Review By 相谷レイナ | 泣いてるように笑う日々から | 東京・代田「せざんぬ」 | AVE

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02/02/2024
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　なんだかお腹が痛かった。紛れもなく新譜のリリースが近づいていた（この記事が出ている頃にはニューEP『Time Machine』が世にドロップされていることでしょう……！）。意外と繊細な部分があるんだな、と自分自身に驚きながら静かに息を飲んでそのときを待っていた。

　2023年は上半期に失恋をして、ようやく立ち直れたのが下半期に差し掛かる頃だった。いや、立ち直れてはいなかったけれど、うずくまっているだけなんてバカらしかった、癪に障った。友達（Show Chick Boy）に気持ちを羅列した文章を送っていた。歌詞ノートみたいにLINEを使っていた。曲にしてくれた。それを繰り返して1曲、2曲……と曲作りに熱中していくうちに、私は失恋を乗り越えていた。10月、全5曲のレコーディングを終えた頃には上半期とは全く別の自分になっていた。すでに忘れられない1枚。このEPと出会えたからこそ背筋をシャンと伸ばして日々を紡げている。これからも音楽と一緒に生きていけたら幸せだな、って確信した（夜を彩ってくれるEPが完成！たくさん聴いてくださいね）。

　突然の話だけど、そろそろ、好きなものだけに囲まれて生きたくなってきた。30歳が近づいてきて、自分の“好き”はもうわかりきっていて、少しずつ無理をするのがしんどくなっていたりする。そんなことを思いながら永遠に私を癒してくれる対象“喫茶店”に向かっていた。今月訪れたのは世田谷区代沢の住宅街にある「せざんぬ」。以前からここの日替わりランチが気になっていて、目をつけていた。念願の訪問……！

　温かい手書きの看板を見ていると一気にお腹が減ってきた。8種類のランチメニューから頭を抱えて選択肢を絞り込む。『6 ドライカレーのオムライス、エビフライ』と『8 ナポリタンと串カツ』がせめぎ合う。2分ほど悩む。6、君に決めた、っていう気持ちで元気に注文。セットのドリンクはアイスコーヒーにした。ランチが届く間、店内を見渡すとそこには店主の趣味全開のオブジェ、漫画、ポスター……。まるで部屋を覗いているかのような気持ちになる。

　内装を楽しみ味わっていると、あっという間にランチが到着。……最高のヴィジュアル！まさに“喫茶店のご飯”の完成系とでも言っていいかのような!! 求めていた「喫茶店のご飯」が到着!!!

　なんだか嬉しくなっていろんな角度からオムライスを撮影した。ウキウキした気持ちで口に運ぶ。……おいしい！おいしいに決まっている!! ドライカレーだけでもおいしいだろうし、オムライスだけでもおいしいだろう。そんなふたつががっちゃんこ。おいしいに決まっている！なくなるのが悲しくて少しゆっくり口に運んだ。添えてあるエビフライを食べると、おばあちゃん家に行ったときによく作ってもらっていたエビフライと、ついでにコロッケまで思い出した。とっても家庭的な味。カリカリしておいしすぎた。セットでいただくアイスコーヒーは料理の邪魔をしないすっきりとしたお味。グラスも含め、お家にお邪魔してる気持ちが突き刺さるように追いかけてきた。

　お会計のときに新鮮な驚き。このランチメニューは750円だという（ドリンク付きで！）…！あちらこちらで起こる物価高騰、連日伝えるのはニュース番組。そんな令和。「せざんぬ」は大切なものがそのまま保管されているかのような、時が心地よく止まっているかのような、趣のある素敵なお店だった。

　次回はリリースのご褒美に『8 ナポリタンと串カツ』を必ず食べるぞ、と誓いながらお店を後にした。好きなものにヒタヒタに浸って温かい気持ちになった。毎日こんなのならいいのに、いや、でも毎日こんな気持ちだと当たり前の幸せを見つけられなくなるのかな、なんてことを考えていた。

　最近見た映画『PERFECT DAYS』（ヴィム・ヴェンダース監督）が頭をよぎった。毎日幸せすぎる生活より、時々とっても幸せな日々が訪れる生活をしばらくは選んでゆくのだろう。きっとそこに音楽が生まれる。負の感情も作品になる、作品になれば幸せな気持ちをまた思い出す。日々を繰り返しながら、これからも自分にとっての大切を見つけていければいい。

　どうかニューEP『Time Machine』たくさん聴いて下さいねん^ ^では、また来月ね。どろんっ。