると思うんですよ。“Ice Age”の歌詞なんて、今聴くとやばいんですよ。暗示的というか。今の世界みたいだもん。この惑星の死にゆく姿を受け入れろみたいな」
N 「Lu(Di Bella)は小説とか読んでそう」
M 「“America The Ungrateful”は、ヴェトナム戦争のPTSDの曲なんですよね。何かのインタビューで読みました。Luのおじいちゃんは太平洋戦争で零戦に殺されているらしいんですよ。だから背中に零戦のタトゥが入ってるって同じインタビューで読んだと思う」
N 「『Happiness Without Peace』って健全なNYHCに聴こえるんだけど、実はね」
M 「ダークだし、かなりコンセプチュアルなアルバムだと思うんですよ」
N 「MADBALLやVISION OF DISORDERが当時はブレイクしてきていて、メジャーなメタル・レーベルが次に獲得するバンドっていうポジションだったのがわかる作品でもあるよね。位置的にはそこでは収まらないところって絶対あったんじゃないかなと思うんだよね」
M 「それはこのデモがあることで対比でわかりやすくなったよね。ここに内包されてるものは、歌詞を読んだりするとわかるんだけど、音に出てるよね。裏JKTの写真、Luはワークパンツに上裸で、Larry(Lawrence Susi)は黒のジーンズに上裸なんですよ。この対比もいいですよね」
N 「いいね。デモの写真とかだと、JOY DIVISIONのTシャツを着ていたり、ニューウェイヴとかゴシックの影響は絶対あるよね。そこからインダストリアル風味みたいな。サンプリングを使ったりとか、“MRP”のセリフが繰り返されるところとか絶対あると思うし。この正規盤のアルバムではそれがあまりうまくいかなかったように感じる」
M 「影響はすごくありましたよね。WIZ OWN BLISSのデモで映画のセリフをサンプリングしているのはSUBZEROですもん。モロに。MDで録音してスタジオで編集した。今みたいにDTM環境とかなかったから。そう考えると、どういう環境でやっていたんだろうね」
N 「このデモのTHE BEATLESのサンプリングとか、なんで?っていう感じするよね」
M 「SUBZEROを聴いて思ったのは、自分と音楽の聴きかたが違うんじゃないか?っていうこと。自分とか、THE BEATLES10曲くらいは知ってるけど、アルバムを通して聴いたことがあるかはわからないくらいしか聴いていなくて(笑)。でもハードコアって、それこそINTEGRITYもTHE BEATLESサンプリングのジャケットがあるじゃないですか」
N 「ある意味、SUBZEROとINTEGRITYは空気感が似ている感じはあるね。退廃的な感じとか」
M 「当時、『Happiness Without Peace』と同時期に『Those Who Fear Tomorrow』の豪華スリーヴみたいな再発盤を買ったんですよ。VINYLで。VINYLってニューウェイヴとか強い店だったと思うんですよね。偶然なのかな(笑)」
N 「Luって曲によってはシングしたりするじゃん。シングするバンドで言えばVODとかSHELTERもあるけど、違うじゃん。VODになるとスピリチュアルな感じだけど、Luは調子が外れていて」
M 「その調子が外れてるところがすごく芸樹性が高いというか。どっちかと言えばニューウェイヴとかに近いのかなっていう」
N 「俺もニューウェイヴとか詳しくないからアレなんだけどね。でもさ、当時は“MRP”なんてラップ・ヴォーカルNYHCの一番かっこいい曲だなんて言われてたじゃない」
M 「自分はヒップホップも同時期に聴いていて、ヒップホップで韻の話を知る前に、ハードコアの歌詞をめちゃくちゃ読んでいたから。Luはすごく韻を踏んでいて、それでこういうヴォーカルができるんだなーって理解させてくれたものでもありますよね」
N 「Luはシグネイチャ・フレーズみたいなのあるよね。“My father is your system. I've tried my hardest”とかさ。ギター的な観点で言うと、“MRP”が ワンリフでゴリ押すのがめちゃくちゃかっこいいって言われていて、アルバムで聴いててまあまあかっこいいと思ったけど、デモ・ヴァージョンを聴いてこれか!ってなった」
M 「そのワンリフで押すのも芸術的な技法としてやっている感じはありますよね」
N 「高度なことをめちゃくちゃやっているんだけど、野性的っていうか、プリミティヴっていうか、この人たちは天然でやっているのかっていうところが、なんかこう、NYHCのすごさなんじゃないかな」
M 「冷戦下で残っていたものがここにあるような気がする」
N 「それもあるかもしれないな」
M 「サンクスの最初にBREAKDOWNとCOLD FRONTがある。VELOURとか、THE UNRULYって知ってますか?」
N 「いや。基本、SUBZEROはみんな健全なNYHCっていうイメージは持っていると思うんだよね。それは俺ら世代の話なのかな?以降のアルバムのほうが本質なのかな?っていうのは思う」
M 「バンドとしての大きさ的にも、『Happiness Without Peace』のときはやりたいこととの整合性が取れていたけど、それ以降は、ちょっと大きくなったぶん、オーヴァー・ープロダクションになっちゃったのかな。『Necropolis』は、SUBZERO好きって言いつつ『Happiness Without Peace』しか聴いていない人が聴いてみたら、かっこいいじゃんって思う。『The Suffering Of Man』のほうは良いところはあるけど、自分はあまり。そこは、やっぱり耐えながらけけば何かわかる気がする」
N 「Too Damn Hype盤のアルバムも俺は耐えながら聴いていて、やばいのかなって思ってた。みんなやばいって言ってるけど、あんまって思っていて、Century Media盤を聴いてみたらある程度は理解できた。デモを聴いたら、本当にこれは、頭おかしい音楽の代表だと思うよ」
M 「本当にこのデモはすごい影響力があるんだけど、Century Media盤は無人島に持っていく1枚ならこれなんですよ。聴けば聴くほど、好きな曲が変わるっていうのはあるし、“Higher Power”はMVあるし、“Fuck MTV”とか好きだし、最初はなんでみんなが“Boxed In”をカヴァーしているのかわからないって思ったくらい、良い曲がある。Mosh Sommelier的には“Boxed In”の最後のモッシュ・パートがやばいっていうところではあるんだけど。最近だとFIREWALKERがカヴァーしてますよね。FIREWALKERの解釈はすごく合っているのかなって思いました。これが“Boxed In”の言わんとしてるところのような」

N 「ロウでプリミティヴな感じもあるし。でもどうしてもゴシック感のようなものはないよね。Larryがしゅっとしたイケメンで暗そうな顔してるみたいな。かっこいいんだよね」
M 「THE SMITHS的な。SUBZEROはけっこうヨーロッパの音楽聴いていたと思うんですよね」
N 「わかりやすところで言えばTYPE O NEGATIVEの影響を受けてたんじゃないかなっていうのは今回話す間に思って。1stとか聴いたら。大都会のNYのダーティさと孤独さと」
M 「人間の内面の闇的な。TYPE O NEGATIVEのヴォーカルってアメリカのロック誌でセックスシンボルのような感じで取り上げられてましたよね」
N 「あったあった。人気投票みたいな」
M 「LIFE OF AGONYもね。『Ugly』(1995)のTシャツは、SUBZEROがFACECARZとスプリット出したときのツアーでLuが物販で古着を売っていて買ったんですよね。LIFE OF AGONYもMosh Sommelierでいつかやりたいですけど」
N 「今、多様性とか言うとチープになっちゃうけど、根底にある大都会のダークさ、灰色な感じっていうのはSUBZEROの根っこに流れてると思う。みんながWU-TANG CLANの1stを聴いてて食らったときのあの感じにも近いのかなっていう」
M 「NYHCって何って聞かれたらSUBZEROかもしれないですね。自分的には『Happiness Without Peace』がNYHCの全てが詰まったみたいな音源で、1993デモっていうのはそれを作ってる人がどういう人なのかを説明するような音源だと思っているんだけど、ニューヨーク・ハードコアって何?って言われたら3枚の中に入ってくる。MADBALLの『Set It Off』(1994, Roadrunner Records)とか『Demonstrating My Style』(1996, Roadrunner Records)もそういう1枚なんですけど、MADBALLはAGNOSTIC FRONTっていうバックグラウンドになるバンドがあるのに対して、SUBZEROはそこの部分がわからないっていう。でもその当時間違いなくそこにいた人たちじゃないですか。音楽的な多様性を感じる」
N 「多様性ってとこではさ、さっきも話したけど、ニューウェイヴだったりゴスだったりインダストリアルだったりの影響を受けて、とんでもない音源を作った人たちなんだけれども。あれ、何を話そうとしていたんだっけ、俺的にはあれかなやっぱ。マーシーと真逆の意見になっちゃうのかもしれないんだけど、いわゆるニューヨーク・ハードコアって捉えないほうが俺はいいと思う」
M 「それもわかります」
N 「そういう側面もあるじゃない」
M 「だからこそ、それがニューヨーク・ハードコアなんじゃないかなって思うのはあるよ。影響を受けたものはそうだけど、ニューヨーク・ハードコアの中でものすごく精力的に活動していたバンドだから、それをニューヨーク・ハードコアっていうんだと思うんですよ。ゴシック、ニューウェイヴの文脈で捉えることもできるんだけど、ニューヨーク・ハードコアの元の要素ってなんだろうって考えた時に、それを知るには一番いいと思う」
N 「パブリック・イメージに囚われてると何か見過ごしてしまうことは……っていうとなんか説教臭くなっちゃうけど」
M 「そんなにハードコア・パンク的ではないんだよね」
N 「メタルコアでもないんだよね」
M 「中期以降は時代性もあるけどね」
N 「良い意味で、伝説のバンドとかじゃなくてフラットにみてバチコン食らうと思う」
M 「ローカルのハードコア・バンドだと思うんですよね」
N 「うん。難しいな、音源によってドラムがすげーと思うし」
M 「でもそのドラム1stでいないですからね。ニューヨーク・ハードコアってそういうのあるじゃないですか」
N 「むっちゃくちゃあるんだよね」
M 「このメンバーがいたからこうだったんだーみたいなやつ。そこにバンドのおもしろさ自体がありますよね。自分はそこにけっこう影響受けているのはありますね」
N 「俺が一番言いたいのは、YouTubeでも聴けるから聴いてほしいんだけど、このギーガー・ジャケットのデモ、“Boxed In”でシンセサイザーが入ってくるのがね、意味不明すぎるから。本当に。こんなに自由な表現で、しかもそれが都会っぽい、ニューヨークっぽいっていう。シュッとしたあれって、たぶんこれは未だに超えられない」
M 「超えられないというかこんな音楽を作っている人たちいないでしょ」
N 「未来的な、サイバーな感じの」
M 「サイバーパンク的な世界観なんですかね。けっこうディストピア的な世界の中で鳴ってる音楽みたいな感じなんですよね」
N 「気合いとか根性とかっていうのはなくて」
M 「冷たい音楽なんだけど。アルバムはそこまで冷たくないんだけど。ジャケット炎だし(笑)」
N 「まあ、SUBZEROっていうバンド名がね、絶対零度だから」
M 「まあそうなんだけど。自分は最初の来日を観に行って」
N 「あれはハードコア・パンク的な印象がある。対バンもすごかったよね、SECOND TO NONEにT.J.MAXXで。
あれで初めてセコナン観た」

M 「SHELTERのほうですよね。俺もそのとき初めてセコナンみた。同時代そういうバンドが生まれてましたよね。SUBZEROはANTINOKに最初に観に行ってTシャツは買わないでSHELTERのチケット買った。SUBZEROはその当時でもわかったというか、CROWN OF THORNZはわかったふりしてファッションで聴いていたんだけど(笑)。ずっと聴き続けて、それから10年くらい経ってこれはかっこいいって理解できたとは言わないけど、入って来た。でもSUBZEROはわりとすっと入ってきましたね」
N 「間口は広い音楽性なんだけど、掘れるところはたくさんあるみたいな音楽性だよね。曲とかを掘り下げてこのダークさはどこから来ているんだろう?とか考えてほしいよね」
M 「SUBZEROはバンドやっている人は全員観に行ったほうがいいと思います(笑)。“Boxed In”ってSUBZEROの録音で7"もあるし、いろんなバンドもカヴァーしているけど、それぞれの“Boxed In”があるなあと思って。この曲自体SUBZEROの中で完成してないんじゃないかって思うんですよね。カヴァーを聴いて、あーここかーって思うパートがあるし」
N 「カヴァーしているバンドがそれぞれ抽出する部分があるじゃない?イントロだったり、サビだったり。最後のモッシュ・パートに力を注ぐバンドはたくさんいて。ライヴの最後に“Boxed In”やって!ってい言うとカヴァーしてくれるバンドがGIG-ANTIC(東京・渋谷)にはけっこういた気がするんだよね」
M 「で、気分を盛り上げて聴くとけっこうさらっとした曲なんですよね。冷たいというか、情熱的な曲ではないもんね。どんな“Boxed In”を今回やるのかっていうだけで、ずっと話せる気がしてきた」

N 「LuとLarryがかましてくれるのを期待してます」
M 「今日も何も話してないような気がしますが、何も話してないのが良かったかも。そういえば、SON OF SKAMとかもLuが最初のメンバーだったし、SKARHEARDにLuが在籍してる時期もありますよね。Victory Recordsのライヴ・コンピに入ってますよね」
N 「ギターもたしかSON OF SKAMじゃなかったかな」

SUBZERO Japan Tour 2026

SUBZERO Japan Tour 2026
https://furious.jp/

SUBZERO Japan Tour 2026| 2026年4月3日(金)
東京 新宿 ANTIKNOCK

開場 17:00 / 開演 17:30
前売 5,500円 / 当日 6,500円(税込 / 別途ドリンク代600円)
e+

Live
AT ONE STROKE / Dos Quatro / ETERNAL B / KILLOUT / SUBZERO / SUPER STRUCTURE / Torture Smile

SUBZERO Japan Tour 2026| 2026年4月4日(土)
"FURIOUS WORLD FEST 2026"
大阪 難波 Yogibo META VALLEY + Yogibo HOLY MOUNTAIN
開場 12:00 / 開演 13:00
一般 前売 9,000円 / 当日 10,000円(税込 / 別途ドリンク代)
学生 前売 5,500円 / 当日 6,500円(税込 / 別途ドリンク代)
高校生 前売 3,500円 / 当日 4,500円(税込 / 別途ドリンク代)
15歳以下 入場無料(別途ドリンク代)
e+

Live
CRYSTAL LAKE / FACECARZ / FLESH JUICER / GATES OF HOPELESS / Graupel / KRUELTY / LAST DAY DREAM / NASTY / NOISEMAKER / PROMPTS / RECLUSE / ReVERSE BOYZ / SAND / SUBZERO / TERMINATION / View From The Soyuz / VOLUMES / WHISPERS

SUBZERO Japan Tour 2026| 2026年4月5日(日)
"M.A.G SIDE CONNECTION #100"
FACECARZ "Basic As Fuck" Release Party

三重 鈴鹿 ANSWER
開場 17:30 / 開演 18:00
前売 5,000円 / 当日 5,600円(税込 / 別途ドリンク代)
※ 特典: M.A.G #100 スペシャル・ステッカー
KICKBACK | ANSWER

Live
FACECARZ / L2D / NO LIMIT / RESENTMENT / SECONDARMS / SUBZERO

DJ
DMW SOUNDS

Live Paint
CHAPPE

Food
伊藤飯店

NgrauderNgrauder
Twitter

PAYBACK BOYS | DIRTY MOSH BRIGADE

編集部便り

 今回の「Mosh Sommelier」いかがでしたか?みんな「Boxed In」を生で聴かずにはいられなくなっちゃったのではないでしょうか!ソムリエのお2人にとって特別なバンドであることがびしびし伝わってくると共に、私自身のSUBZERO愛が掘り起こされて涙ちょちょぎれちゃいました(定期)。

 でも、いつもはお2人のお話をうんうん頷きながら読むのですが、今回はちょっと違うな~という印象がございまして……。SUBZERO観の形成過程で異なるルートを歩んだと言いますか。単純に私の耳が肥えていないっていう話なのですが、最初に告白しておきますと、私は『Happiness Without Peace』に関して、「Too Damn Hype Records」盤しか聴いたことがないのです……。しかもToo Damn Hype盤の音も大好きでして……。『The Suffering Of Man』についてもリリース当時、大興奮で受け入れたんですよね……。それがなぜなのかをちょっと考えてみます。まず『Happiness Without Peace』をToo Damn Hype盤でしか聴取していない理由はいくつか挙げられるのですが、背景として個人的な悲しい思い出があるのです……。

 『Happiness Without Peace』はリリース当時、Too Damn Hype盤のヴァイナルで購入しました。よく覚えていないのですが、渋谷のCISCOで買った気がします。これもどこで仕入れた情報なのか記憶が定かではないのですが、BREAKDOWNのメンバーがいるという触れ込みだったので、前年に発売されたCROWN OF THORNZ『Train Yard Blues』(Equal Vision Records)や翌年にリリースされたBREAKDOWNの傑作『Blacklisted』(Eyeball Records)と一緒に愛聴しておりました。『Happiness Without Peace』と『Blacklisted』の両作でベースをプレイしているのがLarryことLawrence Susiさんその人ですし、「Boxed In」の後半におけるRich Kennonさんのアラビアンなアレンジメントは『Train Yard Blues』でも聴けるいわゆるMike Dijan節を想起させるものだったこともあり、BREAKDOWN門下のバンドとして聴いていたように思います。BREAKDOWNの『Plus Minus』(1998, Eyeball Records | ※ ユーロ盤はMercyさんが好きなKINGfisherから出てる!)にはKennonさんが作った曲が含まれていたりするんだよね。あと「Karma-Geddon」みたいなタイトルを含めてCRO-MAGSを連想させる要素も多くあり、もっと言えばBAD BRAINS系列として聴いていたのかもしれません。Oi!やTHE REPLACEMENTS、SOCIAL DISTORTIONなどを想起させるメロディックなパンク・ソングが違和感なく盛り込まれるあたりは、BLOOD FOR BLOODとの同時代性や、『Love Songs For The Unloved』(1995, Blackout! Records)で独特のロックンロールみを身につけたSHEER TERROR、Too Damn HypeのレーベルメイトでもあったMAXIMUM PENALTYからの影響を感じたりもしていました。Jim EatonさんがTROUBLE IS...のメンバーだったので、DAG NASTYウォーシッパーでもあったのかな~、とか。とにかく曲が練られまくっていて全部かっこいいし、演奏がうまいし、ラッピン・ヴォーカルもハイプな感じがしないし(Di BellaさんはM.O.P.が好きなんだった気がする)、悪いところないじゃん!というのがSUBZEROの最初の印象。Mercyさんも指摘していらっしゃるようにCROWN OF THORNZはファッショナブルな側面も強かったけど、SUBZEROは私のような陰キャとの親和性もありそうなイキフンが大好きでした。

 問題のサウンド面に関して言えば、Too Damn Hype盤は音圧で押してこないというか、めちゃくちゃドライな質感が逆に新鮮で、Larryさんのベース・ソロ・パートもめちゃくちゃパンキッシュで気持ち良く聴こえるし、端正な出で立ちにもハマっている気がしたんですよね。マッチョすぎないのがかっこいいといいますか。そんな感じがしたのであります。しかし、たぶん私もNgrauderさんと同じ記事で読んだのですが(『EAT magazine』だったか『DOLL』だったか……今度国会図書館で調べてくるね!)、ご本人たちは「Too Damn Cheapだ」とおっしゃっているんですよね(笑)。Century Mediaからのリリースはセルアウトとの認識が本国ではあったようで、同じ記事でDi Bellaさんが「君たちは自分の好きなバンドが金欠で潰れてもいいっていうのか!?」的に怒っていたのをめっちゃ覚えています。それを知って、やっぱCentury Media盤で買い直すのが正解だったのかも……(泣)と思ったりもしました。でも最近のDi Bellaさんの発言を見るとToo Damn Hypeへの感謝が表れているように感じるし、それ以前にSON OF SKAMのアルバム『Sign Of The Times』(2002)はToo Damn Hypeから出ているので、もうわだかまりはないんじゃないかな。そんなわけで、私は完全に間違っているのかもしれないが、Too Damn Hype盤大好き!と言いたい!「Century Media」盤サンクス・リストの最初がBREAKDOWNとCOLD FRONTなのは今回のMercyさんの発言がなければぜんぜん知らなかったんですけど、Too Damn Hype盤は最初がLAMENT(Too Damn Hypeからアルバムを出していたSEASON TO RISKみたいなバンド。MAXIMUM PENALTYメンバー在籍)なんですよね。そういうところも好き!

SUBZERO 'Happiness Without Peace' Too Damn Hype
正面から見えるバックインレイの「NYHC」もかっこいいよね!

 ここからが悲しい思い出よ。前にも書いたかもしれないけど、当時私はぜんぜん人が来ないマンスリーのパンク / ハードコアDJイベントでDJをしておりまして、人が来ないのをいいことに、好きなヴァイナルを大きな音でかけて楽しんでおりました。その中に『Happiness Without Peace』が含まれていたのは言うまでもありません。するとあるとき、ひとりのおじさんが「君の『Happiness Without Peace』と僕のWIDE AWAKE『CT. Hardcore』7"をトレードしないか」と持ち掛けてきたのです。『Happiness Without Peace』はお気に入りだったので、軽く渋ったところ、「UP FRONTの初期7"も付けるから!!」と食い下がってきました。よく知らん人だから怖かったし、“ハードコア・ヴァイナルのトレード”という状況にかっこよさを感じてしまうくらいにはバカだったので、そのディールを受け入れてしまったのです。これがあかんかった。『Happiness Without Peace』のヴァイナルは短期間でプレ値になっていたものの、UP FRONTも好きだし、なにより「Schism」盤のWIDE AWAKEには勝てん!っていうセコい気持ちもあったのかな。そして約束の日に『Happiness Without Peace』を持って行くと、「ごめんごめん!UP FRONTは持ってきたけどWIDE AWAKEは忘れちゃったよ~。今度持って来るからさ!」と言うではないですか。その時点でビミョーに不信感が芽生えたものの、ひとまずはおじさんを信じました。しかしその後何度も合う機会があったにもかかわらず、毎回忘れられるWIDE AWAKE……。そしておじさんとはいつしか連絡が取れなくなり、『Happiness Without Peace』もWIDE AWAKEも回収不可能となったわけです。今思い出してもムカつくー!!! 死ね!!! 泣く泣く買い直すことにしたわけですが、Too Damn Hype盤はもう買えません。そのタイミングでCentury Media盤にすればよかったのに、Too Damn Hype盤に思い入れがありすぎて、かつあの『Loveless』みたいなジャケットが好きだったので、Too Damn Hype盤のCDに落ち着いたのであります。ちなみに、おじさんから得たUP FRONTは、なんか癪だったので、編集盤『Five By Seven』(2004, Smorgasbord Records)が出たタイミングで売り払いました。Eatonさんが元UP FRONTであることを考えると、非常にモヤる結末であります。

 それからしばらくして、Di Bellaさんが病に倒れてSUBZEROは活動しなくなっちゃうんだよね。急性リンパ性白血病だったんだそうです。また個人的な話で申し訳ないんだけど、私の父親も似たタイプの白血病で、発覚してから本格的な治療が始まるまでの間に死んじゃったんだけど、そのときに医師から受けた説明では、身体的にも金銭的にも(もちろん双方から心理的にも)かなりの負担がかかる治療みたいだったんだよね。だからDi Bellaさんは本当に大変な時期を経て『Necropolis: City Of The Damned』でカムバックしたんだと思う。『Necropolis』の前に、そのプロモ盤にあたる2002年のデモがあって(どのアルバムやコンピレーションにも入収録されていない「09-11 Battlecries」っていう曲が入ってるよ!)、そこには「今後発表されるアルバム『Black Snow』からの楽曲」って書いてあるんだけど、そこからわざわざタイトルを『Necropolis』に変更したのはギーガーの影響なんじゃないかな?っていう気がする。1993デモのギーガー・ジャケは、なんとなくかっけーから使ったわけではなくて、Di Bellaさんがアートとして本当にH.R.ギーガーが好きだからなんだよね(画集を複数冊所蔵している写真がある)。だから『Necropolis』はギーガーの作品集『ネクロノミコン』やゲーム『ダークシード』の世界観なんじゃないかな。バイオメカニカルな悪夢からの脱出、みたいな。『Necropolis』のカヴァー・アートはDave Quiggleさんなんだけど、同時期にQuiggleさんが描いたAll OUT WAR『Condemned To Suffer』(2003, Victory Records)と比較すると、かなりSUBZEROの世界観に寄せてくれているのがわかると思う。そんなわけでNO INNOCENT VICTIM、PRAYER FOR A FALLEN ANGEL、そしてSHOCKWAVE、xDISCIPLExのファンも必聴だ!それはさておき、『Necropolis』でのサウンドは『Happiness Without Peace』から一転してかなりヘヴィでタフな感じになっているんだけど、そこには癌を克服したDi Bellaさんのエモーションがものすごく反映されている気がしてグッときちゃったんですよね。素朴すぎるかな(笑)。ラストに「Boxed In」がめちゃくちゃ重厚になった「Boxed In Reanimated」が入っているのも泣ける。このときのラインナップはほぼ『Happiness Without Peace』と一緒なんだけど、Larryさんがギターに転向してデュアル・ギター体制になって、SON OF SKAMのJay Kalfinさんがベースを弾いてるんだよね。そういうところからも、このときやりたかったのであろうSUBZEROが詰まっている気がして好き。

SUBZERO '2002 Demo' /  'Necropolis: City Of The Damned'

 そして続く問題の『The Suffering Of Man』はもっとヘヴィになっているんだよね。そこにウッってなっちゃう人がいるのはめっちゃわかるけど、私は2002デモからの流れですごくエモく捉えたのであります(素朴)。それに、このときのメンバーがすごい!抜けちゃったUP FRONTのEatonさんの代わりに加入したMonstaっていう人、厨二っぽい名前だけだと誰やねんっていう感じだけど、なんと90年代POSSESSEDのドラマーで、あのHARLEY'S WARとかSTIGMATA・Bob RileyさんのMURDERER' ROWでも叩いていた人なんだよね。みんな大好き「Beer City Records」から出たATTITUDE ADJUSTMENTの今のところ一番新しいアルバム(『Terrorize』2016)とか、去年GODBELOWで有名な「Surface Records」から出たMURPHY'S LAW最新作『Go, Jimmy, Go!』でも叩いてるよ。そして、Larryさんが抜けちゃったのは超残念だけど、このとき加入したギタリストはなんとEddie Ortizさん!CATTLE PRESSの人だよ!当時フツーにパワーヴァイオレンス小僧でもあったので、めちゃくちゃテンション上がりました。CATTLE PRESSと言えばDISASSOCIATE(『Happiness Without Peace』のサンクス・リストでもDARKSIDE NYCと共に最初のほうに載ってる!)の「Devastating Soundworks」だし、『The Suffering Of Man』でのヘヴィネスはCANDIRIA的なヘヴィネスなんだよね。実際、「Hydra Head Records」からリリースされたCATTLE PRESSのフル・アルバム『Hordes To Abolish The Divine』(2000)と『The Suffering Of Man』を聴き比べると、感触がほぼ同じなのがわかると思います。でも、OrtizさんはMERAUDER・Jorge Rosadoさんが一時期やろうとしていたバンド・GOD IS I……要はILL NIÑOの前身バンドなんだけど……にも参加していた人なので、Ngrauderさんがニューメタルって捉えるのもよくわかる。加えて、IRATEのTHE JUDAS SYNDROMEとか、最近のRosadoさんのバンド・AKANIとかを聴いていても思うんだけど、AT THE GATESっていうか『Slaughter Of The Soul』(1995, Earache)の衝撃って万人に等しく訪れたんだなあ……って思うわ(笑)。あと、なにげにPRONGの影響がある気がする。リフワークもそうだけど、前述したSHEER TERROR『Love Songs For The Unloved』はTommy Victorさんプロデュースによってアメリカン・ゴシックな世界観が深くなっていたので、そういうところもチェックしていたんじゃないかな。ジャケットのエンジェル・モチーフはDi Bellaさんご自身が描いていらっしゃるんだけど、『エミリー・ザ・ストレンジ』的なゴスっ子感もありますよね。

SUBZERO 'The Suffering Of Man'
購入当初は白いトレイの2枚組で、「Stillborn Records」のサンプラーが付いていたんだけど、Flash Disc Ranchに詰め替えたタイミングでロストしてしまいました……すみません……。YOYO-Tさんの「BOWL HEAD inc.」から発売された日本盤もアートワークがぜんぜん違ってかっこいいんだよね!

 1993デモのものすごい内容については、私はかなり後追いで知りました。Ngrauderさんが指摘していらっしゃるように、デモ版「Boxed In」のシンセはTYPE O NEGATIVEの影響なんじゃないかなあ。MAXIMUM PENALTYの1989デモって実はTYPE O NEGATIVEのJosh Silverさんがエンジニアだったりするから、かなり近くで見ていたんじゃないかという気はする。ゴスみに関してはTYPE O NEGATIVEもそうだし、もともとDi BellaさんはJOY DIVISIONやCHRISTIAN DEATHが好きなのを隠してはいなかったので、かなりナチュラルなものだったのではないでしょうか。あとMISFITSね。David Bowieが好きっていうのも、NYHCの世界でのウィアードな存在感に一役買っていると思う。そして忘れてはならないのが、Mercyさんも指摘していらっしゃるTHE SMITHS!Ngrauderさんがおっしゃっている調子が外れた感じはMorrissey由来なんじゃないかな。スキンヘッズってTHE SMITHS好きだしね(SUBZEROもBREAKDOWNの流れでSHARPのメンタリティがちょっとあるんじゃないかな~と思っている)。1996年にToo Damn Hypeが『The World Still Won't Listen』っていうTHE SMITHSトリビュート・アルバムを出しているんだけど(シリーズでTHE CUREトリビュート・アルバム『Disintegrated』もあるよ!そちらも参加バンドがすごい)、当然SUBZEROも参加していて、「What Difference Does It Make?」をカヴァーしているんだよね。

 これが他の参加バンドと比較すると群を抜いてハマっているわけよ(SLAPSHOTの「Bigmouth Strikes Again」とかANAL CUNTの「You're Gonna Need Someone On Your Side」もいろんな意味でめっちゃハマってるけど笑)。リスペクトの度合いが違うというか。Di BellaさんがJohnny Marrと一緒に写っている写真があったりするので、これはもう確定であります。「What Difference Does It Make?」というLGBTQのみなさんからの支持が厚い楽曲をセレクトしているのもポイント。セクシャリティがどうかは別にして、Bowieにしてもそうだし、SUBZEROはクィアな視点も持っているのかもしれないですよね。Larryさんも別バンド・CRUSADEでの活動を見るに、かなりデスロックへの造詣が深いのではないかとお見受け致します。そして、最後にみなさんにぜひ聴いていただきたいのは、Di BellaさんとKennonさんが、BOLD、INTO ANOTHER(!)、そしてWalter SchreifelsさんのWALKING CONCERT / DEAD HEAVENSなどで活躍するDrew Thomasさんや、STABBING WESTWARD(!)のDerrek Hawkinsさんとかと一緒にやっているデスロック・バンド、BLACK IN MOURNING。2018年に1曲公開されたきりなんだけど、これがめちゃくちゃ良い曲で、SUBZEROの歴史を知らずとも絶対泣いちゃうと思う!知っていたらもっと泣いちゃう!エモ通過後のデスロックっていう感じでめちゃくちゃスッと入ってくるし、なによりDi Bellaさんのヴォーカルが本当に良いんだよね!早くアルバム聴きたい!

(久保田千史)